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河川局

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記者発表

平成10年全国一級河川の水質現況(概要)



平成11年7月30日
河川局河川環境課

 建設省は昭和33年から全国一級河川の水質調査を実施し、昭和47年からその結果を公表している。本資料は、平成10年(暦年)における、全国一級河川(109水系)の水質調査結果の概要をとりまとめたものである。

1.河川の流量

 ○

平成10年の年間流出量は全国的に平年を上回る
  • 河川の水質は流量の大小によって左右されるが、平成10年の一級河川の年間流出量は、全国的に前年を上回り、最近10ヶ年(昭和63年〜平成9年)平均との比較でも大幅に上回った。全国の一級河川の基準地点における年間総流出量の合計値は、平成9年と比較して12%増、最近10ヶ年平均と比較して16%増となっている。

表−1 一級河川の流量状況
 

  基準地点における
年間総流出量の合計
基準地点における
※低水流量の合計
備考
平成 10年 (A) 2,972億m3 4,161m3/s 平成10年の年間
総流出量及び低
水流量の合計値
は推定値。
平成 9年 (B) 2,659億m3 3,633m3/s
最近10ヵ年平均(C) 2,559億m3 3,669m3/s
(A)/(B)×100% 112% 115%
(A)/(C)×100% 116% 113%

※低水流量:一年を通じて275日はこれを下らない流量



2.河川の水質

(1)水質調査地点

 ○

調査地点は一級河川の直轄管理区間約10kmに1ヶ所
  • 一級河川の直轄管理区間の河川延長約10,500km(H10.4現在)に対して水質調査地点は1,094地点設けており、平均的には河川延長約10kmに1ヶ所の割合で水質調査を実施している。

(2)水質調査結果

 ○

平成10年に環境基準を満足している地点の割合は、昨年より7%上昇し、過去最高の87%に到達
  • 生活環境の保全に関する環境基準の項目のうち、有機汚濁の代表的な水質指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)及びCOD(化学的酸素要求量)をみると、平成10年に環境基準を満足している地点の割合は前年より7%上昇し、過去最高の87%に達した。
  • その要因としては、平成10年の流量が前年に比較して全国的に増加し、年間総流出量が平年をかなり上回ったことが挙げられるが、図−1を見ればわかるように、平成10年に環境基準を満足している地点の割合は、過去の同程度の年間総流出量の年と比較しても明らかに上昇しており、汚濁負荷の削減による水質改善が着実に進んでいると考えられる。

図−1 一級河川において環境基準を満足している地点の割合
と年間総流出量の経年変化(全国)

 


環境基準を満足している地点の割合は、関東、近畿で大幅に上昇
  • 地方別にみると、北陸、中部、九州、東北の順で環境基準を満足している地点の割合が大きく、中国、関東でその割合が小さい。
  • 前年に比べると全般的に割合が大きくなっており、特に関東では15%、近畿では9%と大幅に上昇している。なお、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、九州では過去最高の割合を示した。

図−2 一級河川において環境基準を満足している地点の地方別割合

図−3 一級河川における環境基準を満足している地点の地方別割合の経年変化

 


BOD75%値は全体の91%が3mg/l以下の良好な水質
  • 平成10年の直轄管理区間における河川の水質は、全調査地点の91%がBOD75%値で3mg/l以下となっており、最近10ヶ年のうち最も良好な水質となっている。
  • また、BOD75%値が10mg/lを超える汚濁の著しい地点は、全体の0.4%にまで減少してきている。

図−4 BOD75%値ランク別割合(河川)


図−5 BOD75%値ランク別割合の経年変化(河川)

 


主要河川は良好な水質を維持
  • 各地方を代表する主要河川は、近年良好な水質を維持しており、平成10年はいずれもBOD75%値で2mg/l以下となっている。

図−6(1) 主要河川の代表地点におけるBOD75%値の経年変化


図−6(2) 主要河川の代表地点におけるBOD75%値の経年変化


図−6(3) 主要河川の代表地点におけるBOD75%値の経年変化


 ○

大都市部の河川でも徐々に水質の良化が進展
  • 大和川等の大都市部の河川では、近年かなり水質が良化してきている。しかし、BOD75%値でみると、10mg/lを超える河川も依然としてみられる。

図−7 主要都市河川代表地点におけるBOD75%値の経年変化

 


湖沼等におけるCOD75%値はほぼ横這い
    湖沼等における水質は、COD75%値が3.0mg/l以下の調査値点の割合はほぼ横這いであり、水質改善の兆しは見られない。

図−8(1) COD75%値ランク別割合の経年変化(湖沼等)


  • 霞ヶ浦の湖心地点では、平成10年に総窒素が大きく悪化し、CODはほぼ横這いの傾向を示している。

図−8(2) 主要湖沼代表地点における水質の経年変化
霞ヶ浦 湖心(湖沼A,III)


  • 琵琶湖の北湖安曇川沖中央地点では、平成10年に総リンは環境基準を満足しているが、やや悪化した。CODはやや悪化の傾向にある。

図−8(3) 主要湖沼代表地点における水質の経年変化
琵琶湖(北湖) 安曇川沖中央(湖沼AA,II)

  • 琵琶湖の南湖大宮川沖中央では、CODはほぼ横這いの傾向を示している。

図−8(4) 主要湖沼代表地点における水質の経年変化
琵琶湖(南湖) 大宮川沖中央(湖沼AA,II)


  • 中海の湖心では、総窒素はやや良化、総リンはほぼ横這いの傾向にある。CODは赤潮の発生があった平成7年との比較では良化しているが、平成10年はやや悪化の傾向を示している。

図−8(5) 主要湖沼代表地点における水質の経年変化
中海 湖心(湖沼A,III)


  • 穴道湖のNo.3(湖心)では、平成10年は総窒素は良化しているが、CODはやや悪化の傾向を示している。

図−8(6) 主要湖沼代表地点における水質の経年変化
宍道湖NO.3 湖心(湖沼A,III)


 ○


BOD平均値からみた水質ベスト1は黒部川と安倍川

大和川の水質はかなり改善されたが、ワースト1に

  • 全国の一級河川の水質として、水質調査地点が2地点以上の一級河川(168河川)を対象に、BODの年間平均値の地点平均によりとりまとめた。なお、水質のベスト1は黒部川と安倍川であった。

表−2 BOD平均値による河川の水質状況(ベスト5)

  順位 河川名 都道府県名 地点数 BOD平均値 BOD75%値
平成10年 黒部川(クロベガワ) 富山 3 0.3mg/l 0.5mg/l
安倍川(アベカワ) 静岡 2 0.3 0.4
鵡川 (ムカワ) 北海道 2 0.4 0.5
札内川(サツナイガワ) 北海道 2 0.4 0.4
鮭川 (サケガワ) 山形 2 0.4 0.5
姫川 (ヒメカワ) 新潟 2 0.4 0.5
大井川(オオイガワ) 静岡 3 0.4 0.4
豊川 (トヨガワ) 愛知 5 0.4 0.6
北川 (キタガワ) 福井 3 0.4 0.6

  順位 河 川 名 都道府県名 地点数 BOD平均値 BOD75%値
平成9年 札内川 (サツナイガワ) 北海道 2 0.3mg/l 0.4mg/l
鵡川  (ムカワ) 北海道 2 0.4 0.5
黒部川 (クロベガワ) 富山 3 0.4 0.4
尻別川 (シリベツガワ) 北海道 2 0.5 0.6
沙流川 (サルガワ) 北海道 3 0.5 0.6
寒河江川(サガエガワ) 山形 2 0.5 0.7
鮭川  (サケガワ) 山形 2 0.5 0.7
胆沢川 (イサワガワ) 岩手 3 0.5 0.6
豊川  (トヨガワ) 愛知 5 0.5 0.7
北川  (キタガワ) 福井 3 0.5 0.5


  • 水質の悪い河川は、昨年と同じ構成であるが、その水質はかなり良化しており、綾瀬川、中川、猪名川では、全ての調査地点で環境基準を満足した。なお、ワースト1は大和川であった。

    表−3 BOD平均値による河川の水質状況(ワースト5)

      順位 河 川 名 都道府県名 地点数 環境基準
    満足地点数
    BOD平均値 BOD75%値
    平成10年 大和川(ヤマトガワ) 大阪・奈良 8 2 5.8mg/l 7.7mg/l
    鶴見川(ツルミガワ) 神奈川 4 2 5.6 6.8
    綾瀬川(アヤセガワ) 埼玉・東京 3 3 5.5 7.1
    中川 (ナカガワ) 埼玉・東京 5 5 3.6 4.2
    猪名川(イナガワ) 大阪・兵庫 3 3 2.8 3.4

      順位 河 川 名 都道府県名 地点数 環境基準
    満足地点数
    BOD平均値 BOD75%値
    平成9年 綾瀬川(アヤセガワ) 埼玉・東京 3 0 9.1mg/l 11.7mg/l
    大和川(ヤマトガワ) 大阪・奈良 8 0 8.7 10.9
    鶴見川(ツルミガワ) 神奈川 4 3 5.8 8.0
    中川 (ナカガワ) 埼玉・東京 5 2 4.7 5.4
    猪名川(イナガワ) 大阪・兵庫 3 2 4.6 6.2
 


健康項目はほぼ基準値を満足
  • 人の健康の保護に関する環境基準は、公共用水域に一律に適用されるものとして、従来23項目が定められていたが、平成11年2月に3項目追加され、現在26項目となっている。
  • 平成10年の人の健康の保護に関する項目の調査は、全国の一級河川918地点で総検体数54,024検体について実施した。その結果、砒素が2地点、鉛が1地点で環境基準を超過した以外は全て環境基準を満足している。
 


要監視項目はほぼ指針値を満足
  • 「要監視項目」は、人の健康の保護に関連する物質ではあるが、公共用水水域における検出状況等からみて、現時点では直ちに環境基準健康項目とせず、引き続き知見の集積に努めるべきと判断されるもので、従来25項目が選定されていたが、このうち3項目が平成11年2月に環境基準に移行したことから、現在22項目について指針値が設定されている。
  • 平成10年の要監視項目の調査は、全国の一級河川588地点で総検体数16,022検体について実施した。その結果、ニッケルが1地点で指針値を超過した以外は、すべて指針値又は環境基準値を満足している。



3.水生生物調査

 


水生生物調査に小・中学生、高校生及び一般市民12,565人が参加
  • 小学生、中学生、高校生及び一般市民の参加を得て、昭和59年度から水生生物による水質調査を実施している。
  • 平成10年には、全国の一級河川のうち 106水系230河川の603地点を対象に 12,565人の参加を得て調査を実施した。これによると、水質が比較的良好であった地点は、81%であり、平成9年(80%)と同様な結果を得た。



4.水質事故の発生状況

 ○

水質事故は年々増加の傾向
  • 平成10年における一級河川の水質事故の発生件数は、516件であり、平成9年と比較して21%増加しており、年々増加の傾向を示している。
  • このうち上水道の取水停止に至った水質事故は32件あり、平成9年の14件に比べ大幅に増加した。
  • 水質事故の原因物質としては、重油、軽油などの油の流出が85%を占め、最も多い。
  • 自然現象による魚の浮上死等は、水質事故件数に含めていないが、平成10年は15件発生している。
  • なお、一級水系については、河川管理者と関係機関により構成される「水質汚濁防止連絡協議会」が全ての水系に設置されており、これらの水質事故等の発生時においては、速やかに情報の収集、通報、連絡を行うとともに、関係機関と連携のもとオイルフェンスの設置等により被害の拡大防止に努めている。

図−9 一級河川における水質事故発生件数の経年変化


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