解説 |
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土砂流出の主なメカニズムと対策 |
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主に重力を外力として、下部に存在している空間に土砂が流出する場合(図−1参照)
捨石(裏込め材を含む)、既設の消波ブロック、排水管等の構造物等の上に養浜した場合、下部に空隙が残ってしまうことがあり、その中に土砂が流出する可能性がある。この場合、長期的には空隙が埋まり次第、土砂流出はなくなると考えられるが、必ずしも供用時までに空隙が充填されるとは限らないため、何らかの対策を講じておく必要がある。
対策としては、施工時において土砂を充填して空隙をなくしておく方法が基本と考えられるが、空間を充当できない場合、充填の程度が確認できない場合や、後述する水圧による土砂流出の危険性が疑われる場合には、土砂充填の後、必要に応じてフィルター層、防砂シート・防砂マットを設置する。 |
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主に潮汐や波浪等に起因する水圧を外力として、透過型構造物(マウンドなどを構成する捨石層等を含む)の隙間から土砂が海に流出する場合(図−2参照)
水圧を外力とする土砂流出の場合、空隙を充填する方法では長期的には必ずしも十分な効果が確保されないため、物理的に土砂流出を防ぐ遮蔽物を設置する必要がある。
対策としては、土砂と接する透過型構造物との間に、フィルター層を設置する方法、防砂シート・防砂マットを設置する方法、あるいはこれらを併用する方法が考えられる。 |
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主に潮汐や波浪等に起因する水圧を外力として、不透過型構造物の目地から土砂が海に流出する場合(図−3参照)
この場合の対策としては、土砂と構造物との間に、フィルター層を設置する方法、防砂シート・防砂マットを設置する方法、あるいはこれらを併用する方法が考えられる。 |
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土砂流出防止対策における留意事項 |
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フィルター構造
透過型構造物や不透過型構造物の隙間から土砂を流出させなことを目的として、土砂と構造物の間に、構造物を通過しない粒径でかつ土砂を通過させない粒径の層(フィルター層)を、砕石などで設けることにより土砂の流出を抑制させる構造である。
設計に際し、フィルターの層数・フィルター各層の厚さや粒径を決定する場合、養浜砂と捨石の粒径、施工性等に留意する必要がある。 |
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防砂シート・防砂マット
設計に際し、 作用する外力(潮汐、波浪、土圧、施工時の風、土砂投入による衝撃力、捨石部表面の凹凸等)に対してそれ自体が十分な強度をもつ必要がある。 波の作用などによって正確な施工が困難な場合があるため、継ぎ目のオーバーラップを十分にとる必要かある。
施工に際し、 防砂シート・防砂マットが破れないよう、例えば捨石部の空隙を予め土砂等で充填しておく方法を併用することなどにより捨石部の表面の大きな凹凸を除く必要がある。 波の作用などによって正確な施工が困難な場合があるため、敷設後速やかに固定するなど安定化を図る必要がある。 紫外線やオゾン、海水等による化学的な劣化が生じる可能性があるため材質について注意を要する。
防砂シート・防砂マットの耐久性については不明な部分も多いため、他の対策を併用しない場合には、十分な管理・点検を行う必要がある。 |
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その他留意事項 |
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不透過型構造物の裏込め材
不透過型構造物の直立部に作用する土圧軽減のために裏込め材が設けられる場合があるが、裏込め材の中に土砂が流出する場合もあり、必要に応じてフィルター層、防砂シート、防砂マットなどの対策を行う。また、マウンドからの圧力を伝播させるため、裏込め部上部の土砂層の土被り圧が不足する場合には、ボイリングなどの発生の危険がある。その場合、裏込め材の天端を解放することによって、マウンドから伝わる波などの圧力を解放(低減)させる手法がある。(図−4参照)ただし、圧力を解放した場合、マウンドや裏込め材の中で波によって海水が動きやすくなり、マウンド材・裏込め材の流出、マウンド・裏込め材への土砂の流出の促進といった影響も考慮する必要がある。 |
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施工性等の観点から防砂板を使用する場合の設計にあたり、 作用する外力(潮汐、波浪、土圧、施工時の風、土砂投入による衝撃力等)に対してそれ自体及び取り付け部が十分な強度を有する必要がある。 構造物の沈下や変形に対し追随できるものを選定することが必要である。なお、波浪や潮汐により防砂板が変形し摩耗等の損傷を助長する場合があるため形状や材質に留意する必要がある。
施工に際し、 防砂板が損傷しないように十分に留意する必要がある。 紫外線やオゾン、海水等による化学的な劣化が生じる可能性があるため注意を要する。
防砂板の耐久性については不明な部分も多いため、管理に際しては必要に応じて点検を行う。 |
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防砂シート・防砂マット、防砂板等の材質はジオテキスタイル、アスファルト、ゴム、その他合成樹脂製品が用いられていることが多い。 |
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不透過型構造物の目地間充填材
目地部に、マット類やモルタル等を充填すること(以下「目地間充填材」という。)によって、防砂板に作用する波力等を低減することができる。ただし、目地間充填材は構造物の沈下や波力等に対して安定であることが重要である。 |
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天端置換捨石部の設置
陥没孔は、基本的に静水面付近より上に発生するため、この部分が捨石であれば陥没孔発生の危険性は少ない。また砂部が捨石の下にあれば、陥没孔は発生しないと考えられる。したがって、図−5に示すように静水面付近より上の砂を捨石等で置き換えることで陥没孔の発生を防ぐ手法がある。その際、捨石層と砂層との間の土砂流出対策を必要に応じて実施する。 |
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空隙の充填
透過型構造物の空隙を予め土砂等で充填しておくことにより、波の作用で空隙中の土砂が安定勾配を形成し、土砂の流出を防止することが期待できる。
ただし、長期的には必ずしも十分な効果が確保されない場合もあるので、必要に応じて土砂流出を防ぐ遮蔽物を併用する。 |