ホーム >> 政策・仕事  >> 河川トップ  >> 記者発表  >> 過去情報

河川局

Topics
記者発表
湧別川・菊池川・尻別川・小瀬川・小丸川・久慈川・仁淀川水系
に係る河川整備基本方針の策定について


【同時記者発表関係機関】
北海道開発局、関東地方整備局、中国地方整備局、四国地方整備局、九州地方整備局、福島県、茨城県、栃木県、広島県、山口県、高知県、愛媛県、熊本県、宮崎県
平成20年3月25日
国土交通省河川局

 標記の7水系の河川整備基本方針の策定につきましては、河川法第16条第3項に基づき、国土交通大臣から社会資本整備審議会会長へ意見を求め、同審議会から河川分科会に付託されました。その後、社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会において審議を行ったのち、社会資本整備審議会河川分科会の審議を経て平成20年3月26日付けで、河川整備基本方針を策定し、同日付で官報に公表されることとなりました。



<湧別川・菊池川・尻別川・小瀬川・小丸川・久慈川・仁淀川の河川整備基本方針の概要 >

 平成9年に河川法が改正され、豊かでうるおいのある質の高い国民生活や良好な環境を求める国民のニーズに的確に応えるため、制度を見直し、それまでの工事実施基本計画に代え、新たに、河川整備の基本となるべき方針に関する事項『河川整備基本方針』と具体的な河川整備に関する事項『河川整備計画』に区分されました。
 河川整備基本方針は、各水系における治水、利水、環境等に関する河川管理の長期的な方針を、総合的に定めるものであり、河川整備の基本となるべき事項等を定めます。   今回策定した7水系についても、各水系の地形、降雨、環境等の特性を踏まえた治水・利水・環境に関する整備の方向性を示しています。

【河川整備基本方針・河川整備計画について】
https://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/index.html
【社会資本整備審議会河川分科会について】
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/shaseishin/kasenbunkakai/bunkakai/index.html

 今回策定する7水系の河川整備基本方針の主な特徴的内容は次のとおりです。


●湧別川(ゆうべつがわ)水系(流域面積:1,480km2、幹線流路延長:87km)

 湧別川は、その源を北海道紋別(もんべつ)郡遠軽(えんがる)町の天狗(てんぐ)岳(標高1,553m)に発し、山間部の遠軽町白滝(しらたき)を流れ、丸瀬布(まるせっぷ)で武利(むり)川が合流し、遠軽市街において平野部に出て生田原(いくたはら)川を合わせ、湧別町においてオホーツク海に注いでいる。
 その流域は、遠軽町、上湧別町、湧別町の3町からなり、オホーツク圏における社会・経済・文化の基盤をなしている。酪農を中心とした農業、水産業が盛んで、特に河口の湧別町は全国有数のホタテの産地となっている。また、JR石北(せきほく)本線、国道238号、242号、333号等の基幹交通施設に加え、旭川(あさひかわ)紋別自動車道が整備中であり、オホーツク圏と道北・道央圏を結ぶ物資輸送や観光旅客輸送に大きな役割を果たし、交通の要衝となっている。
 さらに、河岸にはヤチダモ、ハルニレ等の河畔林が豊かに繁茂しており、サケ、カラフトマス等が遡上し、これらの増殖に関して重要な位置を占める他、サクラマス(ヤマメ)等の渓流釣りに多くの人が訪れるなど、豊かな自然環境に恵まれている。

 湧別川水系においては近年、平成10年9月洪水や平成18年10月洪水等で被害が発生している。このような状況を踏まえ、河道や沿川の状況等を考慮しつつ、水系全体としてバランスよく治水安全度を向上させる。そのため流域の豊かな自然環境や地域の風土、歴史等に配慮しながら、堤防の新設・拡築及び河道の掘削等を行って河積を増大させるとともに、水衝部には護岸等を整備し、計画規模の洪水を安全に流下させる。また、堤防の詳細点検結果を踏まえ、堤防の安全性確保のための対策を実施する。なお、河道掘削による河積の確保や護岸等の整備にあたっては、長期的な安定が図られるような河道の維持、多様な動植物の生息・生育・繁殖する良好な環境、河川景観等の保全、河川利用に配慮する。
 河川環境の整備と保全に関しては、これまでの流域の人々と湧別川の関わりを考慮しつつ、流域全体の視点に立って、健全な水・物質循環系の構築を目指し、源流部から河口に至る変化に富んだ川の流れに育まれ、多様な動植物の生息・生育・繁殖する湧別川の豊かな自然環境を良好な状態で次世代に引き継ぐよう、その保全に努める。
 動植物の生息・生育・繁殖地の保全については、多様な動植物を育む瀬・淵やワンド、河岸、河畔林等の定期的なモニタリングを行いながら、生物の生活史を支える環境を確保できるよう、治水面や周辺の土地利用との整合を図りつつ、良好な自然環境の保全に努める。また、サケ、サクラマス、カラフトマス等の魚類の遡上環境や産卵床の保全等に努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 湧別川の基本高水ピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点開盛において1,800m3/sとし、これを河道に配分する。

 

●菊池川(きくちがわ)水系 (流域面積:996km2、幹線流路延長:71km)

 菊池川は、その源を熊本県阿蘇市深葉(ふかば)(標高1,041m)に発し、迫間(はざま)川、合志(こうし)川、岩野(いわの)川等を合わせながら、菊鹿(きくろく)盆地を貫流し、山間部を流下したあと、玉名(たまな)平野に出て木葉(このは)川、繁根木(はねぎ)川を合わせ、有明海(ありあけかい)に注いでいる。
 その流域は、熊本県北部に位置し、関係市町数6市6町からなり、上流部に菊池市、中流部に山鹿(やまが)市、下流部に玉名市といった主要都市を有しており、沿川には、九州縦貫自動車道をはじめ、国道3号、JR鹿児島本線等の基幹交通施設に加え、九州新幹線が整備中であり、交通の要衝となっており、菊池温泉をはじめ流域内に数多くの温泉地が点在するなど豊かな観光資源に恵まれ、この地域の社会・経済・文化の基盤を成している。また、アユの産卵場となる瀬や、国の天然記念物に指定されている「菊池川のチスジノリ発生地」等、良好な河川環境を有している。
 菊池川流域は山鹿市街地が形成されている菊鹿盆地に急勾配の支川が集まり、洪水氾濫しやすいことに加え、玉名平野や菊鹿盆地等に人口・資産が集積している。このような中、観測史上最大となった平成2年7月、昭和57年7月に代表される洪水が発生し、度々甚大な被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、菊池川水系ではそれぞれの地域特性にあった治水対策を講じることにより、水系全体として本支川、上下流のバランスよく治水安全度を向上させるために、流域の豊かな河川環境等や地域の風土・歴史等に配慮しながら、樹木伐開、堤防の新設、拡築、河道掘削等により河積を増大させるとともに護岸等を整備するとともに、既設洪水調節施設及び既設洪水調節施設の整備により、計画規模の洪水を安全に流下させる。
 河道掘削等による河積の確保にあたっては、河道の維持、アユやチスジノリに代表される多様な動植物の生息・生育・繁殖する良好な河川環境、河川景観等の保全、河川利用等に配慮する。
 河川環境の整備と保全に関しては、これまでの流域の人々と菊池川との歴史的・文化的な関わりを踏まえ、菊池川の清らかな流れと豊かな自然が織りなす良好な河川景観を保全するとともに、多様な動植物が生息・生育・繁殖する自然環境を保全及び創出し、次世代に引き継ぐよう努める。特に、下流部における砂州については、かつてヤマトシジミ漁が盛んに行われ、住民の憩いの場としても利用されていたことから、地域住民や学識者と連携・協働しながら再生を図る。実施にあたっては、地域住民や関係機関と連携しながら地域づくりにも資する川づくりを推進する。また、堤防や樋管等の設置により、河川と堤内地の水路等との間に段差が生じている箇所については、地域住民及び関係機関と連携・調整を図りながら、水域の縦横断的な連続性を確保し、エコロジカルネットワークの形成に努める。
 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、広域的かつ合理的な水利用の促進を図るなど、今後とも関係機関と連携して必要な流量の確保に努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 菊池川の基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点玉名で4,500m3/sとする。このうち洪水調節施設により700m3/sを調節して、河道への配分流量を3,800m3/sとする。

 

●尻別川(しりべつがわ)水系(流域面積:1,640km2、幹線流路延長:126km)

 尻別川は、その源を支笏湖(しこつこ)流域との分水界をなすフレ岳(標高1,046m)西方に発し、喜茂別(きもべつ)川等の支川を合流後、羊蹄山(ようていざん)(標高1,893m)の東側から北西に流れを転じ倶知安(くっちゃん)町を経由し山麓を迂回しながら真狩(まっかり)川等の支川を合わせ、蘭越(らんこし)町磯谷(いそや)で日本海に注いでいる。
 その流域は、北海道後志(しりべし)管内の1市6町2村からなり、北海道有数の農業地帯として発展してきた。陸上交通としては、JR函館本線、国道5号、229号、230号、276号、393号等の基幹交通網が広がるなど、札幌・小樽や胆振(いぶり)地域を結ぶ交通の要衝となっている。また、羊蹄山・ニセコ連峰を背景に豊かな自然とすぐれた自然景観に恵まれていること等から、北海道でも有数のリゾート地帯となっており、近年では日本国内はもとより外国からのスキー客も急増している。さらに、イトウ、アユが共に生息する貴重な河川であり、サケ、サクラマス等も生息している。京極(きょうごく)町の「ふきだし公園」では、豊かな湧水が昭和60年に環境庁から「名水百選」に選ばれるなど、豊かな自然環境に恵まれている。

 尻別川水系においては、昭和36年、37年と既定計画に相当する洪水に見舞われ、築堤、捷水路、護岸工事等の改修工事を実施してきたが、昭和50年代に入り計画規模に匹敵する洪水が発生して大被害を被った。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、堤防の新設、拡築及び河道の掘削等による河積を増大させ、洪水調節施設を整備し、計画規模の洪水を安全に流下させる。また、河道掘削等による河積の確保にあたっては、河道の維持、河川環境等に配慮する。
 河川環境の整備と保全に関しては、尻別川が育んできた多様な生物や良好な景観等を、流域の人々のかけがえのない財産として次世代に継承するよう努める。尻別川を特徴づける自然環境である羊蹄山等を背景とした優れた河川環境の保全や魚介類の生息・繁殖環境の保全等に努める。人と河川との豊かなふれあいの確保については、関係自治体や地域住民のニーズを踏まえるとともに、多くの人々が川に親しめる空間となるよう、関係機関や地域住民等と一体となって取り組む。
 特に、水質については、平成11年〜平成18年の間に7度水質ランキング日本一になるなど、良好な水質を維持していることから、河川の利用状況、沿川地域の水利用状況、現状の環境を考慮し、下水道等の関連事業、関係機関との連携・調整、地域住民との連携を図りながら、良好な水質の保全に努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点名駒において3,300m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により300m3/sを調節して、河道への配分流量を3,000m3/sとする。

 

●小瀬川(おぜがわ)水系 (流域面積:340km2、幹川流路延長:59km)

 小瀬川は、広島県と山口県の県境に位置し、その源を中国山地の鬼ケ城山(おにがじょうやま)(1,031m)、羅漢山(らかんざん)(1,109m)などを擁する連山の広島県廿日市市(はつかいちし)佐伯町(さいきちょう)飯山(いいのやま)に発し、広島・山口県の県境を南流し、玖島(くしま)川を合わせ、山口県玖珂郡(くがぐん)和木町(わきちょう)と広島県大竹市の工業地帯を経て、瀬戸内海に注いでいる。
 流域は、広島県の廿日市市、大竹市、山口県の岩国市、和木町の3市1町からなっており、かつてその豊富で清らかな水を活かした和紙産業が盛んであった。近年では、その河口部において全国のコンビナートの先駆けとなる「大竹・岩国石油化学コンビナート」が発展し、瀬戸内工業地域の一部を形成している。
 平成17年9月には、基本高水のピーク流量にせまる洪水が発生し、弥栄ダム上流域において河岸侵食による建物の損壊や道路崩壊等の大きな被害が発生した。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、小瀬川の豊かな自然環境に配慮しながら、堤防の新設や河道掘削等により河積を増大させるとともに、流域内の既存施設の有効活用を図り、計画規模の洪水を安全に流下させる。また、洪水等による被害を極力抑えるため、総合的な被害軽減対策を関係機関や地域住民等と連携して推進する。
 河川水の利用については、戦後の高度経済成長期の工場進出により、広島・山口両県の間で水利権が対立し、昭和33年に建設大臣により水利調整が行われた歴史がある。また、流域を越えて広島県西部や山口県南東部の周防大島まで広域的に工業用水・上水道用水が供給されている。今後も広域的かつ合理的な水利用を図るなど、関係機関と連携して必要な流量の確保に努める。
 小瀬川と流域の人々との歴史的・文化的なつながりを踏まえ、人々にうるおいとやすらぎを感じさせる豊かな自然と緑が織りなす良好な河川景観、清らかな水の流れの保全を図るとともに、多様な動植物が生息・生育・繁殖する豊かな自然環境を次世代に引き継ぐよう努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 小瀬川の基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点両国橋において3,400m3/sとし、河道と洪水調節施設への配分についても工事実施基本計画と同様に1,000m3/s、2,400m3/sとした。

 

●小丸川(おまるがわ)水系 (流域面積:474km2、幹川流路延長:75km)

 小丸川は、その源を宮崎県東臼杵(ひがしうすき)郡椎葉(しいば)村三方岳(さんぽうだけ)(標高1,479m)に発し、山間部を流下し、渡川(どがわ)等を合わせながら木城町(きじょうちょう)の平野部を貫流する。その後、下流部において切原川(きりばるがわ)、宮田川(みやたがわ)を合わせ日向灘に注いでいる。
 その流域は、宮崎県の中央部に位置し、関係市町村数は2市4町1村からなり、沿川には北九州市と鹿児島市を結ぶ東九州地域唯一の主要幹線である国道10号やJR日豊本線等の基幹交通施設に加え、東九州自動車道が整備中であり、交通の要衝となっている。また、上流の山間部では林業を中心とした産業のほか、数々の神話や豊かな自然環境を活かした観光産業が盛んで、中下流の平野部では畜産を中心とした農業や酒造業などが営まれ、近年においては化学工場が進出するなど、この地域の社会・経済・文化の基盤を成している。
 小丸川は、九州有数の急流河川であり、急流部を一気に流下した洪水がひとたび氾濫すると甚大な被害が発生する。このような中、平成9年9月、同16年8月、同17年9月に既定計画の基本高水ピーク流量を上回る洪水が頻発し、特に平成17年9月には観測史上最大の洪水が記録され、浸水被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、小丸川水系ではそれぞれの地域特性にあった治水対策を講じ、水系全体としてバランスよく治水安全度を向上させるために、流域の豊かな自然環境や地域の風土・歴史等に配慮しながら、樹木伐開、堤防の拡築、河道掘削等により河積を増大させるとともに護岸等の整備を図るほか、既設洪水調節施設の有効活用により、計画規模の洪水を安全に流下させる。
 河道掘削等による河積の確保にあたっては、河道内に点在する湿地の水位維持に配慮するなど、河道の維持、多様な動植物の生息・生育・繁殖する良好な河川環境、河川景観等の保全、河川利用等に配慮する。
 河川環境の整備と保全に関しては、これまでの地域の人々と小丸川との関わりを考慮しつつ、小丸川の清らかな流れと豊かな自然が織りなす良好な河川景観の保全を図るとともに、重要種を含む多様な動植物が生息・生育・繁殖する豊かな自然環境を保全及び整備し、次世代に引き継ぐよう努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
小丸川の基本高水のピーク流量は、基準地点高城で5,700m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により1000m3/sを調節して、河道への配分流量を4,700m3/sとする。

 

●久慈川(くじがわ)水系(流域面積:1,490km2、幹川流路延長:124km)

 久慈川は、その源を福島県・栃木県・茨城県の境界に位置する八溝山(やみぞさん)(標高1,022m)に発し、八溝山地と阿武隈山地(あぶくまさんち)との間の谷底平野を流れ、山間狭窄部の奥久慈渓谷(おくくじけいこく)を経て、沖積平地を下り、山田川(やまだがわ)、里川(さとがわ)等を合わせ太平洋に注いでいる。
 その流域は、南北に長く、福島県・栃木県・茨城県の3県の5市5町2村に含まれ、 下流部には、中核都市である常陸太田市(ひたちおおたし)、工業地帯や国際貿易港を有する日立市(ひたちし)や日本で初めて原子力発電所が建設されている東海村(とうかいむら)などの主要都市を有している。また、久慈川流域には奥久慈県立自然公園(福島県・茨城県)等、5つの県立自然公園が指定されており、豊かな自然環に恵まれているとともに、袋田(ふくろだ)の滝や奥久慈渓谷などの観光資源に恵まれ、数多くの観光客を集めている。さらに久慈川の水利用は上流部では主に農業用水、発電用水として、中下流部では農業用水、水道用水および工業用水等として利用されていることから、本水系の治水・利水・環境についての意義は極めて大きい。
 久慈川の治水事業は、大正9年10月洪水等の度重なる洪水において甚大な被害を受けたことを契機に、昭和13年、直轄河川改修事業に着手したことにはじまる。以降、本支川整備を進めているが、近年では昭和61年、平成3年、平成10年及び平成11年の洪水で家屋浸水の被害を受けている。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、流域の豊かな自然環境、河川景観の保全等に十分に配慮しながら、堤防の新設・引堤・拡築、河道掘削、樹木伐開等により河積を増大させるとともに水衝部等には護岸等の整備を図るほか、関係機関と調整・連携を図りながら既設横断工作物の改築を実施する。さらに堤防の詳細な点検を行い、安全度の低い区間では堤防の安全性確保のための対策を実施し、計画規模の洪水を安全に流下させる。また、治水対策を早期かつ効率的に進めるため、連続した堤防による洪水防御だけでなく、輪中堤や宅地の嵩上げ、二線堤等の対策を検討の上、実施する。
 河道内の樹木については、樹木による阻害が洪水位に与える影響を十分に把握し、河川環境の保全に配慮しつつ、洪水の安全な流下を図るために計画的な伐開等の適正な管理を実施する。また、水害防備林として残す樹林については、その治水機能や景観要素としての価値等を考慮し、流水の阻害をきたさないよう地域と協働した適切な管理を実施する。
 河川環境の整備と保全に関しては、これまでの歴史と文化が育まれる中での流域の人々と久慈川との関わりを考慮しつつ、久慈川の流れが生み出した良好な自然環境と河畔林などの河川景観を、治水面との調和を図りながら保全に努めるなど、多様な動植物の生息・生育・繁殖する豊かな自然環境を次世代に引き継ぐよう努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点山方で4,000m3/sとし、河道への配分流量についても4,000m3/sとした。

 

●仁淀川(によどがわ)水系(流域面積:1,560km2、幹川流路延長:124km)

 仁淀川は、愛媛県上浮穴郡(かみうけなぐん)久万高原町(くまこうげんちょう)の石鎚山(いしづちさん)(標高1,982m)に発し、久万高原町内の山間地を久万川等の支川を合わせつつ南西に流れ、その後、流れを東に変えて高知県に入り、上八川川(かみやかわがわ)等を合わせ蛇行しながら山間部を流下した後、いの町加田(かだ)付近で再び南東に向きを変え平地部に出て、日下川(くさかがわ)・宇治川(うじがわ)・波介川(はげがわ)を合わせ、太平洋に注いでいる。
 その流域は、愛媛県中央山岳部から高知県中部にまたがり、高知県土佐市、愛媛県久万高原町をはじめとする3市6町1村からなる。
 中上流域は、高知県越知町(おちちょう)付近でわずかに平地が開けるほかは山地で構成される地域で、石鎚国定公園、四国カルスト県立自然公園等に指定され、沿川には面河(おもご)渓谷、中津(なかつ)渓谷等の景勝地も存在するなど豊かな自然環境・景観に恵まれている。下流域には、支川沿等に細長く平地が形成され、土佐市・いの町等の主要な市街地が位置し、JR土讃線、高知自動車道、国道33号、国道56号等の基幹交通施設が横断する交通の要衝となっている。平地部では、温暖な気候を利用したハウス園芸による野菜栽培が盛んである。また、土佐市、いの町では、約1,000年前から行われていたといわれる高知県の伝統工芸品「土佐和紙」の製造が盛んである。このように、本水系の治水・利水・環境についての意義は大きい。
 仁淀川は、昭和38年8月洪水を契機に大渡(おおど)ダムの建設や、昭和50年8月洪水を契機とした日下川放水路、早稲川(さいながわ)放水路、波介川水門等の整備を、また平成5年11月洪水等を契機に新宇治川放水路等の整備を、さらに現在では波介川河口導流事業を推進しているが、低平地特有の内水被害も併せて、未だ治水対策が課題となっている。
 このような状況を踏まえ、水系全体としてバランスよく治水安全度を向上させるため、流域の自然豊かな河川環境、河川景観の保全や河川利用の促進等にも十分に配慮しながら、堤防の新設・引堤・拡築、河道掘削、樹木伐開等により河積を増大させるとともに、流域内の既存洪水調節施設の有効活用等により洪水調節機能の向上を図るとともに、洪水調節施設の整備により計画規模の洪水を安全に流下させる。また堤防漏水・侵食による被災と復旧を繰り返してきた経緯を踏まえ、堤防の詳細な点検を行い、安全度の低い堤防区間については、漏水対策や高水敷の造成、護岸整備等の必要な対策を実施する。さらに近年でも支川の氾濫等による浸水被害が頻発していることを踏まえ、関係機関と連携・調整を図りつつ、河道改修や遊水地、放水路、河口導流、排水機場等、各支川の河道特性、地形特性、氾濫形態等を考慮した有効な方式による治水対策を推進する。洪水等による被害を極力抑えるため、総合的な被害軽減対策を自助・共助・公助等の精神のもと、関係機関や地域住民等と連携して推進する。
 河川環境の整備と保全に関しては、これまでの流域の人々と仁淀川との歴史的・文化的な関わりをふまえ、自然豊かな河川環境、良質な水質、豊かな水面と砂州、そして周辺の緑が織りなす美しい河川景観を保つとともに、川漁、水遊び、キャンプ等の河川利用の場として流域内外の人々から親しまれる仁淀川の個性と魅力を次世代に引き継ぐよう努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点伊野で17,000m3/sとし、河道と洪水調節施設への配分についても工事実施基本計画と同様に流域内の洪水調節施設により3,000m3/sを調節し、河道への配分流量を14,000m3/sとする。

 


<河川整備基本方針の概要>


<河川整備基本方針>

 


問 い 合 わ せ 先
【総括・菊池川・小丸川・仁淀川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川計画調整室 課長補佐 矢崎 剛吉
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8445 内線 35372
【湧別川・尻別川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川情報対策室 課長補佐 笠井 雅広
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8446 内線 35392
【小瀬川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川情報対策室 課長補佐 安原 達
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8446 内線 35382
【久慈川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川情報対策室 企画専門官 小島 優
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8446 内線 35362


目次に戻る

Copyright© 2007 MLIT Japan. All Rights Reserved.

国土交通省 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3

アクセス・地図(代表電話)03-5253-8111