○ |
4河川9地点においてコイを採捕し、魚の血清中のビテロゲニン濃度や精巣の異常が、水質中の内分泌撹乱物質の指標となるか検討することを目的に、雄の血清中のビテロゲニン濃度及び雄の精巣観察等の調査を行った。 |
○ |
平成10〜13年度に行なった雄の血清中ビテロゲニン濃度の調査結果から、河川に生息する雄コイの一部でビテロゲニンの生成が認められたが、水質及び底質の内分泌撹乱物質の測定結果とビテロゲニン検出比率には、有意な相関関係は認めらなかった。(資料−1 37〜38頁、図2.2.3〜2.2.4参照)自然環境下に生息する魚類を対象とした調査の場合、得られたデータに様々な環境要因が反映されているためと考えられる。 |
○ |
平成10〜13年度に行なった雄の精巣観察の調査では、各調査地点において採捕した雄コイの一部に精巣の異常がみられたが、内分泌撹乱物質の測定結果と各調査地点の精巣異常のみられた雄コイの比率に有意な相関関係はみられなかった。(資料−1 46〜47頁、図2.2.8〜2.2.9参照)自然環境下に生息する魚類では、精巣に異常を生じさせる要因として、内分泌攪乱物質の影響以外にも、水温、水質、餌条件などの生息環境や加齢に伴う老化なども考えられる。これらのことから、採捕した雄コイの精巣に異常を生じさせた原因は不明であった。 |
○ |
なお、雄コイの血清中ビテロゲニン濃度と精巣異常の状況は以下のとおりであった。
表−4 平成10〜13年度調査での雄コイのビテロゲニン濃度 |
|
(単位:尾) |
|
調査年度
(調査時期) |
ビテロゲニン濃度範囲(血清1mLあたり) |
合計 |
0.1μg未満 |
0.1μg以上
1μg未満 |
1μg以上
10μg未満 |
10μg以上 |
平成10年度(11〜12月) |
39(72.2%) |
9(16.7%) |
2( 3.7%) |
4(7.4%) |
54 |
平成11年度( 5〜 7月) |
66(61.7%) |
19(17.8%) |
17(15.9%) |
5(4.7%) |
107 |
平成12年度(10〜11月) |
74(82.2%) |
5( 5.6%) |
7( 7.8%) |
4(4.4%) |
90 |
平成13年度(10〜11月) |
72(75.8%) |
16(16.8%) |
6( 6.3%) |
1(1.1%) |
95 |
|
|
注1)平成10〜12年度は、平成13年度と同じ9調査地点の集計値を示した。
注2)括弧内に各年度の合計に対する各ビテロゲニン濃度範囲にあった尾数の比率(%)を示した。
注3)ビテロゲニンは、通常雌体内で生成された女性ホルモンの働きによって肝臓で生成され、血液を介して卵母細胞に取り込まれ蓄積される物質である。今回、この血清中濃度が一定以上(0.1μg/ml)である場合に、何らかの外的要因によりビテロゲニンが雄体内で生成されたと考えた。
|
|
表−5 平成10〜13年度調査で採捕した雄コイの精巣観察結果 |
|
(単位:尾) |
|
調査年度 |
精巣の観察結果 |
合計 |
正常 |
異常 |
平成10年度 |
50(92.6%) |
4(7.4%) |
54 |
平成11年度 |
94(87.9%) |
13(12.1%) |
107 |
平成12年度 |
76(84.4%) |
14(15.6%) |
90 |
平成13年度 |
85(89.5%) |
10(10.5%) |
95 |
|
|
注1)各調査年度とも13年度と同じ9調査地点の結果を示した。
注2)括弧内に各年度の合計に対する正常及び異常個体の比率(%)を示した。
注3)異常とする精巣の状況については資料−1 44頁参照
|