課題・これまでとの考え方の違い

施設では守り切れない大洪水は必ず発生する
平成27年9月関東・東北豪雨では、記録的な大雨により鬼怒川の堤防が決壊し広範囲かつ長期間にわたる浸水、堤防近傍の家屋が氾濫流で倒壊・流出、多数の孤立者の発生などの特徴がありました(右写真)。
これまでの水防災は、川から水が溢れないようにする施設整備を中心に対策を行ってきましたが、これからは、そういった施設では守り切れない大洪水が必ず発生する前提にたって、施設能力を上回る洪水が発生した場合においても逃げ遅れる人をなくす、経済被害を最小化するなど、減災の取り組みを社会全体で推進していきます。

広範囲が長期間浸水
多くの住宅地を含む広範囲が長期間にわたり 浸水(常総市の約1/3に相当する区域約40km2、 約1万棟が浸水。浸水解消まで約10日間)
多くの家屋が倒壊・流出
堤防の決壊に伴い発生した氾濫流により、
堤防近郷の多くの家屋が倒壊・流出
多数の孤立者・市外への避難
避難勧告の遅れ、多数の孤立者
(約4300人が救助)。避難者約1800人の
半数が市外に避難


これまでの洪水に対する考え方や対策では、必ずしも十分ではないことが浮き彫りとなりました。
そこで、平成27年10月に国土交通大臣から社会資本整備審議会会長に対し、「大規模氾濫に対する減災のための
治水対策のあり方について」が諮問され、対応すべき課題として以下の内容が整理されました(参考②)。


対応すべき課題
  • 危険な場所からの立ち退き避難
    (市町村や住民等の適切な判断や行動・市町村を超えた広域避難)
  • 水防体制の脆弱化
  • 住まい方や土地利用における水害リスクの認識の不足
  • 「洪水を河川内で安全に流す」施策だけで対応することの限界
  • 社会資本整備審議会の答申では、これらの課題に対する
    基本方針や「速やかに実施すべき対策」「速やかに検討に着手し早期に
    実現を測るべき対策」が示され、それらに基づいて策定されたのが、
    「水防災意識社会 再構築ビジョン」です。

    ポイント1: ソフト対策

    より実効性のある「住民目線のソフト対策」を
    前面に打ち出しました
    大洪水になったとき、家屋が倒れてしまう可能性がある区域 (家屋倒壊等氾濫想定区域)はどこか、いざというとき、早め早めに避難をしなくてはいけない区域はどこか、そういったリスク情報を積極的に開示します。そして、水害時の避難勧告等の発令に着目した事前の防災行動計画(タイムライン)を策定し、訓練を重ねます。
    さらに、携帯電話に洪水情報をプッシュ型で配信可能とすることにより、水害時の住民の主体的な避難を促進します。
    ソフト対策のポイント

    ポイント2: ハード対策

    「洪水氾濫を未然に防ぐ対策」に加え、
    「危機管理型ハード対策」を導入
    整備が済んでいない区間のうち、優先区間を設定して、
    氾濫を起こさないための堤防かさ上げ等に加え、
    水があふれてしまった場合でも、堤防が決壊するまでの時間を
    少しでも延ばす「危機管理型」の対策を導入し推進します。
    ハード対策のポイント

    ポイント3: 地域一体の取組

    「河川管理者・都道府県・市町村等で協議会を設置し、 ハード・ソフト対策を一体的、計画的に推進します
    河川管理者である国、そして水防活動や避難勧告の発令等を担う市町村等の関係機関による協議会を設置し、現状の水害リスク情報や減災に係る取組状況、課題等を共有して、概ね5年間で達成すべき減災に関する目標を定め、地域の特徴を踏えた具体的な取組内容を「地域の取組方針」として策定して進めます。
    また、毎年進捗状況を共有するなどフォローアップを行い、水防災意識を高めていくこととしています。
    このようにして、関係機関が連携して取組を推進し、住民に呼びかけを行い、取り組みの進捗状況を定期的に確認していくことで、地域一体で水防災意識社会を再構築していきます。
    各地の協議会情報

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