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河川局

Topics 記者発表


 

【別紙】

利根川水系戸倉ダム建設事業に係る環境影響評価書に
  対する国土交通大臣意見

 利根川水系戸倉ダムは、片品川及び利根川本川の洪水調節や、既得用水及び異常渇水時の緊急水の補給等流水の正常な機能の維持を図るほか、渋川市、埼玉県、北千葉広域水道企業団、東京都の水道用水の取水を可能ならしめる重要な施設である。
  戸倉ダムの事業実施区域は、その一部が日光国立公園内に位置するとともに、希少猛禽類を頂点とした豊かな生態系が保たれている重要な地域内にあることから、事業の実施に当たっては、自然環境に与える影響を可能な限り回避、低減できるよう、環境保全に最大限配慮する必要がある。
  本事業については、付替国道の設置に伴う改変面積を極力減少させる等、環境影響の軽減に向けた取り組みが見られるところであるが、より一層の環境保全の見地から、以下の意見を述べるものである。
 

・.送付された環境影響評価書についての国土交通大臣意見は、以下のとおりである。

  1. 環境保全技術の開発の進展等に鑑み、実行可能な範囲で新技術を取り入れるなど環境保全措置の実施に努めること。

  2. 事後調査等の実施に当たっては、その結果が保全対象動植物の生態に関する科学的知見の基礎資料として活用できるよう実施可能な範囲で配慮すること。

  3. 選択取水設備の運用など下流の河川環境に配慮したダムの操作方法について更に検討を進めること。

・.環境大臣意見を踏まえた国土交通大臣意見は、以下のとおりである。

1.自然環境

(1)  事業の実施に伴う環境影響からクマタカを保護するためには、繁殖をはじめ生息に支障を及ぼすおそれのある行為等を避けるよう特に配慮する必要があるが、本事業に係る評価書では、クマタカの繁殖等生息への影響が指摘されている。
  このため、事業者は事業によるクマタカの繁殖等生息への影響を回避・低減する観点から、原石山、土捨場、付替国道等の変更を含め計画を再検討するとともに、クマタカの生息環境の改善を図る観点から、必要に応じて採餌環境等の改善整備を適切に講じるなど、クマタカの保護に万全を期すこと。
  また、上記の検討に当たっては、専門家の意見を聴取し、その意見をクマタカの保護対策に確実に反映するとともに、事業により繁殖等生息に支障が生じるおそれがあると見込まれる区域内における工事等の実施については、この専門家による検討結果を踏まえた保護対策に従い、実施するものとすること。
  さらに、工事中、供用後において周辺地域も含めた生息状況について事後調査を行い、事業実施によるクマタカの繁殖等生息への影響が確認された場合は、工事の休止も含め、適切な措置を講じること。
(2)  クマタカ以外の猛禽類については、事業実施区域及びその周辺において営巣している可能性も考えられるとされていることから、工事中、供用後において周辺地域も含めた生息状況について環境監視を行い、評価書の予測結果と異なる影響が確認された場合は、専門家の意見を聴取した上で、適切な措置を講じること。
(3)  ヤマネ、モモンガ、樹洞性コウモリ類等の樹洞性動物について、環境保全措置として主要な生息環境となる落葉広葉樹林の復元・維持及び周辺植生との連続性を考慮した植生の回復が検討されているが、それまでの間の生息場所の確保等の保全策についても専門家の意見を聴取した上でさらに検討すること。
  また、これら動物の生息状況について、引き続き生息状況に関する環境監視を行い、その結果を踏まえ、詳細な工事実施計画を検討する際に、これら動物の生息への影響を最小限とするよう配慮すること。
(4)  本事業による改変箇所に生育する植物種のうち、環境保全措置を講ずることとされているものについては、詳細な工事実施計画を検討する際に、改変を最小限にするよう専門家の意見を聞いて更に検討し、影響を最小限とすること。
  その上で、移植、播種が必要と判断された場合には、最適な手法及び移植先について更に検討し、増殖、生育状況について確認しながら慎重に実施すること。
(5)  貯水域の出現により、陸域及び河川域の生態系において、それまでの動物の移動経路等の分断が生じ、生息域の連続性への影響が懸念されることから、生態系の典型性において、移動性の視点から注目種として選ばれた動物種について、引き続き生息状況の環境監視を行い、その結果を踏まえ、必要に応じ適切な措置を講じること。
(6)  評価書においては、動物の重要な種及び生態系への環境影響の低減において効果のある環境保全措置として、改変箇所跡地をはじめとする複数の箇所において植生の回復を図ることとしているが、動物の重要な種や生態系に関する注目種について、引き続き生息状況の環境監視を行うことにより、環境保全措置の効果を把握すること。また、期待する効果が得られていない場合にあっては、環境保全措置の追加を検討する等、適切な措置を講じること。
(7)   本事業の工事中において、事後調査、環境監視等に伴い、新たに重要な動植物が確認された場合は、専門家の意見を聴取した上で、これらの種の生息、生育環境に対する影響が最小限となるよう、適切な措置を講じること。
(8)  本事業の実施にあたり、支障になる樹木については、伐採量を必要最小限とし、極力樹林地の保全に配慮すること。
  改変地や水没地内の樹木については、可能な限り植生の回復に利用すること。
  また、改変されることになる区域の表土についても保全を図り、植生復元に活用すること。
 

2.人と自然とのふれあい

 事業実施区域は、その一部が日光国立公園内に位置し、特に重要な利用拠点のひとつである尾瀬地域に近接していることから、事業の実施が国立公園の利用に支障のないよう、特に配慮すること。また、国立公園の利用への支障の懸念が生じた場合には、関係機関と調整を図り、適切な措置を講じること。

3.水環境

(1)  貯水池及び下流河川地点の水質について、評価書に記載されている事後調査に加え、供用後の環境監視を実施し、必要に応じて適切な対策を講じること。
(2)  ダム完成後の水温変動に対する環境保全措置として実施することとしている選択取水において、水温に加えて濁りを考慮した運用を検討する際には、複数の運用条件での予測及びそれらの比較等により、環境影響の一層の低減を図ること。
(3)  工事中における土地の改変に伴う濁水の処理対策については、排水先の下流河川の生物の生息又は生育状況、改変により裸地となる地質の状況等を勘案した上で、環境に与える負荷を回避・低減する観点から、更なる水質汚濁の防止を図ること。

4.大気環境

 本事業の工事用車両の運行に伴う騒音について予測を行い、環境基準と予測の結果との間に整合が図られているかどうかを評価し、その結果を評価書に記載すること。

 

 上記1.から3.の措置を行う旨を評価書に記載することが必要である。また、1.(1)に述べる計画の再検討及びクマタカの保護対策については、それらの方針を評価書に記載するとともに、その具体的な内容を公表することが必要である。

 


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