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記者発表

人工海浜の安全確保のため留意すべき技術的事項

− 陥没による事故の防止対策 −


1.総説
1.1 目的
 この技術的事項は、人工海浜の海浜部における一般利用者に対する安全性を確保するため、関係する海岸保全施設の設計・施工、管理において必要な技術上の事項を定めることを目的とする。
解説
ここでいう『人工海浜』とは、突堤(ヘッドランド含む)あるいは堤防・護岸と養浜との組み合わせで整備された海岸とする。
ここでいう『人工海浜の海浜部』とは、汀線より陸側の砂浜とする。
ここでいう『関係する海岸保全施設』とは、人工海浜の海浜部の安全性に影響を及ぼす施設であり、養浜された砂浜及びこれに接する突堤、堤防・護岸とする。
海岸管理者等(海岸管理者及び直轄事業を実施する地方整備局、北海道開発局および沖縄総合事務局、以下同じ)は、海岸管理者以外の者が人工海浜として供することを前提に海岸保全施設を整備する場合、あるいは海岸保全施設を占用する場合においては、事前協議、管理協定等を通じて、本技術的事項等を最大限活用し、所要の安全性が確保されるよう努める。
人工海浜の海浜部に設置される施設のうち、海岸保全施設以外の施設の安全性確保については設置者の責務であるが、その施設が海岸保全施設の安全性に影響をおよぼすおそれのないよう、本技術的事項に基づき十分協議する。

1.2 基本原則
 人工海浜の海浜部における安全性は、(1)設計・施工段階、(2)管理段階の各段階で確保することを基本とする。
解説
設計・施工段階においては、通常の海岸保全施設に求められる波浪等外力に対する安全性に加え、一般利用者の安全性を確保する観点から見ても適切な設計・施工を行う。
管理段階においては、所要の日常的な管理を適切に実施するとともに、異常が発見された場合には、直ちに必要な緊急措置を講じるとともに、原因究明に努める。

2.設計・施工
2.1 基本
 人工海浜に関係する海岸保全施設については、空洞化や陥没等の原因となり得る土砂流出を防止する構造とするとともに、万一土砂流出が発生した場合を想定し、可能な限り安全性が損なわれない構造とすることを基本とする。
解説
人工海浜の海浜部における一般利用者の安全性が損なわれる要因として、土砂が流出することにより発生する土中の空洞と、これによる陥没が考えられる。このため、設計・施工段階においては、土砂流出を防止する構造とすることが重要である。
安全が損なわれない構造としては、次の手法、あるいはその組み合わせが考えられるが、過大な費用を要することがないよう、その決定に際しては、現地の状況(作用する外力)、施工条件やコスト等を十分に検討する必要がある。
後述する土砂流出対策を、必要に応じ組み合わせ講じておくことにより、いずれかの機能が失われた場合でも、土砂流出に至らないようにする。
土砂が捨石の上にある構造の場合、土砂の厚さが薄ければ、土砂が流出しても空洞・陥没の規模は小さくなり、人身事故に至る危険性も小さくなるため、施工上の限界、日常的あるいは季節的な海浜形状の変動等を勘案しつつ、不必要に土砂層を厚くしないようにする。
侵食が卓越する海岸については別途個別に対策を検討する。

2.2 設計・施工
 設計・施工の際には、土砂が流出する可能性のある経路を把握し、これに応じた適切な設計・施工を行う必要がある。
解説
土砂流出の主なメカニズムと対策
 主に重力を外力として、下部に存在している空間に土砂が流出する場合(図−1参照
 捨石(裏込め材を含む)、既設の消波ブロック、排水管等の構造物等の上に養浜した場合、下部に空隙が残ってしまうことがあり、その中に土砂が流出する可能性がある。この場合、長期的には空隙が埋まり次第、土砂流出はなくなると考えられるが、必ずしも供用時までに空隙が充填されるとは限らないため、何らかの対策を講じておく必要がある。
 対策としては、施工時において土砂を充填して空隙をなくしておく方法が基本と考えられるが、空間を充当できない場合、充填の程度が確認できない場合や、後述する水圧による土砂流出の危険性が疑われる場合には、土砂充填の後、必要に応じてフィルター層、防砂シート・防砂マットを設置する。
 主に潮汐や波浪等に起因する水圧を外力として、透過型構造物(マウンドなどを構成する捨石層等を含む)の隙間から土砂が海に流出する場合(図−2参照
 水圧を外力とする土砂流出の場合、空隙を充填する方法では長期的には必ずしも十分な効果が確保されないため、物理的に土砂流出を防ぐ遮蔽物を設置する必要がある。
 対策としては、土砂と接する透過型構造物との間に、フィルター層を設置する方法、防砂シート・防砂マットを設置する方法、あるいはこれらを併用する方法が考えられる。
 主に潮汐や波浪等に起因する水圧を外力として、不透過型構造物の目地から土砂が海に流出する場合(図−3参照
 この場合の対策としては、土砂と構造物との間に、フィルター層を設置する方法、防砂シート・防砂マットを設置する方法、あるいはこれらを併用する方法が考えられる。
土砂流出防止対策における留意事項
フィルター構造
 透過型構造物や不透過型構造物の隙間から土砂を流出させなことを目的として、土砂と構造物の間に、構造物を通過しない粒径でかつ土砂を通過させない粒径の層(フィルター層)を、砕石などで設けることにより土砂の流出を抑制させる構造である。
 設計に際し、フィルターの層数・フィルター各層の厚さや粒径を決定する場合、養浜砂と捨石の粒径、施工性等に留意する必要がある。
防砂シート・防砂マット
 設計に際し、作用する外力(潮汐、波浪、土圧、施工時の風、土砂投入による衝撃力、捨石部表面の凹凸等)に対してそれ自体が十分な強度をもつ必要がある。波の作用などによって正確な施工が困難な場合があるため、継ぎ目のオーバーラップを十分にとる必要かある。
 施工に際し、防砂シート・防砂マットが破れないよう、例えば捨石部の空隙を予め土砂等で充填しておく方法を併用することなどにより捨石部の表面の大きな凹凸を除く必要がある。波の作用などによって正確な施工が困難な場合があるため、敷設後速やかに固定するなど安定化を図る必要がある。紫外線やオゾン、海水等による化学的な劣化が生じる可能性があるため材質について注意を要する。
 防砂シート・防砂マットの耐久性については不明な部分も多いため、他の対策を併用しない場合には、十分な管理・点検を行う必要がある。
その他留意事項
不透過型構造物の裏込め材
 不透過型構造物の直立部に作用する土圧軽減のために裏込め材が設けられる場合があるが、裏込め材の中に土砂が流出する場合もあり、必要に応じてフィルター層、防砂シート、防砂マットなどの対策を行う。また、マウンドからの圧力を伝播させるため、裏込め部上部の土砂層の土被り圧が不足する場合には、ボイリングなどの発生の危険がある。その場合、裏込め材の天端を解放することによって、マウンドから伝わる波などの圧力を解放(低減)させる手法がある。(図−4参照)ただし、圧力を解放した場合、マウンドや裏込め材の中で波によって海水が動きやすくなり、マウンド材・裏込め材の流出、マウンド・裏込め材への土砂の流出の促進といった影響も考慮する必要がある。
 施工性等の観点から防砂板を使用する場合の設計にあたり、作用する外力(潮汐、波浪、土圧、施工時の風、土砂投入による衝撃力等)に対してそれ自体及び取り付け部が十分な強度を有する必要がある。構造物の沈下や変形に対し追随できるものを選定することが必要である。なお、波浪や潮汐により防砂板が変形し摩耗等の損傷を助長する場合があるため形状や材質に留意する必要がある。
 施工に際し、防砂板が損傷しないように十分に留意する必要がある。紫外線やオゾン、海水等による化学的な劣化が生じる可能性があるため注意を要する。
 防砂板の耐久性については不明な部分も多いため、管理に際しては必要に応じて点検を行う。
防砂シート・防砂マット、防砂板等の材質はジオテキスタイル、アスファルト、ゴム、その他合成樹脂製品が用いられていることが多い。
不透過型構造物の目地間充填材
 目地部に、マット類やモルタル等を充填すること(以下「目地間充填材」という。)によって、防砂板に作用する波力等を低減することができる。ただし、目地間充填材は構造物の沈下や波力等に対して安定であることが重要である。
天端置換捨石部の設置
 陥没孔は、基本的に静水面付近より上に発生するため、この部分が捨石であれば陥没孔発生の危険性は少ない。また砂部が捨石の下にあれば、陥没孔は発生しないと考えられる。したがって、図−5に示すように静水面付近より上の砂を捨石等で置き換えることで陥没孔の発生を防ぐ手法がある。その際、捨石層と砂層との間の土砂流出対策を必要に応じて実施する。
空隙の充填
 透過型構造物の空隙を予め土砂等で充填しておくことにより、波の作用で空隙中の土砂が安定勾配を形成し、土砂の流出を防止することが期待できる。
 ただし、長期的には必ずしも十分な効果が確保されない場合もあるので、必要に応じて土砂流出を防ぐ遮蔽物を併用する。

3.管理
3.1 基本
 人工海浜の海浜部において、一般利用者に対する安全性を確保するため、土砂流出が発生している事態を想定し、高潮来襲後および平常時の定期的な点検を行うことを基本とする。
解説
陥没痕やくぼみ等の変状の発見に努めるとともに、目視では変状が見られない場合でも、土砂流出が発生していることを想定し、平常時にも定期的に点検を行う必要がある。
管理者における巡視・点検のみでは手の届きにくいきめ細かな情報を海浜利用者から募ること等により、危険な状況を早期に検知できる住民との連携による管理体制の充実にも配慮する。

3.2 点検のポイント
 不均一な箇所を中心に、より計画的に点検を実施し、土砂流出の早期発見に努める。
解説
ここでいう『不均一な箇所』とは、鉛直、水平に粒度を変化させている個所や構造物周辺(旧海岸保全施設等を含む)であり、このような箇所の点検に際し、その詳細な構造や利用実態、作用する外力などを十分に把握した上で、点検の範囲、頻度、方法を事前に設定する必要がある。
土砂の流出は、波浪、降雨などによる土中の含水率の増加に応じて間歇的に発生する場合があり、前兆が把握できない恐れがあるため、上記のような箇所については幅広に定期点検を行う必要がある。
地中の空洞を確認するためには、鉄筋を貫入させるなどの方法が有効である。

3.3 緊急措置と原因究明
 異常が発見された場合には、立ち入り禁止等の必要な措置を講じるとともに、早急に原因を究明することが重要である。
解説
陥没痕、へこみや地中部の緩みが発見された場合、土砂が流出している可能性があり、事故等に発展する可能性があることから、再点検や原因究明がなされるまでの間は必要に応じて砂浜全域を立ち入り禁止とするなどの措置を講じる必要がある。
原因究明にあたっては、設計図書、工事検査図書等の資料等も参照しつつ、必要に応じ学識経験者からの意見を踏まえ土砂流出経路を特定することが重要である。

3.4 記録
 設計図書、当初工事記録、点検記録、補修記録については保管する。
解説
異常がいつの時点で発生し、どのように変化してきたかという履歴を把握するため、工事記録、点検記録、補修記録等の施工前・施工中・完成後の記録を保管しておく必要がある。


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