Topics
|
記者発表
|
平成11年度
|
|
建設省では、動物の生体内に取り込まれた場合に、本来、その生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性物質(以下「内分泌攪乱化学物質」という。)として疑いのある物質について、今後の対策検討のための基礎資料とすることを目的として、平成10年度より、全国の河川や下水道における実態調査を実施している。 平成11年度は、春期(5〜7月)に魚類の血液中のビテロゲニン濃度等に関する調査、夏期(7〜9月)に一級河川109水系及び主要下水処理場9カ所における水質等の調査を実施したところであり、今般、その結果がまとまった。
(1)魚類調査(春期調査) 平成10年11〜12月に、8水系25地点で雄コイ111尾を捕獲して実施した調査において、一部の雄コイの血液中から雌性化の目安になる物質(ビテロゲニン)が検出された。ただし、この調査はコイの生理的活性が低い季節に実施したものであったため、 平成11年度春期調査では、コイの産卵期(5〜7月)により多くの雄コイを捕獲してビテロゲニン濃度の調査を実施した。 調査地点は、平成10年度の調査地点に、平成10年度の水質及び底質の調査結果からみて濃度が高い河川及び低い河川を追加した9水系27地点とした。捕獲した雄コイは、合計252尾(1地点当たり原則として10尾以上捕獲)である。 調査の結果、一部の雄コイの血清中からビテロゲニンが確認された。検出された濃度の範囲や個体数の傾向は、平成10年度の調査とほぼ同様であった。雄コイが体内でビテロゲニンを生成する要因としては、同じ場所に生息する雌のコイが排出する女性ホルモン、餌等により摂取するホルモン様物質、人畜由来の女性ホルモン、女性ホルモン様作用を持つ化学物質などが考えられるが、現時点では要因を特定できなかった。 なお、今回の調査とは調査時期や使用されたビテロゲニンの測定キットなどが異なるため単純な比較はできないが、アメリカ全土25地点の調査(U.S.Geological Survey Open-File Report 96-627)では、46尾/275尾(16.7%)の雄コイの血漿中から10μg/ml以上のビテロゲニンが検出されたと報告されている。 表−1 雄コイの血清中のビテロゲニン測定結果(単位:尾)
平成10年度に引き続き、全国の一級河川及び下水処理場9カ所において、生産量の多さや環境中での検出状況から選定した化学物質7物質に人や家畜に由来する女性ホルモンを加えた8物質(以下、「基本調査対象物質」という。)を主な調査対象物質として、水質等の実態調査を実施した。 1)水質調査 全国の一級河川109水系261地点(平成10年度調査と同じ)において、基本調査対象物質について水質調査を行った。その結果、5化学物質と人畜由来ホルモン(人や家畜からの排出に由来する女性ホルモン)が比較的多くの河川から検出され、これらの物質が低濃度ではあるが河川水中に広く存在することがあらためて確認された。検出された濃度の範囲や検出地点数の傾向は平成10年度の調査結果と概ね同様であった。なお、基本調査対象物質の検出地点数は、平成10年度後期調査と比較して、ノニルフェノール及びアジピン酸ジ−2−エチルヘキシルが半数近くに減少するなど、全般的に減少している。 また、主要12河川12地点においては、基本調査対象物質の他に追加調査対象物質13物質について調査を実施した。その結果、平成10年度同様、4−t−ブチルフェノール、2,4−ジクロロフェノール及びベンゾフェノンが検出された。 表−2 水系(109水系)別の基本調査対象物質測定結果 |
2)底質調査 一級河川15水系20地点(平成10年度調査と同じ)において、水質調査と同じ基本調査対象物質について底質調査を行った。その結果、ノニルフェノール、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、及びビスフェノールAの3物質が多くの地点で検出され、これらの物質が底質中に広く存在することがあらためて確認された。検出された濃度の範囲や検出地点数の傾向は、平成10年度の調査結果と概ね同様であった。 また、主要11河川11地点においては、基本調査対象物質の他に追加調査対象物質16物質について調査を実施した。その結果、平成10年度同様、4−t−ブチルフェノール、ベンゾ(a)ピレン、ベンゾフェノン、トリブチルスズ及びポリ塩化ビフェニール類(PCBs)の5物質が検出された。 3)下水道調査 多摩川及び淀川の主な下水処理場9ヶ所の流入下水と放流水について、基本調査対象物質に係わる水質調査を行った。下水道の放流水については、基本調査対象物質のうち、表−3に示す3化学物質と人畜由来ホルモンが測定された(定量下限値以上)。放流水中の濃度は、河川水中の濃度とあまり差がなかった。 表−3 放流水における基本調査対象物質測定結果
流入下水については、上記物質に加え4−t−オクチルフェノールとフタル酸ジ−n−ブチル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシルが多くの処理場で測定された(定量下限値以上)。 表−4 流入下水における基本調査対象物質測定結果 流入下水と放流水の濃度を比較すると、放流水の方が大幅に低くなっており、下水処理場は、放流先の水域に対して、内分泌攪乱作用が疑われている化学物質等を削減していることがあらためて確認された。
3.今後の予定 秋期(11〜12月)に、109水系140地点における水質調査、主要11河川11地点における底質調査、並びに多摩川及び淀川の12処理場における下水道調査を実施する。また、調査対象物質の流入経路を把握するため、環境庁と連携し、多摩川及び淀川において、一定の区間に流入する支川、樋管等の水質調査を実施する。さらに、水質の時間変化及び日変化を把握するため、多摩川において3日間にわたり通日調査を実施する。 冬期(2月頃)に、春期調査と同じ9水系27地点において水質調査を実施する。 秋期及び冬期の調査結果は、取りまとまり次第流域水環境研究会に報告し、速やかに公表するものとする。なお、結果の公表は3月頃を予定している。
|
![]() |