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河川局

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記者発表

総合的な土砂災害対策に関する検討(報告)



総合的な 土砂災害対策 に
関するプロジェクトチーム
平成 11年 11月 5 日

I.土砂災害防止のための総合的な対策に関する法制度の整備

(1) 法制化に向けての検討

     土砂災害を警戒すべき区域を法的に位置づけ、住民への周知を徹底し、当該区域内での情報提供・警戒避難体制の整備、住宅や災害弱者施設の立地規制、既存住宅の移転促進対策、土砂災害防止施設の整備を内容とする法制化に向けて、次期通常国会への提出を目指し、河川審議会に「総合的な土砂災害対策のための法制度の在り方」について諮問して、検討を進める。

(2) 検討の視点

  1.  自分の住んでいる土地が土砂災害の危険性のある地域であるかどうか、住民にとって明確でなく、土砂災害に対する認識が低い。

  2.  土砂災害のおそれがある区域における立地抑制について

     土砂災害危険箇所は現在全国で十八万箇所(土石流約八万、地すべり約一万、急傾斜約九万)に及び、さらに新規開発により増加しているが、これらをすべて土砂災害防止工事により安全にしていくのには膨大な時間と費用を必要とする。

     このため、住民が自らの生命・財産を自ら守ることができるよう危険地域に関する科学的な裏付けのある情報の公開を推進することと併せ、甚大な被害が生じるおそれのあるところでは土砂災害防止の観点から必要な立地抑制対策を講じる必要がある。

     しかし、現行の制度体系における立地抑制対策は、以下のような実態にある。

    (ア)  急傾斜地崩壊危険区域の指定により、切り土、盛り土や樹木の伐採等がけ崩れの発生を誘発助長する行為を制限することができるが、立地抑制のための規制は含まれていない。
    (イ)  がけ崩れのおそれのある区域では、急傾斜地崩壊危険区域の指定に基づき建築基準法による災害危険区域を指定し、建築規制を行うこととされているが、急傾斜地崩壊危険区域の指定が現実には工事を行うところでしか行われていないため、被害のおそれがある区域における立地抑制対策が十分に機能していない。
    (ウ)  土石流や地すべりのおそれがある区域では、制度として災害危険区域の指定と連動していないため、災害危険区域の指定箇所は極めて少ない状況にある。
    (エ)  開発許可制度では、開発行為を行うのに適当でない区域として災害危険区域等を開発区域に含まないものとしているが、自己用の開発には適用されず、また、社会福祉施設・医療施設等のための開発行為は開発許可の適用除外とされている。
  3.  土砂災害のおそれがある区域においては、立地規制と併せて、既存住宅に対する危険な箇所からの移転促進対策等を充実させて行く必要がある。

(3) 土砂災害を警戒すべき区域の設定手法の検討

     土砂災害を警戒すべき区域の設定手法について、(社)砂防学会に検討を依頼しているところであり、その基本的な考え方を年内にとりまとめる。

(4) 建築物等の安全基準の検討

     土砂災害を警戒すべき区域における建築物や道路等の安全確保のための技術基準について検討を行う。


II.総合的な土砂災害対策に関する支援措置

   [新たな法制度の検討とあわせ導入を検討する支援措置]

  1.  全国土砂災害基礎調査の推進

     総合的な土砂災害対策を進めていくため、危険箇所の状況、土砂流出の発生と被害規模の関係等についての全国的な調査を国及び都道府県で実施。

  2.  家屋移転者等に対する融資制度の導入

     土砂災害を警戒すべき区域として制度的に位置づけられた区域からの移転等が必要とされた家屋についての融資制度の導入。

  3.  がけ地近接等危険住宅移転事業の拡充

     土砂災害を警戒すべき区域からの住宅移転を緊急に促進するため、がけ地近接等危険住宅移転事業を拡充。また、本事業を新たな法制度における土砂災害を警戒すべき区域にも適用。

  4.  土砂災害情報相互通報システムの構築

     住民の早期避難と災害時における市町村等の迅速な防災体制を強化するため、行政と住民の情報交換を推進する土砂災害情報相互通報システムを構築。

[ そのほかの主な支援措置(関係機関と調整中のものを含む。)]
  1.  再度災害防止のための緊急かつ抜本的な事業の実施の推進

     再度災害を防止するため、砂防、地すべり、急傾斜地の各事業において、発生箇所の緊急対策と併せて周辺地域でも緊急かつ抜本的な施設の整備を実施。

  2.  土砂災害緩衝樹林帯の整備

     砂防関係事業等において、危険な斜面等において崩壊土砂による被害を防止するとともに危険な地域における家屋の建築を抑制する土砂災害緩衝樹林帯をモデル的に整備。

  3.  郵便局と連携した災害情報の収集体制の強化

     郵便局に「土砂災害危険区域図」、「土砂災害110番」を掲出し、周辺住民へ情報提供を行うとともに、土砂災害発生の前兆現象に関する情報を郵便局員から通報してもらう連絡体制を整備するなど、郵政省との連携による防災体制を一層強化。

     当面全国150の郵便局をモデルに実施し、その成果を踏まえ全国的展開を図る予定。

  4.  電話帳への防災情報の掲載(レッドページの創設)

     平成11年7月に関係5省庁(建設省、内閣安全保障・危機管理室、国土庁、郵政省、消防庁)とNTT東日本・NTT西日本により取り決めた内容に基づき、土砂災害危険区域図や土砂災害の前兆現象等地域の実情にあわせた防災・危険情報等を電話帳に掲載し、家庭内において防災情報を迅速に確認できるよう措置(広島県において12月版に掲載予定)。

     原則として平成12年1月以降に電話帳を更新する地域から順次レッドページを創設。

  5.  がけ崩れに配慮した中高層住宅の開発

     砂防と連携し、がけ崩れ対策の機能を有する中高層住宅を開発するとともに、今後、公営住宅においてモデル的に整備。

  6.  都市公園事業等の活用

     都市公園事業等において土砂災害対策にも資する良好な自然環境を有する斜面林等の保全等を実施。

  7.  先端技術を活用した国土管理技術の開発

     GPS(汎地球測位システム)やリモートセンシング等の情報収集体制とGIS(地理情報システム)等の情報処理技術等を活用して住民の避難誘導や発災後の状況把握に資する国土管理技術を開発。

  8.  土砂災害に対応した道路防災対策の推進

     土砂災害に対応した道路防災対策として、道路防災総点検を実施し法面防護工等の防災対策及び治山事業(林野庁)と連携した法面対策を実施。

     また、住民・道路利用者からの情報収集、インターネットを活用した情報提供等道路管理の情報化を図り、地域と連携した防災管理体制を推進。



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