歴史まちづくり

古都指定都市の概要

1.京都市

小倉山歴史的風土特別保存地区

小倉山歴史的風土特別保存地区

嵐山歴史的風土特別保存地区

嵐山歴史的風土特別保存地区

京都の歴史的風土
京都市は、東に比叡山を始めとした東山三十六峰が優美な姿をみせ、北には愛宕山、北山が連なり、西の諸峰は保津川をはさんで小倉山、嵐山が山渓をつくりだしているなど、風光明媚な自然環境に恵まれています。こうした地勢のもと、8世紀の末に桓武天皇が遷都して以来、千有余年の間、政治・文化の中心として繁栄し、数多くの歴史上重要な文化的資産を現代に伝えています。東山、北山、西山の山並みは、市街地の背景となっているばかりでなく、そこには史跡や歴史的建造物が集積し、恵まれた自然環境と見事にとけあっています。

歴史的風土保存の経緯
高度経済成長期の昭和40年当時、京都市西部の双ヶ岡(ならびがおか)開発問題を契機として歴史的風土保存の機運が市民や文化人の間で高まり、当時、奈良市、鎌倉市とともに、古都保存法制定のきっかけをつくりました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
昭和41年に7地区、昭和44年に1地区を歴史的風土保存区域に指定するなど順次区域を拡大し、現在では14区域8,513haが歴史的風土として保存されています。そのうち枢要な地区として昭和42年2月に10地区、昭和44年に1地区などを加え、現在、24地区2,861haが特別保存地区に指定されています。

歴史的風土保存の取組
清水寺、金閣寺、銀閣寺などの歴史的建造物とその背景となる山々は、古都保存法による指定により、社寺などの努力とあいまって、現在も四季おりおりの美しい景観を提供しています。また、買入れ地の一部は市民の散策の場としても利用されています。このように京都市では、市民や地域と行政が一体となって特色ある歴史的風土の保存を進めています。

2.奈良市

春日山歴史的風土特別保存地区

春日山歴史的風土特別保存地区

薬師寺歴史的風土特別保存地区

薬師寺歴史的風土特別保存地区

奈良の歴史的風土
奈良市は、若草山などのなだらかな丘陵が大和盆地を取り囲み、万葉集にも謡われた山や川が優美な姿をみせ、奈良公園では春日大社の神鹿がゆったりと草を食んでいる姿を眺めることができます。また、春日山の原生林は今も鬱蒼とした森林の姿をとどめています。一方、平城宮跡は大極殿の復元が行われるなど、歴史的風土の活用に向けた新しい動きをみせています。このように奈良市は8世紀初めに平城京に遷都後、都市としての形態を整え、その後大社寺を中心に繁栄し、数多くの歴史上重要な文化的資産を現代に伝えています。

歴史的風土保存の経緯
昭和40年代以降、若草山一帯ではレクリエーション施設の開発が行われ、旧東大寺境内ではホテル建設の申請がなされるなど、万葉に謡われた山野の地形を一変させかねない危機的状況を迎えていました。こうした歴史的風土をめぐる状況を回避するため、京都市、鎌倉市とともに、古都保存法制定を働きかけ、歴史的風土保存のきっかけをつくりました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
昭和41年以降、歴史的風土保存区域を3地区2,776ha指定し、そのうち枢要な地区として、春日山地区、平城宮跡地区、山陵地区、聖武天皇陵地区、唐招提寺地区、薬師寺地区の合計6地区1,809haが特別保存地区として指定されています。

歴史的風土保存の取組
春日山や薬師寺などに代表される奈良市の歴史的資産の大半は、東・西・北方のなだらかな丘陵地を背景に自然環境と一体をなして特色のある歴史的風土を形成しており、この歴史的風土を保存するため、行政、市民が一体となって様々な取組みを進めています。

3.鎌倉市及び逗子市

八幡宮歴史的風土特別保存地区

八幡宮歴史的風土特別保存地区

名越切通し歴史的風土特別保存地区(切岸)

名越切通し歴史的風土特別保存地区(切岸)

鎌倉市の歴史的風土
鎌倉市は、12世紀の末、源頼朝が天然の険要の地として武家政治の基礎を築き、政治の中心として繁栄し、また、鎌倉および室町時代を通じ、文化の枢要地として発展し、現代に至るまで数多くの歴史上重要な文化的資産を伝えています。現在も南の海岸線、三方の穏やかな山並みに囲まれた美しい自然のなかに、街の中心となる鶴岡八幡宮、静かなたたずまいの建長寺・円覚寺などの古寺、山あいの木洩れ日の中に往時をしのばせる「切通し」など、歴史的な資源が息づく街並みをみせています。晴れた日には遠く南に伊豆大島を望む鎌倉海岸は背景となる丘陵地と調和し、日本の古都のなかにあって海岸景観を有するという独特の景観もみせています。

歴史的風土保存の経緯
昭和30年代、40年代には東京、横浜などの大都市のスプロール化が進むなかで鎌倉もその影響を受けて転入人口が急速に増大し、開発の波は鶴岡八幡宮の裏山にまで迫る事態となりました。こうした事態に憂慮して、鎌倉市御谷(おやつ)地区の住民や文化人、市民団体によって「鎌倉の自然を守る会」が結成され、歴史的な環境保全の動きが活発化し、日本最初のナショナルトラストの活動にも結びつきました。このように、鎌倉市の市民活動は、古都における歴史的風土の保存のための立法措置に大きな役割を果たしました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
昭和41年に鎌倉歴史的風土保存区域が5地区695ha指定され、昭和42年には浄妙寺地区、瑞泉寺地区などの合計9地区220.2haが歴史的風土特別保存地区として指定されました。その後、指定区域は、順次拡大され、瑞泉寺地区、寿福寺地区、妙本寺・長谷観音地区などを加え、特別保存地区は現在13地区573.6haとなっています。また平成12年3月に逗子市域を歴史的風土保存区域に加え、5地区989haが歴史的風土保存区域に指定されています。

歴史的風土保存の取組
鎌倉市では古くから市民団体による土地の買入れやその管理等が積極的に行われ、また、市民参加による古都のまちづくりを積極的に進めています。市民と行政が一体となって歴史的風土の保存とあわせて、古都鎌倉の景観の整備を進めています。

4.斑鳩町

法隆寺歴史的風土特別保存地区

法隆寺歴史的風土特別保存地区

斑鳩町の歴史的風土
斑鳩町は、6~7世紀の初めにかけて、聖徳太子が数々の政治上の業績を残し、飛鳥時代の文化が栄えた古都として、数多くの歴史上重要な文化的資産を現代に伝えている地域です。現存する最古の木造建築物として世界遺産に登録されている法隆寺をはじめ、7世紀初めの飛鳥時代に創建された、聖徳太子ゆかりの中宮寺、法起寺、法輪寺などの歴史的建造物が数多く点在しています。これらの建造物の背後に控える矢田丘陵の緑豊かな自然環境と西里地区に代表される歴史的なたたずまいを残す伝統的な町並みとが調和した古都らしい落ち着いた趣のある景観が往時をしのばせます。

歴史的風土保存の経緯
昭和40年代、法隆寺周辺の都市化や軽飲食店や売店などの乱立により、歴史的風土の保存をめぐって危機的状況を迎えていました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
昭和41年には斑鳩地区536haが歴史的風土保存区域に指定され、その中心的な区域として昭和42年には法隆寺地区80.9haが特別保存地区に指定されています。ここでは、法隆寺、中宮寺、法輪寺、法起寺等を中心とし、これらと一体となる自然的環境の保存が進められています。

歴史的風土保存の取組
斑鳩町では、法隆寺、法起寺及び法輪寺の周辺地域において、電線類の地中化や道路表面の美装化など歴史的景観と調和した修景整備を進めています。また、休耕田を活用し、地域の農家に景観作物としてコスモスの栽培に取り組んでいただくなど、住民と行政との協働により、斑鳩の里の良好な景観形成を推進しています。

5.天理市・橿原市・桜井市

石上神宮歴史的風土特別保存地区

石上神宮歴史的風土特別保存地区

藤原宮跡歴史的風土特別保存地区

藤原宮跡歴史的風土特別保存地区

天理市・橿原市・桜井市の歴史的風土
天理市、橿原市及び桜井市は、8世紀初め、飛鳥藤原より平城京に遷都するまで長期にわたり、わが国古代の政治、文化の中心として繁栄した地域です。 三輪山麓には大和朝廷が誕生する一方で、大陸からは高度の文化・技術が伝来し、4~5世紀には古墳文化を形成してきました。また万葉集にも謡われた香具山、畝傍山、耳成山は大和三山としてその優美な姿を今に伝えています。石上神宮、大神神社及び崇神天王陵、景行天皇陵等の大型古墳ならびに山辺の道は一体となって今も優美な姿をみせてくれます。

歴史的風土保存の経緯
大阪都市圏から1時間圏であることから、昭和40年代には住宅地開発の可能性が高い地域であり、宅地造成のための土地などによる自然的環境の破壊の危機に瀕していました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
昭和42年に4地区2,712haが歴史的風土保存区域に指定され、このうち、特に重要な地区として、石上神宮地区、崇神・景行天皇陵地区、三輪山地区、香久山地区、畝傍山地区、耳成山地区、藤原宮跡地区の合計598.2haが特別保存地区として指定されています。

歴史的風土保存の取組
山の辺の道や数多くの寺社・仏閣等は、多くの人が訪れる観光・交流の場でもあり、歴史的風土の保存とあわせて、地域づくり、まちづくりに、行政・市民が一体となって取り組んでいます。

6.明日香村

石舞台

石舞台

稲渕の棚田

稲渕の棚田

明日香村の歴史的風土
明日香村は、わが国上代の都が定められたほか、飛鳥文化の中心地であると同時に律令国家の体制が初めて形成された地域です。村内には、当時の宮跡、寺跡、古墳や記紀及び万葉集に登場する飛鳥川などのわが国にとって重要な歴史的文化的遺産が数多く存在し、それが古都としての伝統と文化を継承し、明日香村らしい歴史的風土を形成しています。特に明日香村の歴史的文化的遺産は、村内の広範な地域にまたがって存在し、村内のどこにたたずんでも往時を偲ばせるよすがとなる特色ある景観を呈しています。この点において明日香村における歴史的風土は他に類をみないものであり、明日香村の歴史的風土が、その伝統と文化を現代に継承しているだけでなく、日本人の心のふるさとともいわれる所以となっています。

歴史的風土保存の経緯
明日香村は大阪都市圏から1時間圏であることから昭和40年代には住宅地開発が進み、歴史的風土の保存をめぐって危機的状況を迎えていました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
明日香村においては、全域が歴史的風土特別保存地区に相当する地区との位置付けから、明日香法に基づき、現状の変更を厳しく規制する第1種歴史的風土保存地区と著しい現状の変更を抑制する第2種歴史的風土保存地区が指定されています。 昭和55年、第1種歴史的風土保存地区として飛鳥宮跡、石舞台、岡寺、高松塚の4地区125.6haが指定され、第2種歴史的風土保存地区2,278.4haがそれぞれ指定されています。

歴史的風土保存の取組
明日香村整備計画等による行政の取組みと、住民の活動および都市住民のボランティア活動等が一体となって歴史的風土の保存が進められています。また、歴史的文化的資産の保存と活用を図るため、祝戸、石舞台、甘樫丘、高松塚周辺、キトラ古墳周辺の5地区において国営飛鳥・平城宮跡歴史公園(飛鳥地域)の整備、管理が行われています。

7.大津市

坂本地区

坂本地区

三井寺観音堂

三井寺観音堂

石山寺(鐘楼)

石山寺(鐘楼)

大津市の歴史的風土
大津市は、天智天皇が遷都した近江大津宮の他、平安仏教・鎌倉新仏教草創期の文化の中心地として、さらには奈良時代から平安時代にかけての近江国府の所在地、鎌倉・室町・戦国・江戸の各時代における軍事上の重要拠点あるいは交通の要衝として繁栄し、数多くの歴史上重要な文化的資産を有しています。これらの歴史的資産の大半は、比叡山から長等山、音羽山、さらに伽藍山へと西方に連なる山並みの恵まれた自然的環境と一体をなして、特色のある歴史的風土を形成しています。

歴史的風土保存の経緯
大津市は、交通の利便性が高いことから、山麓部の住宅地開発が進み、市街地では中高層共同住宅の建設がみられるなど市街化の圧力が高く、全国的に総人口の減少が想定されるなかでも、将来的に人口増加が予想される数少ない都市のひとつになっています。そのため、風致地区などの都市計画による取組みだけでは開発行為を適切に規制・誘導し、歴史的風土を保存することが困難な状況となっていました。

歴史的風土保存区域等の指定状況
平成16年に、5地区4,557haが歴史的風土保存区域に指定され、平成18年に、特に枢要な地区として、延暦寺東塔・西塔地区、延暦寺横川地区、延暦寺飯室谷地区、西教寺地区、日吉大社地区、崇福寺跡地区、近江神宮地区、園城寺地区、石山寺地区の合計505.7haが歴史的風土特別保存地区として指定されました。

歴史的風土保存の取組
国民共有の貴重な財産である大津市の歴史的遺産と樹林地等で形成される歴史的風土を保存するため、平成15年10月、大津市を古都に指定する政令が公布・施行され、新しく全国10番目の古都に指定されました。 今後、古都保存法に基づき歴史的風土の保存を適切に図りつつ、古都に相応しい風格あるまちづくりへの取組みが推進されています。

お問い合わせ先

国土交通省 都市局 公園緑地・景観課 景観・歴史文化環境整備室
電話 :03-5253-8111(内線32988)
直通 :03-5253-8954
ファックス :03-5253-1593

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