(5) 海岸の保全に関するその他の重要事項
1) 広域的・総合的な視点からの取組の推進
一体的に社会経済活動を展開する地域全体の安全の確保、快適性や利便性の向上に資するため、海岸背後地の人口、資産、社会資本等の集積状況や土地利用の状況、海岸の利用や環境、海上交通、漁業活動等を勘案し、関係する行政機関とより緊密な連携を図り、広域的・総合的な視点からの取組を推進する。
災害に対する安全の確保については、連たんする背後地を一体的に防護する必要がある。このため、海岸だけでなく沿岸部における関連する施設との防護水準の整合の確保等、関係機関との連携の下に、一体的・計画的な施設整備を推進する。
海岸侵食は、土砂の供給と流出のバランスが崩れることによって発生する。この問題に抜本的に対応していくため、海岸地形のモニタリングを行いつつ、海岸部において、沿岸漂砂による土砂の収支が適切となるよう構造物の工夫等を含む取組を進めるとともに、海岸部への適切な土砂供給が図られるよう河川流域における総合的な土砂管理対策とも連携する等、関係機関との連携の下に広域的・総合的な対策を推進する。
また、海岸は、海と陸が接する独特な空間であることから、様々な利用の可能性を秘めている。海岸の有する特性を更に広く適切に活用していくため、広域的な利用の観点も念頭に置きつつ、レジャーやスポーツの振興、自然体験・学習活動の推進、健康の増進及び自然との共生の促進等のため、海岸及びその周辺で行われる様々な施策との一層の連携を推進する。
さらに、近年、洪水や高潮等により広範囲に大規模な流木等が海岸に漂着し、海岸の保全に支障が生じていることから、こうした問題に対しても適切に対応する。
2) 地域との連携の促進と海岸愛護の啓発
海岸の保全を適切かつ効果的に進めていくためには、地域の意向に十分配慮し、地域との連携を図っていくことが不可欠である。
災害に強い地域づくりを進めるため、海岸保全施設の整備と併せ、関係機関と連携して防災情報の提供や災害時の対応方法の周知等、地域住民の防災意識の向上及び防災知識の普及を図る。
海岸におけるゴミ対策や清掃等海岸の美化については、地域住民やボランティア等の協力を得ながら進めるとともに、参加しやすい仕組みづくりに努める。また、無秩序な利用やゴミの投棄等により海岸環境の悪化が進まないよう、モラルの向上を図るための啓発活動の充実に努める。
適正な利用を促進していくためには、海岸は海への入口であり、時には人命を損なう危険な場所でもあるという認識に立ち、地域特性に応じた海岸利用のルールづくりを推進するとともに、安全で適正な利用に必要な情報を適宜提供していく。海岸の保全のために実施する行為の制限等については、利用者にわかりやすく表示するよう努める。
さらに、こうした地域住民との連携を緊密にしていくため、海岸愛護の思想の普及を図るとともに、環境教育の充実にも努め、地域における愛護活動が推進されるような人材を育成する。
3) 調査・研究の推進
質の高い安全な海岸の実現に向け、効率的な海岸管理を推進するため、海岸に関する基礎的な情報に関する収集・整理を行いつつ、効果的な防災対策に関する調査研究、広域的な海岸の侵食に関する調査研究、生態系等の自然環境に配慮した整備に関する調査研究、新工法等新たな技術に関する研究開発等を推進していく。
また、民間を含めた幅広い分野と情報の共有を図りつつ、互いの技術の連携を推進するとともに、国際的な技術交流等を図り、広くそれらの成果の活用と普及に努める。
さらに、地球温暖化に伴う気象・海象の変化や長期的な海水面の上昇が懸念されており、海岸にとっても海岸侵食の進行やゼロメートル地帯の増加、高潮被害の激化等深刻な影響が生ずる恐れがあることから、潮位、波浪等について監視を行うとともに、それらの変化に対応すべく所要の検討を進める。
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