水利使用許可の判断基準は、大きく分けて以下の4つがあります。
水利使用の目的及び事業内容が、国民経済の発展及び国民生活の向上に寄与し、公共の福祉の増進に資するものであること。
審査に当たっては、水利使用に係る事業計画の国民生活や産業活動への影響、国土開発、水資源開発、電源開発、土地改良等に関する国又は地方の計画との整合性、河川水以外の水源への代替可能性等を勘案し、総合的に判断する必要があります。
申請者の事業計画が妥当であるとともに、関係法令の許可、申請者の当該事業を遂行するための能力及び信用など、水利使用の実行の確実性が確保されていること。
水利使用に係る事業計画が、関係法令に基づく許可等を受けているか、又は受ける見込みが確実であり、かつ、当該水利使用の内容が関係法令による許可等に係る事業内容と整合が図られている必要があります。
水利使用の申請者が、事業を遂行する能力及び信用を有すると客観的に判断される者である必要があります。
水利使用の許可に係る取水量が合理的な根拠に基づいて算定されたものであり、その目的、事業計画等からみて、必要かつ妥当な範囲内のものである必要があります。
(水道水需要量Q1)=(河川からの取水量Q2)+(他水源からの供給量Q3)
Q1=(1人1日最大給水量)×(計画給水人口)×{1/1−(ロス率)}
Q3=(地下水供給量)+(他事業者からの分水量)
Q2=Q1−Q3
(工業用水需要量Q1)=(河川からの取水量Q2)+{(他水源からの供給量Q3)+(回収水Q4)}
Q1=(工業生産量)×(原単位)
Q3=(地下水)+(水道)
Q2=Q1−(Q3+Q4)
(農業用水需要量Q1)={(かんがい面積)×(減水深(蒸発、浸透の量)}+(水路損失量)−{(有効雨量)+(反復利用水量)}
(使用水量Q1)=(出力P)/{9.8×(落差H)}
他の水利使用、漁業等との調整がなされ、当該水利使用により損失を受けるおそれがある者が存する場合には、事前に当該水利使用についてその者の同意を得ておくことが望ましいといえます。
河川の流況等に照らし、河川の適正な利用及び流水の正常な機能の維持に支障を与えることなく安定的に当該水利使用の許可に係る取水を行えるものであること。
取水予定量は、基準渇水流量(10年に1回程度の渇水年における取水予定地点の渇水流量(※1))から、河川の維持流量と他の水利使用者の取水量の双方を満足する水量(正常流量)を控除した水量の範囲内のものである必要があります。
河川には「河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされる」(河川法第1条)ための流量(正常流量)が確保されなければなりませんが、「河川が適正に利用され」る流量とは、各利水者の取水に係る流量であり、「流水の正常な機能が維持され」る流量とは、通常、「河川維持流量(※2)」と称されるものです。
河川流水の管理…流水占用、舟運、漁業、観光、河川管理施設の保護、地下水の維持
河川環境の保全…流水の清潔の保持、塩害の防止、河口の閉塞の防止
年間を通じて355日を下回らない程度の流量値をいいます。
塩害防止、各種排水の希釈浄化、河道の維持、河口埋塞防止、水生動植物の生存繁殖等、河川に関する公利の確保、公害の除去若しくは軽減のため流水の果す機能を確保するための流量をいいます。
河川を流れる水は刻一刻変化しながら流下しますが、その流下量を一定時間単位で表現したものを「流量」と呼び、次のように分類されています。
これら河川流量を測定するため、概ねの河川には流量観測所が設置されています。
国土交通省及び都道府県が河川管理上の必要性から設置したものの外、経済産業省、農林水産省が利水調査のため設置したもの、あるいは利水者が利水地点において設置しているもの等があります。
取水行為を行おうとする場合、取水予定地点において取水予定量が存在するか、また、関係河川使用者の取水量への影響の有無の検討がなされなければなりません。
この検討のためには、取水地点における流量資料が必要になりますが、取水予定地点において長期の実測流量資料が存在することは稀有であり、ある地点における長期の実測流量資料から取水予定地点の河川流量の推定を行う必要があります。
流量の推定を行う場合、取水予定地点の河川流量に最も類似した流量資料を用いる必要がありますが、類似性の判断は、降雨量、地形等で行い、推定による計算流量と取水予定地点の短期間の実測との間の相関度を検討しておかなければなりません。
採用するに値する流量資料がない場合は、降雨資料から推定することも可能ですが、相関性は河川流量からの推定による場合よりも一般的に低いといえます。
このように、いずれかの地点における取水予定河川の比流量から取水予定地点における流量を推定します。これらを含めて、推定によって求められた流量は、推定方法が妥当である旨の検証等のチェックが必要です。例えば、流域比換算による推定の場合は、取水予定地点との同時流量観測あるいは流量と降雨量の相関等のチェックが必要です。"
以上により、同一河川において少なくとも1〜2地点の流量資料が準備されることとなります。この場合、これは、取水予定量存在の確認のための資料であり、一方、関係河川使用者の取水量に対する影響の計算のための資料となります。関係河川使用者の取水量に対する影響の計算は任意の地点をセットして検討します。この地点を基準地点といいます。基準地点における流量は、取水予定地点における流量推定と同一の推定方法であり、また、同一河川に先発水利権がある場合、その基準点として使用された地点の影響範囲内であれば原則としてその地点での検討が必要です。
取水予定地点における河川流量のうち10箇年の渇水流量値を抽出し、そのうち最小値年を基準年とします。
この最小値の渇水流量を基準渇水流量といい、河川維持流量、取水予定量及び関係河川使用者の取水量がこの範囲内に存する必要があります。
基準渇水流量−(河川維持流量+関係河川使用者取水量)−取水予定量≧0
これは、一般に各河川使用者が円満に取水することができる限界の水量であるという河川管理上の経験的事実に基づくものです。すなわち、河川の流量を多めに見積もって次々に新たな水利権を付与してゆけば、各河川使用者が十分に取水することができない日が頻繁に起こり、水利権の優先順位を侵してわれ先に取水するというような水利秩序の混乱が生じ、ついには、干害によって一部河川使用者が致命的な打撃を被ることとなります。
一方、河川の流量の査定を厳しくして、過度に取水を抑制すれば、通常利用し得べき水資源を徒らに海に放流することとなります。その調整点として、最近10箇年における最小渇水流量をその河川の流量と定めて、その上に水利秩序を樹立するという行政慣習が確立されてきました。ダム補給の場合は、補給容量の最大値年を基準年とするのが通例です。
日本の河川における低水流量は、その大部分が農業用水に先占され、若干の余裕も都市用水に利用し尽くされているのが実状です。こうして、渇水流量に余裕のない河川を、通常、パンク河川と称しています。渇水流量に余裕がないとは、通常においてその河川に流水がないという意味ではなく、ひとたび渇水年に至れば取水困難や塩水遡上等の被害が発生することをいいます。
こうした河川において、新たに取水行為を行おうとする場合には、基準渇水流量を増量するための手段、あるいは渇水期に取水しなくても良いような手段を講ずる必要があります。
基準渇水流量を増加するためには、ダム等の水資源開発施設において豊水時に流水を貯留し、渇水時に放流する方法が一般的に採られています。
流水の占用のためのダム、堰、水門等の工作物の新築等が河川法第26条第1項(工作物の新築等の許可)の審査基準を満たしているなど、当該水利使用により治水上その他の公益上の支障を生じるおそれがないこと。
水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等は、当該水利使用の目的を達成するために必要な最小限度のものである必要があります。
また、水利使用に係る土地の占用及び工作物の新築等によって、例えば河川区域外に置される土捨場の崩壊による災害、水利使用に伴う排水による流水の汚濁などがあってはなりません。