第I部 人口の減少、少子高齢化の進展など人口構造の変化に対応した国土交通行政の展開 

(2)貯蓄や投資に与える影響

(貯蓄率の低下)

 国民経済計算によれば、我が国の貯蓄率は近年徐々に低下する傾向にあり、今や国際的にも突出して高い状況にはなっていない。家計調査の平均貯蓄率(貯蓄純増/可処分所得×100)を見ると、世帯主65歳以上の高齢者世帯の貯蓄率では、勤労者世帯の平均貯蓄率は高くなっている一方、世帯主が無職の世帯はマイナスの平均貯蓄率となっており、無職世帯が高齢者世帯の約平均7割を占めることから、高齢者世帯全体の平均貯蓄率はかなり低いものと考えられる。これは、退職した高齢者が貯蓄を取り崩して消費に当てることによるものであり、高齢者の増加は長期的には貯蓄率の低下要因になるものと考えられる。

 
図表I-2-3-9 総貯蓄率・家計貯蓄率の推移

総貯蓄率は、1990年度で33.9%、1995年度で28.8%、2001年度26.2%であり、徐々に低下している。家計貯蓄率については、1990年度の13.2%から1996年度の9.6%まで徐々に低下した後、96年度から99年度までほぼ横ばいで推移した。99年度以降は再び減少傾向にあり、2001年度で6.6%となっている。
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図表I-2-3-10 家計貯蓄率の国際比較(2000年)

2000年度における日本の家計貯蓄率は9.3%。これに対し、2000年の諸外国の家計貯蓄率は、米国が1.0%、英国が5.0%、ドイツが9.8%、フランスが15.8%、イタリアが10.2%、スウェーデンが1.9%となっている。
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図表I-2-3-11 世帯主の年齢階層別平均貯蓄率(平成13年)

20歳代から60歳代における世帯主の年齢階層別平均貯蓄率は、年齢階層が上がるにつれて徐々に低下している。無職者世帯を含めた全世帯の平均貯蓄率は、全年齢階層の加重平均で12.8%となっているのに対し、65歳以上の加重平均では-12.3%となっている。
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 なお、今後の生活の仕方として将来に備えるよりも現在の生活に重点を置く傾向も強くなってきていること、資産は自分の老後のために使うより子孫に残すべきだと考える高齢者の比率も年齢階級が低いほど低下していること等から、高齢者の貯蓄の取り崩しが一層進む可能性も高い。

 
図表I-2-3-12 将来に備えるか、毎日を楽しむか

「毎日の生活を充実させて楽しむ」人の割合は、1980年約40%以降徐々に増加し、2002年において56.4%となっているが、「貯蓄・投資など将来に備える」人の割合は1980年約45%以降徐々に減少し、2002年において26.9%となっている。
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図表I-2-3-13 年齢階級別資産の使い方

60歳以上の高齢者においては、年齢階級が高いほど「資産はできるだけ子孫のために残してやる方がいい」と考える人の割合が高く、年齢階級が低いほど「資産は自分の老後を豊かにするために活用する方がいい」と考える傾向が強い。
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 一方、高齢者の資産ストックは大きなものとなっており、特に実物資産の割合が高い。住宅や土地など実物資産の流動化が進み、高齢者が有するこれらのストックの金融資産化がしやすくなれば、貯蓄率の低下も緩和できる。

 
図表I-2-3-14 世帯主の年齢階級別家計資産内訳

年齢階級別に家計資産の内訳をみると、年齢階級が高くなるにつれ徐々に資本ストック額が大きくなっており、特に実物資産の割合が高くなっている。
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