ホーム >> 政策・仕事 >> 国土計画 >> 国会等の移転ホームページ >> 国会の移転とは >> 国会等の移転に関する基礎資料 >> 移転先新都市のイメージ >> バーチャル首都機能都市 >>新都市への提案 >> 「まちづくりアイディア」、「ライフスタイルシナリオ」についての公募結果 >> ライフスタイルシナリオ募集 優秀賞

国会等の移転ホームページ

ライフスタイルシナリオ募集 優秀賞

ある大学生のオンライン日記で紹介された“フツーの都市”

氏名: 山本 絹子
所属: University of Washington, Department of Architecture在籍
(東京工業大学大学院からの交換留学)

登場人物の設定:「僕」は東京都内の大学に通う4年生。自分のホームページに日記欄を持つ。
以下はその日記のテキスト部分のコピーである。

2000年3月23日(木)

全く馬鹿なことを思いついたもんだ。
彼女には「夏休みに暇を持て余した小学生みたい」と一蹴されるが、僕は真剣だ。
学生時代最後に、素晴らしく有意義な時間の浪費をしてみたくなったんだ。
何でもいい。ただひとつの条件をクリアさえすれば。

それは、
僕が社会の波に揉まれて今の自分を忘れきっても、
この当時の記憶を僕に呼び起こしてくれるキッカケを社会に期待できること。

それにはこれしかないだろう。

僕は明日から三日間、新首都をマウンテンバイク(以下BIKEという)で走る。

そしてそのレポートをこのページでリアルタイムで更新する。
卒論中の慢性的な運動不足もこれで一気に解消だ! (☆o☆)
ちょうど僕の周りには新首都を実際訪れたヤツはまだいないし、いいネタになるだろう。

3月24日(金)

"車中にて"
今、新幹線の中。自転車を分解して入れてきたバッグが肩に食い込んで痛い。
こんなに体力なかったっけ>俺。もう歳だな。

さて忘れないうちになぜBIKEなのか、説明しよう。
歩くのと同じくらい外部空間に自分の体を露出しながら、ずっと速く動ける。
車よりスピードすら遅いが、外部への露出度は高い。この露出度によって外部環境の情報量は全く変ってくる。
BIKEのスピードと目線だと、車に乗っていたのでは気づかない街並みの変化に気づくことができる。車と違って渋滞や駐車スペースの心配もない。しかも安上がりだ。歩くよりも行動圏はぐんと拡がる。でも初めて愛車を解体したので、駅に着いてから無事に組み立てられるのかがちょっと心配。(^ ^ゞ

"中央駅到着、部品がひとつ足りない!"
駅に着いてさっそく自転車を組みたてようとしていたら、なぜかペダルと車輪を付ける部分の部品が足りない。きっとバタバタと出てきたから下宿に忘れてきたんだ。ついてないなぁ(-。-)y-゚゚゚
途方に暮れていたら、屈強そうなドイツ人学生に話しかけられた。聞くと、この街にある国際大学の学生だという。名をクリストフというその彼は「僕もよく日本国内をバックパック一つで廻っている」と人懐こそうに笑う。彼のドイツ人の友達(ドイツはこういう貧乏旅行愛好者が多いので世界的に有名)が僕と同じ種類のBIKEを持っていて、修理も得意だというので、そいつになんとかしてもらいに行くことにした。

"BIKEをバスに乗っける?"
中央駅から国際大学まではバスが一番便利だとクリストフは言う。でも、この中途半端に組み立てられたBIKEを持ってどうやってバスに乗れって言うんだ?仕方がなくついていって見るとバスのフロントに2台分のBIKE用スタンドが付いている。なるほど。ここにBIKEを乗っければ僕もバスに乗れる。( ^^)/\(^^ ) クリストフはたどたどしい日本語で付け加えた。「この街、坂多い。これあると朝、僕のアパートから早い。帰り登るのイヤ。だからバスに乗る。」他にも飲み会の帰り(ふらついている)や雨の時なんかにも便利そうだ。こんなスタンド、付けようと思えば、コストも手間も掛からないのに、どうして今まで気がつかなかったんだろう。(+_+)

バスの写真

"国際大学"
クリストフに案内されて、大学構内の学食に行くことにした。この大学は本当にいろいろな人がいる。車椅子の学生も年寄り学生もいる。国籍も性別も年齢も身体的特徴も実にさまざまなひとがミックスされている。当然、食堂にもいろいろなメニューがある。僕はビビンバを選ぶ。安くて旨い!(^o^)/
その後クリスの寮に連れて行ってもらい、目当てのドイツ人修理屋を探す。寮にもいろんなひとがいる。聞くと、障害者用の部屋もあると言う。あんな大学で勉強できたら、異文化への理解が深まるだけではなく、自国の文化や自分自身についても深く考えさせられるんだろうなあ、と誰かの留学経験談を思い出す。日本国内にいながらにして留学気分を味わえるのだ。いや、待てよ。留学の意義がそんな文化交流にあるとしたら、この時代にわざわざ物理的にどこか外国に行くなんて、実は非常に原始的なんじゃないか?それよりも異文化がボーダレスに混ざり合う場所がどこかにあればいいだけなんだ。ここみたいに。そんなことを考えながら構内を散策。ドイツ人修理屋はコンピュータラボにいた。ちょうどいい。僕もこのページを更新しよう(で、それがこれ)。この後自転車を直してもらって、ダウンタウンに繰りだそう。

"予定変更"
トラブル発生、予定変更。今は夜の8時過ぎだが、まだ国際大学の寮にいる。(^_^;)
修理屋のドイツ人に僕のBIKEを見せたら、結局新しい部品がないと直せないことが判明。今夜はクリスの部屋に泊めてもらうことになった。でもまあいいか、こういうハプニングも旅の醍醐味だ。

3月25日(土)

"DowntownとDisabled"
翌朝、結局クリストフの友人と一緒に新しい部品を買いに行って、直してもらう。予定外の出費だが、組み立てまでしてもらったし、良しとしよう(ひとりじゃ絶対直せなかったし(^_^;))。
やっと乗れるようになったBIKEをすっ飛ばしてようやくダウンタウンに到着。
ここで驚いたのは、高齢者も車椅子生活者も実に「フツー」に付き添いもなく街中を動き回っていることである。公共バスはBIKEを乗っけて走るだけではなく、車椅子も乗っけて走っている。入り口のステップに電動の低床が降りきて車椅子を持ち上げる仕掛けになっている(残念ながら写真は取り損ねた)。しかもそれだけではなく、ダウンタウンにある商業施設は映画館、デパート、遊園地、レストランに至るまで車椅子で不自由なく動ける。東京では付き添い人に押されながら申し訳なさそうに人を押しのけて動いている車椅子の彼らも、この街では元気にひとりで動き回っている。それに対する街の人の対応も気張ることなく至って自然、フツーである。
考えて見たらこれがフツーなのに、フツーなことに物凄く驚いている自分に、はっとした。授業で聞いた「バリアーは人にあるのではなく環境にある」という言葉を思い出す。バリアフリー環境は心のバリアーすら除去するんだ。

"新首都居住"
どこかに安い宿はないかとふらついていたら、小学校にぶつかる。ちょうど夕方で子供たちが帰宅して行く。なんとなく彼らについて行ってみると、かなり大規模な集合住宅地に辿り着く。マッスで開発された新しい街にありがちな無味無臭な団地を想像していたのに、実際ここは実にカラフルである。国際大学やダウンタウンでも同じように感じたが、この街の最大の魅力はこのカラフルさだ。健全な生活臭がすること、さまざまな生活者の姿が目に見えることだ。団地内の芝生に寝転んで夕日を眺めてから、ダウンタウンに戻って一泊1600円のInternational Hostelを探し当てた。トイレ風呂共同だが、立地もいいし清潔だ。この旅の最後の宿はここにしよう。チェックインすると同じ部屋の台湾人の大学生、パクと友達になった。彼は台湾で流行の日本のテレビドラマや歌の影響で日本文化に関心を持ち、休みを利用して訪れているのだという。今日がこの街で過ごす最後の夜だと僕が言うと、俺がこの街で一番クールな場所に連れて行ってやるよ、とパクは言う。

"カオティック・ラストナイト@屋台村"
それは屋台村だった。これがボーダレスの時代の夜の街なのか。ターバン姿でカレーを売るインド人、アオザイでパッドタイ(タイ風焼きそば)を売るタイ女性、チャイナドレスで中華鍋を振り回す威勢の良いおばちゃんなど、これはもう見ていると、自分が世界のどこにいるのか分らなくなるほどで、それが都市特有のカオティックななんとも言えない雰囲気を作り出している。パクはカリフォルニアから来たという金髪青年の屋台に連れて行ってくれた。僕らはそこで、地元ワインとワイルドにグリルしたビーフを骨ごと手掴みで食べる。この屋台村の雰囲気はきっと若者に受けるんだろうなあ。今度は彼女でも連れてくるか。二人で赤と白2本あけてかなり上機嫌でHostelに戻った。パクともっとたくさん話しいことがあったけれど、いかんせん飲みすぎた。眠くなって寝てしまう。

3月26日(日)

"日本の首都から世界の都市へ"
朝起きたらパクはもういなかった。ホステルのおばさんに聞いて、昨日がパクにとっても最後の夜だったと知る。やられた。昨日着てたジャンパーを探ると"CYA"とEメールアドレスの書かれたパクのメモが入っていた。(ToT)
メールか。今やインターネットで世界中の人間とコンタクトを取ることができる。そんな時間と空間を超越したサイバー感覚の新首都においては、年齢、性別、国籍、身体的違い、宗教などのさまざまなCultureが何気なくフツーに交じり合っている。誰もが、誰に対しても気負うことなくフツーに接しあっている。これが新時代のフツーの都市の姿なんだ。ここは日本の新首都というよりも、むしろ、世界都市のひとつなのだ。そう考えるとこれからの僕の目の前には無限のフィールドが広がっているような気がしてきた。
社会に出て会社にこき使われて自分を見失ったら、ここに来てこの今の自分を思い出そう。思い出すことすら忘れてしまったとしても大丈夫だ。「首都移転〇周年記念式典」はきっと確実に催され報道されるだろう。そして、そのテレビを見るであろう一年後、十年後の僕はテレビの中の風景にきっと今の僕を探し続けるのだろう。そんなことを思いながら中央駅へ向かった。

ページの先頭へ

問い合わせ先

国土交通省 国土計画局 首都機能移転企画課
Tel:03-5253-8366 Fax:03-5253-1573 E-mail:itenka@mlit.go.jp