筑波研究学園都市の公共公益事業等の整備計画の概要
(昭和46年2月19日 昭和48年4月16日改正 研究学園都市建設推進本部)
筑波研究学園都市建設に伴う公共公益事業の整備は新都市建設の基盤となるものであり、筑波研究学園都市の建設を円滑かつ効果的に推進するため、公共公益事業等の整備計画を次の方針にもとづき行なうものとする。
1 公共公益事業等の整備の基本方針
(イ)研究学園都市の建設に関連する公共公益事業等の整備は、筑波研究学園都市建設の大綱にもとづくとともに、各事業ごとの進捗に支障が生じないよう調整しつつ実施するものとする。
(ロ)研究学園地区の建設に関連する公共公益事業等の整備は、当該地区において行なわれる研究その他の諸活動が円滑かつ快適に行われるよう整理するものとし、研究学園地区へ移転する諸機関および新設機関の建設計画に支障をきたさないようおおむね昭和49年度末までに概成することを目途に整備するものとする。
(ハ)周辺開発地区における公共公益事業等の整備は、当該地区が研究学園地区と均衡のある発展を図るようとくに生活環境の整備向上に努めるものとする。なお、本地域が農林業地帯であることにかんがみ、農林業の近代化のための諸施策により近郊農業地帯としての整備を図るものとする。
上記の趣旨にもとづき、研究学園都市における、主要な公共公益事業等の整備計画の概要は下記のとおりである。
2 主要事業の整備計画の概要
- 交通施設
(イ)道路街路および共同溝等
道路、街路の整備については、首都との交通を確保し、可及的速やかに都市構成の骨格となるべき幹線道路網の形成を図るとともに、円滑な都市建設の推進を図るため、既存道路網の再編成を考慮しつつ、先行的に、県道および町村道の選択的な整備とあわせて都市計画道路および区画街路を計画的に整備する。この際、道路の安全対策について充分考慮をはらうものとし、歩道および共同溝等の整備を図るものとする。
このため、主要地方道土浦野田線、県道大村石下線等11路線、総延長約65qの区間、および都市計画道路土浦学園線、東大通り線、西大通り線等8路線、総延長約56qについて、おおむね昭和49年度の概成を目途に整備するものとする。
また、町村道12路線、並びに新住宅市街地開発事業等にかかる区画街路については、土地利用計画に適合する健全な市街地の形成を期し、また、周辺開発地区における生活環境の整備を考慮し、個々に、或は土地区画整理事業等宅地開発事業により逐次適正に整備する。
なお、安全で快適な居住環境を確保するため、歩道(自転車道を含む。)を整備する。共同溝については、交通が著しくふくそうすることが予想され、地下埋没物の多い中心市街地の道路に、給水管、電力ケーブル、電話ケーブルを収容する共同溝約2.7qを整備する。
常磐自動車道については、東京と密接な連絡を確保する重要路線であることにかんがみ昭和45年度から着工し、昭和51年度供用開始を目途に埼玉県三郷市から茨城県新治郡千代田村の区間の建設を促進する。
また、国道6号線についても同様の趣旨にもとづき大利根橋、土浦バイパスの事業を促進する。
(ロ)駐車場、バスターミナル
購買、文化、娯楽、その他都市サービス施設の集中する中心市街地においては、都市機能が十分発揮されるよう、これらの施設配置との関連において駐車場の準備を図る。
また、中心市街地、各研究および教育団地、住宅団地等を相互に結ぶ都市内交通、および土浦市、取手市等周辺諸都市への近郊交通、並びに首都または水戸市等への高速長距離交通等を円滑に処理し、利用者の集中、発散の利便を確保するため、都市計画の一環として花室地区において総合的なバスターミナルを整備する。
(ハ)その他
東京との交通をより円滑なものとするため、国鉄常磐線の整備を促進するとともに、最寄駅を結節点とするバス路線の開設を図るほか、新しい交通体系の導入について検討を行なう。
- 通信施設
(イ)郵便施設
研究学園都市建設に伴う郵便需要の増大に即応するため、今後計画の新捗状況に対応しつつ、郵便区を調整し、中心部に新たに郵便局を設け、周辺部の郵便局を整備する等施設の整備拡充を図る。
(ロ)電気通信施設
研究学園都市地区の建設計画の進展に即応し、昭和49年度末を目途に、発生する電話需要に応じるよう、電気通信施設の整備を図ることとし、研究学園地区内の電話のとりあつかいについては必要に応じ逐次区域内通話扱いとするほか、事業所集団電話の導入を図る。また、データ通信、CATV等新しい多様なサービスに応じうる情報システムについても最適システムとなるよう施設の整備を図る。
なお、周辺開発地区に発生する電話需要に応じうるよう既設電話局の整備拡充を図る。
- 電気・ガス等都市エネルギー供給施設
(イ)電気供給施設
研究学園地区における電気供給施設は、高水準の研究および教育活動並びに都市形成に要する諸電力需要に対処し、合理的かつ、信頼度の高い供給体系の確立を図ることを目途として、東京電力株式会社が事業の主体となり、受電単位の分布に適合する供給施設を整備する。
このため、附近を通過する既設の送電線(筑波線および霞ヶ浦線)を利用し研究団地、中心市街地等を合理的に連繋し得る66KVの基幹送電線を2回線施設する。大口の需要者に対しては、原則として2回線受電かつ設備共用方式により直接配電をする。また、市街地および住宅地等の一般の需要については、このルート上に新設する変電所および既設の小野川変電所等を通して供給する。
なお、特別高圧送電線の設置にあたっては、土地の有効利用を十分配慮しつつ、適正にそのルートを選定する。また、中心市街地等の高密度な区域における高低圧配電線の施設については、都市環境との調和を図るものとし、必要に応じ共同溝に収容するか地下埋設とする。
以上による電気供給施設の整備は都市の建設段階に応じて実施する。
(ロ)ガス供給施設
ガス供給は、筑波学園ガス株式会社(昭和45年10月設立)が事業主体となり予想されるガス需要に対応し、桜村にガス製造設備を設置し都市ガス供給の体系を確立する。
このため、都市建設に対応して昭和48年度当初から製造設備、供給設備等の設置の準備に着手し、昭和49年度当初から逐次導管、中圧ガス導管延長約58qの布設の進展および需要の増大との関連において11,000kcalの液化天然ガスによる本格的なガス供給を実施する。
(ハ)地域段冷房施設
研究学園都市においては、快適な都市環境の形成、大気汚染および都市災害の防止、ビルのスペースおよび要員の節減等のため、地域暖冷房施設の設置が望ましく、需要が高密度に集中する都市地区においては、暖冷房施設を、その周辺市街地等においては、暖房および給湯施設を整備するものとする。
- 用排水施設
(イ)上水道
上水道計画は、研究学園地区に立地する研究教育機関の予定需要量、および新たに定着を予定する人口の生活用水量の予測に対応して、県が用水供給事業を、筑南水道企業団が水道事業を行なう体制をそれぞれ確立し、全体計画として霞ヶ浦の表流水および地下水を水源とする給水規模一日最大10万m3の施設を整備を図る。
なお、昭和48年度より地下水による一部給水開始を行なう。
このため、取水塔を美浦村地先に建設し、これより土浦市大岩田地区に新設する浄水場に導水し、さらに延長約11kmの送水管をもって花室新住宅地区に設ける配水場に圧送し、ここから研究学園地区の全域に対して、配水を行なうものとし、都市建設の進展に応じ配水管を布設する。
(ロ)下水道
下水道計画は、流域下水道、公共下水道および都市下水路の整備によるものとし、雨水汚水の分流式により排水するものとする。
汚水については、研究学園地区の全域を対象に全体計画一日最大10万m3の施設を整備し、流末は竜ヶ崎、牛久都市計画区域を一体とした霞ヶ浦常南流域下水道計画により整備促進を図る。
雨水については、雨水管きよの布設により系統的に排除し、流末は花室都市下水路約6q、蓮沼都市下水路約2q、小野川都市下水路約3qの整備によるほか、本地区にかかる各河川の改修計画との一体的な関連において各排水区域ごとに系統的に排水する。
公共下水道および流域下水道の整備は、昭和50年より供用開始を目途に事業の促進を図る。
なお、流域下水道の終末処理場は利根町に設置し、処理水は利根川へ放流するものとする。
(ハ)河川
研究学園都市の排水については、下水道計画と関連を保ちつつ、研究学園地区を流域に含む河川について、総合的に改修計画の推進を図るものとし、花室川、蓮沼川、稲荷川および谷田川(牛久沼を含む。)の総延長45kmの区間を改修する。河川の改修にあたっては、全体計画にもとづく用地の先行的な取得に努めつつ、昭和50年の出水期までに暫定断面で施行の完成を図るものとする。
- 公園・緑地等施設
公園・緑地の整備は、住民の野外レクリェーション施設の確保、生活環境における緑地の保全、および都市美の育成等の観点から、総合的に土地利用計画に即応した公園緑地系統の確立を図ることを目途として、大公園として洞峰公園および赤塚公園の整備を推進するとともに、住宅地等の新市街地においては、新住宅市街地開発事業または土地区画整理事業の実施により、児童公園、近隣公園、その他の公園・緑地を適切な位置に配置し整備する。なお、これらの公園・緑地の整備にあたっては、都市形成の進展を考慮しつつ逐次内容の充実を図るものとするが、各公園・緑地が有効に利用されるよう望ましい施設水準の確保に努める。
- 教育施設
教育施設の整備は小学校、中学校、高等学校および幼稚園を本都市の特性を十分考慮したうえ住宅団地の配置、住区の構成等に適合し、新たに増加する都市人口に対応して都市建設の進展に応じて整備するものとする。
このため、義務教育施設については、全体として小学校おおむね12校、中学校おおむね6校を新設する。また、これと合わせて,適宜既存の小・中学校の校区の再編成を図るとともに、必要に応じ既存校の増改築を促進する。
高等学校については、公私立高等学校おおむね4校を新設する。
幼稚園は研究学園地区の各住区に公私立おおむね12園を新設することを基本として整備を行なうものとする。
これらの教育施設の整備にあたっては、移転機関等職員の移転計画に対応して準備することとし、昭和49年度より、小学校1校、中学校1校、幼稚園1園を開校(園)する。また、校地、校舎、諸施設水準は研究学園都市にふさわしいものとなるよう十分考慮する。
また、通学路の安全確保については特に配慮するものとする。
- 社会教育・文化施設
社会教育・文化施設の整備は、住民に高水準の教育文化活動を可能ならしめるとともに、他地区住民との文化的交流等を図ることを考慮し、都心部および各地区において適正に所要施設の整備を進めるものとする。
このため、中心市街地区に中央公民館、図書館、博物館、文化施設、都市青年の家の整備を図る。
また、所要の地区公民館を整備するものとし、さらにこれと合わせて周辺開発地区においても必要に応じて既存の公民館の改築を図る。
また、スポーツ用施設の整備については、都市公園等に屋外運動場、屋内体育館、プール、その他の運動施設を計画的に整備する。
- 福祉厚生施設
福祉厚生施設の整備は、住民の保健および高水準の社会福祉の確保を目途として、本都市における生活に不安のないよう所要施設の整備を図るものとする。
このため、保育所については、当面既存の保育所を整備拡充して要保育児童に対する福祉の措置を図るほか、移転機関の移転計画に併せて、研究学園地区内に保育所をおおむね10園新設する。
また、児童厚生施設として児童館および児童遊園についても保育所と一体として整備を図るものとする。
医療施設については、筑波大学附属病院を昭和48年度より建設に着手するほか移転機関の移転計画に併せて必要な病床の整備を図るが、当面は近接の国立霞ヶ浦病院を中核とし、さらに近接のその他の医療機関を利用するものとする。これと合わせて一般診療所、および歯科診療所の開設にあたっては特段の努力をはらうものとし、地元医師会、歯科医師会の協力を得て各地区に適正な配置を図るものとする。
また保健所については、中心市街地に設置し、研究学園地区内の住民の健康管理、予防的集団検診等の推進を図ることとする。
- 流通・購買施設
(イ)流通施設
研究学園都市にかかる生鮮食料品卸売市場の整備については、茨城県卸売市場整備計画に沿い、地域流通の拠点として、土浦市を中心とする卸売市場の整備を図ることによって対応するとともに、研究学園都市の開発の規模および進展状況に応じて地域市場を配置していくことを考慮する。
(ロ)購買施設
住民の生活に必要な購買施設については、施設利用の頻度を考慮し、利用者の利便が確保されるよう、人口の移動に応じて計画的に整備し、必要かつ高度な購買需要を研究学園都市の内部において満たし得るよう、施設内容の多様化と高度化について十分な配慮をもとに、総合的に購買施設の整備を図る。
このため、食料品等の日常生活用品の小売店については、各住区におけるショッピングセンターを中核として整備するほか、耐久消費財、衣料、文化、趣味、娯楽等の各店舗については、総合ショッピングセンターを中心市街地に設置し、これを中核として高度の専門的な商店を誘導するものとし、都市発展の進度との関連において、住民の生活に支障のないようショッピングセンターの整備、充実を促進する。
なお、購買施設の経営主体等については、住宅・都市整備公団、茨城県、地元町村等の出資による研究学園都市センター開発株式会社(仮称)を設立し、中心市街地等における購買施設等の建設、運営等を行なうほか、それぞれの規模、内容および業種に応じて適正なものとなるよう配慮するものとする。
- 廃棄物処理施設
研究学園都市の処理施設の整備は、環境衛生の確保を図るため広域的な体系のもとに推進するものとする。
このため、ごみ処理については第1期計画として昭和48年度中に1日180トンの処理能力を有する焼却処理施設を1か所整備する。
火葬場および周辺開発地区を対象とするし尿処理施設については、各1か所整備するものとする。
- 行政サービス
(イ)消防署
研究学園都市は、多数の研究機関および高層建築が建設される関係上、火災等の災害の予防および被害を軽減するため広域的な見地から十分な消防体制を確立するものとする。
このため、中心市街地に消防本部および消防署を昭和50年度に新設するほか、周辺部に消防分署、消防出張所を5か所設置するものとする。
(ロ)警察施設
研究学園地区およびその周辺を管轄とする警察署を整備するとともに警察官派出所等の整備を図るものとする。
(ハ)その他の行政サービス施設
研究学園都市住民の行政需要に対処するため、裁判所、検察庁、法務局等の国の施設および地方公共団体の行政施設を都心の官公庁施設地区に再編成等により集中して整備するものとする。
- 住宅
研究学園地区内に設置する公務員宿舎の建設にあたっては、国立研究機関等の移転計画に対応して、研究学園都市にふさわしい宿舎の整備を計画的に進めるものとする。
このため、昭和45年度以来花室東部地区において、当面必要とする宿舎の建設を進めてきたが、今後の宿舎建設にあたっては、公務員宿舎が市街地形成の中核になることをかんがみ、極力緑を確保し、快適な住環境を保持し、あわせて都市機能および都市景観へ寄与を考慮した基本計画を策定し、これにもとづき、所要の宿舎を花室地区、妻木刈間地区、大角豆地区、手代木地区および小野崎地区に建設するものとする。
なお、宿舎の規模、質については、研究者の住居にふさわしいものとするため、書斎スペースを加味したゆとりのあるものとするとともに、地域暖房の採用についても積極的に考慮するものとする。
また、住棟タイプについては、世帯用としては3階建の中層住宅を、独身者用としては高層住宅をそれぞれ標準とするが、一部、庭付低層住宅をも考慮し、住区の位置、環境等を勘案してこれらを適宜配置するものとする。
公務員宿舎以外の住宅および住宅地についても統一のとれた計画とし、分譲住宅、分譲宅地についても考慮するものとする。