海岸は、国民共有の財産として自由な使用が原則であり、さまざまなマリンスポーツやレクリエーションの場や、祭りや行事の場として、地域社会や文化を形成する場となってきた。この海岸について美しい景観等の利用環境を十分に確保し、次世代に継承していかなくてはならない。
海岸防災のための施設として設置された直立護岸や消波ブロック等は、背後地と海岸とのアクセスを分断し、海岸の利用環境を悪化させてきた。このような海岸においては、護岸の緩傾斜化やブロックの移設等の改良を積極的に行い、安全にアクセスできる環境を創出すべきである。また、海岸の利用環境として美しい景観は重要な要素となるため、新たに海岸保全施設を整備する際には、砂浜の保全・回復を主体として、潜堤、人工リーフなど人工物が見えない整備を進めるとともに、自然石の活用等によって、周辺景観を損なわない施設の選択・配置等にも配慮することが必要である。
洪水時等に河川から流出したり、台風時等に海域から海岸部に漂着する大量のゴミ等は、海岸の利用環境を大きく損なう。これらに適切に対処していくための仕組みづくりの検討も必要である。
最近頻発している油流出や放置船等への対応については、原因者にその除去を求めることを原則とすべきであるが、緊急的に対応するなんらかの仕組みが緊要であり、関係機関との連携を図りつつ適切に対処することができるようにすべきである。
各地の海岸では、施設等の汚損や自動車の乗り入れによる施設や砂浜の損傷、利用者等によるゴミの投棄など、無秩序な利用による環境の悪化が生じている。このような問題に対処するため、海岸の適正な利用を図るための一定の規制措置や、モラルの向上を図るための社会教育の充実等の検討も必要である。