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河川局


は じ め に

 高度成長期の急速な都市化の進展と、それに伴う土地利用の高度化は、流域の水循環に影響を与えるとともに、身近な自然空間を消失させた。河川も、都市生活を確保するために緊急的に行われた浸水防止対策と生活排水の流入のため、極端なものは生物の棲みにくい単なるコンクリートの排水路となっていった。フェンスが張り巡らされ近づくことができなくなり、蓋がされ暗渠となってしまったものさえある。自動車の普及等に伴い、かつて栄えた船を利用した交通や輸送も衰退した。水道や家電製品の普及とともに、水汲みや洗濯等生活の上で川と直接接する機会も少なくなっていった。また、河川整備が進み、中小洪水による被害は少なくなり、かつて河川に抱いていた畏敬の念や恐怖心は希薄化し、地域の人々が受け継いできた水害に対する様々な物語や教訓が、忘れ去られていった。こうして、河川の存在は人々の意識から遠ざかっていった。

 河川は、多様な生物を育み、地域固有の生態系を支える自然公物であるとともに、「地域共有の公共財産」であり、河川管理者のみならず地域住民自らが流域における活動の中で、守り育てていくものである。近年、河川や下水道の整備により、かつての臭く汚い川、雨のたびに氾濫する厄介な川が改善され、健全な水循環の回復が図られるとともに、身近な自然が感じられる空間として川を地域づくりに活かそうとする機運が急速に高まっている。よりよい川を実現するという理念のもと、地域住民と行政が「川は地域共有の公共財産」であるという共通認識をもち、連携していくことが不可欠である。

 河川整備においては、地方公共団体及び地域住民等の意見が反映され、地域の個性が十分に活かされることが大切であるとの認識のもと、平成9年に河川法が改正され、河川整備計画の策定に当たっての地域住民等の意見の反映手続きが法制化された。しかし、川が「地域共有の公共財産」として成熟していくためには、河川整備計画策定手続きにおける住民意見の反映のみならず、日頃からの積極的な川との関わりが重要である。

 近年、地域住民の市民活動への参加意欲の高まりや、個性豊かな自立型地域社会の形成の機運の高まり等を受けて、市民団体等の活動に対する社会的期待が高まっている。河川においても、環境保全活動、学校教育を含めた学習活動、川を活かしたまちづくり活動等、様々な分野において多くの市民団体等が活動を行うようになってきている。

 これらの活動は、河川に関わる幅広い分野において地域住民が参加するきっかけとなるものであり、川に参加する方法そのものでもある。また、市民団体等と河川行政がこのような機会を通じて一層連携を強化していくことにより、活発な市民活動が展開されるとともに、地域固有の豊富な知識等に基づいた河川行政への提案等も期待できる。そうしたことから、河川管理者が責任を持たざるを得ないものは別にして、河川管理上の役割の一部を市民団体等が分担することも視野に入れる必要がある。市民団体等の活動は、専門分野を持つ大学や民間企業と異なり、一般的には個々人の情熱をもとに自主的に参加するというアマチュアリズムが基礎となっている。それゆえに、このような活動と河川行政が連携することにより、より多くの人々が河川との関わりを持つようになることが期待される。

 河川行政は、治水、利水、環境の調和を保ちつつ、市民団体等と連携した取り組みを積極的に行うべき時期にきていると言える。このため、河川に関するどのような場面で、どのような役割分担の下、どのような内容で市民団体等と連携した取り組みを進めていけばよいかということに関して、具体的に検討し、実現していくことが必要となっている。

 なお、これまでも、地域住民は、水防団、自治会、漁業協同組合など、様々な団体活動を通じて川に深く関わってきており、これらの団体も極めて重要な役割を果たしているが、本答申では、市民団体等との連携のあり方について明確にする必要があるため、あえて市民団体等にのみ着目して提言することとする。

 ただし、市民団体等及びその活動、さらには河川行政の対応も、現在進展の途上にあるため、市民団体等との連携のあり方について、ここで全てを結論づけることは不可能である。むしろ、本答申を市民団体等との連携の出発点と捉え、現時点で考えられる連携のあり方について整理し、地域の特性や実状に応じた多様な連携形態を模索しながら、試行的にでも実行してみることが望ましい。連携のあり方については、今後多くの実績の積み重ねにより、さらに検討していくことが必要である。

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