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河川局

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記者発表
相模川・阿賀野川・宮川・鵡川・木曽川・江の川・矢部川水系
に係る河川整備基本方針の策定について


【同時発表記者クラブ】
竹芝記者クラブ、神奈川建設記者会、横浜海事記者クラブ、東京都庁記者クラブ、神奈川県政記者クラブ、川崎記者クラブ、山梨県政記者クラブ、新潟県政記者クラブ、新県政記者クラブ、福島県政記者クラブ、中部地方整備局記者クラブ、三重県政記者クラブ、北海道開発記者クラブ、北海道建設記者会、岐阜県政記者クラブ、木曽記者クラブ、広島県政記者クラブ、島根県政記者クラブ、中国地方建設記者クラブ、合同庁舎記者クラブ、三次記者クラブ、江津記者クラブ、国土交通省九州記者会、九州建設専門記者クラブ、柳川市記者クラブ、大牟田市記者クラブ、八女市記者クラブ
平成19年11月21日
国土交通省河川局

  標記の7水系の河川整備基本方針の策定につきましては、河川法第16条第3項に基づき、国土交通大臣から社会資本整備審議会会長へ意見を求め、同審議会から河川分科会に付託されました。その後、社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会において審議を行ったのち、社会資本整備審議会河川分科会の審議を経て平成19年11月22日付けで、河川整備基本方針を策定し、同日付で官報に公表されることとなりました。



<相模川・阿賀野川・宮川・鵡川・木曽川・江の川・矢部川の河川整備基本方針の概要>

 平成9年に河川法が改正され、豊かでうるおいのある質の高い国民生活や良好な環境を求める国民のニーズに的確に応えるため、制度を見直し、それまでの工事実施基本計画に代え、新たに、河川整備の基本となるべき方針に関する事項『河川整備基本方針』と具体的な河川整備に関する事項『河川整備計画』に区分されました。
 河川整備基本方針は、各水系における治水、利水、環境等に関する河川管理の長期的な方針を、総合的に定めるものであり、河川整備の基本となるべき事項等を定めます。
 今回策定した7水系についても、各水系の地形、降雨、環境等の特性を踏まえた治水・利水・環境に関する整備の方向性を示しています。

【河川整備基本方針・河川整備計画について】
https://www.mlit.go.jp/river/basic_info/jigyo_keikaku/gaiyou/seibi/index.html
【社会資本整備審議会河川分科会について】
https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/past_shinngikai/shinngikai/shakai/index.html

今回策定する7水系の河川整備基本方針の主な特徴的内容は次のとおりです。


●相模(さがみ)川(がわ)水系(流域面積:1,680km2、幹川流路延長:113km)

 相模川は、その源を富士山(標高3,776m)に発し、山梨県内では「桂(かつら)川」と呼ばれ、山中湖から笹子(ささご)川、?@(かず)野(の)川などの支川を合わせ、山梨県の東部を東に流れて神奈川県に入り、「相模川」と名を変え、相模ダム、城山ダムを経て流路を南に転じ、神奈川県中央部を流下し、中津(なかつ)川などの支川を合わせて相模湾に注いでいる。
 その流域は、東西を軸とした弓状を呈し、山梨県、神奈川県の2県14市4町6村にまたがり、沿川には、東海道本線、東海道新幹線、中央本線及び東名高速道路、中央自動車道、国道1号、国道20号等があり、国土の基幹をなす交通の要衝となっている。
 源流部から城山ダムに至る上流部は、富士山の溶岩流によって形成された山中湖や全国の名水百選に選定され国の天然記念物でもある忍野八(おしのはっ)海(かい)など、富士山の伏流水が湧出する箇所も多く、比較的安定した流況となっている。
 城山ダムから中津川合流点に至る中流部は、相模原台地と中津原台地の間を流れ、河岸段丘の崖地にはケヤキ・シラカシ等が分布し、ヤマセミやカワセミ等の鳥類が生息・繁殖している。
 中津川合流点から河口に至る下流部は、市街化された地域を流れており、河床には瀬と淵が形成され、アユ等の生息・繁殖場となっている。河口部の汽水域には、マハゼ・ボラ等の魚類が生息し、河口干潟はシギ・チドリ類等の渡り鳥の中継地となっている。
 中津川は、丹沢山塊に源を発し、クヌギ・クリ等が分布し、崖地にはヤマセミやカワセミ等が生息・繁殖している。
 相模川では、明治・大正期の台風により各地で堤防決壊、家屋が流出し、甚大な被害を受け、近年では、昭和57年8月・9月及び昭和58年8月の台風により、浸水被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、相模川の豊かな自然環境や河川景観に配慮しながら、堤防の新設、拡築、河道掘削及び河道拡幅、橋梁・堰等の改築により河積を増大させ、水衝部等には護岸等を整備するとともに堤防強化を図り、計画規模の洪水を安全に流下させる。河道で処理できない流量については、流域内の洪水調節施設により洪水調節を行う。その際、既設洪水調節施設の有効活用により治水機能の向上を図る。河口部においては高潮及び津波対策として高潮堤防の整備を行う。
 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、広域的かつ合理的な水利用の促進を図るなど、今後とも関係機関と連携して流水の正常な機能を維持するために必要な流量の確保に努める。
 また、みお筋の固定化による深掘れの進行及び礫河原の植生繁茂等による河原生態系の衰退、河口干潟の減少、海岸汀線の後退等の土砂移動と密接に関わる課題に対処するため、上流から海岸までを一体的に捉えた総合的な土砂管理を進める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点厚木において10,100m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設により2,800m3/sを調節し、河道への配分流量を7,300m3/sとする。

●阿賀野(あがの)川(がわ)水系(流域面積:7,710km2、幹川流路延長:210km)

 阿賀野川は、その源を栃木・福島県境の荒海(あらかい)山(標高1,580m)に発し福島県では阿賀(あが)川と呼称される。山間部を北流し、会津(あいづ)盆地を貫流した後、猪苗代(いなわしろ)湖から流下する日(にっ)橋(ぱし)川等の支川を合わせ、喜多方(きたかた)市山科(やましな)において再び山間の狭窄部に入り、尾瀬(おぜ)ヶ原に水源をもつ只見(ただみ)川等の支川を合わせて西流し新潟県に入る。その後、五泉(ごせん)市馬下(まおろし)で越(えち)後(ご)平野に出て、早出(はやで)川等の支川を合わせ北流して新潟(にいがた)市松(まつ)浜(はま)において日本海に注いでいる。
 その流域には、上流部は1,000m〜2,000m級の山々が周囲にそびえているほか、会津盆地や猪苗代湖をはじめとした多くの湖沼群が存在し、中流部は飯豊(いいで)連峰や、粟(あわ)ヶ岳等によって阻まれ、先行谷と河岸段丘がみられる。下流部は広大な扇状地を呈した越後平野が形成され、山間部と海岸砂丘に挟まれた低平地が広がっている。会津盆地や越後平野では水稲の生産が盛んなほか、会津若松(あいづわかまつ)市や新潟市の中心市街地を擁し、基幹交通のネットワークが形成されているほか、若松(わかまつ)城をはじめとした史跡、神社・仏閣等の歴史的資源にも恵まれ、古くからこの地域の社会・経済・文化の基盤を成している。
 また、会津盆地の若松が城下町として栄え、江戸時代には舟運の発達とともに会津藩が阿賀野川を西国地方への貴重な通商路として利用したことや、北前船による舟運の発達とともに新潟が荷受けで栄えたことから、それ以降現在に至るまで、下流部にあたる越後平野と上流部にあたる会津盆地を中心に治水事業が行われてきた。第一期改修後も、昭和16年、19年、21年の度重なる大洪水等の発生により河状が著しく荒廃し、その後、31年及び33年に計画高水流量を上回る大洪水があり、上流部では急流河川が会津若松市を流れ、下流部では低平地に新潟市が広がるという自然的・社会的条件等から、広範囲に浸水被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、阿賀野川の豊かな自然環境や流域の風土・歴史等に配慮しながら、堤防の新設、拡築及び河道掘削、樹木伐開、固定堰の改築等により河積を増大させ、水衝部等には水制や護岸等を整備するとともに、堤防の質的強化に関する対策を実施し、計画規模の洪水を安全に流下させる。
 河川環境の整備と保全に関しては、阿賀野川と流域の人々との歴史的・文化的なつながりを踏まえ、大河が織りなす良好な河川景観や、ワンド・細流等を形成する扇状地をはじめ、瀬と淵が交互に連続する河床形態など多様な動植物が生息・生育・繁殖する自然環境を保全及び創出し、次世代に引き継ぐよう努める。また、流域住民の生活基盤や歴史・文化・風土を形成してきた阿賀野川の恵みを生かしつつ、自然環境と調和を図りながら、自然とのふれあい、環境学習ができる場として整備・保全を図る。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、基準地点山科で6,100m3/s、基準地点馬下で15,700m3/sとし、このうち流域内の洪水調節施設によりそれぞれ1,300m3/s 、2,700m3/s を調節して、河道への配分流量をそれぞれ4,800m3/s 、13,000m3/s とする。

●宮川(みやがわ)水系 (流域面積:920km2、幹川流路延長:91km)

 宮川は、その源を三重県多気(たき)郡大台(おおだい)町と奈良県吉野(よしの)郡上北山(かみきたやま)村の県境に位置する日出ヶ岳(ひでがだけ)(標高1,695m)に発し、大杉(おおすぎ)渓谷を貫流し、河口付近で大湊(おおみなと)川を分派し、その後、伊勢(いせ)湾に注ぐ。また、支川五十鈴(いすず)川は、五十鈴川派川を分派し、河口付近で支川の勢田(せた)川・大湊川を合わせ、伊勢湾に注ぐ。
 流域内の平均年間降水量は、日本屈指の多雨地帯である大台ヶ原を源流にもち、山間部で3,400mm超、平野部で約2,000〜2,500mmとなる多雨地帯である。
 昭和49年7月洪水(七夕災害)では、勢田川の氾濫により伊勢市の広域にわたって浸水被害が発生した。この洪水を契機に、昭和50年4月に一級河川の指定を受け、直轄事業に着手した。
 近年においては、平成16年9月洪水により、上流部では土砂災害が多発し、大量の土砂が宮川へ流出した。下流部では越水氾濫によって甚大な被害を受けたことから、築堤及び河道掘削等が進められている。
 我が国屈指の清流である宮川の良好な自然環境や地域の風土・歴史等に配慮しながら、堤防の新設、拡築、河道掘削等により河積を増大し、護岸等の整備をするとともに、流域内の洪水調節施設により洪水調節を行い、計画規模の洪水を安全に流下させる。また、堤防の質的強化を図り、安全性を確保する。河口部においては、高潮堤防の改築も進める。
 また、20年ごとに行われる伊勢神宮の伝統行事「式年(しきねん)遷宮(せんぐう)」の際には、宮川で集められた白石を御敷地(みしきち)に奉献する「お白石持(しらいしもち)」や五十鈴川では御用材(ごようざい)を運ぶ「お木(き)曳(ひ)き」が行われるなど、伊勢神宮の神事に非常に密接に関わってきたことから、歴史と文化を感じさせる空間としての河川整備と保全に努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準点岩出(いわで)で8,400m3/sとし、河道と洪水調節施設への配分についても工事実施基本計画と同様にそれぞれ、7,600m3/s、800m3/sとした。

●鵡川(むかわ)水系(流域面積:1,270km2、幹線流路延長:135km)

 鵡川は、その源を北海道勇払(ゆうふつ)郡占冠(しむかっぷ)村の狩振(かりふり)岳(標高1,323m)に発し、占冠村においてパンケシュル川、双珠(そうしゅ)別(べつ)川等を合わせ、赤岩(あかいわ)青(せい)巌峡(がんきょう)を流下し、むかわ町穂別(ほべつ)において穂別川を合わせ、むかわ町市街地を経て太平洋に注いでいる。
 その流域は、北海道の胆振(いぶり)東部に位置し、むかわ町、占冠村の1町1村からなり、胆振東部における社会・経済・文化の基盤をなしている。特に、中下流部は農耕地として明治初期からひらけ、水田、肉用牛の牧畜等が営まれている。また、JR日高(ひだか)本線、JR石(せき)勝(しょう)線、国道235号、国道274号、国道237号の基幹交通施設に加え、日高自動車道、北海道横断自動車道が整備計画中であり、交通の要衝となっている。
 流域には古くからアイヌの人々が先住し、その伝統・文化は、民族伝承の歌や踊りであるアイヌ古式舞踊や豊漁を祈願する儀式等が、今日まで受け継がれている。
 さらに、鵡川はシシャモやサケ等が遡上し、河口干潟はシギ・チドリ類のシベリアとオーストラリア等を結ぶ中継地として利用されるなど、豊かな自然環境に恵まれている。

 鵡川水系においては近年、平成4年8月、平成13年9月、平成15年8月及び平成18年8月洪水と頻繁に洪水被害を受けており、また、平成5年1月釧路(くしろ)沖地震、平成6年10月北海道東方沖地震及び平成15年9月十勝(とかち)沖地震による被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、堤防の新設、拡築及び河道の掘削等による河積の増大、堤防の強化等により、計画規模の洪水を安全に流下させる。なお、河道掘削等による河積の確保にあたっては、河道の維持、河川環境等に配慮して実施する。また、むかわ町は、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域に指定されており、河川周辺の利用状況や住宅等の集積状況等を踏まえ、防災等関係機関と連携を図りながら情報連絡体制や必要な施設整備等について調査検討を進め、地震・津波被害の軽減を図る。
 河川環境の整備と保全に関しては、これまでの流域の人々と鵡川の関わりを考慮しつつ、流域全体の視点に立って、健全な水循環系の構築を目指し、源流部から干潟のある河口に至る変化に富んだ川の流れに育まれ、多様な動植物の生息・生育・繁殖する鵡川の豊かな自然環境を良好な状態で次世代に引き継ぐよう、その保全・再生に努める。
 特に、シギ・チドリ類の集団飛来地である河口干潟については、かつて広範囲に広がっていたが、近年、海岸侵食に伴い縮小傾向にあるため、生物の多様性を考慮し、生物の生活史を支える環境を確保できるよう配慮し、モニタリングを行いつつその保全と再生に努める。また、シシャモ、サケ等が遡上する良好な魚類等の生息環境の保全に努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 鵡川の基本高水ピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点鵡川において3,600m3/sとし、これを河道に配分する。

●木曽川(きそがわ)水系 (流域面積:9,100km2(木曽川:5,275km2、長良川(ながらがわ):1,985km2、揖斐川(いびがわ):1,840km2)、幹川流路延長:木曽川229km、長良川166km、揖斐川121km)

 木曽川水系は、長野県木曽(きそ)郡木祖村(きそむら)の鉢(はち)盛山(もりやま)(標高2,446m)を源とする木曽川と、岐阜県郡上(ぐじょう)市の大日ヶ岳(だいにちがたけ)(標高1,709m)を源とする長良川、岐阜県揖斐(いび)郡揖斐川町(いびがわちょう)の冠山(かんむりやま)(標高1,257m)を源とする揖斐川の3河川を幹川とし、山地では峡谷をなし、それぞれ濃尾(のうび)平野(へいや)を南流し、我が国最大規模の海抜ゼロメートル地帯を貫き、伊勢(いせ)湾(わん)に注ぐ。
 木曽川では、昭和58年9月洪水で、基準地点犬山(いぬやま)において基本高水のピーク流量を上回る出水により、美濃加茂(みのかも)市、坂祝(さかほぎ)町で越水し、大きな被害が発生した。長良川では、平成16年10月洪水で、基準地点忠節(ちゅうせつ)において既往最大流量を記録した。揖斐川では、平成14年7月洪水で、基準地点万石(まんごく)において昭和50年8月の既往最高に迫る水位を記録した。
 このような状況等を踏まえて、災害の発生の防止として、流域の豊かな自然環境や流域の風土・歴史等に配慮しながら、堤防の新設、拡築、河道掘削により河積を拡大し、護岸等の整備をするとともに、流域内の洪水調節施設により洪水調節を行い、計画規模の洪水を安全に流下させる。また、堤防の質的強化を図り、安全性を確保する。河口部において、高潮堤防の整備を進める。
 また、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持として、水資源開発を行うとともに、既存施設の有効利用及び関係機関と連携した水利用の合理化を推進すること等により、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に必要な流量の確保に努める。広域的な水需要地域への供給、渇水時における被害の最小化を図るため、木曽三川を繋ぐ水路を整備するとともに水資源開発施設の総合運用を図る。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 基本高水のピーク流量は、木曽川においては、既定の工事実施基本計画において、基準点犬山で16,000m3/sとしていたが、19,500m3/sに増加させ、河道と洪水調節施設への配分についてはそれぞれ、13,500m3/s、6,000m3/sとした。
 長良川においては、既定の工事実施基本計画において、基準点忠節で8,000m3/sと定められていたが、8,900m3/sに増加させ、河道と洪水調節施設への配分についてはそれぞれ、8,300m3/s、600m3/sとした。
 揖斐川においては、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点万石で6,300m3/sとし、河道と洪水調節施設への配分についても同様にそれぞれ、3,900m3/s、2,400m3/sとした。

●江(ごう)の川(かわ)水系 (流域面積:3,900km2、幹川流路延長:194km)

 江の川は、広島県山県(やまがた)郡北広島町阿佐(あさ)山(標高1,218m)に水源を発し、小支川を合わせながら北東に流れ、途中三次(みよし)市において馬洗(ばせん)川、西城(さいじょう)川、神野(かんの)瀬(せ)川を三方より合流し、先行性の渓谷をつくって流れ、島根県の江津(ごうつ)市において日本海に注いでいる。
 江の川の流域は中国山地のほぼ中央を貫流し、広島県、島根県と2県にまたがる。上流部三次市は古くから備北地方に張りめぐられた陸上交通の要に位置し、物資の集散地で陰陽交通の中継地として発達し、交通の要衝となっている。また、河口の江津市では、パルプ・窯業(瓦生産)工業等が盛んで、石州(せきしゅう)瓦と呼ばれる赤瓦の家並みは江の川流域の特徴的な景観の一つとなっている。
 本水系の治水対策の歴史は古く、下流部では弘法大師の教えにより水害軽減対策として植えたとされる竹林が水害防備林として今も残っている。
 江の川は、過去幾多の洪水被害に見舞われてきたが、昭和47年7月に既往最大の洪水が発生し、堤防の決壊を伴った激甚災害により江の川流域に甚大な被害をもたらした。
 このような状況を踏まえ、沿川地域を洪水から防御するため、江の川の豊かな自然環境に配慮しながら、堤防の新設及び河道掘削等により河積を増大させる。また、連続堤の整備による治水対策が困難な山間狭窄部については、住民との合意形成を図り、関係機関と連携・調整を図りつつ輪中堤や宅地の嵩上げ等を実施するとともに、流域内に洪水調節施設を整備することにより計画規模の洪水を安全に流下させる。また、洪水等による被害を極力抑えるため、関係機関や地域住民等と連携して、総合的な被害軽減対策を推進する。
 流域の人々と江の川の関わりを考慮しつつ、江の川の流れが生み出す良好な河川景観を保全するとともに、多様な動植物の生息・生育・繁殖する豊かな自然環境を次世代に引き継ぐように努める。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 江の川の基準地点尾関山においては、基本高水のピーク流量を既定の工事実施基本計画と同様に 10,200m3/sとし、基準地点江津においては、対象洪水の通過流量の上下流バランスを考慮し 14,200m3/sを14,500m3/sに見直した。
 基準地点尾関山における河道への配分流量を 7,600m3/s、洪水調節施設による調節量を 2,600m3/sとし、基準地点江津における河道への配分流量を 10,700m3/s、洪水調節施設による調節量を 3,800m3/sとした。

●矢部(やべ)川(がわ)水系 (流域面積:647km2、幹川流路延長:61km)

 矢部川は、その源を福岡、大分、熊本の3県にまたがる三国山(みくにやま)(標高994m)に発し、日向(ひゅう)神(がみ)峡谷を流下し、中流域において支川星野(ほしの)川を合わせ、さらに辺(へ)春(ばる)川、白木(しらき)川、飯(は)江(え)川等を合わせながら筑後(ちくご)平野を貫流し、下流域において沖端(おきのはた)川を分派して有明(ありあけ)海(かい)へ注いでいる。
 その流域は、福岡県南部に位置し、関係市町村数は5市4町2村におよび中下流部には筑後市、みやま市、柳川(やながわ)市といった主要都市を有しており、沿川にはJR鹿児島本線、九州縦貫自動車道、国道3号等の基幹交通施設に加え、九州新幹線や有明海沿岸道路が整備中であり、交通の要衝として社会・経済・文化の基盤をなしている。また、矢部川の河川水は古くから日本有数の穀倉地帯である筑後平野の農業用水や発電用水に幅広く利用され、筑後地方における産業活動の礎になっている。さらに上流部は矢部川県立自然公園、筑後川県立自然公園等の豊かな自然環境に恵まれ、中流部には国指定天然記念物の「新舟(しんふな)小屋(ごや)のクスノキ林」や「船(ふな)小屋(ごや)のゲンジボタル発生地」がある。
 矢部川流域は多雨地帯であること、また、上流部は釈迦ヶ岳(しゃかがたけ)山地を中心とした急峻な地形をなす一方、中流部は扇状地を形成し、下流部には干拓等により拡大した低平地が広がっており、中流部から下流部に人口が集中している。このような中、近年においても平成2年、平成9年、平成19年7月に洪水が発生し、度々甚大な被害が発生している。
 このような状況を踏まえ、矢部川水系ではそれぞれの地域特性にあった治水対策を講じ、水系全体としてバランスよく治水安全度を向上させるために、流域の豊かな自然環境や地域の風土・歴史等に配慮しながら、樹木伐開、堤防の拡築、河道掘削等により河積を増大し、さらに護岸等を整備するとともに、流域内の洪水調節施設により洪水調節を行い、計画規模の洪水を安全に流下させる。河道内樹木については、船小屋や千間(せんげん)土居(どい)に代表されるクスノキ林などは矢部川の特徴的かつ歴史的な風景を醸し出している重要な要素であることから、原則として現況のまま残すこととする。ただし、一部流下阻害の一因となっている樹木については必要最小限の伐開を行うこととし、実施にあたっては関係機関との調整及び連携を図るとともに多様な動植物の生育・生息・繁殖する良好な河川環境・河川景観等の保全、河川利用等に配慮する。
 河道掘削等による河積の確保にあたっては、河道の維持、多様な動植物の生息・生育・繁殖する良好な河川環境、河川景観等の保全、河川利用等に配慮する。
 動植物の生息・生育・繁殖地の保全については、重要種を含む多様な動植物を育む渓流や瀬・淵、ワンド、細流、河岸、河畔林、河口干潟、ヨシ原、汽水域等の定期的なモニタリングを行いながら、生物の生活史を支える環境を確保できるよう良好な自然環境の保全に努める。
 河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に関しては、今後とも、流量調査・環境調査等を継続するとともに、過去から営まれてきた独特の水利用をはじめとする、水に関する慣習・文化を踏まえつつ、矢部川の水に関わる人々や地域住民、関係機関との情報の共有化及び連携に努め、流域全体での取り組みを推進するとともに、既存施設の有効利用等による流況の改善及び良好な河川環境の保全に努める。
 また、渇水・水質事故等の発生時の被害を最小限に抑えるため、情報提供、情報伝達体制を強化するとともに、水利使用者相互間の水融通の円滑化などを関係機関及び水利使用者等と連携して推進する。

(基本高水のピーク流量及び計画高水流量)
 矢部川の基本高水のピーク流量は、既定の工事実施基本計画と同様に基準地点船小屋で3,500m3/sとし、このうち洪水調節施設により500m3/s調節し、河道への配分流量を3,000m3/sとする。

 


<河川整備基本方針の概要>


<河川整備基本方針>

 


問い合わせ先
【総括・相模川・木曽川・矢部川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川計画調整室 課長補佐 矢崎 剛吉
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8445 内線 35372
【阿賀野川・江の川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川情報対策室 課長補佐 安原 達
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8445 内線 35382
【宮川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川情報対策室 課長補佐 青野 正志
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8445 内線 35352
【鵡川】
国土交通省河川局  河川計画課 河川情報対策室 課長補佐 笠井 雅広
    代表03(5253)8111 直通03(5253)8445 内線 35392


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