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国会等の移転ホームページ

ニューズレター「新時代」 第67号(平成21年3月) 一緒に考えましょう、国会等の移転

オンライン講演会を開催しています

国土交通省の国会等の移転ホームページでは、これまで、学界、経済界等各界の有識者を講師にお招きして講演会を開催しています。平成20年11月以降、新たに次の講演を追加しましたので是非ご覧ください。

西水 美恵子氏の写真【第132回】
●シンクタンク・ソフィアバンク パートナー、元世界銀行 副総裁
西水 美恵子氏(にしみず みえこ)
[テーマ]『信頼を基礎とするガバナンスを目指して』

国崎 信江氏の写真【第133回】
●株式会社危機管理教育研究所 代表
国崎 信江氏(くにざき のぶえ)
[テーマ]『セキュリティの充実から始めるフレキシブルな首都機能移転を』

島津 公保氏の写真【第134回】
●株式会社島津興業 副会長
島津 公保氏(しまづ きみやす)
[テーマ]『歴史をいかした地域の魅力づくり−薩摩ルネッサンス運動と地域活性化への取り組み』

アレックス・カー氏の写真【第135回】
●東洋文化研究者、株式会社庵 会長
アレックス・カー氏
[テーマ]『国土の「大掃除」−地方都市は伝統ある美的景観をいかし、東京は規制緩和で再生をめざせ』

安田 雪氏の写真【第136回】
●関西大学社会学部 教授
安田 雪氏(やすだ ゆき)
[テーマ]『「橋を燃やす」首都機能移転の意義と課題−ネットワーク分析の視点から』

尚 弘子氏の写真【第137回】
●(財)沖縄県文化振興会理事長、琉球大学名誉教授、元沖縄県副知事
尚 弘子氏(しょう ひろこ)
[テーマ]『地方の生活者の視点から見る地方分権と首都機能移転』


なお、今後、藤山 浩氏(島根県中山間地域研究センター地域研究グループ 科長)と弘兼 憲史氏(漫画家、山口大学客員教授)のオンライン講演の追加を予定しています。

特別寄稿 首都直下地震に備える

中林一樹氏の写真
首都大学東京 都市環境学部 教授
中林一樹

100年の防災都市づくりの体系で災害に備えることが重要

21世紀に入ってもう10年が過ぎようとしている。この間、毎年のように被害地震が発生し、台風災害や水害も各地で新しい様相を見せ始めている(表1)。

日本は史上初めて人口減少時代を迎えようとしている。 最近の自然災害は人口減少・超高齢化している中山間地域を襲うものが多く、厳しい被災状況と復興問題の深刻さを露呈している(図1)。

この21世紀は、日本各地で地震が多発する「大地動乱」の時代であり、地球環境温暖化の進行により気象災害が激化する「気象激動」の時代で もあると危惧されている。こうした自然災害のハザードの高まりに対して、わが国の災害への備えを強化することは喫緊の課題である。わが国の人 口の半数が居住し、経済活動の大部分を担っている三大都市圏は、いずれも大河川の河口に位置し、市街地の多くを沖積平野や埋め立てた低地 に展開し洪水ハザードマップでもハザードの高さは明らかである。地震に対しても、全国の主要な活断層型及び海溝型の巨大地震の長期評価に 基づくハザードマップである確率論的地震動予測図をみると、三大都市圏とそれらをつなぐ東海道新幹線・東名名神高速道路は、震度6弱以上 の強い揺れに見舞われる確率が高い地域に位置している(図2)。

表1■阪神・淡路大震災以降の被害地震の概要(著者作成)
発生日 地震名 M 震度 人的被害(関連死を含む)
1995.1.17 阪神・淡路大震災 7.3 死者・不明者(6,437人)
2000.10.6 鳥取県西部地震 7.3 6強 死者(0人)、負傷者(182人)
2001.3.24 芸予地震 6.7 6弱 死者(2人)、負傷者(288人)
2003.7.26 宮城県北部地震 6.4 6弱 死者(0人)、負傷者(677人)
2003.9.26 十勝沖地震 8.0 6強 死者・不明者(2人)、負傷者(849人)
2004.10.23 新潟県中越地震 6.8 死者(68人)、負傷者(4,805人)
2005.3.25 福岡西方沖地震 7.0 6弱 死者(1人)、負傷者(1,087人)
2007.3.25 能登半島地震 6.9 6強 死者(1人)、負傷者(356人)
2007.7.16 新潟県中越沖地震 6.8 6強 死者(15人)、負傷者(2,345人)
2008.6.14 岩手・宮城内陸地震 7.2 6強 死者・不明者(23人)、負傷者(449人)
2008.7.24 岩手県北部の地震 6.8 6強 死者(0人)、負傷者(約100人)

図1:確立論的地震動予測図と阪神・淡路大震災以上の被害地震の震央位置

図2:確率論的地震動予測図と三大都市圏及び東海道新幹線・東名名神自動車道路

それだけではない。「7月のある日、○○大都市圏を大きな地震が襲い、甚大な被害が発生した。その時、赤道直下に発生していた熱帯低気圧は成長し続け、超大型台風となって地震の1週間後、○○湾から上陸。地震で被災していた○○大都市圏は、低地では液状化により下水機能が低下し、河川の堤防高も沈下し、高潮水門も開閉に不具合が発生していた。 そこを襲った超大型台風は、高潮・内水氾濫そして越堤・破堤による思いもかけない大水害をもたらしてしまった。地震の被害が軽微であった地下鉄も水没してしまった。」そんな複合災害を招く可能性も否定はできない。まさに、21世紀は国家を挙げて、気象災害及び地震災害に取の災害対策が遅れると、国家の存立にもかかわる事態を招きかねないのである。

三大都市圏でも首都圏の地震環境は特徴的で、首都圏では21世紀を通して複数回の直下地震が発生すると見なされており、その最初の地震が30年以内に70%の確率と長期評価されているのである。それは、1854年安政東海・南海地震に引き続き、1855年安政江戸地震、1894年明治東京地震、そして1923年関東大震災のように、数十年ごとに直下の地震に見舞われ、その後22世紀になって次の関東大震災としての海溝型巨大地震が発生すると想定されている。「いま、首都直下地震に備える」とは、30年以内の発生確率70%といわれる最初の直下 地震に対する「備え」が最も重要であるが、さらに長期的には、繰り返す次の「直下地震」、そしてその後に続く「海溝型巨大地震」をも視野に入れて、100年の防災都市づくりの体系で地震災害及び水害に備えることでなければならない。

リスクを低減し、ダメージを軽減する二つの方法とは

首都東京は、わが国のみならず、アジアそして世界に直接影響を及ぼしあう世界都市である。この都市は、日本の首都としての政治機能とともに、世界の一翼を担う経済機能を持つ都市である。首都機能とは、狭義には国家維持のための政治・行政の中枢機能である。しかしそれと同等に、東京の首都機能には世界を支える経済活動の中枢機能としての意義が大きい。国家維持のための政治・行政の中枢機能は、地方分権の促進や道州制の導入に伴う行政改革によってリスクの分散は可能となる。しかし、東京が発揮している経済活動の中枢機能は、とくにこれからの人口減少 時代においては、一極集中による機能の高度化を確保しなければならないであろう。上海に、香港やシンガポールに伍してアジアを代表し、世界経済を支えるには、東京の災害対策は喫緊の課題であり寸暇の余裕もない。

日本の経済活動を支えているのは東京だけではない。東京、大阪、名古屋を中核とする三大都市圏が支えている。その三大都市圏は、いずれも地震及び風水害の高いハザードに取り巻かれた都市である。この「ハザード」が発現した時、我々が住み日々活動している市街地に内在している「脆弱性」が高ければ、その「被害」が大きくなる。その確率を「リスク」という。このリスクを低減し、ダメージを軽減するには、二つの方法がある。

一つは都市に内在する脆弱性を改善し、軽減させていく防災都市づくり・減災まちづくりの取り組みである。 災害対応活動や復旧・復興対策を事前に準備し、効率的に進めることも、脆弱性の軽減効果を持つ。もう一つの方法は、都市を高いハザードの地域から、よりハザードの低い地域に移転・誘導する取り組みである。そして最も効果的なリスクの軽減は、既存の都市集積が発揮する機能力を活用するために既存の脆弱性を改善(補強・更新)していく防災都市づくりと、都市内のハザードの高い地域における土地利用規制を強化し、よりハザードの低い地域に市街地を誘導する都市改造である(図3)。20世紀の人口増加時代に、東京一極集中の解消という課題への回答として始まった「首都機能移転問題」は、地震災害時に首都機能の継続性(BCP)を目指す防災性確保のための首都機能移転問題に変質してきたが、21世紀の人口減少時代・高齢社会時代には、多大な費用をかけてハザードの低い地域への首都機能移転は、望ましい方向ではない。一つには、日本のどこに移転しても、地震が次の日にその地域を襲う可能性を否定できない(図1参照)。都市移転に必要な費用は、福祉など民政部門の充実に振り向けるべきであろう。

東京が首都としての役割を果たすには、既存施設と街の防災強化を急ぐとともに、市街地のハザードにもっと考慮した土地利用計画に基づく市街地の再整理であり、人口減少時代に対応した「コンパクト都市」に向かう100年の取り組みを開始しなければならない。そしてそれには、東京の都市復興を100年の体系として進めるための「事前復興対策」と、次の地震にも備える被災後の「都市復興」は、首都直下地震に備える重要な対策課題となるのである。

図3:脆弱性軽減とハザードからの隔離による被害軽減の概念

カザフスタンにおける首都機能移転

カザフスタン共和国の地図

国の概要

カザフスタン共和国は、旧ソヴィエト連邦崩壊後の 1991年に独立した新興国です。国土面積は、272万km2(日本の約7倍、世界第9位)。民族的にはカザフ 人が約60%、ロシア人が約25%、人口約1,557万人の多民族国家です(2008年現在)。

首都機能移転の概要

首都は、独立後間もない1997年に中国・キルギス国境に近い南部のアルマティから北部のアスタナ(旧アクモラ)に移転しました。移転当初は既存施設を活 用しましたが、翌年に首都基本設計に関する国際コンペを開催し、これに基づく首都地区の開発を進めました。 2004年には大統領府、中央政府機関、国会議事堂、最高裁判所等の新施設の完成により首都地区が概成しました。

首都機能移転の背景には、次の4点があると言われています。

(1)地政学的な観点から、カザフスタンを強化する必要性。 ( アスタナはユーラシアの中心に位置し、国土の東西南北からのアクセス条件に優れている。)

(2)安全確保の観点から、首都を他国との国境からできるだけ距離を置いて国土の中心とする必要性。

(3)カザフスタンを経済的に発展させるため、首都の移転を通じた経済波及効果への期待。

(4)多民族が住まう場所に首都を移転させることによる多民族国家としてのカザフスタンの立国に資する必要性。

また、上記以外にも(1)ロシア人が多く居住しているカザフスタン北部の分離独立運動の抑制、(2)アルマティ地下活断層による大地震の危険性や土石流・雪崩災 害の危険性及びその対策コストが高いことなども指摘されています。

移転候補地の選定にあたっては、首都が満たすべき32の基準に基づいて、カザフスタンの諸都市が評価されました。32の基準のうち重要な社会経済指標としては、気象、景観、地震、環境、交通インフラ、通信、利用可能な建物、人的資源等があり、アスタナは、カザフスタンのほぼ中央、交通の要衝に位置し、人口20万人の集積があることなどから、総合的にみて首都の地にふさわしいと判断されました。

議会のビルの写真

首都機能移転の経緯

(1)〜1994年:首都が満たすべき32の基準による移転 候補地の選定

(2)1994年:上院における移転の決議

(3)1995年:移転決定の大統領令

(4)1998年:首都名称の変更(アクモラ→アスタナ)

(5)1998〜2001年:首都基本設計国際コンペとマス タープラン策定

(6)2004年:中央政府機関の移転完了

新首都の計画と整備

アスタナへの首都機能移転は、以下の3段階で実施されました。

第1段階('96〜'97)
「立法及び司法並びに中枢を担う経済・産業・国防関係行政機関の移転」

第2段階('98〜'04)
「他の中央政府機関の移転」

第3段階('00以降)
「周辺地域を含む圏域全体を産業、行政、文化の中心 として育成」

第1段階における首都機能移転は、旧ソヴィエト連邦時代の建築物を利用した移転であり、この段階では、大統領府、上院・下院、政府各省などは、既存建物に 手を入れて入居しました。第3段階に入って、首都地 区が概成し、現在2011年の建国20周年を目途にスタジアム等の整備が推進されています。

移転に際しては、アルマティで従事していた公務員すべてをアスタナに移すのではなく、幹部職員を中心とする約3,600人(職員の約2割程度)が移転対象と され、不足する職員はアスタナにおいて確保することとなりました。

首都アスタナの市域面積は710km2(東京23区は622km2)で、政府、外交及び新都心地区は9.5km2(東京都千代田区は11.6km2)です。計画人口は、2010年時点で49.5万人とされていましたが、周辺地域からの人口流入などにより、2002年時点でそれを突破し、2008年現在60.2万人となっています。2005年の調査では、2030年に120万人に達すると予測されており、マスタープランの修正作業が行われています。 首都機能移転に係る事業費は、首都地区を含む特別経済地区内の2001〜2007年の累積で約65億ドルとなっており、このうち42億ドルが竣工済、残りは現在建設中です。

首都機能移転に伴う新首都(アスタナ)・旧首都(アルマティ)の変化

アスタナは、州と同様の権限を持つ特別市(都市州)として位置づけられるとともに、首都が果たすべき責務等を定めた「首都の位置づけに関する法律」に基づき、市は基盤整備、産業振興、都市計画、教育、文化等、 総合的な行政運営を担っています。 一方、アルマティも特別市として位置づけられ、中央アジアにおける金融センターとしての整備に向けて、アルマティ地域金融活動管理庁の設立、金融機関等のためのオフィス地区の建設など、ソフト、ハード両面の取組が推進されています。

首都機能移転に対する評価

ナザルバエフ大統領がイニシアチブをとって推進した首都機能移転は、アスタナの新都市整備が順調に進んでいることに加え、停滞していた国全体の経済が急速に発展を続けていることもあり、国民、企業、行政関係者等から、総じて好意的に評価されています。アルマティにおいては、当初反対意見が多くありましたが、 いったん減少した人口が増加に転じるなど、経済が活性化しており、現在ではあまり不満は聞かれなくなっています。

カザフスタンの首都機能移転の特徴

大統領府

(1)移転を通じた国土の再編

建国後、ロシア人が流出し、北部経済が停滞しましたが、首都機能移転後、アスタナが国土における北部の極(立法司法行政機能)として、アルマティ(経済機能)とともに、二眼レフ型の国土構造を担うように再編されてきています。

(2)安全保障・防災的な視点に立った首都の整備

旧首都アルマティにおける地震、土石流などの災害の危険性、隣国との位置関係等も考慮して、移転の決定、移転先の選定が行われましたが、災害危険性が移転の理由の1つとして取り上げられたことは、海外の移転事例の中ではあまりみられないといえます。 また、アスタナでは春の融雪時に洪水が発生することがあり、ダム、堤防等の対策がとられています。

(3)都市州制度の活用

移転を機に、アスタナとアルマティは、州と同格の特別市に指定され、地方制度面で他の市町村と異なる特別な地域として、独自の都市整備が行いやすくなっています。特に、アルマティについては、前首都としての位置づけを尊重する意味もあり、金融センターの整備とあいまって、首都機能移転に対する一種の補償措置になっていると考えられます。

アスタナにおける首都地区の概要

韓国京畿道(キョンギド)の方々が国土交通省を訪問されました

当日の模様平成21年2月10日、韓国の京畿道庁、京畿開発研究院(京畿道及び郡市、地元企業により共同出資・設立されたシンクタンク)、京畿道経済人団体連合会等から8名の訪問を受けました。

通訳を交えて、東京一極集中の状況、首都機能移転をめぐる経緯、主要な首都圏整備関係施策等について国土交通省首都機能移転企画課より説明し、意見交換を行いました。

また、韓国では、2007年より首都ソウルから南南東へ約120kmの世宗特別自治市へ一部省庁の移転を行う行政中心複合都市の建設が進められていることから、その目的、建設の見通し、同都市建設についての京畿道の考え方等について聞き取りを行いました。韓国側からは、首都圏の一極集中是正を目的として、政権交代後の世界同時不況といわれる中でも事業は継続していることなどの説明がありました。 (注)京畿道:首都ソウル特別市を取り囲むように位置し、ソウル、仁川広域市とともに韓国の首都圏を形成している。

国会等の移転については様々な場面で学ばれています

当日の模様平成20年11月28日、都内の富士見丘中学校3年生の生徒さん2名による国土交通省職場体験学習が行われました。国土交通省の業務全般についての説明と関連施設見学の後、当課において首都機能移転の概要説明、CD−ROM「なぜ?なに?首都機能移転」を使用したイメージ画像による仮想都市体験や、クイズ問題への挑戦など楽しく学んでもらいました。生徒の皆さんは真剣な態度で職員の説明を聞き、熱心に学習に取り組んでいました。

色々な情報をご覧いただけます

インターネットの国土交通省ホームページにおいて、国会等の移転に関する様々な情報提供を 行っておりますので、是非一度ご覧ください(本紙バックナンバーもご覧になれます)。また、本 文中で触れた事項をはじめ、ご関心の事項がございましたら、お問い合わせください。お待ち しております。

なお、平成11年1月から発行してまいりました「新時代」は、諸般の事情から、今号をもちまして印刷物の発行を終了させていただきます。長い間ご愛読いただきまして、誠にありがとうございました。インターネット版「新時代」につきましては、引き続き掲載を継続する予定にしております。今後はホームページをご覧いただければ幸いです。

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