貨物自動車運送事業者の賃金水準・安全実態の可視化による事業者支援の高度化
昨年度の実証では、貨物自動車運送事業者の労働生産性ランキングの可視化や重回帰分析による影響要因の特定機能を開発しました。一方で、人件費に関する項目の未活用、ユーザーによる手動でのグループ分類への未対応、報告書の受領年度のミスマッチといった課題が明らかになりました。
こうした課題を踏まえ、分析項目の追加や対象報告書の年次・範囲の拡大によりアプリ機能を拡充することを目指しました。
LINKS VedaおよびLINKS BIを用いた実証では、「運転者への給与支給が下位である事業者の抽出」「低運賃で運送を引き受けている事業者の抽出」「悪質な事故を起こしている・事故件数が多い事業者の抽出」の3つのテーマについて検証を行いました。

Project LINKSでは、専門知識がないユーザーでもデータを簡単に構造化しチャット機能や可視化アプリケーションで利用できるノーコードのシステム「LINKS Veda」および可視化ツール「LINKS BI」を開発し、行政情報の再構築を行っています。
「LINKS Veda」は、国土交通省が行政手続等を通じて保有するワードやエクセル、PDF、紙などの「非構造データ」を「構造データ」として再構築するためのソリューションです。LLM(大規模言語モデル)を用いて自然言語を解析し、非構造データから意味情報を抽出。指定されたカラムに格納することで、テーブルなどに構造化されたデータを自動生成します。
また、「LINKS BI」は、LINKS Vedaで作成したデータをそのまま投入し、チャットによる分析指示を可能とする「対話型BI」を実装することで、ユーザーが欲しいアウトプットを手軽に作成することが可能となります。

「LINKS BI」は、以下に示す機能を有しており簡単に分析結果を可視化できます。
①過去のチャット履歴…これまでに行った分析の履歴を一覧で確認
②現在のチャット履歴…現在の分析テーマに関するAIとのやり取りを表示
③チャット入力欄…AIに対して指示や質問を入力するための欄
④分析結果の表示…テーブルやグラフなどの可視化結果を表示

| 元データ名 | 貨物自動車運送事業実績報告書 |
| データ作成方法 ・内容 | 紙のデータをLINKS Vedaにより構造化 |
| データ構造化後 の主な項目 | 事業者名 株式会社〇〇物流 営業概要_従業員数 29 運転者数(人) 50 輸送実績_営業収入_千円 188,123 輸送トン数_実運送トン 11,000 |
| 年次 | 2023年度 |
| 範囲 | 全国 |
| 作成レコード数 | 40,322 |
| 原典情報 | e-GOV 貨物自動車運送事業報告規則第4号様式(第2条関係)(日本産業規格A列4版) https://laws.e-gov.go.jp/law/402M50000800033/#Mp-At_2-Pr_2-It_1 |
| 元データ名 | 一般貨物自動車運送事業報告書 |
| データ作成方法 ・内容 | 紙のデータをLINKS Vedaにより構造化 |
| データ構造化後の 主な項目 | 事業者名 〇〇運送株式会社 給与・手当 合計千円 60,000 財務諸表損益計算書_当該事業営業収益 千円 250,030 貸借対照表_流動資産 千円 75,804 一般貨物自動車運送事業損益明細表_営業収益 運送収入 貨物運賃 千円 250,030 |
| 年次 | 2023年度 |
| 範囲 | 近畿運輸局 |
| レコード数 | 8,717 |
| 原典情報 | 国土交通省 一般貨物自動車運送事業 事業報告書 https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk4_000102.html |
| 元データ名 | 自動車事故報告書 |
| データ作成方法 ・内容 | 紙のデータをLINKS Vedaにより構造化 |
| データ構造化後の 主な項目 | 自動車の使用者の氏名又は名称 〇〇交通株式会社 発生日時 2024-09-1316:20:00 当時の状況_大分類 [車両状況,乗客対応,報告・記録・点検状況] 営業所及び運行等の状況_当時の運行計画 〇〇バスセンター→15:23発 〇〇経由 〇〇行 当時の状況_車両の故障に起因する場合の故障箇所 燃料装置 |
| 年次 | 2023年度、2024年度 |
| 範囲 | 全国 |
| レコード数 | 8,657 |
| 原典情報 | 国土交通省 関東運輸局 神奈川運輸支局 事故報告書様式 https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/s_kanagawa/seibi_about12.html |
その他のデータ
1.運転者への給与支給が下位である事業者の抽出
事業実績報告書と事業報告書を事業者名・住所で統合し、一般貨物自動車運送事業者について運転者1人当たり給料・手当や人件費の水準を算出・可視化することで、給与水準が低い事業者の把握や賃金改善策の検討に活用できます。

2.低運賃で運送を引き受けている事業者の抽出
事業実績報告書と事業報告書を統合し、1日1車当たり実車キロで事業者を分類したうえで、実車キロ当たり運送収入を算出・可視化することで、特に長距離輸送で低運賃となっている事業者を抽出し、適正運賃確保に向けた分析に活用できます。

3.悪質な事故を起こしている・事故件数が多い事業者の抽出
事業実績報告書と自動車事故報告書を事業者名・住所で統合し、実車キロ当たり事故件数を算出・可視化することで、事故件数が多い事業者や重大事故リスクの高い事業者を把握し、安全対策や重点的な指導監督の検討に活用できます。

今回の検証会を通じて、システムの活用イメージを持つことができ、これまで紙ベースで保管され、提出件数の把握にとどまっていた事業報告書・実績報告書についても、ツールを用いることで容易に分析できることが確認されました。一方で、データ連携等運用面の懸念も今後の検討すべき課題として示されました。


\ 利用者の声 /

これまで感覚や一部の大きな声に左右されがちだった政策判断を、眠っていた紙データを活用してデータドリブンに変えていける可能性を感じました。運賃や実車率のシミュレーションまで踏み込んで分析できた点は非常に勉強になりました。
毎年紙で集めるだけで件数把握にとどまっていたデータが、今後の物流政策に活かせる資産になると感じました。手書き情報の集計には課題があるものの、電子化の仕組みと上手くつながれば、職員負担を抑えながらデータ蓄積や窓口業務の効率化にもつながると期待しています。
