2.「NPO基礎講座」(発行;ぎょうせい)
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山岡 義典(日本NPOセンター常務理事)他 著
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では、なぜ民間が非営利のことをやらなければならないかということを説明するために、ここでは四点ほど挙げます。
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- <1>先駆性
- まず、先駆的な役割を担うことができるということです。儲かる儲からないということに関係なく、社会の問題解決に対して先駆的に取り組むことができるのです。行政は問題が明らかになり、大多数がその問題性を認めてはじめて、法律をつくり予算をつくって問題に取り組むことができますが、民間であれば、思い立った人が儲かる儲からないに関係なく問題に取り組むことができるのです。(以下省略)
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- <2>多元性
- 次に多元性ということです。つまり、いろいろの価値観でサービスを提供することができるということです。行政というのは基本的に、多数党が法律をつくって一つの価値観で活動を行いますから、大多数の人たちが望むサービスは提供できます。しかし、「私は少し違う社会サービスを受けたい」という人が100人に5人か10人いるときに、このサービスを行政が供給することはできません。しかし、第三セクターはこのようなマジョリティでない人たちのさまざまな、場合によっては個別の要求を満たすような社会サービスを行うことができるのです。(以下省略)
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- <3>批判性
- もう一つが批判性です。この批判性が抜けてしまえば、NPOはワサビのない寿司みたいなものだと思います。自発的にやるわけですから、だいたいの場合何か問題を感じ始めるわけです。そういう観点から見ると社会の仕組みがいろいろ見えてきます。第一、第二のセクターについて第三者の目で見るということです。第一、第二のセクターの組織ではそれぞれ内部に監視機構をもっていますが、内部からはなかなかわからないことも多くあります。NPO自身も同様ですが、内部から問題を明らかにして自己改革していくのは、とても難しいことです。しかし、第三の先駆的な目から見ると、問題点も見えてくるのです。そして、その指摘によって初めて、社会的にもそれが問題だということが明らかになり、それぞれが、いやいやであっても自己変革していくことができるわけです。(以下省略)
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- <4>人間性
- 四つ目は人間性ということです。社会サービスの中には人間性に基づかなければできないものが、たくさんあります。一見行政でやってもいいのではないかと思えても、行政にはできないものがあります。(中略)医療的なお世話は行政ではできるかもしれませんが、ホスピスのようなところで心のケアに当たることについては、行政ではやはりできません。人間対人間の社会サービスで、行政でも企業でもなじみにくいというものは結構あります。それをNPOは提供することができます。(以下省略)
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