(3)閉鎖性水域への影響からみた評価
各水域の現状の水質について表4.9に、各水域への現状の流入負荷量について表4.8に示す。新都市の排水先に閉鎖性水域がある場合は、水域の富栄養化を促進させることが懸念され、有機汚濁負荷に加えて、窒素、リンの栄養塩類の削減にも配慮する必要がある。さらに、降雨に伴い流出する面源負荷にも留意する必要がある。
同量の負荷の流入を前提とした場合、現状の流入負荷量が小さい水域ほど、新都市の影響は大きいといえる。その視点からは浜名湖(静岡県)、霞ヶ浦(茨城県)、琵琶湖(幾央地域)、伊勢湾(三重県、愛知県、岐阜県)の順に影響が大きいといえる。
ただし、面源負荷については現状の山林、畑地等からも負荷が流入しており、新都市の立地による負荷量の変化については、具体的な立地場所が明らかでない現状では定量的推計・評価は困難である(面源負荷については、立地場所によって畑地等が新都市の市街部となることで流入負荷量が削減することもありうる)。
新都市では、下水処理場からの放流による点源負荷が大きい割合を占めることが推測され、閉鎖性水域に流入する場合には、高度処理等の点源負荷対策がまず重要な方策であるといえる。
三重県、愛知県、岐阜県は基本的には必ず伊勢湾(三河湾含む)に流入することになり、配慮を要するといえる。静岡県は海岸線近くに分布しており、浜名湖への流入の回避等も容易であるといえる。茨城県、幾央地域はそれぞれ霞ヶ浦水系、琵琶湖水系以外の水系への放流、あるいは分散して放流する方策も立地場所により可能である。
閉鎖性水域 | COD | T−N | T−P | 関連地域 |
---|---|---|---|---|
霞ヶ浦 | 27.8 t/日 | 11.7 t/日 | 0.87 t/日 | 茨城県 |
琵琶湖 | 66.7 t/日 | 24.1 t/日 | 1.73 t/日 | 幾央地域 |
伊勢湾 (三河湾含む) |
246 t/日 | 174 t/日 | 18.5 t/日 | 三重県 愛知県(三河湾へ) 岐阜県 |
浜名湖 | 10.0 t/日 | 5.6 t/日 | 0.77 t/日 | 静岡県 |
参考: 新都市からの推計負荷量 |
1.89 t日 (1.7 t/日) |
1.81 t/日 (1.7 t/日) |
0.0134 t/日 (0.0085t/日) |
(注1) ( )内は点源負荷 |
出所: 霞ヶ浦:平成9年度実績(茨城県資料)、琵琶湖:平成2年度実績(滋賀県資料)、伊勢湾:平成6年度実績(環境庁資料)、浜名湖:平成2年度実績(静岡県資料)
(注1) 推計手法は、次の通りである。点源負荷は最大ケース最終段階の負荷削減ケースの排水量2.0m3/秒に、放流水質をCOD10mg/l,T-N10mg/l,T-P0.5mg/lを想定して推計した。約9,000haの新都市市街部からの面源負荷は、面積当りの負荷量原単位を用いて推計した。これらの点源負荷と面源負荷の和を推計負荷量とした。
(注2) 面源負荷については、現土地利用が畑地等の場合は、現状よりも負荷量が減少することも考えられる(面現負荷の原単位は、具体的な土地利用の状況等により異なってくる。ここでの試算は参考として行ったものである)。
閉鎖性水域 | 環境基準の達成状況 ( )内は環境基準値 COD |
環境基準の達成状況 ( )内は環境基準値 T−N(全窒素) |
環境基準の達成状況 ( )内は環境基準値 T−P(全リン) |
---|---|---|---|
霞ヶ浦(湖沼) | 湖内の水質は、7〜10mg/lの水質で、達成していない。 (3mg/l) |
湖内の水質は、0.7〜3mg/lの水質で、達成していない。 (0.4mg/l) |
湖内の水質は、0.08〜0.2mg/lの水質で、達成していない。 (0.03mg/l) |
琵琶湖(湖沼) | 南湖、北湖ともに概ね3〜4mg/lの水質で、達成していない。 (1mg/l) |
南湖、北湖とも0.3〜0.4mg/lの水質で、達成していない。 (0.2mg/l) |
北湖で達成しているが、南湖では0.02mg/l程度の水質で、達成していない。 (0.01mg/l) |
伊勢湾(海域) | 湾内の水質は概ね3mg/l程度の水質で、概ね半数の地点で達成している。 (2〜8mg/l) |
湾奥部で達成しているが、外海側では0.3mg/l程度の水質で、達成していない。 (0.3〜1mg/l) |
湾奥部で達成しているが、外海側では0.03〜0.05mg/lの水質で、達成していない。 (0.03〜0.09mg/l) |
三河湾(海域) | 湾奥部は達成しているが、外海に近い部分では4〜5mg/lの水質で、達成していない。 (2〜8mg/l) |
湾奥部で達成しているが、湾出口側では0.3〜0.4mg/lの水質で、達成していない。 (0.3〜1mg/l) |
湾奥部で達成しているが、湾出口側では0.04〜0.05mg/lの水質で、達成していない。 (0.03〜0.09mg/l) |
浜名湖(海域) | 湖内全体で概ね1〜3mg/lの水質で、概ね達成している。 (2〜3mg/l) |
0.3〜0.7mg/lの水質で、達成していない。 (0.3〜0.6mg/l) |
0.03〜0.06mg/lの水質で、湖心部を除いて達成していない。 (0.03〜0.05mg/l) |
(注) 霞ヶ浦、琵琶湖、伊勢湾、三河湾は平成8年度、浜名湖は平成9年度における状況
CODは年75%値、T−N及びT−Pは年平均値を用いた評価