審議会等の情報
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河川審議会について
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中 間 報 告 平成10年7月 河川審議会 総合政策委員会
1.はじめに
地球は、様々な物質循環の中で、生命を育んでいる。水に関してみると、地表、海面から蒸発した水蒸気が、雨となって、地表に降り、一部は地下水となり、一部は表流水となって、川を流れて海に至るという循環を繰り返している。また、水循環系は、様々な物質の移動経路としても重要な役割を果たしている。こうした原生の水循環系に人為を加えることによって、現代の文明が構築されてきた。 2.水循環の変化とそれがもたらす影響
我が国は、高度成長期を通して、都市への人口の集中と産業活動の集積、農業形態の近代化等が進み、国民の生活も高度化が進んできた。この過程で降雨の流出及び水利用の形態の変化、水質の悪化等、水循環に関する様々な看過できない弊害が露呈してきた。(1)流域における社会構造の変化
我が国は、近年急速な経済成長を遂げ、市街地の急速な拡大により、流域によっては、森林、農地が減少するといった都市化社会が進んだ。また、都市化の進展や経済活動の効率化にあわせ、個々の施設の機能本位の整備が優先され、環境等の他の機能に与える影響について十分な注意が払われてこなかった。さらに、現在では、高密度な経済活動及び快適性や利便性を追求する生活様式を前提とした水・エネルギー多消費型の都会的社会となってきた。(2)水循環の変化とそれがもたらした影響と弊害
流域の社会構造の急激かつ大規模な変化は、地域ごとに水循環系に様々な影響を与え、地域によっては看過できない以下のような新たな弊害を引き起こしてきた。 3.健全な水循環系の構築にあたっての基本的考え方
理想的な水循環系とは、水循環系を構成している全ての場における一連の水の流れにおいて、環境面やエネルギー面の負荷が総計として少なく、安全で快適な生活と持続可能な発展を実現する水循環のシステムといえよう。こうした考えに立って、今までの流域や社会構造の変化によって生じた弊害を克服し、水循環を健全化していかなければならない。このためには、以下に述べる三つの基本的考え方を徹底すべきと考える。(1)国土マネージメントに水循環の概念を取り入れることが重要
健全な水循環系を実現していく上で重要な点は、国土マネージメントの視点に水循環の概念を取り入れることであり、具体的には、以下のような視座を持つことが重要である。(2)河川・流域・社会が一体となって取り組むことが重要
健全な水循環を実現していくためには、人々が水循環を大切にするという意識を持ち、社会全体として取り組んでいく必要がある。そのためには、関係者が一体となった組織を作り、河川で取り組むべき対策や流域全体で取り組むべき施策を総合化し、行政関係機関の連携・協調を強化することはもとより住民・事業者とのパートナーシップを大切にして社会全体で取り組んでいくという共同、協力の体制を整えていくことが必要不可欠である。このため、行政として必要な制度等を充実させるとともに、地域として協調して取り組んでいく施策等について責任分担を明確にして推進する必要がある。(3)水循環を共有する圏域毎の課題を踏まえた取り組みが重要
水循環系を健全化するために、沿岸域や水系単位の大流域を見据えた視点が大切であるが、洪水対策、水利用、環境、防災面等における問題が共通化している中小流域をベースに、水循環系を共有する圏域単位で積み重ねて改善していくことが効果的である。 4.健全な水循環系を構築するための施策の推進
健全な水循環系を構築するため、前記の三つの基本的考え方に沿って、以下の施策を総合的に推進するべきである。こうした施策により、水と人との距離を縮め、21世紀にふさわしい日本の水文化を再生していくことが求められる。(1)水循環に関する組織の設置及び総合的な水循環マスタープランの策定
水循環系に関わる計画としては、河川計画、都市計画、下水道計画、防災計画等個々の分野での計画があるが、水循環系の健全化を図る総合的な計画が策定されておらず、水量・水質の一体的な管理が行われているとは言い難い。(2)具体的施策の実施
健全な水循環系を構築するために、以下のような具体的施策を積極的に実施していくべきである。 5.健全な水循環系の構築に向けての課題
水循環の健全化をさらに進めるにあたって、水に関する政策の一元化や住民、事業者を含めた社会全体の取り組みが重要であり、以下のような中長期的課題について検討を進めていく必要がある。(1)国土の利用・整備に関する制度の充実
水多消費型社会を前提とした右肩上がりの経済成長を支える国土づくりから、水循環系の限界性を念頭においた土地や水の利用、ひいては、国土の再構築が求められる時代となっているため、健全な水循環系の再生といった観点から、国土の利用・整備の基本となる法制度も含めて抜本的な対応方策を検討していかなければならない。(2)水政策調整機能の強化と地下水の公共性の確保
水循環の健全化を図るためには、河川、下水道、上水、工水、農水等の水に関係する行政機関が一体となって、統合的なビジョンの下に各種の施策を実施していくことが不可欠である。(3)経済原理を取り入れた誘導策
健全な水循環を構築していくためには、行政と国民がそれぞれ応分の責任を負うという認識のもとに、住民や事業者の主体的な取り組みを促進することが不可欠となる。 水 循 環 小 委 員 会 委 員 名 簿
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