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LINKSのイベント開催記録やコラム

LINKS:DATA × Hackathon
キックオフイベント
前編・Project LINKSの概要・ユースケース解説

EVENT

2024-09-06

2024年9月6日に、LINKS: DATA × Hackathonのキックオフイベントをオンラインで開催しました。国土交通省では、Project LINKSで構築した各種オープンデータを活用して、アイデア創出や開発を楽しんでもらえるきっかけとなるようにアイデアソンとハッカソンイベントを企画。その1回目として、Project LINKSの概要やユースケースの解説と、有識者を交えたトークセッションを行いました。

◎前半は、Project LINKSの概要と、オープンデータの定義・価値・意義の内容を公開します。後半はこちらから。

Agenda  1 Project LINKSの概要

解説:内山裕弥

<プロフィール>

国土交通省 総合政策局 モビリティサービス推進課 総括課長補佐
Project LINKS テクニカル・ディレクター
PLATEAU Adovocates 2024
東京大学 工学系研究科 非常勤講師
東京大学 空間情報科学研究センター 協力研究員

1989年東京都生まれ。首都大学東京、東京大学公共政策大学院で法哲学を学び、2013年に国土交通省へ入省。国家公務員として、防災、航空、都市など国土交通省の幅広い分野の政策に携わる。
法律職事務官として法案の企画立案や法務に長く従事する一方、大臣秘書官補時代は政務も経験。
2020年からはProject PLATEAUのディレクターとして立ち上げから実装までを一貫してリード。2024年4月から現職。

Project LINKSとは?

まずは、Project LINKSを知ってもらうため、大まかな概要を示します。

Project LINKSは、2024年4月からスタートした国土交通省の新しいDX推進プロジェクトです。キーワードとなるのは行政情報の活用。これまでに地図やインフラ分野のデータ のオープン化をメインテーマにしたプロジェクトはありましたが、それ以外にも国土交通省の所管分野には、公共交通や空き家、無人航空機(ドローン)など多方面にわたり、申請情報や事故等報告情報などの行政情報 が蓄積されています。ところが、これらの情報は必ずしもデータとして蓄積・管理されておらず、バラバラの帳票や紙、PDFなどで保管されています。Project LINKSとは、これらの大量の情報を収集し、データとして再構築して、分野横断的に活用することを目指すプロジェクトです。再構築したデータは、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング。証拠に基づく政策立案)やオープン・イノベーションのためのアセットとして活用していきます。

*LINKS Linking Innovation, Open data, Knowledge, and Solution

このように、LINKSの柱の一つには、オープン・イノベーションが位置付けられています。その根底にあるのは、行政情報をEBPMだけで使うのはもったいないという思いです。オープンデータ化して広く公開することで、イノベーションにつなげたい。その一環としてアイデアソンやハッカソンといったイベントを開催しようとしています。

国土交通省の持っている情報は、いまだに紙の場合が多く、WordやExcel、PDFなど、使用するアプリやフォーマットの異なるデータもあります。それらを生成AI技術によって機械処理や二次利用ができる構造データに変換しようとしています。そのためのデータ再構築基盤としてLINKS Veda(ヴェーダ)を開発しています。

とはいえ行政情報は膨大な量ですから、現在データ拡充に努めているところです。また、EBPMでの活用にシームレスにつなげるため、データ分析ツールをパッケージで提供しています。また、Vedaではオープンデータ整備に必要な処理も一貫して行えるようにしています。

データをどう使う?

では、LINKSを使ってオープンデータ化された行政情報をどのように活用するのか、いくつかソリューションのアイデアを挙げます。

①ドローン事故情報のビッグデータを活用したドローン事業者向けアドバイザリーサービス

ドローンは飛行させるのにDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)で申請するのですが、機体情報、申請者の情報、事故情報をリレーションできていなかった。LINKS Vedaでそれらの情報を統合し分析を可能にします。

②GTFS(公共交通機関情報)を活用した乗換案内等の地方普及

GTFSは標準化されていて、オープンデータ化もされており、その拡充を図っています。それに加え、現在検証段階ですが、紙で保管されている旅客自動車運送事業の申請書類、時刻表や地理情報を標準フォーマットに変換して、GTFSの普及をねらっています。

3.空き家データを活用した空き家対策サービス

空き家情報は、水道使用量や住民情報を名寄せ・統合したデータを機械学習により推論することで、空き家かどうかをGISデータで推定できるようにします。

4.観光統計情報を活用したマーケティングサービス

紙やPDF等で保管されていた観光統計原票(観光地点パラメータ調査)を、人流データと組み合わせて拡大推計することで、精度の高い観光動態の分析を実現し、観光マーケティングや政策評価に活かします。

このように、Project LINKSでは、オープンデータとして公開することで、行政情報と各種データを組み合わせることにより、新たなサービスやソリューションに繋げる取組みを行っています。

2024年7月にProject LINKSのwebサイトを立ち上げており、またX(旧Twitter)のアカウント@LINKS_MLITでも情報を発信していきますので、ぜひ注目してください。

もし、アイデアや技術があれば、ぜひディスカッションしましょう。気軽にご連絡ください。

Agenda  2 オープンデータの定義・価値・意義

オープンデータ化のメリット

オープンデータの共通ルールは、営利・非営利を問わず二次利用できること、そして機械判読が可能で、無償であることです。WordやExcelではなく、互換性の良いCSVやJSON、GMLやXMLといったデータ形式になっています。

我々の目的は、行政情報をオープンにすることで、政策の高度化・効率化を図るとともに、政策の透明性や信頼性を向上させることです。また、3D都市モデルを整備するPLATEAUのプロジェクトもそうでしたが、データをオープンにすることでデータの誤りを外部から指摘してもらえる。それが我々にとって気づきとなってデータ品質を向上させられるというメリットもあります。

LINKSによるオープンデータ活用 4例

ここでは、LINKS Vedaで情報をデータ化した例を4つ紹介します。まだ整備中のものもありますが、理解を深めてもらうために具体的に示します。

データ活用① 一般旅客定期航路事業等

一般旅客定期航路事業とは、いわゆるフェリーの運行事業のことです。国土交通省が所管していて、当然ですが事業を始めるには許可申請が必要です。そこで使用される事業許可申請書と、事故報告書+気象データをCSV形式のオープンデータにします。このようなデータを元にしたシミュレーションにより、安全性評価や事前訓練等に活用できるかもしれません。

*一般旅客定期航路事業 一定の航路に旅客船(13人以上の旅客定員を有する船舶)を就航させて、一定の日程表に従って人の運送をする旨を公示して行う事業のこと。一般旅客定期航路事業を営もうとする者は、航路ごとに、航路の拠点を管轄する地方運輸局長の許可を受けなければいけない。

DATA

  • 一般旅客定期航路事業許可申請書(国土交通省海事局)
  • 船舶事故等調査報告書(運輸安全委員会)
  • 海上分布予報データ(気象庁)

USE CACE IDEA

  • 一般旅客船事業の安全性評価サービス
  • もしものときの訓練シミュレーション
データ活用② 無人航空機の事故等に関するデータの活用

無人航空機とは、ドローンのことです。ドローンの飛行に関してDIPS2.0というオンライン申請システムがありますが、複数のデータのリレーションができていない。そこでLINKS Vedaで飛行計画や機体登録、事故報告、空域情報などの情報を統合してCSV形式で公開します。事故情報のビッグデータを分析すれば、安全性を評価したり、保険料の算定にも使えるかもしれません。

*DIPS2.0 ドローン情報基盤システム(Drone/UAS Information Platform System)のこと。無人航空機の各種手続きについて、利用者の利便性向上、処理の迅速化を実現するためDIPSを整備し、オンラインでの申請を可能としている。

DATA

  • 無人航空機飛行計画データ(DIPS2.0情報/国土交通省航空局)
  • 無人航空機機体登録データ(DIPS2.0情報/国土交通省航空局)
  • 無人航空機事故報告データ(DIPS2.0情報/国土交通省航空局)
  • 各種空域情報(国土数値情報等)

USE CASE IDEA

  • 新しいドローン保険サービスの開発
  • 適正な保険料算定サービス
データ活用③ 貨物自動車運送事業者の労働生産性

トラック事業は、物流2024年問題でトラックドライバー労働規制の強化や人手不足となり、「モノが運べなくなる」可能性が懸念されていることが国土交通省の課題となっています。そこで、労働生産性の指標の算出にあたって貨物自動車運送事業の事業実績報告書等のデータを活用できないかと考えています。労働生産性の分析ができれば、必要な対策に活かせるのではないでしょうか。

DATA

  • 貨物自動車運送事業報告規則に基づく事業実績報告書(国土交通省物流・自動車局)
  • 貨物自動車運送事業報告規則に基づく事業報告書(国土交通省物流・自動車局)
  • 毎月勤労統計調査(厚生労働省/eStat)

USE CASE IDEA

  • 貨物自動車運送業における労働生産性を検証
  • 物流業界分析レポートサービス
データ活用④ 内航海運業事業

一般的になじみは薄いかもしれませんが、貨物輸送は海運も多く利用されています。この業界では船舶と船員の高齢化が進んでおり、人手不足も常態化しています。事業者は経営地盤が脆弱な中小企業が多く、政策課題になっています。そこで、登録申請や事業概況、船舶輸送統計、港湾の統計や位置情報などを、CSV形式のオープンデータにします。これにより、港湾単位での評価から効率化施策検討ができるかもしれません。

*内航海運業 日本国内の港から港を結び、物品を海上で運送することを内航海運といい、その事業を行うことを内航海運業という。

DATA

  • 内航海運業法登録申請関連データ(国土交通省海事局)
  • 内航海運業事業概況報告書(国土交通省海事局)
  • 内航船舶輸送統計調査(国土交通省総合政策局)
  • 港湾調査・港湾統計年報(国土交通省総合政策局)
  • 港湾位置情報(国土数値情報等)

USE CASE IDEA

  • 港単位の経済性や環境性の評価
  • 船のメンテナンスの最適化サービス

Information 1

オープンデータ化を活用したアプリケーションのコンテスト開催!

オープンデータは他にもあって調整を進めているところで、おもしろいデータはまだまだあります。これから順次公開しますが、そのデータに触れてもらって、アイデアをひねっていただきたい。みなさんの発想力に期待しています。

そこでLINKSでは、「LINKS: DATA × Hachathon 国土交通分野のオープンデータ活用チャレンジ」と題して、アイデアソンとハッカソンを開催します! 実際にLINKSのデータを触ってアイデアを巡らせたり開発ができます。審査員、ファシリテーター、メンターにも来ていただきますので、ぜひみなさん奮ってご参加ください。

また、すでに募集を開始していますが、「公共交通オープンデータチャレンジ2024 -powered by Project LINKS-」も開催します。鉄道やバス、シェアサイクルなど全国の公共交通事業者の協力を得てGTFS公開し、アプリケーションコンテスト形式のイベントです。2025年1月17日が締め切りですので、こちらも奮って応募してください。

今後、G空間情報センターでProject LINKSのデータを公開します。こちらからデータを取得して、さまざまに活用してもらえればと思います。商業利用、二次加工、編集も可能です。ただし、クレジットの記載は必須で、他にもルールがありますので、ご確認のうえご利用ください。

Q&A

Q  LINKSのオープンデータは国土数値情報ダウンロードサービスで公開されるデータと重複するのでしょうか?

A しません。国土数値情報はインフラ的、地理的データをメインに扱っているのですが、LINKSは行政情報として事業にフォーカスしているので、性格が異なります。

視聴者アンケート

キックオフイベントでは、今回挙げたProject LINKSによるオープンデータの活用例の4つのうち、どの分野に興味があるか、もっともおもしろいと思った活用例に1票を投じてもらいました。

投票の結果、「貨物自動車運送事業者の労働生産性に関するデータ等の活用」が最も投票が多い結果となりました!

後半の記事では、有識者を交えたトークセッションの様子を公開します。是非ご覧ください。

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