水管理・国土保全

  

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天竜川の自然環境

多様な環境を有する天竜川
天竜川の流域には、中央・南アルプスの3,000m級の山々から湖、峡谷、平野、海岸までの多様な環境が存在しています。
天竜川の流域の自然環境は、水際から河岸段丘、森林までと多様性が保たれた自然豊かな流域です。環境の特徴としては、河川の土砂移動が多く環境のかく乱が激しいことが挙げられますが、近年は砂礫主体の河原が減少し、河道内の州に樹木が繁茂することにより州が固定化する状況も見られます。

 地質は複雑で、フォッサマグナの西縁をなす糸魚川-静岡構造線、中央構造線を始め数々の構造線、断層が走っています。糸魚川-静岡構造線の北東側の諏訪地方では、グリーンタフ地帯、中央構造線より西は領家帯、それより東は秩父帯等種々の地質構造が見られます。特に多くの構造線が集まる伊那谷は、古生代から新生代にかけての各時代の堆積層や様々な火成岩、変成岩が分布する急峻な地形のために災害が多い反面、多様な生物を育んできました。

 流域の自然環境は、水際から河岸段丘、森林まで多様性が保たれ、「河川水辺の国勢調査」における動植物の確認種数は、各分類のすべてが全国平均以上であり、多くの国立公園、国定公園、県立公園が存在する自然豊かな流域です。

 水質面では、夏には諏訪湖で発生したアオコが天竜川を流下し、伊那市付近まで川の水を緑色に染めていたこともありましたが、近年では諏訪湖の水質とともに改善されてきています。


上流部と南アルプス


中央構造線 北川露頭



上流部
レキ河原を原風景とする上流部の自然環境
上流部には、ツツザキヤマジノギク、ツメレンゲ、カワラニガナ、ミクリなど貴重な植物群が確認され、河川の自然環境の豊かさを象徴しているといえます。
 近年、ニホンジカが高山地帯や天竜川の西側にも分布を広げ、河川の樹林化とともに動物の移動経路となっているという側面もあります。
 河川の植物は、ハリエンジュ、アレチウリ、オオキンケイギク、シナダレスズメガヤなど、魚類ではバスなどの外来種が増加し、在来種の衰退の危険性も心配されています。
 河川(洪水)の営力を活かして、砂州を切り下げて洪水の冠水頻度を増やすことで樹林化を防ぎ河原固有の生態環境を保全する、天竜川の原風景である「レキ河原」再生に向けた自然再生事業も行っています。


ミクリ(長野県:絶滅危惧Ⅱ類)


オオキンケイギク(特定外来生物)



中下流部
中流部の急峻な露岩にはツメレンゲ、ヤシャゼンマイなどの貴重種が確認されており、河川沿いの山地は「天竜美林」と称されるスギ、ヒノキの植林に覆われています。
 下流部では、上流部から運ばれる土砂により、洪水のたびに環境の変化が大きいとことが特徴です。近年では砂礫主体の河原が減少し、河道内の州に樹木が繁茂したことから静水域が見られるようになってきました。そのため、砂礫地を営巣地とするコアジサシ、砂礫地に生育する植物を好むツマグロキチョウ、ミヤマシジミが見られる一方、静水域や湿地ではミクリやタコノアシ、ヤナギ樹林ではコムラサキなどの生息が確認されるようになりました。


コアジサシ(静岡県:絶滅危惧ⅠB類)


ミヤマシジミ(静岡県:準絶滅危惧)




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