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記者発表

河川堤防質的整備技術ガイドライン(案)および河川堤防モニタリング技術ガイドライン(案)の策定について


平成16年6月9日
国土交通省

 国土交通省は、平成15年度に設置した「堤防の質的整備に関する技術検討委員会(委員長:宇野尚雄 広島工業大学教授)」における検討結果を踏まえ、このほど、河川堤防の質的整備の推進に資するため「河川堤防質的整備技術ガイドライン(案)」及び「河川堤防モニタリング技術ガイドライン(案)」を策定しましたのでお知らせします。
 平成16年度より、これに基づき、既設堤防の質的整備に関するモニタリングの試行に着手します。

1.経緯

 河川堤防(以下「堤防」という。)の構造は、主に実際に発生した被災等の経験に基づいて定められてきたものであり、構造物の破壊過程を解析的に検討して設計されてきたものではない。一方、治水対策の進捗に伴い、氾濫原における人口や資産の集積には著しいものがあり、堤防の安全性の確保がますます必要となってきていることから、工学的に体系化された堤防の設計法の確立が求められている。
 このような状況のもと、平成8年度より、全国の直轄管理堤防において、堤防の安全性に関する点検が進められ、平成14年7月には「河川堤防設計指針」がとりまとめられた。さらに、平成15年5月より「堤防の質的整備に関する技術検討委員会」(委員長:宇野尚雄 広島工業大学教授)を設置し、質的整備を推進するために必要となる堤防強化工法選定の考え方やモニタリング方法の検討を進めるとともに、委員会における検討結果を踏まえ「河川堤防質的整備技術ガイドライン(案)」および「河川堤防モニタリング技術ガイドライン(案)」をとりまとめた。

2.ガイドラインの概要

(1)河川堤防質的整備技術ガイドライン(案)(参考資料1
 計画高水位以下の水位時における耐浸透機能及び耐侵食機能に関する河川堤防の所要の安全性を確保するため、河川堤防の質的整備における堤防強化工法選定の考え方等についてとりまとめたもの
  • 堤防の強化にあたって、対象とする堤防が基本断面形状を満たしていない場合には、原則として、基本断面形状の確保を行う。そのうえで所要の安全性を確保できる構造となるような堤防強化工法を選定
  • さらに、選定された堤防強化工法について、「維持管理」、「経済性」、「施工性」、「事業執行」、「堤体材料・地盤とのなじみ、構造物との関係」、「環境・利用」の観点から適用性を評価し、適切な工法を選定
  • 上記を踏まえ、一連区間における構造的連続性、樋門等の構造物の設置状況等を勘案し、総合的に検討を行い、堤防強化工法を決定
  • 堤防強化を実施した場合は、堤防強化工法の効果を検証するためのモニタリングを実施
(2)河川堤防モニタリング技術ガイドライン(案)(参考資料2
 計画高水位以下の水位時における河川堤防の浸透作用及び侵食作用に対する安全性・信頼性を維持し高めていくために必要となるモニタリングの標準的な内容についてとりまとめたもの
  • モニタリングは、堤防の要注意箇所を把握するとともに堤防強化技術を検証し、計画高水位以下の水位時における堤防の安全性・信頼性を維持し高めていくために実施
  • 要注意箇所の把握は、原則として目視点検によることとするが、必要に応じて計測機器によるモニタリングも試行
  • 堤防強化技術の検証は、堤防の安全性照査手法の適用性や堤防強化工法の効果を検証する。なお、堤防強化技術の検証は、原則として計測機器によることとする
  • モニタリング結果は、電子情報として蓄積・分析し、分析結果は各種技術基準の改定に反映


3.今後の取り組み

 平成8年度より直轄河川堤防において概略点検を実施し、相対的に安全性が低いと評価された区間を中心に、現在詳細点検を実施しているところ。これまで約2,000kmの区間を調査し、そのうちの約4割の区間で計画の水位に達する規模の洪水が発生した場合、浸透破壊に対する堤防の安全性が確保されていないことが確認された。また、未調査区間約8,000kmを含め約3割の区間で安全性が確保されない可能性があると推定しているところ(参考資料3)。
 今後は、未調査区間の調査を進めるとともに、現時点で安全性の不足が確認された区間については、堤防強化を計画的に実施する。
 具体的には、平成16年度より、以下の施策を講じるとともに、モニタリングで得られた情報を利用した堤防の管理技術の高度化について検討を行うこととしている。

(1)質的整備に関するモニタリングの試行(表−1
  • 各地整ごとに、被災履歴がありかつ基本断面形状が確保されている区間のうち、背後地の土地利用状況や、これまでの整備経緯等をふまえ代表的な箇所を選定し、質的整備に関するモニタリングを試行する。
  • 堤防強化技術の効果を把握するため、計測機器により堤体内水位等の観測を実施する。
(2)要注意箇所の把握に関する取り組みの推進
代表的な河川で、河川巡視等の結果を体系的に整理し、堤防強化を実施する箇所を的確に把握するための取り組みを推進する。
(3)モニタリング委員会(仮称)の設立
モニタリングを実施するにあたり、これまでの調査結果について精査するとともに、今後モニタリングで得られたデータの具体的な集積・分析方法について、検討を行うためモニタリング委員会(仮称)を設立する。

No.開発局・地整河川名箇所備考
1北海道網走川住吉・本郷地区浸透対策
2東北阿武隈川角田左岸浸透・侵食対策
3鳴瀬川鹿島台、南郷浸透対策
4最上川臼ヶ沢浸透対策
5関東利根川大利根地区浸透対策
6江戸川吉川、西関宿浸透対策
7多摩川西六郷浸透・侵食対策
8北陸常願寺川上滝侵食対策
9手取川辰口侵食対策
10中部安倍川秋山浸透・侵食対策
11庄内川岩塚〜上条浸透対策
12牧田川根固地浸透対策
13近畿木津川下津屋浸透対策
14中国高梁川酒津浸透対策
15天神川上井浸透対策
16高津川金地浸透対策
17四国吉野川鴨島浸透対策
18九州嘉瀬川佐賀市街部浸透対策
19川内川中郷浸透対策
表−1 モニタリング実施箇所

参考資料1 河川堤防質的整備技術ガイドライン(案) (PDFファイル 390KB)
参考資料2 河川堤防モニタリング技術ガイドライン(案) (PDFファイル 676KB)
参考資料3 河川堤防の詳細点検状況について (PDFファイル 38.3KB)


問い合わせ先
国土交通省 河川局治水課
企画専門官 渥美 雅裕 (内線35514)
課長補佐 山田 哲也 (内線35612)
代表 03-5253-8111
直通 03-5253-8450



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