第3回サステナブルな旅アワード(2025年度)
最終更新日:2026年1月9日
2025年度 受賞商品紹介
日本国内の旅行業者等から寄せられたサステナブルな旅行商品について、持続可能な観光と旅行商品造成販売の知見を持つ有識者が審査を行い、優秀な商品を選定しました。
大賞1件、準大賞1件、地域未来賞3件、特別賞5件を紹介します。
大賞1件、準大賞1件、地域未来賞3件、特別賞5件を紹介します。
大賞

カイニョお手入れツアー
~次世代へ紡ぐ、散居村保全と循環型社会の再生~
団体名:一般社団法人富山県西部観光社 水と匠(富山県砺波市・南砺市)
【商品概要】
富山県西部·砺波平野に広がる日本最大級の散居村。水田に点在する伝統的古民家·アズマダチと屋敷林(カイニョ)が織りなす景観は、循環型社会と生物多様性を支えてきました。本ツアーでは、カイニョ整備の活動参加や剪定枝のアロマ抽出見学などを通じて、富山の自然と人が共につくり合ってきた景観、暮らしそして知恵に触れることで、旅人自身の再生と地域の価値を未来へつなげます。
【審査委員長による講評】
地域に残る文化資源を「稼げる」力に変換
受賞した旅行商品は、地域連携DMO(一社)富山県西部観光社がすすめる散居村保全事業のシンボル的ツアーです。「カイニョ」とは散居村に点在する住居を囲む屋敷林のこと。この屋敷林は長い歴史の中で形成され資源が循環する仕組み(エコシステム)の重要なアイテムだったのですが、剪定された枝が燃料として使われなくなり、さらに住民の高齢化で手入れも難しくなっています。そこで散居村の文化的価値を伝えることで、「観光の力」を借りての新たな循環する仕組み(新たなエコシステム)が出来ないかと模索しているのです。ツアー客には、まず散居村の価値と暮らしを説明・理解してから屋敷林の手入れを手伝ってもらう。さらに剪定された枝を用いたアロマミスト(精油)づくりに体験。運営する(株)水と匠は、来訪者・宿泊者の売り上げの2%を散居村保全活動へ寄付をしています。
ツアーのない時は、築120年の空き家を改装したスモールラグジュアリーホテル楽土庵(3室、別棟にレストラン)を拠点に、スタッフが周辺の集落を案内する「散居村ウォーク」を行っています。また、周辺の野仏巡りや職人さん訪問、時には地元の伝統芸能の練習に参加するなどの体験プログラムを用意しています。意識しているのは、土地の人との交流と地域の精神風土(土徳)に触れること。インバウンド客からは「日本の豊かな精神性を知ることが出来た」と好評で、いまではインバウンド客が6割を占めています。
これらの継続的な活動が地域住民の意識にも変化をもたらし、地域内外の関係者と共に散居村の保全を考える「散居村保全協議会(仮)」を立ち上げるまでになっています。今後は、この協議会を核に、文化庁の「重要文化的景観」や観光省の「自然共生サイト」への認定申請を目指しています。
郷土景観保全のための観光を活用した新たな循環する仕組みが少しずつ見えてきています。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
準大賞

伊豆半島の森と海とを循環させる、リジェネラティブ・ガストロノミーツアー。
団体名:株式会社BASE TRES(静岡県松崎町)
【商品概要】
伊豆の森と海を舞台に、自然の恵みを五感で味わう旅。再生した古道でのE-MTBやハイキング、自生ハーブや野菜の採取、そしてカヤックフィッシング。集めた食材は、化石燃料を使わないエネルギー循環型の「薪火レストラン クエビコ」へ。地域の木が燃える優しい炎と香りが、釣果や収穫物を最高の料理へと変えていく。楽しみながら脱炭素と地域循環に貢献する、次世代のサステナブル・ツーリズム。
【審査委員長による講評】
旅が地域を再生させる
1泊2日のモデルツアーで行うアクティビティは「カヤックフィッシング」「薪風呂」「薪火料理のディナー」「古道トレイルのマウンテンバイク(MTB)ツアー」です。一見すると、他の地域でもやっていそうに見えますが、ツアーコンセプトや目的、アクティビティの場所の意味、宿泊施設やレストランの設えや運営方法、これらを知ると運営する(株)BASE TRESが日本のリジェネラティブツーリズム(再生型観光)のトップランナーの一つであることが分かります。
ツアー中のアクティビティで海と山とをまわるは、伊豆の環境を守りながら自然資源を“まわす”(循環させる)という考えをカタチにしたものです。ツアー客が釣り上げた魚を料理するのは、森から伐り出した薪を使う薪火レストラン クエビコ。店内にはガスを引き込まず、調理で発生する薪の熱源を循環して給湯や暖房に利用しています。目指しているのはエネルギーの地域自給と食材の地産地消です。宿泊・情報拠点のLODGE MONDO(ロッジモンド)は、使われなくなった宿泊施設を自社の森林整備事業で伐採した木材を活用してリノベーションしたもの。ここも木質エネルギーで運営されているので、ツアーに関わる宿泊・食事・体験の全てが化石燃料フリーなのです。2日目のMTBツアーのトレイルも、使われなくなった古道を自分たちで整備したもの。
日本の歴史が感じられる古道でのMTB体験「Ancient Trail×MTB」として発信したところ海外メディアからの取材が増え、インバウンド客増へとつながっています。
ツアー内容から経営理念の「旅が地域を再生させる」が実感できます!!
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
地域未来賞

The Best of Kuma Valley
人吉球磨を巡る特別な旅
団体名:株式会社鮎里ホテル(清流山水花あゆの里) (熊本県人吉市)
【商品概要】
欧米豪の富裕層・小グループを対象とした、人吉球磨の文化と自然を巡る高付加価値ツアーです。相良700年の歴史を背景に、焼酎蔵見学、E-bike周遊、古流剣術体験などを通じて本質的な地域文化を提供します。地域への適正対価の還元や環境負荷の低減を徹底し、持続可能な観光と文化継承の両立を実現する特別な旅です。
【審査委員長による講評】
「消費」する観光から「継承」する観光へ
このツアーは、インバウンド客向けに、地域に点在している寺社・古武道の道場・焼酎の蔵元・茶農家・ローカルな飲食店などの資源を結び、物語性のあるラグジュアリー商品へと再編集したものです。地域の実情や文化的背景を理解している(株)鮎里ホテルがランドオペレーターとして資源の発掘・整理を担当し、消費者ニーズに精通した旅行会社がプロモーション・募集を担当と役割分担を明確にしてタッグを組んだのが成功の一因です。
無理のない小人数(2~6人)制と解説重視で顧客のニーズを汲み取り満足度を高めています。ツアーの受入施設や協力団体へは適正対価を払い、文化施設の維持管理や後継者育成に貢献し、また、地元事業者にも安定的な収益分配を行い、若手ガイド・通訳の就業機会創出を考えるなど、持続可能な地域経営を意識しています。
地域資源を「消費」する観光から「継承」する観光、という新しい地域観光の姿が見えています。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
地域未来賞

地域と連携、季節毎に里山の自然を探究するシリーズ
春編:希少な野鳥観察
夏編:多様な生物に出会う探求学習
秋編:地域農業生産者と連携したアグリツーリズム
団体名:株式会社エルボスケ、鳥取県八頭町(鳥取県八頭町)
【商品概要】
自然共生サイト認定の「八東ふる里の森」を舞台に、春は希少な野鳥観察、夏は大学連携の探究学習、秋は地元農家との農業体験を四季に応じて展開。宿泊・食事・専門ガイドをパッケージ化し付加価値を高め都市部の方へ豊かな自然体験と「心のふるさと」を提供します。保全と収益化を両立し、関係人口の創出や特産品販売によるコミュニティ経済を確立することで、八頭町の活性化とネイチャーポジティブを実現します。
【審査委員長による講評】
エコツーリズムから地域全体が主役のエコ・コミュニティベースド・ツーリズムへ
八東ふる里の森は珍しい夏鳥が飛来することでバードウオッチャーには知られた存在です。しかし、初夏の野鳥観察だけでは経営的に厳しく八頭町町営ロッジ「八東ふる里の森」は閉鎖の危機に瀕していました。新たな指定管理者としてこの危機を救ったのが(株)エルボスケです。とはいえ、森を保全しながら「稼げる」施設への転換は容易ではない。まず、ロッジを整備し食事の質をあげることで快適性を確保し、専門家によるガイドツアーも増やしたことで宿泊者増・収入増につなげました。
また、専門性の高い旅行会社数社にアプローチして野鳥観察ツアーを造ってもらいます。課題は初夏の野鳥以外をどのように「稼ぐ」かです。地元の大学や研究機関をまわり協力をお願いしたのです。大学には研究フィールドとしてこの森の生物多様性の調査を依頼し、そこから得た知見をもとに専門家に解説してもらう夏休みのファミリー向け環境教育プログラムを開発しました。森の保全と観光のバランスを考えてのことです。
また、地域内の農業生産者と協働して、春の田植え・秋の稲刈りなど農業体験プログラムを始めます。初夏だけから春から秋へと連続し客層もずっと広がり、まだ課題はあるものの経営も少しずつ安定してきています。観光客増による環境への影響を考え専門機関とモニター調査も継続的しています。
今では森のロッジが地域産品を紹介するショーケースとなり地元産品の通販も始めています。地域の人々もこの森を核にしたコミュニティ観光の可能性を少しずつ感じるようになっています。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
地域未来賞

角館半日ツアー ~職人と文化と食を巡る旅~
団体名: Inaka Travel Akita(株式会社遊名人) (秋田県仙北市)
【商品概要】
本ツアーは、武家屋敷群のみならず、商業の拠点として栄えた「外町」の歴史を深く紐解く旅です。味噌と醤油の蔵元、「安藤醸造」での蔵見学や、伝統的工芸品「樺細工」の体験を通じ、文化を継承してきた人々と直接交流します。地域に根差す人々の物語に触れながら、現代まで息づく角館の精神性を再発見する、対話と体験を重視した特別なプログラムを提供しています。
【審査委員長による講評】
ワカモノ・ヨソモノが創るオリジナリティのある旅行体験
(株)旅名人は、秋田県仙北市が本社の地域限定旅行業者です。社員ガイド(4名)は全員が20代の県外出身者ですが、市内に移住し暮らしています。このワカモノ・ヨソモノが「ソトの目」で地域の魅力を掘り起こし既成概念に囚われないオリジナリティのある商品づくりをしています。知らない町に移り住み地域のために働こうというワカモノ・ヨソモノの覚悟と気概が地域の人の積極的な協力を呼び込んだようで、ツアーで訪れる170年の歴史ある安藤醸造では7代目当主が特別に非公開のエリア(醤油蔵)を案内、樺細工製造卸の八柳商店では7代目当主が製作体験を指導、武家屋敷石黒家では13代目当主が現代にも生き続けている角館の文化について話してくれるのです。角館半日ツアーは、有名な武家屋敷ではなく商人町を行き、そこに暮らす「人」にフォーカスを当て角館の「生活」を知る内容です。
ツアーを始めた令和6(2024)年は参加者70人でしたが令和7年は240人、令和8年は500人(見込み)と着実に参加者が増えています。インバウンド客にも好評です。JR角館駅徒歩2分の所に案内所を設け当日申し込みにも対応しています。冬季は同じ市内の田沢湖駅前に案内所を移し田沢高原でのスノーシュー体験などのツアーを実施しています。
まだまだ小さな動きですが地域観光を変える力と可能性が感じられます。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
特別賞
十日町縄文ツアーズ
団体名:一般社団法人十日町市観光協会(新潟県十日町市)
【商品概要】
新潟県十日町市は、国宝「火焔型土器」を始め織物や雪像そして現代アートと、芸術文化の色濃い土地です。私たちは、芸術文化が自然を背景とした地域の衣食住と密接であり、その始まりが「縄文」にあることを「十日町縄文ツアーズ」を通じ、皆様に実感していただいています。縄文アクティビティや博物館での特別ガイド、遺跡の上の野外レストラン、国宝を精巧に再現した土器を使っての調理実演などを心ゆくまでお楽しみください。
【審査委員長による講評】
“縄文”をまるごと五感で体感する特別な夜
十日町市は縄文時代の遺跡の宝庫です。なかでも国宝「火焔型土器」は全国に知られています。このツアーは、十日町市博物館(行政・研究者)をはじめ自治組織(住民)やガイド(事業者)など関係団体が連携して、キーコンテンツ“縄文”を「見る」「知る」「触れる」「食す」の凝縮した内容です。全国の縄文ファンよ集まれ!!と声を掛けたくなるワクワクする仕掛けが用意されています。
まずは、用意された縄文のアクセサリーや服装を身に付けての疑似狩猟体験「縄文アクティビティ」で気分は一気に縄文時代へ。「学び」はしっかりと貸切の博物館で特別解説から。次に国宝・火焔型土器が出土した笹山遺跡の笹山縄文館で「本物の土器」に触れる。ハイライトは、遺跡の上に設営された一夜限りのレストラン。ここで専門家が知恵を出し合って考案した特別な縄文料理をいただく。竪穴住居の中では精巧に再現した火焔型土器を使っての鍋料理「縄文鍋」も。
縄文生活の一端をリアルに体感する「学び」と「体験」が融合したこの地ならではの内容なのです。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
特別賞
祓川ワンダーカヤック:
生命あふれる奇跡の祓川で学ぶ時空を超えて自然とつながる旅
団体名:一般社団法人NELCrew(三重県明和町)
【商品概要】
日本遺産「斎王のみやこ」の一つである清流・祓川を舞台としたカヤックツアー。希少な生態系について三重大学との連携調査を土台に、自然護岸が残る川からウミガメの住む海へ繋がる「命の循環」を知り、楽しい体験を環境問題解決の意識の醸成にもつなげています。加えて、天皇に代わって伊勢神宮に仕えた斎王が身を清めた川で歴史を感じる体験を通して、時空を超えて自然とつながり、持続可能な未来を学ぶ旅を提供します。
【審査委員長による講評】
楽しい体験が環境保全に直結する
ツアーを運営している(一社)NELCrewは、三重大学の実習講座「自然環境リテラシー学(坂元竜彦研究室)」を受講した卒業生や学生たちが設立した学生ベンチャー。大学で学んだ自然環境リテラシー学を地域に広め実践していこうという目的です。自然環境保全を実践・活用する能力の一つとして学生時代にシーカヤック・インストラクターの資格を取得しています。このNELCrewと行政(町)、地元DMO、三重大学とが連携して生まれたのが今回の祓川でのワンダーカヤックツアーです。明和町には、1200年前に斎王が禊をした清流・祓川があるものの観光的には未利用でした。祓川は、自然護岸と多様な生物が残る希少な環境で、環境教育の場としてもすぐれています。ガイドを務めるのは、環境分野を学ぶ地元大学生や地元ガイドなので、専門知識をわかりやすく話してくれて楽しく学べると好評です。ツアー中、参加者はカヤックに乗りながら川のごみ拾いもするので、環境意識の向上にもつながります。地元の大学生がガイド兼地域教育のリーダーとして活動することは地域内人材育成にもなるのです。
このカヤックツアーは、「教育コンテンツ」の収益化や行政・事業者・教育機関が多層的に連携して事業を起こした成功例として多くのヒントに溢れています。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
特別賞
南信州こだわりの旅
団体名:株式会社南信州観光公社(長野県飯田市)
【商品概要】
人の興味は十人十色ではなく“一人十色”という考え方に立ち、知らなかったことや、聞いたことはあったが、深く理解はしていなかったことを知る喜びを求めて、南信州に住む人、産業、暮らしや営み、食、自然、歴史、文化などの中からテーマを設定し、その道に精通した地域に暮らす人が案内役となることで、訪れる人が味わい深くこの地を心に刻む知的欲求の旅の実現を目指しています。
【審査委員長による講評】
地元の資源にこだわり専門家と深掘りして魅せる、オリジナリティの高い商品づくり
とにかく扱う地域素材(テーマ)が幅広く多岐に亘っています。主なテーマだけでも歴史的遺産が17、伝統文化・民俗学的資産が10、食文化が10、伝統産業が3、産業構造物が4、自然その他が7、と50テーマを超えています。しかも全てが南信州のエリア内なので(株)南信州観光公社が持つ地域素材の発掘力や専門家ネットワークに驚くばかりです。
ツアーづくりは事前に専門家と徹底的な作り込みを行い当日のガイドもお願いするので専門性が非常に高い内容です。参加者からは「他のツアーでは 味わえない学びがある」「地元にいても全く知らなかったことを気付かされた」といった感想が大半です。南信州の魅力を知りファンになってもらうこと、地元住民が地域文化を見直し保存意識が芽生えることを期待しています。
1回当たりの募集人数は環境に負荷を与えないように18名程度までとし、参加者にも話が伝わり理解しやすいように配慮していて地域に根付いたDMOならではです。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
特別賞
革新する和紙を使った伝統工芸
伊勢志摩擬革紙クラフト体験
団体名:一般社団法人明和観光商社(三重県明和町)
【商品概要】
伊勢志摩を訪れるモダンラグジュアリー層へ。本革が入手困難であった江戸時代、紙で革を再現し煙草入れとして親しまれた「擬革紙」。本プランでは職人が滞在先へ赴き、共に作品を制作します。絞りや磨きの工程を経て、自作の擬革紙と伊賀くみひもの掛け香を完成。受け継がれた技と現代の感性が響き合う、知的好奇心を満たす上質な体験です。
【審査委員長による講評】
出張型クラフト体験という革新的な提供形態で技術継承と職人支援
擬革紙とは、和紙を加工して革のような見た目や手触りにした紙製品。江戸時代初期に伊勢街道沿いの新茶屋村(現在の三重県明和町)で発明されています。皮革が貴重だったことや伊勢神宮が殺生を嫌ったことから擬革紙が注目され、江戸時代にはこれを使った煙草入れがお伊勢参りのお土産として大人気となっています。しかし昭和初期に製造が途絶え製造方法も忘れ去られます。それを、明和町在住の発明者の子孫の方が20年ほど前に3年の試行錯誤を経て復活させたのです。
通常クラフト観光では旅行者が制作工房を訪ねるのですが、(一社)明和観光商社では、職人と連携して、旅行者のもとに出向く“攻め”の出張型クラフト体験という今までにない商品設計をしたのです。
まず、職人による歴史・素材・文化的背景の解説を行い、次に擬革紙の主要工程(しぼり・磨き)を実際に体験。最後に「掛け香袋」に仕上げてお土産にしてもらう。
主なターゲットは伊勢志摩に来る欧米濠のインバウンド客(モダンラグジュアリー層)で、軌道に乗れば、擬革紙継承と職人支援になる仕組みとして期待されます。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
特別賞
「一日氏子」体験
~神様と地域を支える一員になる特別な一日~
団体名:一般社団法人明和観光商社(三重県明和町)
【商品概要】
伊勢神宮の玄関口・斎宮に鎮座する竹神社にて、白装束で清掃奉仕を行い心身を清める体験です。旅行者が「一日氏子」として神域を守る当事者となり、参加費の一部を神社修繕費に充てる仕組みを構築。人口減少により文化財維持が困難となる課題に対し、観光を通じて「守り手」を増やし、精神的充足と地域課題解決を両立する持続可能なモデルです。
【審査委員長による講評】
「神社のお世話」を「高付加価値体験」へ転換(逆転の発想)
境内の清掃や榊・しめ縄の交換など地域(氏子)の負担となっていた作業を、観光客に肩代わりしてもらい、さらに1名3.7万円という料金までいただく。利益の一部は神社の遷座(建替え)の費用として積み立てられます。
旅行者(主にインバウンド客)の方も、日本の豊かな精神文化を体験出来たと喜び、地域貢献にもなったと満足しているのです。
ここでしか出来ない本物体験なので安売り競争に陥りません。サステナブルな循環型の「稼げる」観光のモデル!とはいえ、一朝一夕に実現したわけではありません。
まずは、地域を代表する竹神社とDMO(一社)明和観光商社とで事業協定を結ぶのですが、祭祀・年中行事等の「守る機能(本質的価値)」は氏子が、集客等の「稼ぐ機能 (社会的価値)」はDMOが担うとそれぞれの役割分担を明確にします。
神社側の意識が変わる切っ掛けとなったのは、氏子の発案で始めた「花手水」(手水を花市場でもらった花などで飾る)をDMOが発信し集客に成功したこと。これで「観光客への警戒」が「自信」へ変わり、「一日氏子としての商品化」も「ファン(氏子)を増やす試み」とし受け入れられたのです。
ツアーの魅力は、可能な限り「真正性」にこだわり、観光用に安易なアレンジをしないこと。外国人への説明のために、氏子自身が改めて神道や地域の歴史を学ぶモチベーションが生まれるといった相乗効果もでています。
スピリチュアルな体験を求める欧米濠のインバウンド客が増えているので全国の社寺でも展開可能は素晴らしいモデルです。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
審査委員
審査委員長
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員
DAISETSUZAN EXPERIENCE 代表
審査委員
株式会社楽帆 代表取締役
審査委員
國學院大学 観光まちづくり学部 教授
審査委員
株式会社スピリット・オブ・ジャパン・トラベル 代表取締役
審査委員
日本政府観光局 市場横断プロモーション 部長
審査委員
一般社団法人日本旅行業協会 国内旅行推進部長
審査委員
名城大学 外国語学部 名誉教授
審査委員
日本コンベンションサービス株式会社
マネジメント本部広報戦略部 ワンプラネット・地域共創スペシャリスト
一つ目は、持続可能な循環型社会を目指すしっかりとした経営理念を持つ事業者が増えてきたことです。これらの事業者では、日頃より自分たちの事業運営やスタッフの生活様式までも持続可能なモノにするように努力しています。そして、その一環として旅行事業をとらえ「サステナブルな旅」の実施をしているのです。「サステナブルな旅が流行るから」とか「インバウンド客の志向に合わせて取り込もう」とかではなく、自分たちの信じる考え方の表現としての旅なのです。日本のサステナブルツーリズムがレベルアップして新しい段階に入ったことを感じさせます。なかでも、準グランプリの(株)BASE TRESは、自社で運営する宿泊施設やレストランの運営に化石燃料を一切使っていません。燃料の薪は自社で森を整備した木材から作り、MTBのトレイルは自分たちで古道を整備して切り開いています。リジェネラティブツーリズム(再生観光)の実践です。
二つ目は、若いIターンやUターン組が新しい感覚の今までにない着眼点で持続可能な地域・観光づくりに取組み始めたことです。従来の観光概念に囚われない若者の試みがサステナブルな旅の可能性を拡げています。代表的なのは、地域未来賞受賞の(株)遊名人です。秋田県仙北市を拠点に活動するこの会社のガイドは全員20代で県外からのIターン組です。また、特別賞の三重県明和町の(一社)NELCrewも三重大学で「自然環境リテラシー学」を学んだ若者たちが立ち上げた学生ベンチャーです。このような「持続可能な活動」や「地域貢献」に魅力を感じる若者が増えているのは望ましいことで、地方での若者層の関係人口が増えると活気が出てくると期待されます。今回の受賞10地域のうち少なくとも6地域でIターン組、Uターン組が中心メンバーとして活躍しています。
三つ目は、「稼げる」商品づくりが増えてきたことです。ツアーに関係する地元の事業者や施設、団体に適正な対価を支払うことが事業を持続可能にするとの考え方が広まってきたためと考えられます。良い例が、地域未来賞の人吉市の「Best of Kuma Valley 人吉球磨を巡る特別な旅」です。欧米濠の富裕層FITをターゲットに小人数のプレミアムな運営をしていて、3泊4日のモデルコースで最小催行の2人の場合は一人502,000円、4~6人の小グループでは一人407,000円です。
最後に、今年度の申請書で補助事業・支援事業活用の有無を聞いたところ、受賞地域はすべて中央官庁や地方自治体からの補助事業・支援事業を受けていました。なかでも、グランプリの(一社)富山県西部観光社は、令和3(2021)年に地域連携DMOとなった後、4年連続で補助事業に採択され、これを活用して事業の進化・深化を確実に進めています。今回の調査から、補助事業・支援事業が持続可能な観光地づくりに役立っていることが改めて確認されました。自分たちのビジョンをしっかり持ってこれらの事業を有効活用している地域が「サステナブルな旅」アワードでも評価が高いようです。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
小林 英俊
審査委員
DAISETSUZAN EXPERIENCE 代表
荒井 一洋
審査委員
株式会社楽帆 代表取締役
北村 尚武
審査委員
國學院大学 観光まちづくり学部 教授
小林 裕和
審査委員
株式会社スピリット・オブ・ジャパン・トラベル 代表取締役
高山 傑
審査委員
日本政府観光局 市場横断プロモーション 部長
藤内 大輔
審査委員
一般社団法人日本旅行業協会 国内旅行推進部長
野浪 健一
審査委員
名城大学 外国語学部 名誉教授
二神 真美
審査委員
日本コンベンションサービス株式会社
マネジメント本部広報戦略部 ワンプラネット・地域共創スペシャリスト
松原 努
審査委員総評
今回の受賞商品からは今までにない3つの大きな特徴が見えてきます。
一つ目は、持続可能な循環型社会を目指すしっかりとした経営理念を持つ事業者が増えてきたことです。これらの事業者では、日頃より自分たちの事業運営やスタッフの生活様式までも持続可能なモノにするように努力しています。そして、その一環として旅行事業をとらえ「サステナブルな旅」の実施をしているのです。「サステナブルな旅が流行るから」とか「インバウンド客の志向に合わせて取り込もう」とかではなく、自分たちの信じる考え方の表現としての旅なのです。日本のサステナブルツーリズムがレベルアップして新しい段階に入ったことを感じさせます。なかでも、準グランプリの(株)BASE TRESは、自社で運営する宿泊施設やレストランの運営に化石燃料を一切使っていません。燃料の薪は自社で森を整備した木材から作り、MTBのトレイルは自分たちで古道を整備して切り開いています。リジェネラティブツーリズム(再生観光)の実践です。
二つ目は、若いIターンやUターン組が新しい感覚の今までにない着眼点で持続可能な地域・観光づくりに取組み始めたことです。従来の観光概念に囚われない若者の試みがサステナブルな旅の可能性を拡げています。代表的なのは、地域未来賞受賞の(株)遊名人です。秋田県仙北市を拠点に活動するこの会社のガイドは全員20代で県外からのIターン組です。また、特別賞の三重県明和町の(一社)NELCrewも三重大学で「自然環境リテラシー学」を学んだ若者たちが立ち上げた学生ベンチャーです。このような「持続可能な活動」や「地域貢献」に魅力を感じる若者が増えているのは望ましいことで、地方での若者層の関係人口が増えると活気が出てくると期待されます。今回の受賞10地域のうち少なくとも6地域でIターン組、Uターン組が中心メンバーとして活躍しています。
三つ目は、「稼げる」商品づくりが増えてきたことです。ツアーに関係する地元の事業者や施設、団体に適正な対価を支払うことが事業を持続可能にするとの考え方が広まってきたためと考えられます。良い例が、地域未来賞の人吉市の「Best of Kuma Valley 人吉球磨を巡る特別な旅」です。欧米濠の富裕層FITをターゲットに小人数のプレミアムな運営をしていて、3泊4日のモデルコースで最小催行の2人の場合は一人502,000円、4~6人の小グループでは一人407,000円です。
最後に、今年度の申請書で補助事業・支援事業活用の有無を聞いたところ、受賞地域はすべて中央官庁や地方自治体からの補助事業・支援事業を受けていました。なかでも、グランプリの(一社)富山県西部観光社は、令和3(2021)年に地域連携DMOとなった後、4年連続で補助事業に採択され、これを活用して事業の進化・深化を確実に進めています。今回の調査から、補助事業・支援事業が持続可能な観光地づくりに役立っていることが改めて確認されました。自分たちのビジョンをしっかり持ってこれらの事業を有効活用している地域が「サステナブルな旅」アワードでも評価が高いようです。
北海道大学 観光学高等研究センター 客員教授
審査委員長 小林 英俊

