ホーム  >> 政策・仕事  >> 河川トップ  >> 審議会等  >> 社整審  >> 河川分科会  >> 小委員会  >> 基本方針

河川局

審議会等の情報 社会資本整備審議会河川分科会について


第27回河川整備基本方針検討小委員会
(議事録)

平成17年11月30日


2.議事
淀川川水系の河川整備基本方針の策定について

(委員長) 近藤でございます。本日は委員の皆様にはご多用中のところをご出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 それでは、議事に入ります。
 前回までに淀川水系の治水、水利用、河川環境に関する特徴や課題につきまして審議いただきました。本日は前回までの審議を踏まえて、淀川水系の河川整備基本方針策定に向けての基本的な考え方について審議をいただきたいと思います。
 それでは、事務局より説明をお願いいたします。
(事務局) 事務局を担当しております河川計画課長の布村でございます。座って説明させていただきます。
 お手元の資料、A3版カラーの右肩、資料1と書きましたものです。分厚いですが、なるべくご審議の時間をいただけるようにはしょった説明にさせていただくかもしれませんが、ご容赦をお願いしたいと思います。
 今まで各委員から出ていました話と、それに関連しますことを中心に整理してございます。
 1ページ目ですが、治水対策の全体のシステムについて何枚か用意しております。一番最初の紙は、現在の工事実施基本計画の振り返りの部分が書いてございます。一般的なことと違う部分がございまして、その辺のご説明をさせていただきたいと思います。
 淀川水系は下流の方では1本になっておりますが、上の方は大きく3つの大きな支川といいますか本川、支川で構成されておりますが、基本的な話は水系全体の上下流、本支川のバランス等を確保して、どの地域におきましても現状よりも治水安全度を全体として向上させる、これはほかの川も含めてでありますが、治水対策の基本かと思われます。これを踏まえて、この淀川水系では宇治川、木津川、桂川の3川が合流します下流部につきましては、1つは上流部からの洪水を多く受けるということがございます。洪水を安全に流下させる、上流の洪水を吐いていくという役割があります。
 それから、人口資産が特に稠密であるという状況を踏まえまして、当然、バランスを踏まえ200年に1回の治水対策となっています。
 それから、宇治川、木津川、桂川とも相当の流域の大きさでございます。それぞれ人口資産も集積しています。全国的な並びも含めて、それぞれのところで150年に1回の洪水に耐え得るような考え方になっております。
 それから、上流と書きましたのは、例えば桂川でしたら保津峡より上、木津川でしたら岩倉峡より上、宇治川につきましては琵琶湖あたりはということですが、この部分は100分の1に設定をしてというのが全体の体系になってございます。
 狭窄部の話が前回も出ました。木津川、桂川のところに岩倉峡、保津峡がございます。この部分は今申し上げましたような全体のバランス、全体をそれぞれバランスをとりながら全体が向上するんだということをいたしますと、そこには峡谷の上に盆地がありますところで、狭窄部の堰上げで相当安全度が低い地域がございます。一番下の行でございますが、狭窄部、上流部である程度、水を貯めるにいたしましても、それでも狭窄部そのものを開削しないとバランスのとれた治水安全度の向上が図れない、そういうことから各峡谷部の上で水を貯める、ダムその他で水を貯めるということと開削をするというところで全体のバランスを形成しております。
 2ページですが、琵琶湖の話でございます。琵琶湖につきましてはここは通常の水系の計画とちょっと変わっておりまして、それは単なる川というよりは非常に広大な湖沼でございまして、それがわずかな水位の上昇で相当な量がたまりますし、またそれが流れていく場所が瀬田川のみであるということ等の特徴的なものを持ってございます。
 こういう状況を踏まえて、これまでの治水計画というのは琵琶湖を1つの治水として閉じたシステムといいますか、瀬田川のところで縁切れをしまして、洪水のときには下流の方の洪水が大変なときには瀬田川洗堰の全閉操作を行うということも含めまして、下流に負担を与えないような対策をしてございます。
 普通ですと上流、下流全体で水系を見るわけでございますが、琵琶湖の特徴からそこでいったん縁切れして、上の治水対策、下の治水対策を別々に検討しているものでございます。
 右下の絵をごらんいただきますと、先ほどの200分の1とか150分の1、100分の1と書きましたものは、模式図でわかりにくいかもしれませんが、そんな感じになっておりまして、大阪湾へ流れ込みます、枚方と書いてあるところ、12,000m3/s、基本高水のピーク量では17,000m3/sと書いてございますところが200分の1で、それから上のピンクといいますか赤の少しハッチにしてありますところが150分の1、それからさらにその上の部分が100分の1、そういう構成になってございます。
 3ページでございます。今度の治水計画としてどういうことを考えていくべきかということでございます。どこまで、どうできるかということは限度があるかもしれませんが、基本的な考えとしては狭窄部の開削、それから淀川下流部と琵琶湖、それぞれが分離した治水システムなどがございますが、こういう中でできるだけ他の水系と同様といいますか、琵琶湖を含めて連続した1つの水系として上下流バランスのとれた治水計画を目指すべきではないか。いろいろな特殊性がございますので、限度があるかもしれませんが、こういうことを目指すべきではないか。
 それから、治水対策に当たりましては全国的な治水バランス等も考慮して設定した水文資料に基づきます計算による外力、例えば何分の1で降雨確率がこのぐらいだから、こういうふうに出しましょうという一般的な方法と、これはその他、実際、過去に生じました実績の洪水も併せて総合的に勘案した計画が必要ではないかということであります。
 例えば琵琶湖でございますと、明治29年に大きな洪水がございました。そういう今まで入っていないことについてどういうふうに対応する必要があるかということを考えるべきではないかという点等でございます。
 下の方にあります宇治、加茂地点等の中流部につきまして150分の1、それから下は200分の1、そこから上流は100分の1、こういう上下流全体を考えました安全の確保、その中で全体を高めていくことにつきましては現在の工事実施基本計画とも同じかと思いますが、連続した1つの水系と考えていきますと、どの地域も元の状況より安全性を高めるべきということを考えますと、瀬田川洗堰の全閉操作の解消もできるだけそういったことを目指す必要があるのではないかという、基礎的な考え方を書いてございます。
 では、それぞれのお話についてはどんな状況かというのは、その下でございますが、1つは狭窄部のことでございます。狭窄部というのは、そこに絵が2つございますが、左側が木津川の岩倉峡の上流でございます。見づらいですが、左側の方へ木津川が流れていっている。右側が上流部でございます。
 それから、右側の絵は桂川でございます。右下の方が保津峡でございます。そこから上に亀岡盆地が広がっております。赤で書きましたのは、木津川につきましては現在、上野遊水地という事業で遊水地にしてございます。これは仮の話で、狭窄部の開削を行わない場合の、上で水を貯める。幾つかダムをつくったり、事業中のものもございますが、あと遊水池等で対応しようとした場合には、そこの緑で塗りましたところが遊水池にしないといけない。これは仮の単なる計算でございます。こういう事業をするという意味ではございませんが、そうしますと補償家屋が左では1,300戸、600ha、それから右側の桂川の方では2,300戸が買収の必要があって、面積が1,000haという、かなり地域社会に与える影響が大きいです。こういうこと等も含めて、先ほどの開削と併せた対応を考えていかなければいけないということでございます。
 4ページでございます。今度は琵琶湖の話でございます。明治29年の洪水というのは、現在計画で取り入れられていますものよりも大きく、右の絵は明治29年9月の洪水が、これは現在の状況でございますが、もし生じた場合には幾つか周りのところでこんな水のつき方をしますというものを書きましたものです。
 どういう状況かといいますと、左側の方に幾つか並べてございますが、現在の計画は下流の洪水等の状況に合わせまして、一時期、洗堰の全閉を含む現行操作をやります。そうしますと琵琶湖の水位としてB.S.L.+1.4mというものを計画の対象にしております。これに合わせて湖岸堤の整備、周りの内水対策、流入河川の改修などが行われてきているわけでございます。
 ちなみに1は明治29年9月の洪水がどうであったか。これは実績でございますが、これはB.S.Lで+3.76mでございます。このときの瀬田川はまだ毎秒50m3/sぐらいが流れる川でございましたので、現在の、先ほどのよりはもっと水位が上がるというものであります。
 2は現在の整備状況のもとで同じような明治29年の洪水が発生しました場合には、+2.5mという水位になります。ちなみに瀬田川の流下能力は500m3/s。それから工事実施基本計画による施設整備が全部完了いたしました場合を見てみますと、この場合、瀬田川の流下能力は800m3/s、それからいろいろなところで、ダムとかで水を貯めたりいたしますことがあって、琵琶湖そのものの水位としては2.2mということになります。
 現在の計画が1.4mですから、その分、当然浸水をしてしまうということになります。ただ、これを解消しようといたしますと、下の黄色に書いてございますが、どこかでか、もし貯留をしようと思うと、約5億4,000万m3の貯留、水を貯めておく必要があります。
 それから、水をどこかで貯めておくか、もしくは下へ流すという、瀬田川の流下能力を上げる等の対策が必要になります。次のページから幾つか、これも仮想のお話でございますが、状況を知っていただくために用意したものがございます。
 5ページ、左側は現在の状況で洗堰のところを全開放流をした場合です。この部分の詳しい説明は省かせていただきますが、ハッチをした部分などがオーバーをするわけでございます。
 もう1つ、そういう水位が上がってしまうというのと、下にございますように下流の宇治川がございます。天ヶ瀬ダムから下流、宇治の方へ流れまして、平等院の横を流れてございますが、このあたりが今、計画で全部できまして1,500m3/sぐらいですが、これをかなり超えることになるということでございます。1,940m3/sぐらいになると思われております。
 抑えようといたしますと上流で1億m3ぐらいの調節施設が必要かな。
 これは今の状況で全開したらということでございますが、右側の1からは先ほどの明治29年9月の洪水にちゃんと対応しようとしますと、幾つかの案があるわけでございまして、1つは琵琶湖の計画の水位を上げる。琵琶湖の例えば湖岸堤をもっと高くいたしまして、上の方に洪水調節容量というのを、その分持つという手法も、これは単なる考え方だけですがあるわけです。このぐらいのときは5億4,000万m3必要になるわけでございますので、洪水位が2.2mになります。
 それから、琵琶湖の沿岸での新たな対策が相当な量が出てきます。護岸堤の嵩上げ、それから護岸堤の設置、排水機場等々でございます。
 一方、もう1つの方法は同じ琵琶湖というか、上の方で水を貯めるといたしますと、今の琵琶湖のもっと下まで下がるといいますか、制限水位を下げまして、洪水が来る前に中継点水位を下げてということも容量としては確保できますので、そうした場合はどのぐらいかといいますと、そこに書いてありますような赤線ぐらいまで水位を下げておく必要がある。
 これは80cmぐらいです。最低水位が、この下、利水容量もございますので−1.5mまでを使って水の運用をしようというものをさらに下げる必要がありますというのと、もしくは利水の部分をここでやらないで、他で利水を振り替えようとしますと40m3/s分の開発がいる。
 次のページでございますが、今は上で水を貯めてみたらということであります。今度は下流へ流したらということでございますが、下流の宇治川のところは相当な密集地帯でございますのと、宇治の平等院その他、その前の塔の島その他の景勝地でもございまして、ここも相当難しいのでございますけれども、仮の状況を見てみますと、流量として先ほど計画では1,500m3/sと申し上げておりましたが、左下にありますように2,500m3/sから2,800m3/sぐらいの洪水を宇治のあたりで流す必要が出てきます。
 ここは今申し上げたような世界文化遺産の平等院等の影響があって、手法に非常に困惑するところでございます。
 それから、もう1つは4で、では宇治の方を避けまして、隣の木津川の方へトンネルで抜いたらどうかということをちょっと書いてございます。トンネルを抜きますと、トンネルの長さは大体5kmぐらいで、それを普通つくります大きさからいうと2本ぐらいつくれば何とかできますし、5kmのトンネルそのものはできないことではないものであります。金額その他についてはまだ検討しておりませんが、そんなことです。
 大きな問題は洪水を、右下の方に書かせていただいておりますが、他の河川、他の水系のところへ導水するという、そういうところについての地域でのご理解がいただけるかどうかについては、全国の過去の例からいうと非常に難しい面がございます。
 まだこの状況を知っていただく資料だけでございますが、これをするとかしないとかではなくて、こういうことを含めて明治29年の洪水については計画内の洪水としてきちんと何か考えていくべきなのか、それとも、超過洪水だとして、それ用の備えを考えていくのか等々をできますれば明確な方向性を持って対処していくべきではないかと思っております。
 7ページでございます。瀬田川洗堰の全閉のお話がこれまでも出てございます。左側の方、細かい説明は申し上げませんが、左下にございます現行のルールの一番下に、1番、2番というのがございますが、淀川の枚方地点の水位が3mを超え、危険水位5.3mを超える恐れがあるという、下流の枚方の水位が上がっていく状況を見まして、こういう状況になれば今瀬田川の洗堰を閉めるという操作ルールになってございます。
 もう1点は、瀬田川の洗堰の下流にございます天ヶ瀬ダムで調節を行っているときに、ここで放流しますとチグハグになりますので、そういうときには閉めるというものです。
 右側に書いてございますが、最初の方で申し上げましたように淀川下流部と琵琶湖を連続した1つの水系として扱い、水系全体のバランスの中で琵琶湖の治水の安全の向上を達成するというのが基本かと思われます。その中でどの地域も上下流、いろいろなところの治水安全度、元の状況より向上させることではあります。
 特に琵琶湖につきましてはこれまでの洗堰の全閉操作によって、洗堰のない自然状態から見て下流の治水のための犠牲になっている部分といいますか、みんなどこもプラス方向にというところではマイナス面の状況があるのではないだろうかということであります。
 そのために洗堰のない自然状態から見て、マイナス方向になっている分につきましては、最低限解消を図ることを考えないといけない。
 それから、さらに連続した水系として琵琶湖の治水安全度がさらなる向上にはどうしたらいいかを考えないといけないだろうと思われます。
 この数字、これでどうということではございませんせんが、1つの考え方として、もともとの状況からいうと、自然状況でも50m3/sは流れていたという川であれば、こういう流量は最低限流すことはできないだろうかということをちょっと当たってみましたというものでございます。
 状況からいいますと、下流の大阪の枚方あたりでは下にちょっとありますが、8,000m3/sぐらいですので、全体の計画の1万数千m3/sからすれば、これが影響することはありません。問題は、先ほど来のお話が出ています宇治の平等院付近の宇治川の流下能力がネックになります。増やした分は確実にそこが増えるということですので、この対処方法がございますが、いろいろな検討がまだ可能かもしれないと思っております。詳細な検討は実施中でございます。
 一番下でございますが、今の50m3/sよりもさらに増やそうといたしますと、先ほどの全体のバランスの中で、連続した系の中で安全度をみんな高めていこうというゾーンかと思いますが、今の宇治川の流下能力の増大、これは非常に困難性を伴います。
 そのほか、2としまして下流の枚方の方の全閉開始水位をもうちょっときちんと洗い出して、何か考えられるのではないか。
 それから、洪水予測技術、特に琵琶湖の場合は雨で全体の状況を管理できるところかもしれません。そういったものも含めて操作ルールの最適化みたいなことでものは考えられるかもしれないということで、量を増やす、もしくは全閉の時間を短くすること等が考えられるのではないかということでございます。詳細な部分はまだ検討中の部分がございます。
 話題は変わりまして、8ページからは流水の正常な機能の維持のため必要な流量についてですが、淀川の各地点におきます流水の正常な機能を維持する流量はどのぐらいかということでございます。
 まず、淀川本川でございますが、3川、下に絵がございますが、3つの川が合流しましたあとの高浜というところで見てございます。
 左側、上の表には施工例の各検討項目、決められた検討項目がございまして、この主要なものをプロットいたしましたのが右の縦断図でございまして、左側が河口部、右が上でございます。聞いておりますのは、高浜の付近で190m3/sぐらいを確保すれば全体の生物関係、それから舟運も含めて大丈夫ではないかというものでございます。
 次は桂川でございます。9ページでございます。これは保津峡のところをコントロールポイントといいますか、基準点として見ておりますが、一番効いておりますのはそれよりも上流の17.4km、一の井堰と書いた、その下でございます。このあたりの動植物関係が一番効いておりますので、これに合わせて保津峡のところではいくらと見れば、全体大体17m3/sぐらいの確保がいるのかなというものでございます。
 それから、次の10ページでございますが、これは木津川でございます。木津川につきましては加茂の地点でいいますと、右上のグラフでございますが、加茂地点、少し上流のところの1で吹き出しみたいになっておりますが、ここの生物、動植物のもので一番効いてくるので、これを確保しようといたしますと、トータルで加茂地点で16.37m3/sという状況かと思われます。
 次のページは猪名川でございます。ここにつきましても同様の検討をしてございます。小戸地点のところの9.5kmぐらいのところ、そういう下流のところでございますが、そのところの動植物で見ますと、それが一番コントロールポイントになりまして、基準点では全体で4.55m3/sがあれば水系全体として大丈夫かなというものでございます。
 12ページですが、ここからは河川敷の利用のあり方が委員の方からお話がございました。資料をお配りしておりますが、淀川水系流域委員会とかでお話が出ています、川でなければできない利用に特化すべきではないかというお話がありました。ただ、委員の方からもこれだけの大きな人口を抱えた川の中では人が触れ合ったり、もしくはそこでスポーツをやったりとかの貴重な場である。それが社会ニーズであるということがございました。こういうもののバランスをきちんと考えるべきだというお話がありまして、今まで流域委員会等で心配されていましたのは、公園、グラウンドから人工的な感じで自然環境その他に悪影響になっているのではないかという点が言われています。
 右側にモトクロスの写真があります。こういうのは皆さんもあまりありがたくないという感じもあるのですが、その下の公園グラウンド等の人工的に整備された施設につきましては、本来の川の姿である瀬と淵、水陸移行帯、変化に富んだ河原等の空間そのものをヒサンすることになっている地区も一部あるかと思いますので、そういうものについては自然共生型のものへの改善、そういうものをなくさないで、それを自然共生型のものにする。もしくは河川の特徴を生かした利用形態として、自然そのものを見直すかということがあるのかな。
 下の今後の方向性のところに書かせていただきましたが、川でなければできない利用というのが非常に大事かと思われます。一方、都市部のオープンスペース、それから人がみんな触れ合ってこの川があるわけでございますので、そういったことも含めて、「一方で」の次の行、「非常に高いという現状とともに」とありますが、そういうニーズの非常に高い現状からということでございます。河川環境管理基本計画というのがこのような趣旨で、どういうふうに川の空間、希少な利用、要求、全部を入れるとパンクするようなニーズがあるわけでございます。自然環境も人々が親しむとかも含めて、沿川の住民の方、自治体の方、学識者の方でやってきている仕組みがございます。そういうものを踏まえてきちんと整備、利用していくということも河川整備基本方針の中できちんとうたっていくべきではないかと思われます。
 13ページでございます。維持流量のお尋ねがございました。淀川の本川の流量が過去、歴史的に、これは右上のグラフは明治からの歴史的な変遷が書いてございます。137.8m3/sとか、だんだん下がってきています。そのように下げていって、水利用に転用してきたわけですが、そういうのは大丈夫なのだろうかというお尋ねかと思います。それも自然環境その他の点でどうかというのは、先ほどの正常流量の検討の中でしていることでございますが、大きくいうと動植物などで必要なものは70m3/sぐらいでございます。先ほど申し上げました190m3/sというのは舟運なども考えてということでございまして、一応枠内といいますか、もともと動植物とか各項目について検討しているものにつきましては、今の流量で大丈夫だ。今までなぜ多かったのが下げられたかというのは、左上にございますようにもっと大量の舟運のための水深維持とか、かんがい用水の関係でそれだけの量が必要だったということ。これらの変わりました分を下げているだけでございますので、環境その他の点につきましては基本的にはあまり変わっていないといいますか、十分確保されていると思われます。
 次のページです。舟運の話も出ておりました。時間の関係でこのページは右上のところだけごらんいただければと思います。
 今後の方向性というところでございます。大規模地震、南海地震その他いろいろな、もしくは大阪直下の地震なども言われてございます。そういうときに阪神のことを見ましても、阪神は海に近いところであったので、そこで物資の輸送、人の輸送、いろいろなものがされてきたと考えますと、陸上がだめになったときに、この淀川は1つの大きな生命線になるという議論が政府全体でもされています。その中でそれをきちんとやるためには船着場の整備ですとか、今現在、淀川大堰というのがございます。これがネックになって船の行き来ができませんので、これの閘門設置というのが、従前からずっと話は出ておりますが、こういうものと緊急河川敷道路も河川敷に整備してございます。こういうものの整備をきちんとやろう。
 もう1つは、人々の日ごろのいろいろな、特に舟運の場合は川と人々を近づける。それは地域ぐるみでそういったことをやるという点では非常に重要でございます。こういうことができやすい状況を舟運ネットワークとして整備していこうということをやっていこうと今してございます。
 15ページからは、これは前々回のときにお話がございましたが、淀川水系流域委員会というところで河川整備計画の検討をするための、その前段作業としての意見聴取等がなされております。意見聴取だけでなくてまとまった提言、ご意見を出しておられますが、流れは真ん中、右の方に書いてございますように、13年2月ぐらいから委員会が始まりまして、委員会の提言というのを一度出しております。
 河川水を踏まえて近畿地方整備局の方で河川整備計画の基礎みたいなものを書いてございます。これに対して意見書が出ておりまして、それを踏まえて基礎案みたいなものを書いてございます。
 その後、ダムの話がかなり、本当は全般的に書いてあるのでございますが、報道もほとんどダムの話しかされておりませんのですが、ダムが非常に話題になって、事業中のダムについての意見書というものを17年1月に流域委員会の方で整理しております。17年7月に淀川水系5ダムについての方針ということで、近畿地方整備局の方から、これはダムのいろいろな事業の総合的な問題として出してございます。
 それから、中身はどういうものかお尋ねがございましたので、16ページから概要版をつけてございます。細かいのは今お手元に別途になっておりましたり、先ほどの紙にホームページのアドレスが書いてあるので、そこからとれるかと思いますし、委員の方からご要請があればいろいろなものを用意したいと思いますが、中身は17ページにここに至る経緯みたいなものが書いてございます。18ページには流域委員会の最初の出だしのところのスタンスと流れみたいなものがございます。
 19ページは少し中身に入ったことが書いてございますが、右側の方の川づくりの理念の転換というのがございます。環境については現状、治水、利水を中心とした河川整備、これからは河川や湖沼の環境保全、再生を重視しするというふうにしていくべきではないか。治水につきましては一定規模以下の洪水に対する水害の発生防止から、いかなる大洪水に対しても被害を回避、軽減するということをめざすべきではないか。
 利水につきましては、水需要の拡大に応じた水資源開発をしてきたものを水需給を管理し、一定の枠内でバランスをとるというものにしていくべきではないかとか、利用というものは人間を中心とした利用から河川生態系と共生する利用を図るというものにしていくべきではないか。
 住民参加につきまして多様な意見を聴取し、計画づくりに参加してもらうということをしていくべきではないか。
 多分、全国的にとか、河川審議会その他でも言われてきていることと中身はほとんど同じかと思いますが、そういう理念が言われています。
 20ページはプロセスが書かれております。流域委員会、河川管理者、住民自治体というのが書いてございます。そこでキャッチボールをしながらやっていくぞというものでございます。
 21ページは、主な論点、意見書の概要です。1つは新たな川づくりの方向性についてでございます。提言のところにございますように治水面、利水面の整備は必要だが、それらは環境を重視した河川整備と整合するような形で進めていくべきである。そのために従来の根本的理念をといいますか、これは多分一般的な河川行政もそうなったとは思いますが、そういうふうに書いてございます。これらを踏まえて基礎原案というのは、これは近畿地方整備局の方で書きましたもの、それに対するさらに意見書というのが出ておりまして、評価ができるとか、いろいろなことが書かれております。
 22ページはみんなが協力する計画づくりと進め方ということで、情報公開その他をしっかりやろう。河川レンジャー制度とかそういったものをちゃんとしていくべきではないかというお話がございます。
 豊かな川の環境をとりもどすためにというところは、河川環境の話でありますが、川が川をつくるということを基本として考えていくべきではないかという話が出てございます。
 その中身として次のページには、川の形状、川が川をつくることをめざしてというので土砂の供給の回復でありますとか、水陸移行帯、横断だとか、湖や川との連続性の話でございます。いずれも最近の行政として大事だとしているところでございます。
 水量、変化のある川を目指して、これは私どもも自然のダイナミズムを大事にして、瀬と淵、それから流量の変動だとかそういうものをしていこうというのと同じようなことがここに書かれてございます。
 水質はきれいな水の流れる川、泳げる川を目指してというので、河川だけの対応でなく、流域全体として流域水質管理システムというみたいなものを構築すべきであるというご意見が出ております。
 24ページでございますが、洪水の被害の軽減ということでございます。みんなで考え、日ごろから流域全体で備えるということで、先ほどお話ししましたが、どのような大きい洪水に対しても被害を回避する。堤防を強化し、破堤しにくいものにするべきではないか。避難等のソフト対策、浸水に対してしたたかなまちづくり等をしていくべきではないかということが言われております。
 その中の今の堤防を壊れにくくするということにつきまして、また書かれておりますが、今の堤防は大規模な洪水、水害が起こる可能性があるので、堤防の強化が必要であるというような言われ方になっております。
 下は、狭窄部の上流を守るということでございます。先ほどの狭窄部でございますが、治水安全度は地域によってかなりの格差が存在している。地域特性に応じた治水、安全の確保が必要である。なお、狭窄はできるだけ開削を避けることが望ましいと書かれております。右側には狭窄部がいずれも当面は開削しないとして、開削するかのような希望を与えてきたこれまでの視点を改めたことの意義は大きいということも書かれておりますが、基本的には狭窄部を積極的に開こうとしていることはないと思いますが、そういうことが書かれております。
 それから、25ページでございますが、適切な水の利用のためにというものでございます。これはこれまでの水需要予測の拡大に応じて水資源開発を行う水供給管理から、一定の枠内での水需給のバランスがとれる水需要の管理・抑制する水需要管理へというお話でございます。
 一番下は川でしかできない利用、川に活かされた利用というのは、先ほどの川の利用のところでお話をしましたような、川でなければできない利用、川に活かされた利用というものを重視していく必要がある。ゴルフ場、グラウンド等を利用している人々の声はあるけれども、基本的にはそういうものをなくしていくべきだというようなお話が右も含めて書いてございます。
 26ページはダムについてでございますが、ダムは自然環境に及ぼす影響は大きいことなどのため、原則として建設しないものとし、考え得る実行可能な代替案の検討のもとで、ダム以外に実行可能な方法がないとき、客観的に認められ、かつ住民団体、地域組織などを含む住民の社会的合意が得られた場合に限り、建設するものとする。
 地球温暖化等による気候変動、社会情勢の変化などの不確定要請に対しては順応的に対応していくということでございます。
 これらのことが意見書とか長く書いてございますが、基本的には同じような話かと思います。右ですと、一番下の方へそうしたことが書いてございます。
 その次、27ページは実現に向けてというので、右の方にも回数等が書いてございますが、こういうふうな会を重ねてきたという内容でございます。
 28ページは構成されております委員会の委員の名簿でございます。芦田和男先生が委員長で、各分野の方が、ここに書いてあるような委員の方がメンバーになってございます。
 29ページは今の意見書までですが、その後、ダムについての意見書が別途に出ております。29ページはその抜すいだけをつけてございます。これは流域委員会からのです。これは先ほどのダムと基本的なスタンスは同じでございまして、他の方法がどこにもないときの話である。基本的にはつくらないんだというような話でございます。
 各ダムについて記述されておりますが、総じて天ヶ瀬ダムについての評価はあるものの、その他については相当考え直すべきだというような内容になってございます。
 30ページは河川法では学識者の意見を聞くというのと住民の意見を聞く、関係自治体からの意見を聞くということが3点セットで初めて成り立ってございます。これらについて十分整理ができておりませんが、住民説明会その他の状況は表に書きましたようなことは現時点までに行われています。今後もこういうものがさらに行われることになるかと思います。
 それから、自治体からのご意見だけざっと主なものだけを抜すいして、ざっと並べてございます。体系的にまとめられておりませんが、ごく一部だけご紹介しておきますと、治水については例えば2番でありますが、破堤の被害の回避・軽減を図るため、堤防補強とか高規格堤防の推進。優先順位を考えるべきだ。
 阪神西大阪線橋梁の対策等。皆さんご案内かと思いますが、下流部では堤防の中を割り込んで鉄道その他が走ってございます。そういうところの改善の話。
 それから、桂川の改修については保津峡上下流バランスをちゃんととってくれというような話。
 それから、琵琶湖総合開発の積み残しの天ヶ瀬ダム、瀬田川、宇治川、淀川本川、大津放水路等の促進の話等々がございます。
 下かせ7番目ぐらい、治水対策上、河川区域内の樹木伐採を積極的に行うように要請というお話がございます。
 下から3つ目は、上野遊水地事業が川上ダムの建設を含めた当初計画どおり早期完成するような整備計画にすべきだ。
 大戸川の直轄化の要請等々、そういうものがございます。
 31ページは利水の話です。水道利用者からの生活安定に支障が生じることがないようにとか、水利の見直しについての話。それから、渇水の緊急時においてちゃんと対応できるようにというようなお話等がございます。
 それから、利水の一番下には人々の生活文化や川の生態環境は人が川に働きかけてきた歴史の中で育まれてきたものであり、川をただ放置すればよいというものではない。これは流域委員会の批判かと思われますが、そういうものもあったりします。
 それから、環境の話は琵琶湖の生態系に配慮した水位操作をちゃんと考えるべき。
 ゴルフ場、農業が必ずしも悪さをしているわけではないというお話。
 何に基づいて生息・生育環境を考慮するかという話、外来種の話等がございます。
 それから、32ページは利用の話です。川は川らしいということではあるけれど、地域の方々、沿川自治体、住民等の利用をきちんと考えるべきだというご意見がかなりたくさん出ております。
 それから、ダムのお話は内容をきちんと検討すべきというのがございますのと、そういう事業の中でいろいろなマイナス面といいますか、負担の面であろうが、事業効果の面であろうが、マイナス面が出ないようにというご心配のお話。
 あとは事業の推進のお話等々でございます。
 33ページからは、都市再生プロジェクトというのがございます。都市再生本部という、これは本部長が内閣総理大臣でございます。そこで琵琶湖、淀川流域圏の再生についてというのが都市再生プロジェクトになってございまして、1年近く前になりますが、琵琶湖・淀川流域圏の再生というのを政府を挙げて、かつ関係府県の知事さん、市長さん等もお入りになった格好での合意して、政府全体としてこうするという決定がされてございます。
 中身は34ページからタイトルだけサッと見ていただければと思います。
 戦略1、生命(いのち)の水を再生する。適正な水管理のための水環境改善計画の作成。安定した水量の確保。水質の改善。自然な河原の復元。生態系と調和した琵琶湖水位変動への改善。
 戦略2が水辺をつなぐということで、水辺プロムナードネットワーク。
 戦略3が、水辺の拠点を整備する。「川の駅」「湖の駅」の整備。水の回廊の整備。八軒家浜の整備、枚方周辺の整備、淀川三川合流部周辺の整備。社会実験等の活用。中身の具体的なところはもうちょっと面白いものがあるのですが、時間の関係で省略します。
 戦略4はまちにせせらぎをどうするというので、京(みやこ)の川づくり。大阪駅北のせせらぎの導入。古都における環境防災用水の導入。燃えてしまったら取り返しがつかないということでの対応の水の話。
 戦略5は流域圏の自然環境をつなぐ。水ネットワークの連続性の点検。水域の連続性の修復。琵琶湖南湖の再生。内湖の再生や水辺の再生。琵琶湖・淀川流域圏フォレストネットワークの組織化。琵琶湖・淀川流域圏ならではの種の保存。
 戦略6が水と人とのつながりをとりもどすということで、琵琶湖・淀川そのものを流域のミュージアム化にすべきだというお話。「水との復縁」、水文化、歴史等々でございます。
 戦略7は計画を推進するしくみをつくるというので、協議会、再生機構の話が出ておりります。
 以上でございます。
(委員長) ありがとうございました。委員から資料が提出されていましたね。これは滋賀県知事さんからでしょうか。前回も資料は提出されましたが、ご説明を聞いていませんでしたので、併せて先にこの資料の説明をお願いいたします。
(委員) 滋賀県知事でございます。時間をいただきましてありがとうございます。
 前回、「瀬田川洗堰の全閉操作の解消に向けて」という色刷りの資料をお配りしておりますが、次回に説明をということでございましたので、時間をいただきまして説明をさせていただきたいと思います。色刷りと併せて要点を書いたもう1枚の資料を用意させていただきました。
 まず、瀬田川洗堰をつくって100年というときに入ったわけでございますが、この資料で過去と現在と将来という3つの段階に分けて洗堰の設置の考え方なり、現在の治水計画の問題点などを、そして将来あるべき姿について、上下流の対立の100年から協調の100年へと発展させていかなければいけないという意味で幾つかの点を整理したものでございます。
 まず、過去のことですが、琵琶湖というのは周りに住んでいる住民にとってはいろいろ恵みを受けているわけですが、同時に江戸時代からずっと長年にわたりまして琵琶湖の洪水に悩まされてきた地域でございます。唯一出口が瀬田川であるということから、これを何とか浚渫をしてほしいということを江戸時代でいえば時の幕府に言い、爾来いろいろ言ってきたのですが、軍事上の理由とか、瀬田川の浚渫が下流の流量を増やしてしまうという水理学的に間違った理由により、なかなか認めていただけなかったということがございます。
 そして、明治18年に大洪水が起こりました。琵琶湖の水面が2m60cmまで上がったのですが、それをもとに「淀川改良工事計画」が考えられまして、明治29年3月にそれが決定されました。
 内容はこのカラー刷りにもありますように、琵琶湖周辺の洪水の被害を軽減するために瀬田川を浚渫する。そして、冬季、91cm下げておくということでありました。併せて瀬田川に洗堰をつくるという話であります。
 その際、下流の巨椋池という巨大な洪水調節機能があったわけでありますが、結果としてこれを過少評価してしまうことになりまして、これに代わるものとして瀬田川に洗堰をつくって洪水時に、それで調節する、特に全閉するという方針がこのとき盛り込まれました。
 そして、この洗堰の全閉操作の前提条件というのは、先ほど申し上げた明治18年の2m60cmのときの規模の洪水、それ以上のものはもうないということが前提になったわけでありますが、そのことを決めた明治29年の半年後にそれを大幅に超える洪水が起こったというわけであります。そのときの洪水の琵琶湖の水位が3m76cmというように、明治18年から比べると1mほど水位が上がるという洪水が起こって、しかも237日間水浸かり、8か月ほど水浸しになって、16,000haほど水没というか水に浸かってしまったということであります。
 ところが、この計画ではそのことが直後に起こったのですが、計画は見直さないで、しかも全閉を前提に進められたということで、そういう経験が直後に起こったにもかかわらず計画は変更されませんでした。
 その結果、瀬田川の浚渫自体は疎通能力を高めたり、琵琶湖の浸水被害の軽減に役立ったわけありますが、一方で洗堰の全閉という人間が新しい仕組みをつくったものですから、それが新たな課題になってしまうわけであります。
 これは下流の3川合流付近にありました、先ほど申し上げた巨椋池の洪水調節機能の代わりを果たすという役目を持つという説明でございました。
 それ以来、洪水の際に洗堰を巡って上下流が対立するわけですが、中でも淀川の改良工事が明治43年に完了して、その7年後に実際に洪水が起こりました。それが大正6年の洪水です。カラー刷りのところにも図が出ておりますようなことであります。
 このときは現在の計画高水位である1.4m前後という琵琶湖水位が続きまして、約6,100haの田んぼが浸水するという深刻な事態が現実に起こってしまったわけであります。
 このとき滋賀県は当時の内務省、今の国交省に当たると思いますが、ぜひ堰を開放してほしいと言うわけで、当時の知事は内務大臣に直接会って要請するわけです。
 ところが、下流の皆さんは全閉を求められるということで、1か月間洗堰の開閉について非常に激しい対立が続きました。
 ときの天皇陛下はその状況がまだおさまらない間に滋賀県にお越しいただいて、列車を停めて琵琶湖の水没する姿を見て、これは大変だとおっしゃって言っていただいて、それで当時、知事は何とかおさめることに努力していくというようなことが過去にありました。
 洗堰の全閉問題について、明治の県議会でも大変な議論がありました。当時の国の技術師の方がいろいろご説明されるわけですが、それに対して「全閉を忍ぶということができるのなら、この世に忍べないものは何もない」ということを言った記録が残っておりますが、それほど滋賀県民にとりましては、生命・財産に関わる問題であり、したがって、このような洗堰の全閉操作というのは、計画論においても、現実論においても間違いなしに破綻していると思われます。
 そこで、現在の治水計画の問題点を整理いたしますと、まず1つには、この洗堰の全閉問題がございます。宇治川、淀川の流域を守るためとはいえ、洪水時にわざわざ堰をつくって閉めてしまうということですから、当然のことながら上流であります琵琶湖周辺の、そうでなくたって水位がどんどん上がっていくわけでございますが、さらに上がっていくということで大変危険なことになる。
 しかも、それはすぐに引かないという、先ほどもご説明がありましたが特殊事情がございます。それも要は人間がつくって、人間が操作してそういうことをするということでございますから、当然、カッカする人間の対立の状況になるということであります。しかも、初めから「洗堰全閉ありき」ということでたてられているという計画そのものに問題があるのではないかと考えるわけであります。
 すなわち現在の「淀川水系工事実施基本計画」では、基本高水流量の算定について、琵琶湖からの流出をゼロに計算しておられます。これは淀川流域の面積の約半分が琵琶湖流域になっているわけですが、そこから水が出てくるといいうことをゼロだということで計算しているということですから、琵琶湖流域が淀川から完全に分離されている。
 先ほどこれは「縁切れ」とおっしゃっておりましたが、「縁切れ」どころか「鎖でつながっている」という感じでありますが、大変問題であります。そもそも琵琶湖から自然流量を加えて基本高水を算定しているという治水計画を立てるべきです。琵琶湖からも流れてくるんだということをきちっと計算して計画をたてるべきだと考えるのであります。
 そして、2番目の問題は計画の規模に格差があることでございます。しかも安全度の低い上流が犠牲になって、先ほどもそういうご説明をいただきましたが、安全度の高い下流を支えるというのが今の計画になっております。これまでに経験してきた最大の洪水、既往洪水が淀川では50分の1の確率で昭和28年9月の洪水を前提に計画しておられます。琵琶湖では明治29年の9月という大洪水が200分の1の確率ということになります。ところが、現在の淀川の河川整備の計画規模は淀川が200分の1で、琵琶湖が100分の1ということで全く逆になっているということであります。
 したがって、問題は安全度の高い地域が安全度の低い地域を支えるということであれば理解できるわけでありますが、淀川水系はその逆になっているということで、安全度が100分の1という低い滋賀県が安全度200分の1と高い下流を洗堰全閉ということで助けるということになっているという計画がそもそも問題だと思います。
 この構図は淀川水系の河川計画に洗堰全閉操作が位置づけられている限り解消されないということになります。しかも、これは河川整備の途中の段階の話ではないわけでありまして、現在の計画の河川整備が全部終わったという時点でもこのことがあるということですから、この状態が固定されるということでございますので、滋賀県民にとっては到底納得できないというか承服できないということになるものであります。
 もちろん計画規模以上の洪水が起こるということはお互いに考えなければいけないわけでございますから、下流を守るために上流がいろいろな努力をする必要があることはもちろんです。
 今1点、第3番目の問題は、琵琶湖の治水安全度を大きく左右する宇治川に十分な疎通能力がないということであります。これは先ほども説明がございました。そして、また私どもも職員が昨年、既往最大洪水の明治29年9月洪水を検証いたしましたら、ずばりその答えが出てまいりました。要は宇治川の問題だということであります。
 全閉操作を含む現在の瀬田川洗堰操作規則を平成4年に滋賀県は了承いたしました。全閉操作はやむを得ないと了承したのですが、実は条件がございました。
 つまり今後10年をめどに宇治川の改修をします。あるいは天ヶ瀬ダムの再開発、あるいは大戸川ダムの建設をしますということが前提になっております。したがって了承したわけでありますが、残念ながらこの規則制定後10年以上たっております現在、宇治川の改修は全く手つかずであります。疎通能力は確保されておりません。いわば見事な空手形に終わったというわけであります。
 そこでこのような問題点を踏まえて、今後、河川整備計画なり基本方針を策定するにあたりましては、滋賀県としては全閉を前提とした瀬田川洗堰操作をぜひ見直していただきたい。そして、琵琶湖、淀川における超過洪水という最大の危機のときには、このときこそ上下流が互いに助け合える真の治水計画、まさに条理のある治水計画をきちっと策定する必要があると考えます。
 具体的には、私どもからすると宇治川の河川整備を促進していただくこと。また、大戸川ダムとこの洪水調節機能をきちっと整備していただくということ。
 そして、計画対象と想定されています洪水に対しましては、下流の安全度を確保したうえでありますが、洗堰による洪水調節はやめ、廃止するということであります。これによりまして、琵琶湖の水位上昇は抑制されますので、下流の淀川、宇治川等で計画対象洪水を超える大洪水になった場合には、洗堰の放流を制限して、そして下流の洪水を軽減するという余力が出てくる。そういう余力を残すということができるのではないかと考えます。
 さらに、そうした超過洪水に対しましては流域全体で互いに助け合うという特別な措置をあらかじめ検討していくことも必要だと考えます。
 こうしたことで昨年の12月3日に国土交通省の河川局長に要請したところでありますが、ぜひこの河川整備基本方針の策定に向けてこういうことを見直していただきたいと思います。
 こういう話の前に近畿地方整備局は明治29年のときの被害想定を今の色刷りの資料にありますように発表されまして、その被害の水位が2m50cmあるいはその面積、被害総額も出されただけに、やはりここはきちっと真正面に議論をして考えていただきたいというのが私どもの考え方でございます。
 そんなわけで、特に宇治川の整備の問題については、何としても解決していただかなければいけない基本的な課題であると思います。今の説明にもありましたように、バイパス等を含めて、あらゆる手法を検討していただきまして、宇治川の流下能力を確保することが必要でございます。それができなければそもそも琵琶湖の治水、あるいは淀川水系の治水計画全体が成り立たないと考えるものでございます。滋賀県としては宇治川の課題の解決が見えてこなければ、議論そのものを進めていくことにも同意しかねるというのが率直なところでございます。
 なお、最後にお願いがございます。今日は非常に大事な資料をいただいてご説明を聞いたわけですが、こういう資料はあらかじめ勉強したいと思いますので、事前に送っていただくなりよろしくお願いいたします。滋賀県としましても非常に大事な問題でございますので勉強する必要があると思っておりますし、また国交省のお持ちのデータ、バックデータ等についても会議資料の事前提供とともにいろいろ教えていただければありがたいと思います。よろしくお願いします。
(委員長) 提出された資料はそれぞれご説明をいただきましたので、それではこれから皆様方のご自由なご発言をお願いしたいと思います。
 ご意見のある方はどうぞ。まず私の方から随時ご指名をしたいと思います。
 勝手ながら、この淀川流域委員会でのご審議に参加されました○○委員から現時点でご意見があればお願いいたします。
(委員) 1つは、今知事さんがおっしゃったように、今日のこの膨大なこの資料、今のご説明等で全部理解というわけにはいかない。2、3日でもいいですからもう少し見せていただければありがたいなというのがございます。
 先ほどのお話の中で、水系全体の上下流を含めたバランスを持った整備、治水においてという考えはいい取り扱いだろう。治水安全度という言葉でこのバランスを図るということが書かれてございます。先ほどの特徴なり地勢を見たときに、保津峡と岩倉峡、先ほど宇治川についてもございましたが、この狭窄部を開削することについては慎重に考えておくべ内容ではないかと思うところでございます。
 治水安全度というバランスがもたらす言葉ですが、こういう言葉を使うと大変失礼なのかもわかりませんが、地形上の自然の要害といいますか、あるいは景観上も含めて、ここの開削をすることによって下流の治水のリスクを高めるということは、それに対する補てんという形のものが上下流の治水バランスとして考えられるのですが、その被害という意味合いのリスクを考えますと、とてつもないリスクの増大をもたらす、そういう考えに結びつきはしないか。100分の1、150分の1、200分の1という治水安全度というものと被害のリスクの比といいますか、そういう形のものを踏まえた意味合いでこの治水のバランスの安全度の向上という形のものからすると、開削は慎重に扱う形の取り扱いがベターではないかという気がしております。
 あと、下流で河道の流下能力を高めるという形を鋭意やるうえにおいて、先ほど高水敷の利用という形と治水における流下能力の下流での拡大をとらえたとき、ものによっては高水敷の縮小も視野に入れた形での上下流の河川整備の内容というような形に結びつきはしないか。そういった意見を発言させていただきました。
(委員長) 委員長から○○委員に質問をさせてもらいます。狭窄部の開削が下流のリスクを大きくする。誠にそのとおりだと思います。しかも、下流は人工の工作物である堤防で守るということですし、狭窄部は自然がつくった治水施設といいますか、言い方を変えれば、下流にとっては安全な治水施設になるわけです。しかし狭窄部上流で何千所帯という方がお住まいになっていることを考えると、なかなか簡単には決められない話です。その辺は流域委員会で悩まれたと思うのですが、その人たちの安全度も確保するとすると、大変な矛盾ですね。したがって、流域委員会でダムは原則やめるよとおっしゃっていたのをどう考えたらよいのか。今までは狭窄部上流の治水安全度を向上させるために上流にダムを建設して、狭窄部の負担を減らすという努力をしてきたのだと思うのですが、その辺について、個人的なご意見でもいいですから、お聞かせいただきたいと思います。
(委員) 狭窄部の上流について、整備計画のレベルと整備基本方針のレベルで違うことはそれなりに理解するのですが、琵琶湖総合開発とか亀岡等においても霞堤とか、これはさっきの面積とか浸水深がどれぐらいか、ちょっとよくわからないのですが、貯留量からすると遊水池とかそういう形のものも代案として検討する。それを下流なりそういったものが支援、協調する、そういう形での上下流連携というものも代案として浮かび上がりはしないか。
 木津川上流においても遊水池、あるいは開削しようとすればそのバリアとして瀬田川の堰の、あるいはそういう言い方をするとあれかもわかりませんが、両方において開削とすればどんな開削なり、あるいはバリア、下流に対してのリスクを増幅させない形のバリアの代案をどう考えるのか。そのあたりの代案を含めた検討なりもあり得るのではないかという気がして、そういう発言をさせていただきました。
(委員長) 大変難しい問題で、最近はダムアレルギーというのがありまして、ここの委員会でも予防原則という形でダムの問題は議論されていて、その限りにおいて非常に正しいことだと思うのですが、現実に生きている人、現に生活している人の安全を確保するうえですが、ダムの問題まで手を縛って議論ができるのかな。そういう議論が一体全体しっかりやられていたのかなと思います。
 予防原則というのは調べてみましたらリオデジャネイロの会議で出されて、目指していたのは水俣病みたいに未知の物質で人間の健康被害を起こすような事態は避けよう。有害だとはっきりわかるまでは無害だという発想ではなくて、未知なものについては有害だということを考えながらやろうということだったのが発端かと私は勉強しております。
 なお、最近は遺伝子生物などをいじる場合も予防原則というのが言われています。私の耳学問ですが、ヨーロッパとアメリカでは全く違っていて、ヨーロッパは灰色は全部黒として扱おう。アメリカは灰色は黒と決まるまでは白なんだ。知的財産問題が絡んできて、国益の問題があるようであります。ダムの環境に与える影響は科学的に勉強することで河川工学が克服していくべき問題ではないか。
 具体的に生きている人、現に生活している人の安全を最優先で考えながら、ありとあらゆる手段を使ってはどうかという思いがあって、淀川の委員会の議論について、私は質問させていただきました。
 委員長がいきなり意見を申し上げましたが、関係の委員から先にご意見を伺いたいと思います。○○委員。
(委員) 今、○○先生がおっしゃった件と関係するのですが、私も狭窄部の開削については、特に保津峡と岩倉峡、つまり桂川、それから木津川でございますが、慎重に検討して審議していただきたいし、意見を申し上げていきたいと思っております。
 淀川下流部の淀川本川、それから3川では今堤防が危ないということで、その強化、補強についてずいぶん審議が行われています。
 淀川の堤防は形はでき上がっていると思いますが、3川についてはまだこれからのところもございます。はたして絶対大丈夫かということにつきましては、いつまでたってもと言うと変ですが、人知のいたすところでありますことから、安全宣言ができるようなことには絶対にならないと思います。
 国交省の方でもスーパー堤防などが行われまして、破堤しない堤防を目指されておりますが、これは大変大きな事業でございますし、行政の協力、地域の協力があってできるわけでございますので、そういったものがすぐできるとは思いませんし、できても今申しましたような安全宣言ができるようなことにならないと思うわけであります。
 狭窄部を開くということは、そういう堤防に対して外力をプラスして加える、こういうことになろうと思います。
 3ページに二つの狭窄部上流地域の氾濫区域が示されております。開削しますと、この緑で囲まれたところの水がなおプラスして出てくるということであります。ですから、堤防の安全が保証されるということであれば、これは何も問題がないのですが、そういうことが言えない限りにおいては、狭窄部の検討はあくまでも慎重でなければならないと思うわけであります。
 翻って、それではこの地域で治水対策が本当に成らないのかどうか。今こういう浸水状態になっている、あるいはなるかもしれないということは、開削するという前提で治水対策が施されてきたから、こういう浸水状況になるわけであって、初めから開削しないという形で計画を立てて進めておられれば、こういう形にはならないだろうと思うわけでございます。
 そうすると、具体的にどうなるのだということでありましょうが、狭窄部上流の地域で治水方策を立てるということになるわけでありまして、それについては河川で持たなければ調節施設といいましょうか、遊水池なりダムもより有効な1つだと私は思っております。
 いずれにしましても、まずはそういうことが考えられる。そして、どうしてもここの開削をしなければ治水が絶対に成り立たないということであれば、その時点でもう一遍開削について考え直すというのが筋ではないかと考えます。
 ですから、まず上流で、開削しないとしての治水対策が本当に立たないのかどうか。その辺をさらなる資料でお示しをいただきたいと思っています。
(委員長) そこで質問をさせていただきたいのです。答えにくいと思いますが、一委員としてのご意見を言っていただきたいと思います。
 開削しないと決めた瞬間に、下流本川の安全度はある安全度が確保される。上流の方は水害におびえる。その対策のために上流でダムなり遊水池をつくりなさい。お手並み拝見となってしまったのでは上流圏にすれば、岩倉峡と保津峡の下に海があれば、すぐ簡単に開削できたのに、下流に大都市があるばかりにその選択肢を縛られるのかという議論になってしまう。例えば知恵を出す。下流も下流で一緒になって汗をかく、あるいは金を出す。流域全体でみんなの問題としてこの問題を取り上げる。そして、岩倉峡と保津峡の問題だけではない。流域全体でみんなで考えてこの安全度を確保しよう。必要とあらば金は出すとか、住民対策も引き受ける。あるいは今まで住んでいた人たちの生活再建をどう考えるかに知恵を絞る。
 本来は河川管理者がやるべきでしょうが、やはり流域全体の支えがないとできないことではないかと思うのですが、そういう上下流の協調へ、対立の歴史から連帯へと、そういう機運は醸成できるのでしょうかということをお尋ねしたいと思います。
(委員) おっしゃるとおりでございまして、開削を慎重にということになりますと下流側の身勝手なと言ったら変ですが、下流の事情をご理解いただくところまでは至らなくて、犠牲感といいましょうか、下流のために犠牲になっているんだという感情的なところが出てくるのだろうということが十分想像されるわけです。
 したがって、おっしゃいましたように水系全体で大局的な、これはものの考え方もそうですし、物質的な面でも制度面でもそういうふうな仕掛けが要ると思っております。ですから、享受する側は享受するなりの役割といいましょうか、何といいましょうか、責任を果たすといいましょうか、そういう分担があって私はいいと思いますし、そういうことがないと、この問題はスムーズにいかないと思います。
(委員長) 地元の関係委員として○○委員、ご意見をお願いします。
(委員) 膨大な資料をいただきまして、私まだ理解できていない面が多いのですが、淀川下流部と琵琶湖に分離した治水システムなど、淀川水系特有の治水の考え方から、できるだけ琵琶湖を含めた連続した1つの水系として上下流のバランスのとれた治水計画を目指す、こういう基本的な問題があります。
 前回、前々回、洗堰の操作等について私の意見を述べさせていただきましたが、今日いただいた資料によりますと、全体のバランスで考えるとおっしゃりながら、7ページには特に今ネックとなっている宇治川の疎通能力1,500m3/s、これは先ほど知事が申し上げましたように平成4年の洗堰操作規則ができたときの約束事ですが、この琵琶湖開発の約束事すら守られていない。そのために琵琶湖流水の疎通能力がないために浸水が長引く、そういう問題があるわけです。まず最初にこれを実現していただきたいなと思っています。初めの書き出しから期待したのですが、7ページで宇治川の流下能力の限度から全閉操作の解消は困難と初めからこういうふうに書かれますと、滋賀県民にとっては非常にがっかりするといいますか、これはお考え直していただきたい。
 来年から直ちにやれということではありません。20年、30年をかけた事業になろうと思いますが、こういったことを前向きで検討をしていただきたいなというのが、この資料に対する私の思いでございます。
 それから、視点を変えますが、水系全体を見た利水運用について意見を申し上げたいと思います。ご承知のように、これは前回からも話題になっておりましたが、琵琶湖、淀川は渇水傾向にあります。昨日現在で琵琶湖水位が−72cmになっております。1日1cmずつぐらい下がっておりますから、今日あたりは73cmになっているかなと思っているわけであります。
 前回配布資料の中の、これは国土交通省からの資料で、水量の現状が記載されておりますように琵琶湖では平成6年に−123cmという減水を記録したわけであります。その後、琵琶湖では水草の繁茂が非常に顕著になってまいりまして、さまざまな支障が出てきているわけです。
 水位低下によりまして当然のことながら光合成が促進される。そして、水草の繁殖につながったというように渇水との関連がいろいろ指摘をされているところであります。こうしたことは当時、想定をされていなかったということであります。
 また、下流の淀川におきましても十分な流量が確保されないことは、生物の生息など生態系に大きな影響を与えるということでございます。
 こういったことを踏まえますと、渇水時に十分な流量が確保されないことは、生物の生息など、生態系に大きな影響がある、影響を与えているということでございます。
 その渇水の影響の対策の1つといたしましてダムを統合管理するということはいかがでしょうか。水系全体のダムを有効に活用することでございます。前回も申し上げましたとおり、自然湖、琵琶湖は人工のダムと違いまして多くの生命を育み、貴重な生態系を有しているわけであります。したがいまして、その生態系を損なわないように、できるだけ琵琶湖の水位を低下させないようにダムを有効に使おうということが必要ではないでしょうか。
 また、ダムは琵琶湖と比べまして貯水容量に対しまして流域面積が非常に大きい。このためには先にダムを使っても回復が早く、効率よく利水機能を果たすことができるのではないかと私は考えます。
 現在、利水容量、利水容量というように区分されているダムの各機能を統合的に活用することによりまして、ダムの機能をより有効に発揮されるということも必要ではないかと考えています。
 このようにダム群と琵琶湖を一体のものとして統合的に管理して、ダムを最大で有効に使うことが琵琶湖や淀川の自然生態を守ることにつながるのではないかと考えておりまして、一言意見として申し上げたいと思います。
(委員長) ありがとうございます。せっかく各県知事さんがおそろいです。それぞれご意見は違うと思いますし、代理の方は非常に歯切れが悪いのかもしれませんが、まだ最終場面ではございませんので、それぞれ現時点でご意見があったら承りたいと思います。
 三重県知事さんからお願いいたします。
(委員) 三重県でございます。三重県の場合は岩倉峡の上流に位置しまして、過去に昭和30年代に災害に遭っています。岩倉峡の上流でかなり水害被害が出ております。46年に工実ができるときも、岩倉峡の開削の問題などもいろいろ議論があり、下流のことも考えながら現在の計画に落ち着いたと聞いています。遊水池とダムでの治水対策、これは非常に大事と思っております。1日も早いダムの着工を望んでおります。
(委員長) 滋賀県知事さんはまた後でということでよろしゅうございますか。
 では、京都府知事さんから。
(委員) 1点は、河川の利用につきましては今日ご説明がありました。いろいろご配慮いただきまして、やはりバランスということが重要だなと思います。よろしくお願いしたいと思います。
 2点目は昨年京都府では台風23号、多くは由良川水系だったわけですが、実は桂川においても由良川流域に比べれば少ない雨だったと考えておりますが、狭窄部上流における亀岡で、浸水戸数は7戸ほどでしたが、かなりの規模の水害がありました。
 それから、下流側の嵐山では土産物屋、ホテルで浸水があった。さらには、開削のために大下津地区で事業をしていただいておりますが、ここにおいてはあと1mで溢れるという状況まで来たということで、上下流バランスということもあるのですが、これは前回の委員会にもたしか出たと思いますが、桂川の治水安全性について木津川など他の河川間とのバランスについて、きちんと説明していただくことを希望いたしております。
 それから、宇治川等については今滋賀県知事さんから洗堰の話も含めてありましたが、この基本方針、基本的な考え方にありますように全体として各地域が上下流バランス、かつ全体として治水安全性が上がるという方向で天ヶ瀬の再開発も含めて宇治川地域の治水安全性を全体として上げていただくということでよろしくお願いしたいと思います。
 それから、木津川等につきまして100分の1、200分の1という議論がございましたが、堤防が壊れないという前提の100分の1、200分の1だということで、木津川流域については堤防の状況についてはかなり危惧される意見が非常にあるということでございまして、この砂堤防をどう強化していくかということも大きな課題ではないかと認識しております。
 以上です。
(委員長) 大阪府知事さんの方から。
(委員) 大阪府でございます。先ほどから議論になっていました、一番最下流部ということで、その立場ではいろいろ言いにくいこともございますが、受け皿として治水安全度を200分の1という安全度を持っていただいています。
 また、スーパー堤防の事業も進めていただいて、やはり切れない堤防を目指している。さらに今日では堤防がまだまだ不十分ということで、一部堤防補強の事業も進められています。その上では下流側としては狭窄部の開削がされるとその受け皿になる。それだけの十分な安全度を保っていただく整備をお願いするという立場かなと思っております。
 それと併せまして、淀川本川だけではなくて猪名川でも同じような状況でございまして、中流部に直轄の河川があります。最下流部が兵庫県さんと管理している神崎川があります。これも先ほどもありましたが治水安全度の上下流のバランスという問題も神崎川、猪名川についても同じことが言えるのではないかと考えております。よろしくお願いしたいと思います。
(委員) 兵庫県は京都府さんと同じように昨年、台風23号で大きな被害を受けたわけでございます。今、その復旧、復興に全力で取り組んでおりますが、今痛感しておりますことは、委員長が国の豪雨災害対策総合政策委員長をされて、いろいろ取りまとめられましたので、私は今おこがましい話でございますが、我々は今痛切に感じておりますのはハード整備の限界ということです。時間もお金もかかる中で、今日ご説明がありました治水の部分につきましても100年、200年先に向かってこういう基本方針でやるということは大いに大切なことですが、今我々がいろいろ経験してきた中でやはり減災対策とか、あるいは災害文化の伝承といった切り口で、先ほどご説明がありました流域委員会の資料には防災という言葉が出てまいりましたが、防災行政と河川行政の難しいところでございますが、一歩踏み込んだそういう切り口の記述といいますか、そういうことも大事ではないかと感じます。
(委員長) ありがとうございます。それでは、今までご発言がない委員も随時ご発言をお願いいたしたいと思います。
(委員) 幾つか気になった点がありますので、質問と意見を述べます。淀川水系として下流部も木津川、桂川、宇治川、琵琶湖も一体的に連続した水系としてバランスを考えた治水方式をとるというのは、基本方針で当然のことだと思って聞いておりました。
 それに伴いまして、洪水時の瀬田川洗堰の操作をどう考えるのか、狭窄部をどうするのかというのは、非常に大きな課題であるというのがまず第1に強く感じた点です。
 第2点としては、先ほど委員長が言われたこととの関係ですが、流域委員会が出している報告書を読んでみましたら、ダムの取り扱いを決めてかかっているところに問題があると感じています。一般論としてのダムの問題と、淀川流域の中でのそれぞれの河川流域のダムの役割、これをうまく整理しないで、ダムというものが最終的にほかの方法がなかったら検討し、もちろん住民合意の上でダムを採用すると書いてあるのですが、この考え方は、治水計画から見ておかしいと思います。
 流域全体としていろいろな治水方策が考えられるわけですから、はじめからダムを後回しにするようなことは大きな問題です。選択としてダムによる治水対策は当然あり得ることだと考えています。なぜなら狭窄部の流下能力の問題、堤防強度の問題もあるし、洗堰により琵琶湖の水位が上昇すると、周辺の浸水区域が広いことを考えたときに、当然、治水対策として、全てのあり得る方策を総合的に考えていかなければいけないと思っております。
 そういった点で今回の整備局の整備計画原案に書かれている大戸川ダム、川上ダム、余野川ダムといった事業進行中のダムについて、それぞれの流域、河川での洪水対策との関係で考え方が書かれています。しかしその内容はどういう読み方をすればいいのか、整備基本方針との関係がどうなるかよくわかりませんので、このあたり次回の会議で十分説明をお願いしたいと思います。
 それから、これは管理の方策とも関係するのですが、木津川、桂川の洪水の出方、宇治川の洪水の出方は洪水ごとにいろいろ違うと思うのですが、これだけ大きな問題がを抱えている水系で、枚方の水位だけを見て瀬田川洗堰の操作をする現在のやり方が良いのかどうかを考えなければならないところに来ていると考えます。
 枚方の水位を見ていることによって、淀川下流の状況をいつも見ていますということですよね。今後、琵琶湖の水位上昇問題をどう考えるのか。狭窄部の問題をどう考えるのかという重要な課題を検討することになります。このためには、洪水のデータを集めて、洪水の挙動を十分検討し、どう考えたらいいかについて水理的に検討していかなければなりません。
 第3点目は、計画課長の説明の中でありました、明治29年の洪水を計画の中に取り込むか、超過洪水として位置づけ、計画の外で考えるのかは大きな問題です。私は、明治29年洪水まで含めて考えるのは無理があると思います。明治29年を計画に入れ、狭窄部の開削をすれば、下流部はどういう状況になるか、大きな問題です。これをどう考えるかは、真剣に議論をしておかないとならないところです。
 これまでの工事実施基本計画の外力に比較して、明治29年の外力は相当大きいので、これを計画のうちで考える場合には、今後十分検討し、判断されなければいけないなと思っております。
 第4点目は、治水の安全度の決め方、これはこれでよろしいと思っているのですが、○○先生が言われたようにそこの被害リスクとうまくリンクさせるべきだというご意見は、重要であると思います。その辺説明できないと世の中の人にはなかなかわかりにくい。数字だけ200分の1だとか、100分の1だというのではまずいので、淀川水系のような大変難しい問題を抱えている水系では特にしっかりと検討しておく必要があると考えます。
 いずれにしましても、大変大きな解決すべき治水上の問題が多いことから、痛みを分かち合うことを含めて、解決の方策をいろいろ考えなければいけません。私が思っていますのは、洪水について雨が降ったらどんな出方をするのかは観測、解析によって相当程度わかってきたんです。減計画策定時に比して洪水について、多くのデータを得ることにより、解析技術とか判断の仕方の精度があがったと思います。これだけ地域間の難しい問題がある上に、雨の降り方によって洪水流の出方が違う3河川を下流で受ける淀川の状況を考えたときに、洪水流データ検討をデータに基づいてもう少し技術的に検討することが必要なのではないでしょうか。桂川、宇治川、木津川等から大きな洪水がどんな出方をするのかということと、いくつかの狭窄部を開削するか、開削しないか、開削するとすればどの程度かということ等科学的な、あるいは技術なサポートがしっかりとできるようにすることが大事ではないかと思っています。以上です。
(委員長) どうぞ。
(委員) 私も流域委員会に参加して、非常に難しい議論をさせていただいて、悩むわけでありますが、基本計画を拝見しての印象として、非常に残念な点があります。琵琶湖・淀川水系は、ほかの水系とは異なり非常に長い、少なくとも40万年近い歴史を持っていまして、固有性の高い生物もいる、日本の淡水生態系のホットスポットです。○○さんも少しおっしゃられたように、これは失うことができない貴重な自然遺産です。それを守るという姿勢、これの一番のポイントは何かといいますと、洗堰のオペレーションを琵琶湖生態系に優しい操作にすることだとを私は思っています。
 ダムをつくることも非常に弊害がありますが、それに増して貴重な天然湖沼をダム化して運用することを生態学者としては心痛めています。
 この辺の視点がほとんど書き込まれていない。これは琵琶湖が管理区域から少し外れるということかもしれませんが、これから100年先の計画を考えるときには、その視点を残していただきたい。これが第1点です。
 下流域の堤防が見かけだけはあるということですが、先日も利根川では高水敷の幅を50mまでは狭めても何とかいけるだろうというオプションがありました。淀川水系についてその検討があまりされていないと思うのですが、この検討もぜひともやっていただきたい。淀川生態系は淀川大堰によって堰上げられて非常に悲惨な生態系になっています。ワンド、タマリがあると喧伝されておりますが、そんなに安心できるような生態系の場ではございません。それを回復するという視点からも、あるいは河道の持つ断面を増やすということからも高水敷の幅の検討をぜひやっていただきたいというのが私の希望です。
(委員長) ダムは人工構造物なので自然に大変な影響を与えるということで、予防原則という視点からそういう発言がありました。理解できることでありますし、そういう考えを今後は持つべきだとは思います。今、大変重要なお話で、琵琶湖は自然なのだ。人工構造物ではない。前に知事さんも生き物だとおっしゃっていた。他のダムに優先して琵琶湖の水位を上げ下げしてしまうのはいかがかというお話であります。本来、これは管理の段階で十分議論すべきですが、計画論としてもしっかり議論すべきだ。琵琶湖をダム湖と同じ発想でやっているというところに琵琶湖住民から信頼感が得られないのではないか。したがって管理も重要事項でありますが、方針の中でもそういう理念はしっかり持つべきだ。数平方キロメートルのダム湖と600平方キロメートルの琵琶湖と同一視したような計画なり管理を考え直さないといけないのではないかと今の議論で感じました。今後の方針にもそういうことは反映させていくべきではないか思いました。さらにご意見があったらお願いします。
 そこで、今日の大きな課題の安全度という問題を100、150、200と分けていることについて、その方向でいいかどうかです。河川工学という立場で、あるいは安全工学という立場で考えますと、大阪だから200なんだよと受け取ると大変誤解を招くのではないか。
 人口稠密地帯であることは1つですが、そこに人工の堤防をつくって、上流から水を誘導してきているということだけに、何もしなかったら来なかったかもしれない洪水をまとめて持ってきているところから、人工構造物の危うさを増幅しているのであって、したがってそのために必要な安全率をかければ上流側が100なら下は200という考え、つまり人為的に堤防をつくったということの義務として200ということがあるのではないかと考えます。
 それを担保するために全閉操作というものが明治29年の計画以来ずっと伝統して残ってきたことが琵琶湖住民に理解が得られない。すなわち河川管理者が理解を得られていないのではないか。私は淀川には関係したことがないので、客観的にそう思います。
 江戸期でも流れていたじゃないか。なぜ明治になってから全閉するのか。一方で、そのために事前に予備放流してやっているではないか。水位は何もなかったらもっと悪くなっていたという考えもあります。これは計算上の話で、肝心のときに全閉するというのは堪えられない。知事さんのジョウリというジョウは条なのか、情なのかわかりませんが、感情論として受け付けられないというのは大変よくわかる話であります。せめて江戸期に流れているぐらいは流すのが当然ではないか。
 そこで、さっきいろいろお話になっていた中で、本当に大阪が大変なときはみんなで考えようよという言葉が残っています。そのときは洗堰も閉鎖するけれど、大阪も三重県も京都も淀川本川に入る排水ポンプはみんなで止めよう。農業ポンブも下水道ポンプもみんな止めようそのときは。被害の形態が内水になります。琵琶湖湛水もある意味で内水ということです。それを知事さん方が連携して受け止めよう。滋賀県知事だけに責任を負わせるのではないよという管理方式は成り立つのか。
 これは管理の話ですから、計画論としてはそういうことを予想しない。全閉しないで流すようにする。先ほど申し上げた費用負担もあえて大阪の知事さんに聞いていませんが、そういう費用負担の課題、琵琶湖の湛水と内水についてみんな痛みは痛みとして共有しようということで治水運命共同体として取り組んでいかないと、これはなかなか進まないのかなというのが私の感想です。
 今日はいきなりですが、次回あたりはそういう共通認識が生まれることを期待しないとこの課題は一向に進まないなというのが私の感想です。次回にはコメントをいただければありがたい。
 事務局からは方向性は今日は何も示していません。検討結果だけ示されて、正直、私もこの場で見ました。数日前から出していただきたいというご意見でありました。そのぐらい事務局は悩んで、方向がまだ出せないので、今日は検討事項のあらましが示されたのだと思っております。
 まとめるつもりではありませんが、それぞれの委員からご意見を伺いたいと思います。○○委員、ご意見はございますか。
(委員) 遠慮しておきます。
(委員長) あるのなら。固有名詞を外して議事録に載るそうですから。
(委員) 非常に難しい歴史的なことがたくさんあることは非常によくわかりました。技術的にはいろいろあると思います。例えば景観が問題になった開削をするのでしたら、木津川をバイパスする案が出たようにいくらでも。たかだか10kmやそこいらのトンネルぐらい掘れてしまうわけです。そういう点はあると思います。そこいらでうまく洪水ピークの時間差で運用するんだろうという気がします。そこいらはもうちょっと検討が進まないと議論がしにくい。
 琵琶湖で水位が下がって藻が繁殖したというお話がございました。琵琶湖が汚染し始める前のころ増えたところがあったんです。そのとき、これはそのうち汚れるぞと思いましたのは、マコモの刈りが行われて、富栄養物質が循環されていたんです。秋になると草刈りをしまして、田んぼに持っていく。それが完全に失われていますので、琵琶湖に富栄養物質が蓄積するのは当たり前ということかと私は前々から思っておりました。
 今ごろやるのは大変かもしれませんが、人との係わりできれいな琵琶湖があったんだという気がいたしますので、そういうのもあったらいいな。
 幾つかの滋賀県の湖沼では秋になりますと藻を刈っております。イギリスあたりの水路でも全部そうです。
(委員) ○○先生が言われた琵琶湖の水質の問題ですが、琵琶湖の一番南の南湖と呼ばれている面積としては狭いんですが、そこは周辺の土地利用が進むことによって工業排水、農業排水、生活排水が流れ込んで、窒素やリンによって植物プランクトンが繁殖して、富栄養化を招いているということでありまして、これが生態系の破壊にもつながっている。そこで汚れた水が瀬田川を通り、さらには宇治川に流れ出していくということで、下流域に影響を与えているという問題があると思います。
 湖沼水質保全法ができて25年ぐらいになりますか。浄化がどれだけ進んでいるかというと、ほとんど進んでいない状況です。だから、琵琶湖の水質の問題は今、○○先生が言われたように、これから本気になって考えていかなければならない問題だということが1つです。
 もう1つ、琵琶湖の支川を含めての広いエリアというのは活断層がたくさんあるところであります。これらが動きますと当然のことながら直下の地震が発生する。例えば琵琶湖なんていうのはそもそも地震でできた湖です。琵琶湖の西岸は西岸の断層が走っていて、どんどん比良山地が高くなってきたということであります。周辺を断層に囲まれていると言ってもいいぐらいであります。それ以外の主流域も支川域も全部含めてみても、断層が非常に多いということは、将来地震が起きますと大量の土砂生産が発生をして、それが河床を上昇させる。河床が上昇するということは、相対的に堤防が低くなるということでありますので、言ってみれば地震環境にあるんだということを視点に入れておかなければいけないのではないかということです。
 もちろん堤防の耐震強化も重要でありますが、そういう視点でやはりものを見ていければと思っています。
(委員) 私も水質問題で一言申し上げたいと思います。参考資料によりますと琵琶湖の環境の課題としてヨシ、カヤ等が減少して生物の生息生育環境が減っている。あるいは、在来種、魚介類でいえば在来種が減って、外来種が増えているということがりますが、水質については全く触れておりませんが、改善の方向に向かっているのかどうかということが1つあります。
 いずれにしても琵琶湖の水質問題については直接的な水域における対策ももちろん大事ですが、周辺地域の環境保全という、特に生活排水といった排水対策、さらには上流の森林の整備等々、いわゆる総合的な流域管理という、これを推進していくことが大事だと思っておりますので、そういった点についてこれまで以上に力を入れていかなければならないと考えております。以上です。
(委員) 琵琶湖の水質の問題につきましては、今、委員の方々がおっしゃったことに全く同感でありますので、十分な検討をした上で計画にどう盛り込むかというものを議論していただきたい。
 もう1点ですが、3回前の淀川、利根川一緒の議論した委員会で私が申し上げたと思います。その後、事務局からご説明があったのかもしれません。欠席しておりましたのですが、今日は治水の話で治水の安全度という話がありましたが、利水安全度という議論が一方においてあります。つまり渇水が、状況がどんどん変わってきている中で利水安全度が変わってきている。資料もご提出いただいていたわけです。今日の参考資料2の3ページあたりにも図表が載っております。これを河川の整備の観点からどのようにお考えになるのか。当然利水の安全度ということを考えて議論をしていくだろうと私は思っておりますが、今までの取り扱いはおそらくこうした観点ではなかったのではないかと思います。特に重要な都市の利水を考えている淀川でありますとか、あるいは利根川につきましては利水安全度を河川整備上、今後どういうふうに考えていくかということを整理、ご議論いただければと考えています。以上です。
(委員長) 一通りご意見をいただきました。このまま終わってしまうと次の委員会ではまた同じことを繰り返すのだろうと思いますので、委員長の責任で多少の方向を出してみます。もし異論があったらそれぞれ事務局に申し上げていただきたいと思います。
 今日の本川200分の1、宇治川、木津川、桂川それぞれ150というような安全度。この安全度の意味は単に地域の安全性、重要性のほかに人為構造物である堤防によって誘導した洪水を引き受けるからにおいては、やはり下流で破堤させないということが大眼目です。安全工学である河川工学としてそういう方向でいかがだろうか。
 それから、狭窄部の問題はどっちから見ても悩ましくて、安全工学から言えば開削しない方がいいに決まっていますが、ここにたくさんの人がお住まいになっている。この人たちの安全性をどう確保するのか。あるいは河川事業でどれだけ代替案があるのか。そのあたりを代表して○○委員がおっしゃったのでしょうが、上流でどれだけの苦労をされているのか。それさえわかれば下流でも治水運命共同体として協力していただけるのではないか。万全を期して、なおかつ仕方ないときはある程度開削せざるを得ないというあたりが私の提案でございます。
 それから、明治29年をどうするか。どうするかといってもこれだけの資料が滋賀県内というか琵琶湖住民に配布されているとすると、○○委員がおっしゃったけれど、全く知らないというわけにはいかないので、少なくともこれに対する考え方は、例えば淀川のスーパー堤防と同じウエートある程度方向性を示す必要があるのではないか。
 幾つかの案が出されていましたが、制限水位を下げるという案はこれは琵琶湖の人工化ですからあり得ないでしょう。それから、開削というのも、平等院まで移転するんだよという話ですと、困難な話と思います。
 そうすると、バイパス案と水位を上げる案に絞られてくるのかなと考えます。水位を上げる案は何百年に1回水位を上げるということになるのでしょうか。
 洗堰全閉問題については、少なくとも江戸期に50m3/s程度流れたとすれば、それは最低限流すというのがまず必要なのではないか。そういう関係で今後考えていく。
 ただ管理論となると、先ほど私も付け加えましたが、下流を破堤させないというのは単に大阪を守るということではなくて、人工構造物の堤防によって高いエネルギーの水位を大都市に放出するというのは一番下手な技術であります。エネルギーの少ないところで、いわば内水として我慢してもらう。内水の我慢は琵琶湖住民だけではなくて、流域全体として内水として対応するというあたりですね。
 これは整備方針ではありませんが、管理の段階で関係地方公共団体が治水運命共同体として一体として取り組むということは出来ないか。
 河川敷の利用の問題はもうすでに河川環境管理基本計画が淀川でも策定されているので、もし異論があるのでしたら、また見直しをしていただくということで、整備方針の場ではないと思いますが、地方整備局の方で取り組んでいただきたい。
 先ほどの狭窄部の対応策としては、ダムも当然選択肢に入るんだということです。その辺、皆さんに異論は大変あると思うんです。委員長がそういう指示をして事務局で検討していただく。ご意見がありましたら、どんどん事務局に寄せていただいて、次回はもう少し進んだ段階の議論をしたいと思いますが、そういう議事の進行でお任せいただけるでしょうか。
(委員) 今の委員長の仕切りについては全く異論はございませんので、そのように進めていただいて結構です。
 ただ、1つだけ発言させていただきたいのは、先ほど琵琶湖の水質の問題、いろいろご心配をいただいたりしているので、若干ご報告を申し上げたいと思います。
 琵琶湖の水質が1970年代の後半ごろから汚れだしたという話でございますが、現時点で言えば人口は当時の倍ぐらいに伸びた。あるいは産業活動は10倍ぐらいに発達していますが、水質の汚染はほぼ止められたというような感じでございます。
 したがって、この間も世界湖沼会議がナイロビであったのですが、世界の湖沼の関係者は「琵琶湖は優れた成功例だ」と評価されるところまで来ております。私はそのことで安心をしたり、あるいは楽観をしていることは全くありませんで、むしろ危機意識を持っているわけでありますが、ただはっきり言えることは人口や産業が発達してきているにもかかわらず、一時期の汚染がほぼ止められたということです。それには下水道を急ピッチで都市部だけではなく農村部も含めて県下全域で進めましたので、日本で後から何番目かの位置から始まったのですが、完全に10本の指に入るどころか数本の指に入るところまで整備しましたのと、その処理を徹底した高度処理をやっていますので、河川が見事にきれいになってホタルが戻り、あるいは魚が戻ってきたというように顕著な改善傾向が出ております。
 ただ、一方でメカニズムとしてもまだわかりにくい部分があったり、琵琶湖の水は19年かかって外に出ていくという、非常に長い時間がかかって動いているということでは、大きな湖ではございますからいろいろわからないこともあります。また、先ほど話題になりましたが藻がまた発生してきた。その藻も最初は外来藻だったのですが、最近は在来の藻が増えてきたとか、いろいろなことが出てきております。少なくとも県民を挙げて、しかも山も含めて、よその県の皆さんからすれば農産物をつくるのにも減農薬、減肥料ということで化学肥料を減らすという取り組み、環境保全農業という条例までつくってやっております。
 あるいは、森林の税を新しくつくるとか、とにかく一生懸命にやっておりますので。汚れっ放し、だんだん汚れていくという心配をかけているのですが、世界的にはものすごく評価されているということもぜひご理解をいただきたいと思います。
 なお委員長から私が「条理のある」という話のときに、ジョウというのはどんな字を書くのか。「情」という話がありましたが、資料に書いてありますようなきちっとした「条理」でございますので、ご理解をいただきたいと思います。
 委員長の先ほどのおまとめについては次回、またご意見を申し上げたいと思いますが、「明治29年の話は別にしたら」という先生のお話も一部ありました。私も先生の学校を出たのですが、それだけは納得いきません。明治29年にどこまで対応できるかという話はありますが、やはりきちっとした対応をここで議論し、真剣にみんなが考えていくということでないと困りますので、その点だけは細かい、しかし大事なことでございますので、よろしくお願いします。
(委員長) ほかの県の代理でおいでになっている方は次回のご発言でよろしゅうございますか。
 それでは、時間が大分過ぎて申し訳ありませんが、本日の審議は以上とさせていただきたいと思います。
 各委員には本議題につきまして、短時間の中で熱心なご審議、ご議論をいただき、また貴重なご意見をいただきましてありがとうございました。次回は本日の各委員のご意見を踏まえ、基本方針の本文について審議していただくことになりますが、本日配布された資料も含め、お気づきの点がありましたら次回以降の議論にも反映できるよう、あらかじめ事務局までご連絡をくださいますようお願いいたします。
 最後に本日の議事録につきましては内容について、各委員のご確認を得たのち、発言者の氏名を除いて国土交通省大臣官房広報課およびインターネットにおいて一般に公開することとします。
 本日の議題は以上でございます。
(事務局) 委員長、どうもありがとうございました。




目次へ戻る 戻る 進む

社会資本整備審議会河川分科会 目次へ戻る

Copyright© 2007 MLIT Japan. All Rights Reserved.

国土交通省 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3

アクセス・地図(代表電話)03-5253-8111