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記者発表

平成10年度水環境における内分泌攪乱化学物質に関する実態調査結果について

平成11年 3月30日

流域水環境研究会



 建設省の実施した標記調査結果の公表にあたり、当研究会委員並びに魚類調査に協力いただいた先生方から寄せられた意見を下記のとおりとりまとめた。本調査結果の解析、今後の調査の実施にあたっては、これらの意見に十分留意していただきたい。


【調査全般について】

 全国の一級河川を対象として、内分泌攪乱化学物質に関する大規模な調査が前期調査に続き実施され、興味ある実態が明らかになった。

 しかし、調査対象物質は微量であり、それらの調査分析手法がいまだ十分に確立されていないと考えられるため、調査計画から測定・結果の評価までの詳細な精度管理が極めて重要である。今回の後期調査では前期調査の問題点が詳細に検討され、調査手法にかなりの改善がなされたが、今後さらに実態や問題点をより明確にしていく必要がある。


【採水地点・採水時期について】

  • 河川や下水の水質は、時期、時間により大きく変動するので、今後の調査にあたっては、代表的(平均的)な値が得られるように採水地点、採水時期、時間(採水頻度)を検討する必要がある。
  • 後期調査に先立ち、多摩川で通日調査(1日に数回測定する)が行われ、興味ある成果が得られたが、このような結果についてもとりまとめ、公表資料とすることが望ましい。


【精度管理・分析結果の表記について】

  • 調査地点が広く分布していることから、採水方法、採水機器、試料輸送方法、分析手法、分析精度等の統一化が結果の精度管理には欠かせないので、管理を一層進め分析結果の精度向上に努める必要がある。
  • 同一地点で採水した試料を少なくとも2回測定(二重測定)し、平均値で表現することとし、測定結果にばらつきが大きい場合にはもう一度測定することも検討すべきである。
  • 下水試料については、水質変動が大きいなどの理由で二重測定が行われたが、河川水試料についても、地点数が少なくなっても二重測定を実施することが望ましい。
  • 後期調査では、河川水試料の分析結果の表記が検出下限値に統一され、わかりやすくなった。下水試料については、分析精度の問題もあって検出下限値と定量下限値が用いられているが、今後は検出下限値に統一することが望ましい。


【魚類調査について】

  • コイのビテロゲニン濃度について、今回初めて全国的な調査が行われ、今後の研究のベースとなる貴重なデータが得られた。しかし、これと比較できる既存のデータはほとんどなく、今後もデータを積み重ねていくことが必要である。
  • 今回の調査の時期(11月〜12月)は、魚が動かない時期であったため、結果的にはあまり調査に適していなかった。できれば、雄、雌の区別がしやすく雄だけ選ぶことができる5月から6月頃の産卵期に実施することが望ましい。
  • 今回の調査結果から、雄のコイの一部が体内でビテロゲニンを生成していることが確認されたが、現段階でそのことがコイに何らかの悪影響を及ぼしているかどうかの判断は困難である。
  • ビテロゲニンを生成する要因としては、餌等により摂取する植物性のホルモン様物質、河川水中の内分泌攪乱化学物質、人畜由来の女性ホルモンなど様々な要因が考えられるため、ビテロゲニンの値だけをみて魚への影響を検討するのは危険性があり、水質、底質等の測定データも合わせて総合的に判断していく必要がある。また、今後、魚体内の化学物質、河川水中の植物性のホルモン様物質、ホルモン剤、農薬などのデータも必要である。
  • 河川水や底質中の化学物質濃度及び流域の工場の排水中の化学物質濃度と、魚のビテロゲニンやステロイド濃度との相関もいずれ評価していくことが必要である。その際、採捕した魚の行動範囲とこれに関連する流域の状況等を把握しておくことが重要である。


【調査結果の評価について】

  • 内分泌攪乱作用の疑いのある化学物質が現実に河川から検出されたとはいえ、現時点では検出された濃度でその当該物質がいかなる作用を自然界の生物に及ぼすかは、研究レベルにおいてですら明らかにされていない。そのため、いかなる対応をとるべきか科学的に示し得ない状況にある。したがって、化学物質濃度と生態系影響の関係について研究者の協力を得て、早急に明らかにすべく対応をとる必要がある。


【関係機関における調査の連携について】

  • 内分泌攪乱化学物質に係わる調査は、類似のものがいくつかの機関によりなされている。今回の調査では、すでに、手法や精度管理の統一化に配慮し、重複をさける等の配慮がなされているが、調査の効率を高めるために関係機関間のより一層の連携の強化を図る必要がある。


【結果の公表等について】

  • 内分泌攪乱化学物質の生態系への影響は、国民が広く関心を抱いているものである。したがって、調査結果がまとまり次第、常に種々の手段にて広く公表することが重要である。また、広く意見を聴取し、調査を実り多いものとすべく配慮願いたい。


【流域水環境の総合的な保全と管理について】

  • 流域水環境の総合的な保全と管理のために、代表的な河川において各々の物質収支を検討し、主要な発生源を特定できるような調査を実施し、発生源対策に結びつけることが望ましい。
  • 今回の調査結果から、負荷量(流量と濃度の積)の検討が行われ、貴重な結果が得られている。このような結果は、流域水環境の総合的な保全と管理に役立つものであり、とりまとめて公表資料とすることが望ましい。

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