「総合的な土砂災害対策のための法制度の在り方について」
河川審議会 答申 概要
1.土砂災害対策の現状と認識
- (1)
- 平成11年6月末の梅雨前線豪雨により、広島県下で発生した著しい土 砂災害(土石流、がけ崩れ)から得られた課題
- 普段から有効な情報提供や警戒避難措置についての備えに努める必要があること
- 安全性が確保されないままに住宅や災害弱者施設が立地することがないようにすること
この課題は災害発生状況、危険箇所の現状をみると全国的な課題である。
- (2)
- 従来より土砂災害防止工事の推進により、危険箇所の整備に取り組んでいるが、住宅等の新規立地により危険箇所は増加する傾向にあり、危険箇所をすべて対策工事によって安全にしていくのには膨大な時間と費用を要する。
- (3)
- 土砂災害から国民の生命及び身体に対する安全を確保するため、ハード対策(土砂災害防止工事の推進)と併せて、土砂災害の危険性のある区域を明らかにし、その中でのソフト対策(警戒避難措置、立地抑制策)を充実させていく必要がある。
2.現行制度上の問題点
土砂災害防止に関する現行のソフト対策には、以下のような問題点があり、改善を図る必要がある。
- 自分の住んでいる土地が土砂災害の危険性のある地域であるかどうか明確でない。
- 土砂災害の危険性のある地域における宅地造成や建築の制限を通じての立地抑制策が不十分である。
3.総合的な土砂災害対策の在り方についての提言
土砂災害防止に関し、国民一人一人が自分の生命・身体を自ら守るという考え方に立って判断し、行動することを念頭に以下の施策を講じる必要性がある。
- (1)
- 土砂災害警戒区域の指定及び警戒避難措置の充実
土砂災害が生じるおそれのある区域(土砂災害警戒区域)を指定し、住民等に対する土砂災害の危険性の周知徹底を図るとともに、重点的に土砂災害防止のための警戒避難措置(市町村地域防災計画に位置付け)を講じる。
- (2)
- 土砂災害特別警戒区域における立地抑制策等の実施
土砂災害警戒区域のうち、土砂災害により住民等の生命・身体に著しい被害が生じるおそれがある区域(土砂災害特別警戒区域)を指定し、宅地造成段階や建築段階において、新規立地抑制や建築物の安全の確保のための措置を講じる。また、被害の対象をできるだけ減少させる観点から既存住宅の移転等の促進を図る措置を講じる。
- (3)
- 土砂災害に関する基礎的な調査の実施
災害防止のための警戒避難措置を講じるべき区域や住宅等の立地抑制を行うべき区域の設定を科学的な知見に裏付けられた客観的な基準により行うとともに、将来の対策工事の実施にも寄与するため土砂災害に関する基礎的な調査を全国的に実施する。
- (4)
- 土砂災害防止のための指針の作成
災害防止のための警戒避難措置の整備や住宅等の立地抑制策を効果的に進めていくため、従来の施策との関連を踏まえつつ、基礎的な調査や区域の指定に関する事項を中心に行政指針としてまとめ、国民に提示する。
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