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河川局

審議会等の情報 社会資本整備審議会河川分科会について


第40回河川整備基本方針検討小委員会

平成18年6月6日


出席者(敬称略)
委員長  近 藤   徹
委   員  池 淵 周 一

岡 本 敬 三
小 池 俊 雄
小 松 利 光
谷 田 一 三 
中 川  一
福 岡 捷 二
福 永 浩 介
虫 明 功 臣
森    誠 一
森 田 昌 史
潮 谷 義 子


1.開      会

(事務局)  そろそろ定刻になりましたので、小委員会を開催したいと思います。カメラの方はご退席をいただきますよう、お願い申し上げます。
 ただいまより、第40回社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会を開催いたします。私、本日の進行を務めさせていただきます事務局○○でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、お手元に配付しております資料のご確認をお願いいたします。なお、本日お配りしています参考資料1−2から資料2−6までは、前回委員会の資料と同じものになっておりますので、傍聴の皆様へは配付をしておりません。ご了承いただきたいと思います。
 それでは、資料の確認をいたしたいと思います。
 まず資料1、審議の流れについて、A4、1枚でございます。
 資料2につきまして、2回目の委員会での審議の補足ということで、A3でございます。
 資料3、降雨と洪水流量の関係、A3でございます。
 資料4、基本高水の検討の考え方、A3でございます。
 参考資料1−1、1回目の委員会での審議の補足というものでございます。A3でございます。
 参考資料1−2、これは委員のみお配りしていると思いますが、川辺川ダムに関するアンケート調査及び荒瀬ダム撤去について、A4でございます。
 参考資料2−1、川辺川ダムを考える住民討論集会と森林の保水力の共同検証等の概要、A4でございます。
 参考資料2−2、川辺川ダムを考える住民討論論点(治水・環境)、A4でございます。
 参考資料2−3、住民討論集会の論点及びダム反対側の説明資料、A4でございます。
 参考資料2−4、住民討論集会の論点及び国土交通省の説明資料、A4でございます。
 参考資料2−5、森林の保水力の共同検証に関する主な主張(概要)、A4でございます。
 参考資料2−6、森林の保水力の共同検証に関する専門家会議資料抜粋、A4でございます。
 参考資料3、流域の概要、地域特性、A4でございます。
 参考資料4、球磨川水系工事実施基本計画、A4でございます。
 参考資料5、球磨川水系の流域及び河川の概要、A4でございます。
 参考資料6、球磨川水系管内図でございます。これはA3でございます。
 参考資料7、球磨川の流域図、これもA3でございます。
 資料につきまして過不足等ございましたら、お申し出いただきたいと思います。
 それから、前回の資料に訂正がございます。参考資料1−1でございますが、こちらの6ページ、林家数及び林業専業労働者数の変遷グラフというのがございます。資料の左下にあるグラフでございます。こちらにつきまして集計に誤りがございまして、今回グラフを差しかえております。
 また参考資料3でございますが、こちらの4ページ、こちらにつきましても資料の左下にA−A’断面という横断図が入っておりますが、こちらの朔望平均満潮位に誤りがございました。今回訂正した数字で入れております。
 本日は、○○委員、○○委員、○○委員、○○委員が、ご都合によりご欠席となっております。
 報道機関の皆様、及び一般傍聴の皆様におかれましては、傍聴のみとなっております。議事の進行にご協力よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、○○委員長、よろしくお願いしたいと思います。

2.議      事

(委員長)  おはようございます。○○でございます。本日は委員の皆様にはご多用中のところご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 まず、議事に入る前に、地元の方々から意見書、要望書が来ております。既に委員のほうへも届いているものと思いますが、この場で一括して配付させていただきます。
 また、地元以外の方ではございますが、東京大学大学院農学生命科学研究科所属の○○さんという方から、意見書ということではございますが、今の議論の学説の解説というようなことで、大変シャープでクリアなものが届いておりますので、これも同時に配付していただきたいと思います。
 各委員におかれましては、特にお配りする中に、本日の議論の対象となるところには印をつけていただいていると思いますので、この点について一応留意しながら、それぞれ専門的な分野については既にごらんになっているとは思いますが、本日の審議に際しましてもこれらの意見書、内容も踏まえて、ご意見をいただきたいと思います。
 それでは、議事に入ります。
 まず前回、基本高水における森林保水力の取り扱い等について審議をいただきました。今回は、前回の審議の際に出された質問事項について、まず事務局から冒頭に説明をお願いいたします。また前回に引き続き、基本高水における森林保水力の取り扱いと基本高水のピーク流量との考え方について審議を進めるという段取りにいたしたいと思います。
 まず、前回の審議での質問事項等について、事務局から説明をお願いいたします。
(事務局)  事務局○○でございます。座って説明をさせていただきます。
 それでは、お手元のA3のカラー版の資料で左肩に資料2と書きましたものがございます。タイトルが「平成17年台風14号での山腹崩壊による河道堆積土砂の」云々というものが1枚目についているものでございます。
 前回のお話の中で、左側のほうに地図が載ってございますが、これは川辺川の流域でございます。この上流のところ、地質的なこともありまして、昨年、一昨年でかなり崩壊があったのではないか。場所は、この地図の中で朴木砂防えん堤とか樅木砂防えん堤とございますが、こういうところの上流に主に崩壊地が多うございます。これは前回の資料にも載せてございますので、先ほど参考資料として用意している旨をお話しさせていただきましたが、そちらも見ていただければと思います。
 これが土砂がたまった話を前回申し上げたんですけれども、河床がその分高くなりますので、洪水が来ましたときに治水上問題はないだろうかというお尋ねがございました。きょう、ご用意いたしましたのは、真ん中のグラフでございますけれども、例えば昨年9月の洪水がさらに来たら、上のほうにたまっております土砂がどんなふうに下流のほうに流れて、その分河床が上がったりする影響があるだろうかという予測計算をしてみた結果を載せてございます。
 先ほど地図の中で申し上げました砂防えん堤から上のほうは山間部でございまして、集落等もございませんので特段治水上の問題はないわけでありますが、この縦断図にありますように、宮園地区集落というのがその少し下流にございます。このあたりには近くに人家がございますので、この辺の影響を調べているわけでございます。
 結果から申し上げますと、この図面で、真ん中の図でいうと一番下のほうに茶色い実線がございます。これが現在の河床でございますけれども、これが緑の点線で書きました、ちょっと上のほうに重なって見えるかと思いますが、このぐらいまでの河床の変動、少し上昇するものかと思われます。この分の洪水を流してみますと、その上の線で現在の水位といいますか、黒いほうの線が、河床がたまりました分、オレンジの線、これは20cm分でございますが、上昇する可能性があるという計算の結果が出てございます。
 これは断面図で書きますと右のようなことでございまして、ここは熊本県のほうでご管理されている区間でございますけれども、このぐらいのレベルでございますと大きな問題はないかと思いますが、引き続き県のほうでも土砂移動等のモニタリングを実施されると伺ってございます。
 下のほうは、前回もおつけいたしましたが、宮園地区よりもっと下流のところ、本川及び川辺のところでの土砂の移動でございます。これはちょっと小さい絵で恐縮ですけれども、砂利の採取とか河川改修で掘ったとか、ダムのところに少したまりましたみたいなものを除きますと、ずっと経年的に見まして大体50cm未満程度でございます。大きな影響は過去も出ていないのかなと。
 ちょっと右下のほうに、例えばこれは人吉地点の洪水の流量でございますが、過去のやつを並べてみますと、昭和40年ごろ、47年ごろ、57年ぐらいだとか、何回か大きな洪水がございましたりしているわけでございます。今回の平成17年の出水以前にもこういうのがありますが、こういうものも含めて、左で見ていただきました河床の変動でございますので、十分通常の維持管理の中で対応できる量かと思います。特段そういう面では問題ないのかなと思われます。
 1枚おめくりいただきたいと思います。濁水のお話を前回させていただきました。もう少し原因だとか、そういったものにつきまして科学的な分析をというお尋ね、2人の委員からその辺の原因も含めましてお尋ねがございました。
 ここに用意しましたのは、濁りは大体川辺川のところで出てきてございます。先ほど申し上げました平成17年なんかの山腹崩壊で出てきているわけでございます。真ん中のグラフが上2つ、平成16年、17年の洪水があります前の平成15年のものを並べてございますけれども、各グラフの上のほうの緑が雨の量でございまして、下のほうの青い線が権現橋という川辺川の下のほうのところの濁度、濁りでございます。
 これを見ていただくと、平成15年のところで、例えば右側のほうでも11月3日とか12月3日の後ろとか何回か、少し雨が降っておりますが、特段濁りは出ておりません。ところが、同じぐらいの雨でこの上の平成17年を見ますと、雨の量は同じぐらいでも、例えば1月だとか2月だとか3月、4月を見ていただきますと、青い線がぽんぽんと上がっている。こういうところで濁りが発生しているわけでございます。
 下の絵をごらんいただきますと、これは川辺川の濁りの調査結果と書きました下の絵ですが、左側が下流です。右側が上流でございまして、小さく書いてございますが、1月19/20とか1/23とか凡例が載っておりますけれども、そのときの縦断的な方向の濁りでございます。これを見ていただくとわかりますように、右側の五木村竹の川地区上流のあたりで非常に濁りが発生しているのが、この辺で増えておりますので、わかります。
 ちょっと上が小さいので、下に拡大をしてございます。一番下がその拡大の絵でございますが、真ん中の茶色い絵は、これと土砂の堆積と両方並べたものでございますけれども、これを見ますと、一番下の絵で例えば53という、これはkmでございますけれども、ここから左側、要は下流側へだんだん濁りが増えていっているわけです。この場所はちょうどその上のグラフの土砂堆積と書きましたところの、先ほどの樅木砂防えん堤というのがございます。これから下ぐらいの間、小原川の合流のところの川底にたまりましたものが、雨が少し降りますと川の中へ出てくるという現象がわかります。
 右の上のほうにはその写真がございますが、川岸のところに少しそういう細かいものがたまりましたものが、ちょっと雨が降りまして水かさが増えると、それを流していくという状況です。
 それから、右下には委員のほうからの、たまたま4月24日に現地へ行かれたときに、濁ったものが川辺川第二堰堤のあたりでありましたと。あれは一時的なものかどうなのかというお話等もございました。
 これは、たまたまそこにも書いてございますけれども、えん堤の補修のための作業をしております関係で、一時的に水位が変動いたしまして発生したものです。これを見ますと、下のほうには権現橋濁度推移というのがオレンジ色で書いてありますけれども、24というところをちょっと色づけております。これは4月24日でございますが、全体としては少し下流の権現橋で見ましても、そのとき特段増えているわけでございません。先ほどの排砂門の補修をやりました前後で発生して、それから下流の権現橋のところでは濁りはあまり観測されていなかったという状況でございます。一時的なものと見てとれます。
 いずれにしましても自然の営みで濁っているものでございまして、川の周辺にたまりましたものが雨とともにちょっと出ている。日ごろですと、少し大きな出水でそれが流れていくという状況でございます。
 以上でございます。
(委員長)  前回の質問についての説明をいただきましたが、この質問は○○委員からだったと思いますが、ただいまの回答で・・・・・・。
(委員)  説明の中身はわかりました。1つ私たちも反省しなければならないと思いましたのは、住民の皆様たちの不安感というのは、実は県も国も今何の工事をやっていて、そしてそのプロセスはどのような形の中で進行しようとしているのかという、そこが見えないということによる不安感が1つあるんじゃないかと思いましたので、今後とも私ども県も国も、説明責任をそういった意味で果たす必要があるということを実感いたしました。
(委員長)  ぜひ行政当局で取り組んでいただきたいと思います。
 ○○委員は後ほど来られると思いますが、また確認していただくことにいたしまして、それでは次、前回、基本高水における森林の保水力の取り扱いについて議論いただきましたので、論点を整理していただいております。事務局より説明をお願いいたします。
(事務局)  それでは、引き続きお話をさせていただきます。資料1というA4の1枚ものが入ってございます。先ほど資料の紹介がございましたように、審議の流れでございます。
 今回、基本高水のピーク流量の検討という中で、2つ目の○、資料1、A4の縦長でございますが、この中で前回住民討論集会等々のご紹介を行いました。その下の基本高水における森林保水力の取り扱いもご議論いただきましたので、今回、これと基本高水のピーク流量、その後、河道の状況、それから計画高水量、環境その他という流れでございます。そこの本日「3回目」と書きましたところでございます。
 早速、左上に資料3と書きましたA3のカラー版の資料をごらんいただきたいと思います。降雨と洪水流量の関係というのが1枚目にございます。この資料は前回等のご議論のやつをまとめたものでございますので、若干繰り返しがあるかもしれませんが、ごらんいただきたいと思います。
 1枚目、一番上に書いてありますように、今回私どもが求めないといけないものは、治水計画を立案するための洪水の流量でございます。そういう洪水の流量をさまざまな区間、どこか1地点じゃなくて、全体的に算出・設定するということがミッションといいますか、必要なことでございます。ただ、降雨が川に流出いたしまして、洪水流量を形成する過程というのは複雑でございます。
 一番左下に河川の流量に影響する主な要素というのを部分的に取り上げてございますが、雨の降り方、時間の分布、地域の分布、それから地形、これは流域の大きさとか勾配、斜面、森林の土壌の状況だとか基岩、土地利用、川の状況等で変わります。こういうものを全部評価・解明して算出するのは困難でございます。
 このため私どもが、先ほど申し上げました役目といいますか、しないといけないことは、今、洪水の流量を出すということでございますので、実測された実際降りました雨と実際流れました川の流量、この2つの実際の値から、流域全体をとらえました流域単位での関係をモデル化してやっているのが通常でございます。
 下のほうに絵がかいてございますが、左上に降雨、これは時間・地域分布なんかが観測の実際のデータとして入ってきます。これは実測値で、右下の河川の流量と書いてございますが、これの時間・地域分布を観測できますけれども、こういうものでモデルをつくりまして、100分の1、100年に1回の洪水とか200年に1回の洪水だとかのときに、そういう雨が降ったときにこの川の流量はどうなるだろうかというモデルをつくって、算出するというものでございます。
 インプットといいますか、入ってくるデータとしては雨、出てくるデータとしては流量というのが、データと必要なアウトプット、結果ということになります。この関係をマクロにとらえまして、右のほうにちょっと絵がかいてございます。右の上のグラフは、横軸が降りました雨でございます、総雨量。縦軸が洪水流出に寄与しない雨量ということで、損失雨量とありますが、例えば山の中にためられたり、ゆっくりうんと後に出てきたりとか、蒸発したりというものです。
 これは下の絵をかいてございますけれども、絵の上にございますように、この洪水流出に寄与しない雨量、これを損失雨量と呼んでおりますが、保水したり蒸発したりとか、そういうものでありますけれども、これは全部降りました雨から、川へ流れ出てくる全部の流出量というものを引き算しましたものでございます。下の絵に模式図がございます。上からの棒グラフが雨で、実際の川の流量が出てくるのは水色の部分になります。
 一部分は山の中にためられたりして、ゆっくり出てくる。これをグラフに過去昭和20年代からごく最近のものまでその関係をプロットしたのが上の図でございまして、入ってくるのと出ていくのが一緒のが点線でございますけれども、実際のところは保水される量があって、川に流れる量はその残りの部分だというものを示したものです。
 これを見ていただくとわかりますように、ある程度までは損失の、中へため込まれる量は増えるのでございますが、ある程度いたしますと、200mmとか400mmぐらいになりますと横ばいになるというのが、この川での実測値でございます。
 次をお開きいただきたいと思います。次は、森林の保水力の共同検証が行われました。これは前回お話を申し上げましたが、ちょっと振り返って、一番左上の黄色い部分でございますけれども、樹種とか樹齢などの違いが土壌に浸透できない雨の量、これをホートン型地表流と呼ばれているようでありますが、影響を与えるかどうかが主な論点になっております。実際の降雨で、そういう意味で地表流観測試験というのを実施したというものであります。真ん中の上のほうにございますように、降りました雨が全部浸透するか、浸透しない分が一部地表で流れるかということを確認したものであります。
 左の水色で書きました、文字がたくさんあって恐縮ですが、ごらんいただきたいと思います。今のように浸透能の違いというのを調べますために、以下の3つの試験方法が提案されてございます。1つは、冠水型円筒浸透能試験により斜面の地点ごとに測定をしよう。2つ目は、水を散水いたしまして人工的に雨を再現して、広い範囲の斜面で地表流(浸透できない量)を測定しよう。3つ目が、自然降雨のもとで広い範囲の斜面で地表流(浸透できない量)を観測しようということでございました。
 1番目は、実際の浸透能というのは、前も出ておりましたが、結構過大なものとして出てくるのが一般的でございますので、浸透能が測定できないのではないか。それから2つ目は、実施の際に実際の斜面災害みたいなところが現場になりますので、そういう危険を伴うということから、につきましては継続協議というお話が現地ではなされました。をまずはやってみようということであります。
 についての試験の結果、樹種とか林齢、「例」の字はワープロミスでございますが、林の年齢だと思いますけれども、林齢の違いにより、治水計画上対象とする降雨強度でも洪水のピーク流量に大きな影響を与えるほどのホートン型地表流は発生せず、先ほど申し上げました私どもの求めるものは、基本高水のピーク流量、洪水のときの流量がどうかという問題でございますので、そういう関係からしますと、先ほどのとかの浸透能試験のほうは必要性がなくなったということで、これは国土交通省のほうから共同検証の終了というのを提案させていただいたものでございます。
 それから一番右のほうに森林土壌の構造をつけさせていただきました。前回の会話の中でもA層とかB層とかC層というお話が出ておりましたので、つけさせていただいております。そこにありますように、落ち葉とまざっている部分だとか、まだかたい部分だとかあります。詰まるところ、浸透していきましたり、入りました水が流れる状況がそれぞれでちょっと特性が、しみ込みやすさとか浸透の力が違いますので、A層、B層、C層に分けてご議論がされていたものを模式図としてご用意させていただきました。
 右上には、前回ございましたように、土壌については、花崗岩が風化したマサ土みたいなものはちょっと裸地になったりするかもしれないけれども、土壌というのは伐採をいたしました後もそれなりの回復をして、維持されていったりするというお話が委員のほうからもございましたのをちょっとつけております。
 真ん中の下は、今の共同検証の結果を載せてございます。左側のグラフは、人工林について、降りました雨が横軸、それに対して地表の流れというのがどのぐらいあったか。それから右のほうは自然林に対してどうだったかというものであります。右の円グラフのほうは、この左のグラフにも書いてございますが、この量は1時間当たりミリメートルでございますので、非常に小そうございまして、実際は1%に満たないようなものがほとんどでございました。
 これについては左下のほうに、前回もご紹介いたしましたので詳しくは申し上げませんが、17年の試験につきまして一部目詰まりがあって、それについて全部使えないというご主張がダム反対側のほうにございましたり、国土交通省のほうでは、そういうデータだけ除いた残りのデータでは評価できるのではないかと。それから、先ほど申し上げました地表流は1%未満であるということと、それでも発生はしているじゃないかというご議論がありました。右のほうに、前回の意見でいただいた、1%以下で洪水に関係するというか、効くとは考えられないということを委員のご意見として掲載させていただいております。
 この共同検証をやります際に、森林水文学の専門家のコメントをいただこうということでいただいたもの、これも詳しくは前回お示しいたしましたが、こういう場所において、先ほどのマサ土の裸地みたいなところでないものにつきまして、ホートン型の地表流はあまり起こらないというお話もいただいたところであります。
 次のページをおめくりいただきたいと思います。流出解析の手法と洪水再現の適合性についてというところであります。この資料の一番最初に申し上げましたように、要は、洪水の流量がどのようになるかということが求めるものでございます。雨というものが入って、それが川の流量として出る、その間を少し大きなモデルで普通はやっている。1つにタンクモデルとか、そこの下にあります貯留関数法というものがございます。それぞれ複数の定数を決めませんと、定数をどう設定するかで数字がいろいろなものに変わって安定いたしませんので、そういう定数についてきちんと見きわめる必要があるというのが両方とものモデルの必要な分でございます。
 簡単に、タンクモデルというのは、タンクモデルと書きました下に絵がございます。第1タンク、第2タンク、第3タンクとございますけれども、例えばこういう各バケツみたいなのを並べたものをイメージしていただくと、上から入りました水がそれぞれ横へ流れていく穴、下へ流れていく穴がありまして、それぞれの穴の大きさ、それから横へ流れていく穴の位置によりまして、それは小さい穴ですとちょっとしか流れませんし、大きな穴ですとたくさん流れる。それから下のほうの横へ行く穴も、下のほうに位置していればたくさん流れるし、上だったら少ししか流れない。左にちょっと断面を書いてございますが、地面の中、地表等々の構造を模式化してこのモデルがつくられてございます。
 一方、右側のほうは貯留関数というものでございます。絵の中にA流域からD流域まで分けてございますが、こういうふうに流域を分割いたしまして、それぞれの流域でその流域にためられる量と流れてくる量というものを算出してございます。また途中途中の河道、川の部分でも洪水は少し平滑化といいますか、なだらかになったりいたしますので、そういう効果も入れたモデルが右の模式図でございます。こういうふうにモデルを組んでおります。
 下のほうにちょっと絵がかいてございますけれども、Sと書いてあったり、ブルーで書いてあるところの絵ですが、降りました雨は全部降雨と書きましたもの全体が降ったとしまして、川に出てくるものはその分の一部流域で長くためられますもの以外です。実際、川に出てくる関係のものは左側のfrというものです。これを下のちょっと斜めの、三角が書いてございます、こういうところのモデルで、水がたまりますと、多くたまったほうが外へ出る流量が多いという関係を数式で解いたものでございます。
 この場合も、それぞれ左側のタンクモデルにつきましては、非常にたくさんの定数、係数を設定しないといけないのが一般でございます。例えば球磨川の今のタンクモデルでは11の定数が必要になってございます。実は同じ熊本県で白川という川が北のほうにございますが、ここでは一般的にはタンクモデルはあまり洪水解析には使わないのでございますが、白川ではタンクモデルで洪水の解析をしてございます。このときもやはりたくさんの洪水でやらないといけないということで、14洪水で検証がなされております。一般的にはこの方法は、低水、洪水じゃなくて日ごろの水、それを用いるのがこのモデルでございます。
 右のほうも定数が幾つかございます。kとかp、fとか、そういったものを設定する必要がございますので、こういう検証が重要になっております。
 1枚おめくりいただきますと、タンクモデルと貯留関数につきまして、ちょっと概括的なお話を申し上げましたが、この球磨川でどうだろうかということを、前回お示し申し上げました住民討論集会で出ていましたもの等を含めまして、ちょっと紹介しております。
 左側のタンクモデルは、ダム反対側の方々がお使いになったものを出しております。各年代、1950年、60年、70年、90年という年代ごとに別々のモデルをつくられまして、それぞれのモデルにつきまして、発生した1つの洪水で定数を設定しております。また、これは川辺川だけの評価でございますので、球磨川全体の評価ではございません。検証した結果が左下にございます。右のほうは貯留関数を載せております。これは国土交通省のほうで検討しているものを載せてございます。
 これは今と比較いたしますと、すべての年代を通して共通のモデルをつくっております。また、8洪水で定数を設定しておりますが、大体それぞれあまり変化はないという状況が出ております。流域全体、6地点で評価をしているものです。
 先ほどモデルの特性を申し上げましたこともありまして、左側のタンクモデルにつきまして、1995年7月、洪水適合モデルというものから、その1年後、あまり流域の状況は変わっていないと思われますので、このときにそのモデルで検証をしてみましたところが真ん中の絵でございまして、どこかの洪水でありましても、どこかの洪水でなかなか合わないというので、先ほど申し上げました複数の洪水で検証が必要になってきますが、この場合は、適合していないという例です。
 下のほうにタンクモデルの、今申し上げましたような感じのことを前回の委員のほうからもございました。1つの洪水では無理ではないかと。それから、タンクモデルそのものを開発されました菅原先生も、10個以上の洪水が普通は必要であるということをおっしゃっております。
 次のページをおめくりいただきたいと思いますが、もう1つ、これは住民討論集会の何年か前の資料でございますので、昨年9月の洪水でもどうだろうかというものをそれぞれのモデルで出してございます。タンクモデルのほうは左側のものですが、一番近いものというので1995年のモデルをしてございます。この部分は状況が変わっている部分があるかもしれませんが、これで見ますと、大体ピークの部分は合っておりますが、波形といいますか、全体の形は少しずれているという状況です。
 右のほうは貯留関数で出しましたものでございまして、この場合、実際の洪水と計算をいたしたものとはほぼ大体同じかなとは思われます。
 下半分のところでございますが、前回お話し申し上げました中に、タンクモデルの計算での経年の変化が、左下のようなグラフがございます。これは1995〜6年ぐらいまでのデータでございますので、その後、先ほどのような平成16年とか17年の洪水を書いてございますので、そういうものを追加してみております。
 それから左側のほうは、大きな洪水があったり、小さな洪水があったりでございますので、統一して見る必要があるかと思われますので、右のほうの新しく計算しているものは警戒水位というのがございます。警戒水位以上の洪水を全部拾ってみるということをしましたものが右のものでございます。
 実はこの絵の中に、左の絵ですと右肩のほうにR=0.90というのがございます。右のほうは、真ん中の四角にR=0.48というのがございます。これは相関係数でございまして、この代表線を引いてみたときの曲線で書いてございますけれども、この部分、相関係数が左のほうは0.9と高いんですが、もう少し最近のデータを入れますと0.48というので相当低くなってございます。カーブの関係もちょっとその辺は見えておりますが、そういうので、これだけを見ますと、一番下のように経年的な洪水流出特性の変化に定まった傾向というのは、このタンクモデルでも見えないのではないかと思われます。
 最後のページでございます。森林の洪水ピーク流量の影響についてということで、実際、じゃ、これを洪水の計画の中でどう取り扱うということでございます。一般に森林は宅地や農地と比べ保水機能が高くて、森林を保全していくということは治水上も極めて重要なことでございます。球磨川では森林面積が流域面積の8割を占めておりますが、これ以上の森林面積の増加というのは今のところ見込まれないと思います。
 森林の効果につきましてはさまざまな意見がございますが、これは森林のことだけではないんですが、私どもの行政としては広く学会等で認知されているものを用いるべきものでございます。1つの話として日本学術会議の答申にもございますように、森林は中小洪水に対しては洪水緩和機能を発揮いたしますが、洪水計画、治水計画で対象とするような大洪水に対しては顕著な効果は期待できないのではないかという判断も出ております。
 そもそも森林の保水力というものを見ていないのではなくて、治水計画で用いております流出計算モデルは、先ほど申し上げたように、降りました雨と出ました流量、当然その間には森林が水をためるということも含めて、大きなモデルとして再現をしているのでございまして、この中で森林の保水力も含め、流域の流出特性を反映しているものかと思われます。
 真ん中の絵は、今ご説明申し上げましたようなところを入れているものでございます。
 以上でございます。
(委員長)  ありがとうございました。議事を効率的に進めたいので、それぞれまず専門の委員からご意見を賜りたいと思います。○○委員のほうから、ただいまの説明についてご意見等ありましたら、お願いいたします。
(委員)  説明はお伺いしました。1点だけちょっと質問というか、表現が妥当でないんじゃないかというところがあるんですが、6ページの一番最後になりますけれども、上の○の4つ目ですか、「治水計画で対象とするような大洪水に対しては顕著な効果は期待できない」という表現は妥当でないと思います。
 といいますのは、ここの表現もあるんですけれども、200mmまでは行くけれども、それ以上は効果がないということであって、この問題はダムについても同じことですから、ちょっと誤解を招くような表現だと思います。言っていることは同じことだと思いますけれども、表現の仕方が違うかなと。
(事務局)  これは学術会議のそのままを引用するとこうですとしておりますが、ちょっと私ども流に直しておきたいと思います。
(委員長)  不十分ですね。
(委員)  それから、かなり森林の保水力について議論がされたんですけれども、どうも「森林の保水力」と言っているのでちょっと誤解を生むわけですが、森林の保水力というのは「林地の保水力」と言ったほうが実は妥当でして、森林、土壌の果たすべき効果、樹木も確かに森林土壌に影響を与えますけれども、その影響を与える度合いというのは、前回も述べましたけれども、非常に時間がかかる問題でして、10年、20年、要するに太古の時代からの集積が土壌にあらわれているということになるわけでして、例えば伐採による攪乱ということがございますけれども、これをA層に限定すれば非常に大きいということになるわけですけれども、実際に大雨が降りますと、C層部分で崩壊が起こるわけで、C層まで洪水の雨量が効いているということは現実に証明されるわけなんです。
 そういうことからすれば、2mとかもあるような深いところまでも考慮すれば、攪乱は影響はありますけれども、A層全体がなくなればということで、C層までも及ぶということは非常に少ないわけで、そういう意味では、A層だけ議論すると、それが過大に考えられるということではないかと思います。
 それから、混交林によって機能が期待されるということであります。これは理論的には期待されるというのが正しいと思いますけれども、これは数十年のレベルではなくて、非常に長い時間をかければそういう答えが出てくるだろうと思います。
 ただ、森林の場合は逆にマイナスになるといいますか、崩壊をすればそこの機能はゼロになりますし、それからよく言われます間伐が効果があると言いますけれども、間伐をすれば機能がすぐ高まるということではなくて、間伐をしなければ、ガレから始まって、崩壊と同じような状況が生ずる。そうすると機能が低下する。ですから、マイナスにならないように配慮する。これが森林整備の根幹ではないかと考えます。
 以上です。
(委員長)  水文の流出の立場から、○○委員のほうからコメントをお願いします。
(委員)  3点申し上げようと思います。
 1つは、今のご指摘にもありましたが、森林土壌の観点で、前回、私は申し上げましたが、土壌の発達の速度と流出、失われる速度、これは圧倒的な違いがあります。今回、○○委員長もおっしゃいましたが、○○先生が非常にシャープなコメントを寄せていただいていますが、森林土壌が形成されるには100年オーダー、それに対して失われるのはすぐだと。そういう観点を考えると、昭和40年代から現在に至る間にその機能が一たん失われて、また戻ったということは考えにくい。それから、今お示しいただいた資料3の1ページ目の右の上にある損失雨量のところを見ても、それはうなずける部分かなと思います。
 2点目ですが、いわゆる森林水文学の非常に先端的ないろいろな試みがなされているということは、また再度引用したいと思いますが、○○先生の意見書にもあらわれております。これは非常に大事なことだと思います。特に私が思いましたのは、要するに浸透能の計測の仕方、それから樹皮、樹木の皮が水を吸うんだという知見はやっぱり考慮すべきことであろうと思います。
 ただ、学問の最先端のものが行政的な計画論の中に息づいていくには、それぞれの学問分野のコミュニティーの非常に真摯な議論と合意の形成というものが学問的な分野で必要であろうと思います。私は河川工学、河川水文学の立場で森林水文学のこういう議論を拝見しておりますと、今、非常にいい議論ができつつある。ただし、これが普遍の理解となって計画に反映されるまでには、やはりまだ時間がかかるという認識を持っております。
 じゃあ、それが定着するまで待っていればいいのかということがありますが、これは例えば地球温暖化の議論でもおわかりのように、科学的なことがすべて解明されないと我々人間は行動できないのか、あるいはそれができて初めて行動すべきなのかという議論とよく似たところがございまして、現在ある知見の中で、我々が合理的な対応をとるということは工学上あるいは河川計画上、必要であろうと思います。それが第2点目でございます。
 第3点目、こういう学問が発達していきますと、いろんな計測法が出てきて、新たなデータが生まれます。それは我々人類にとって大変大きな知恵といいますか、知識になるわけでございますが、ただ、こういう河川計画を立てるためには、過去にさかのぼって、ある長期の解析が必要となります。そうすると、おのずからデータの制限というものが出てきて、それによって適用できる科学技術というものがある制限を受けます。そういう中で考えますと、本当は雨の降り方がばらばら違うとか、土壌の厚さがばらばら違うとか、いろいろなことがありますが、過去にさかのぼってそれを必ずしも精査できないという現状において、我々がとり得る合理的な計画論というものを考えなくてはいけないと思います。
 以上です。
(委員長)  ここまで聞いたところで、○○委員のほうから、地元委員として何か質問なり感想なりありましたら、お願いします。
(委員)  前回も申し上げましたが、たまたま今ここに6ページに地図がございます。私が申し上げましたことは、川辺川の周辺の山は非常に急峻であるということを申し上げたわけでございまして、森林の保水能力に頼れるような状態ではまずないということを申し上げたわけでございます。
 たまたまここに球磨川がございますが、この球磨川のほうは比較的田園地帯があるわけでございます。しかしながら、私はこの球磨川の「球」という字のちょうど1cmぐらい左側のところ辺で子供時代を過ごしたわけですが、それから30年代までは、この球磨川の沿岸にある家はほとんど球磨川のはんらんで流されてしまったわけなんです。37年だったですか、この上流に県営の市房ダムができまして、それ以来、球磨川の沿岸ではいわゆる家屋が流出するという災害は発生していないわけでございます。
 いずれにいたしましても、川辺川と球磨川の合流点の下に私どもは今現在住んでいるわけでございまして、その森林の保水能力に期待した治水計画というのは、私どもはいかがかなと、このように思っていまして、適切な洪水対策をぜひ先生方にご検討をいただきたい、こう思っているわけです。
 しかも、山そのものも民有林が多くて、手入れもなかなか進まないわけでして、森林のいわゆる形態というものが今以上に改善されるような期待も非常に少ないということでございますので、その辺も十分考慮に入れてご検討をいただければいいんじゃないと、こういうふうに思います。
(委員長)  あと何人か専門の先生からもお聞きしますが、○○委員のほうから。
(委員)  私は河川工学のほうで、水文が専門じゃないんですが、これまでの議論で森林の保水力をどう評価するか、確かに学術的・科学的学問としてのこの研究というのは非常に重要なわけです。しかしながら現実は非常にたくさんのファクターに規定されている。森林自体の変化、それから社会状況の変化、行政のかかわりすらどんどん変化していくわけです。
 生命・財産を守るという治水面で、じゃ一体、どれほど森林の保水力に期待できるのか、また期待していいのか。ここ2、3年のうちに大きな洪水がいっぱい出ているわけですが、我が国内外の洪水被害に対して土木学会から調査団を出しているんですが、私自身、団長もしくは団員として6回ほど現地調査をしてきました。そこで感じるのは、やはり雨の降り方が最近変わってきている。それから災害外力が大きくなってきているということを痛感しております。
 今までのこの森林の保水力の話というのはこれまでのデータを基本にしているわけです。ですから、将来のことを、これから本当に30年、50年という長いタイムスケールで物を考えたときに、やはり工学的な判断で治水面、安全面というのを考えていかなきゃあいけないんじゃないかと考えています。
 ということは、森林の保水力は、200mm程度の降雨に対してはある程度期待できるけれども、それ以上の降雨に対しては期待できないというのは、私自身は非常にリーズナブルな判断、知見だと考えています。
(委員長)  ○○委員のほうからお願いします。
(委員)  きょうのご説明の中で、1ページ目の概念図の一番下の図です。これは降雨量マイナス総流出量、この総流出量というのは、下の図でいけばハッチングをしているところを意味しているのか、そのあたり、洪水流出に寄与しない雨量という、損失雨量というのと、この総雨量マイナス総流出量の下の流出量の合計と書いてある、これと総流出量という形のものをどう見ておられて、上のほうの計算はどういう形でやられたのかというのは、洪水流出に寄与しない雨量という意味合いと、この下の図の色塗りの部分をどういうふうに表現しておられるのかという形も、最初、1ページ目のそれについては少しそういうことをお答えいただければと思います。
(委員長)  これは先生、わかるんじゃないですか。この白いところでしょう。
(委員)  そうだと思うんですけど、このハッチングの意味する・・・・・・。
(委員長)  ハッチングではないということですね。
(委員)  そうですね。洪水流出に寄与するという場合に、水平分離とかずっと下がってきて、ピークあたりぐらいから上から入ってきた、浸透した図が流出に加担して、洪水の低減部のほうの折れ曲がりの、そのあたりまでを、洪水流出に寄与しないとか、こういう言い方もありますので、そういう水平分離とそういう形もほとんどニアリーイコールだから、この意味合いの意味するところはそういう形で出して、上のほうが出ているんだというふうに理解して、あまり年代的に変わっていない、頭打ちになっていると思ったので、それだけをちょっと補足、補強をさせていただければと思います。
 それから、流出モデルでいずれも、このタンクモデルにおきましても貯留関数法にもありますが、ここに書いてある特徴として、タンクモデルは定数解析に多く用いられているということを意味していることは重要だろうと思っていますし、それから貯留関数法からもう少し物理的な意味合いを持った雨水流法、そういったもののパラメーターとの間に、貯留関数との間にパラメーター間でかなり説明できる、そういう検討もありますので、洪水の場合の同じ集中型のモデルからいえば、タンクモデルよりも貯留関数のほうがベターなモデル展開だろうと評価したいし、そう認識をしております。
 それから、再現等を多くの洪水でやられて、すべて同じパラメーターで年代を推移しても再現がいっているということで、先ほどの1ページ目の年代によって頭打ちがあるということも、そういう形の説明を補強することになるのかなと思うと同時に、おそらくkとかpとかfとか、こういう形のものはそういう形で同定された形であまり変わらないということで、きれいに再現がされるという中には、Rsaなり、あるいは○○先生もおっしゃっていましたが、その降雨の初期状態、あるいは流域の貯留状態、そういった形のものに対しては、ここでは先行降雨とか、そういう形のものを指標にして入っておりますので、そういった流域の貯留状態とRsaという形のものを組み合わせることによって、あとの同じ同定パラメーターを、これは変わらないという形で再現されたんだと思って見ております。
 そういった意味合いからすると、ここの流域の森林を含めた貯留状態が、この出水が起こる前の流域状態というのとこのRsaという形の中に、森林の内容を含めた立ち上がりのそういう形のものが入った形で説明ができている。しかも時間推移を経ても、同じ展開で同じ程度の精度の再現ができているということからして、そういう意味合いの流域の森林の内容を含んだ形で再現されているということで、なおかつ、時代の変化をより入れる形だけじゃなしに、雨の降り方等のエフェクトのほうがかなり大きい形でそういった内容が再現されているんだろうと思っておりますので、流域の森林の状態が組み入れられている、しかも時間変遷を踏まえても同じパラメーターで説明できているということからして、そういう内容で計画値と同じパラメーターで基本高水を出されるということについては、妥当なとらえ方ではないかと考えております。
(委員長)  ○○委員、これまでの話も総括しながら、少し丁寧にお願いします。
(委員)  皆さんそれぞれご指摘したことで尽きているような気もするんですが、大きく2つに分けてお話ししたいと思います。
 1つは斜面での浸透能という話、ホートン流が起こっているかどうか、あるいは森林の土壌の育成によって効果があるかどうかという点が1つ論点になっているわけです。それは要するに斜面での話、流出過程のプロセスの中の一部での話です。もうひとつは、川辺川、球磨川といった流域全体としてとらえた場合の話。これは観測によって流域全体としてどういう成果が得られているかということと、観測だけでは計画流量のような異常現象は捉えられていないので、モデルによる推定が必要。つまり、流域全体としては観測結果とモデルということです。
最初に浸透能についてですが、これについても先ほどから委員長はじめ皆さん引用されている○○さんが非常にクリアな整理をされて、これをリファーしながら議論するのがわかりやすかろうと思います。
 ○○さんが引用されている、筑波大学の○○さんが代表者となっている研究というのは、実は科学技術振興機構の中で重点的な研究分野というのを三十数個選んでやっているんですが、その中の1つが水循環ということになっておりまして、私は実はその研究総括というお立場を務めております。つまり、水循環というのが科学技術の上で重要だということが認められて、そういう分野ができているわけです。
 その中で○○さんの研究というのは、今までの例えば○○先生の専門家としての常識がここに出ています。森林ではホートン流が起こらないと。ところが、ヒノキだけの林で、なおかつ手入れをしていなかったら、これはひどい状態になるんだというのが○○さん達の指摘。実際に彼の研究対象を僕も研究発表会などで見せてもらっていますけれども、全く下草もないし、ここで言うA層とかいうのは全然なくて、裸地化しているんです。木の根もあらわれているようなところで、彼が実験しているところは、花崗岩地帯の森林であるということがあります。
 そこでいろいろな浸透能の試験をやって、まさに大型の散水という、大型といってもたかだか10m四方ぐらいの区画でスプリンクラーでやった結果ですが、それで表流水が起こったということ。これは今までの森林水文で言われたことを覆したわけですが、ただ、森林全体の中ではこれは極めて特殊な例というか、ヒノキ林でしかも非常に手入れの悪いところでの現象で、見るからに表土が裸地化しているんですから、これはホートン流が起こっても当然なわけです。
 そのメカニズムとして撥水性というか、水をはじくような層があるという議論があるんですが、そういうところをちゃんと管理するために研究することは非常に重要だと、そういうことを我々も認識したから、ちょっと語弊はありますけれども、○○さんの研究を採択したという事情があります。
 そういう森林の中でも管理の悪いものでは問題があるということは事実ですし、ホートン流が起こるのも事実だと思います。ただ、そういう森林水文全体、いろいろなバラエティーがある森林の研究というのは当然進めるべきだし、それをもとに適正な森林管理を考えるのは重要なことです。これは皆さんご指摘のとおりです。
 ただ、ここでの議論というのは球磨川の議論なわけです。私も彼の研究はよく理解しているつもりですけれども、球磨川では少なくともそういうところはほとんどない、あっても局部的だというのが我々の認識です。共同検証として設定された幼齢林とか手入れの悪い人工林、それから自然林というところを見ても、そういう状態ではなかったところで実際に観測をやったわけです。
 ここで、先ほど事務局○○からも説明があって、幾つかの浸透の試験方法があったけれども、実際には観測しかやらなかったということですが、円筒実験というのは私も前回も指摘しましたし、○○さんがもっとクリアに指摘しているわけですけれども、非常に過大な値を示すということで、これは単なる指標であるということです。私はこれを改めてやっても、森林土壌の効果というのは見れないと思いますから、これはやる必要はないだろうと思います。
 それから、散水をやるということですが、実は○○さんのところでも、ある意味では非常に狭い範囲しかできなかったわけです。豪雨を模した実験というのは膨大な水が要ります。その水を山の現場に持ってくるのに大変な苦労をするわけです。○○さんのところでやった内容を見させてもらいますと、降雨強度としては時間雨量にして35ミリ〜45ミリで実験して、それも短時間で、1時間やっているか、やっていないか、1時間ちょっと、それは水が制約条件になるからなんです。だから、観測でちゃんと降雨強度の高いものに対してポートン流が起こっているかどうかを見るのが一番いいわけです。
 そういう意味で言うと、○○さんがやった程度の規模の降雨強度の観測値は、実は球磨川流域ではとれています。時間雨量30mm以上から最大60mmという。そういうところで表流水が観測されなかったということは、ホートン流が発生しなかった。それもいろんな条件の悪いところを含めてやったわけです。いろいろなことをやれば科学的にはわかることはあるかもわかりませんけれども、今回の目的ではこれまでの現地観測で十分だろうと私は考えています。これは、斜面での話です。
 流域全体については、これも皆さんそれぞれご指摘がありましたように、資料3の1ページの右の上の図ですけれども、これが実測の値として雨に対してどれだけ流域に保水力があったかという図なわけですけれども、年代的な変化はないというふうに見受けられる。つまり、流域全体としては森林の成長により保水力が増えるという議論、定性的な感覚はあるかわかりませんけれども、実証値としてはそんなにはっきりあらわれていないということです。これが1つ、実際に観測されたものとしてあらわれている洪水量と森林の効果との関係です。
 もう1つ、流域全体の議論としてモデルがあります。これも繰り返しになりますが、実はタンクモデルも貯留関数法も、基本的な考え方としては全く同じなんです。貯留したものが出てくるという。貯留関数のほうが流域に加えて河道という要素を持っていた。流域をいくつかの小流域と河道の組み合わせに分けて解析できるのが特徴です。だから、流域を1つのシリーズのタンクとしてやっているよりは、もう少し分解して考えているというところが大きな違い。
 あとは、貯留と流出の関係が、正比例じゃなくて、非線形な関係になっている、全くその辺は同じなんですが、ただ、やっぱりパラメーターの同定というのが問題になるわけです。
 いずれにしてもパラメーターは調整するもので、一義的に決めるものじゃないわけです。タンクモデルでは、これも前回言いましたけれども、十数個のパラメーターがあって、これを1つの降雨と洪水セットで決めて議論するのは問題があるということ。ですから、4ページで示されていますように、たまたま1995年の7月の洪水で同定したものが96年8月に対しては合わないということは当然起こるわけです。
 そういう同定法を用いたもので、森林の効果という非常に複雑なものを抽出することは極めて困難であるというわけですが、貯留関数法も当然パラメーターの調整というのが必要で、それをやるわけですけれども、ここでは、8つの洪水でパラメーターを調整して決めたモデルが、パラメーターを同定したもの以外の洪水にも適用できるということが示されているわけです。
 そういうふうに決めた6ページにあるモデルで、先ほど事務局○○が指摘したように森林の変化という効果を入れなくてもよく再現ができたということは、流域全体で評価した場合、少なくとも森林の変化ということが洪水流量にはあらわれてきていないというふうに解釈できるということです。
 ○○さんが最後に指摘されているように、森林の管理をよくする、育成するということは、少なくとも洪水にはマイナスには働かないだろうと。これはほぼ僕も同意したいんですが、治水計画が対象とするような異常豪雨には有意な効果がないというのが、球磨川流域の結論だと思います。それに、先ほど○○委員も言われたように、実は森林が生長して根こそぎやられるような飽和状態になるような洪水では、流木となってあらわれます。ですから、そういう点では、木が生長して、土砂災害、土石流の災害を拡大するということは、私も現地を今まで見ていてそう思いますし、○○さんという私が尊敬する河川学者もそれは昔から指摘していることで、そういう点もあるということは認識すべきです。
 ただ、それとは別に、森林の管理というのはもっと別の面で、まさに生命の根源にかかわるようなことも含めて、重要な面がいっぱいあるわけです。CO2の固定もあるし、人間が沐浴するとか、国土保全からいえば、人工林を放置しておって、強風で倒れる、風倒木として、それらが流出して洪水被害を拡大するということも含めて、森林の管理というのは重要ですけれども、殊我々が治水の対象とする異常洪水に対して洪水緩和効果を入れるということは、少なくとも治水計画を対象として考える水文学の立場からは、容認できないと私は考えております。
 以上です。
(委員長)  ○○委員にはまた最後にお聞きしたいと思いますが、ここまで聞いた段階で、ご感想なり質問がありましたら、お願いします。
(委員)  ただいままで聞いていた感想を率直に申し上げさせていただきますと、実は私、昨晩夜遅く、反対派の皆さんたちが出されている意見書を読ませていただきました。そして、今日、それぞれのお立場の皆さんたちのお話を聞いておりますと、なかなか私ども県にとりましては、何が是であるかということの判断がつきにくい。とりもなおさず、これは県民の皆様にとっても同じようなことが言えるのではないかという率直な感想を持ったところです。
 それから、○○先生のお話が盛んに出てきておりますけれども、何人かの先生がおっしゃっていらっしゃいましたが、たまたま地元の新聞社が先生にインタビューをしております。その中で実例として庄内川を挙げて、そして洪水緩和に森林保水力というようなものがどのように関係しているかという具体的な事例を触れていらっしゃいます。
 この中で、流域の森林の生長ということ、それから土壌が豪雨前に乾燥が続いているということ、それが蒸散や遮断、こういった機能をより発揮しやすくなっていき、洪水緩和にプラスになったと考えられるという実例を挙げていらっしゃいます。もちろん、このことが即球磨川流域の中に挙げられるのかどうか、そこのところはまさにわからない、私にはわからないところではありますけれども、そういったことが挙げられているという実態もございます。
 それからもう1つ、地中の動態、これは先ほど森林土壌の構造の中でC層の問題についてお触れになられた委員の先生がいらっしゃいましたけれども、地中の動態の研究は緒についたばかりで、河川流出への影響の量的把握までは至っていないと○○先生は言っていらっしゃいますので、そういった意味から言いますと、結論的なところで保水力を考慮すべきとしている学説も定量的に流量を何トン下げられるかを求める方法論を示せていない。
 また、考慮しないでよいという学説を出されている方々も、その根拠を示されてはいない、こういうふうに○○先生ご自身の意見が出されてきておりますので、私からいたしますと、学者間の中でやられていっていることを実際に計画を立てていくときに無視していいものかどうか、先ほどのところでおっしゃいました中に、工学的な判断で安全を求めることが必要と、そういうご発言もございましたけれども、無視していいものであるということかどうか、そのあたりのことが私は非常に気にかかるところであります。
 それから球磨川に関しての森林の状況、土壌的なことをお触れになられました。このことにつきましても、反対派の皆様たちの意見ではありますけれども、球磨川の状況というのは、大面積皆伐後は水道を通る地表流によって表層土壌の一部も流出しました。
 現に昭和38年、39年の豪雨では、川辺川ダム上流域において山津波、山腹崩壊が発生し、25名の使者を出しています。昨年9月の台風14号洪水でも川辺川最上流部の表土が大量に流出し、それが砂防ダムに堆積してというようなこと、球磨川では実際に表土が流出しているというような状況がございますので、本当にそこの土地の土壌だけ、現状の中の土壌だけというようなことを地質層だけで考えていくということではなくて、むしろ現実に表土がどうなっていっているのかということを考えないでいいのであろうかといったような、本当に今、専門の先生方のお話を伺いながら、どちらが根拠性を持って主張の裏づけができるのか、県民にもっとわかりやすく理解の方法を出していただかなければという感じがいたします。
 それから、一番最初の共同検証のことですけれども、共同検証の目的というのは、人工林と自然林においてホートン流が生ずるか否か、その発生量がどの程度であるかを調べるということでなされたものでありまして、土壌が森林伐採の影響を受けているかどうか、それを調べたりするものではないということは共同検証の中でも明らかでございますので、私たちはこういった土壌の問題ということを今後どのように考えていけばいいのか、私はお話を伺っていて非常に悩ましく思いました。
 以上です。
(委員長)  責任者としても、またこれだけ議論が出ると大変判断に迷うところだと思いますが、この委員会も学説の正しさをジャッジする場ではなくて、いかに球磨川のために安全な計画をつくるかということが主題だとは思います。
 もう何人かお聞きしたいと思います。○○委員のほうからお願いいたします。
(委員)  既にいろいろお話がありましたので、私は自分の専門の河川工学の立場からもう少しつけ加えたいと思います。今まで各委員が言われたことは理解できるというか、私もそう思うということの前提のもとでお話しします。
 私どもが治水問題を考えるときには、雨がどう降って、それが川にどう出てくるのかということ、出てくる量と、その出てきた量が具体的には河川の水位の形で、すなわち水の高さがどれぐらいになって川の中を流れていくのかということが、沿川に住んでいる人たちの安全を考えたときに一番重要だし、それが本質的だと思っています。
 そういう意味で、前回のこの委員会で、森林の保水力の共同検証についてお話を聞いていたときに、これはこれで大変すばらしい共同実験をやっていただいたし、その成果も信頼できるものと私は解釈しました。
 その結果は、資料にダム反対側と国土交通省側の解釈として出ておりますが、私は、今申し上げたように、雨が流量、水位となって川の中を流れてくるということを考えたときに、この共同検証は、雨が降ったときにそれが地表流となって流れるのがあるのかどうか、それも人工林か自然林かでどうかということについての議論をする上では大変意味があったと思いますし、それはそれで今後の課題も出てきたし、これからこれらの点についてはさらに学術的に詰めるところは詰めていけばいいなと思います。
 ただ、ここで間違いなく言えることは、対象とした規模の雨では、浸透量が大変大きくて、表面流は、たかだか1%以下だということです。あまりこれだけを議論していると、この実験結果は実際問題、すなわち洪水流とどこでどうつながるのということがわかりづらくなる心配があります。実は私たちが治水計画で対象とするのは、ここで扱った雨よりももっと大きな降雨量が対象になります。全部浸透しますよといったところで、いや、1%表面流出がありますよと言ったところで、これは最終的な治水計画の結論に直接的には結びついていかないと私は感じています。
 申し上げたいことは、もっと大きな雨が降ったときにどうなるのかということです。これに対する答えは、具体的にそういう大雨があって、それが川の中でどれだけの量出てきたのか、水位がどうなったのかから得られるということを各委員の先生方はそれぞれの言い方で言われたんだと思います。私もそのとおりだと思います。
 具体的に、雨を測るのはテレメーター雨量計で測ります。流量は大変な労力のもとに河川の各地点で観測しています。これにはいろいろな方法はあるんですが、浮子というものを流して測るのが一般的です。私も流量観測に何回か参画したことがありましたが、観測に大変な時間と労力をかけ、その結果の解釈にもまた十分時間をかけます。この流量がしっかり計れているということが、実はこの球磨川の問題の中で大変重要な意味を持っているのです。同時に雨についてもいろいろな大きさ、いろいろな地域・時間分布の雨が測られているということが重要であります。
 先ほど来、○○委員あるいは○○委員からもお話しがありましたように、降雨と流出流量を関係づけるものとして貯留関数法とかタンクモデルがあるんですが、きょうの資料を見て、貯留関数法は、いろいろな大きさの雨、それから降り方、そういったものについて、あるいは異なる年代のものも含めて、ほぼ説明がついているということで、そこのところは貯留関数法を用いて治水計画につないでいくということが重要であると思います。
 私は、共同実験の成果は成果としてこういう解釈ができますということを示すことが大切と考えますが、その後の治水計画につながるものとして、雨と流量の関係を貯留関数法でしっかり検討して、基本高水流量をどうやって出すのかというところが最も重要であると考えています。共同研究からは、森林の保水力につきましては皆さんが言われたことでほぼ説明ができるのではなかろうか。もちろん課題は今後さらに詰めていけばよろしいということです。
 基本高水流量を出すということは、その流量が川の中を流れるとき、川の中でどれくらいの水位になるんだろう、どんな水位になって流れるのかということ、これが実は一番重要なところなんです、具体的な課題としては。これを考えるということで、そのためには測られた流量と測られた雨との関係をしっかり関係づけて、それを治水計画につないでいくということです。
 私は河川工学を専門としておりまして、洪水については自分はどう考えるべきかに注意して委員会に出席しています。ここまでの球磨川の議論を聞きまして、雨の問題、森林の保水力の問題、流出モデルの問題、こういったものがいろいろあるにしろ、これまでのものを総合的に考えたときに、今回の資料3にまとめられた反対側と国土交通省側の両方を比べてみるときに、ここでなされている国土交通省の解釈が相当の説得力を持っていると考えています。そして、それを受けて基本高水流量の議論をしていただきたいというのが私の申し上げたいことです。
 以上です。
(委員)  1回目からこの場で出てきました57年7月の洪水のことですけれども、私、そこにおった現場の人間として、このときは断続的に梅雨の雨が降ったんです。そのたびに球磨川が増水しまして、溢水ぎりぎりまで行って、やっとで雨がやんで、災害にまでは達しませんでしたけれども、そのときの状況で、これ以上降ったら大変だなと。大変だなといいますのは、いわゆる森林も田畑も保水能力が限度に達しているんじゃなかろうかと。こういう状態でもっと降ったら即そのまま球磨川に流れてきて、災害に結びつきゃしないかなという心配をずっとやっていましたところ、案の定降りまして、溢水して災害が発生した、こういう状況を私は現場でもって体験いたしましたので、自然の保水能力にはやはり雨量との関係でおのずから限度があるということを感じております。
(委員)  私が言わせていただこうと思っていましたことは○○委員が非常にクリアにご説明になりましたので、取り立てて私自身は申しませんけれども、1つ、ちょっとお聞きしたいことがございます。
 といいますのは、森林の保水機能というものが、メカニズムが将来の降雨流出のモデルに反映されるということが望ましいわけでございますけれども、そういったものが今、流出解析のモデルと結びついていないということを認識する必要があろうかと思います。そういったものが将来パラメーター等々に反映されると思うんですけれども、私の質問と申しますのは、貯留関数法で現在、人吉のところが基準点となって求められております。過去の洪水で、萩原、以前は下流の基準点がございます。そういった地点のところでも洪水が、ハイドログラフが貯留関数法で求められるように河道あるいは流域のパラメーターを同定されて、求められるようになっているのかどうかということでございます。
 と申しますのも、例えばタンクモデルの評価地点が柳瀬というところで、どうも人吉というところではないですね。柳瀬ってどのあたりですか。
(委員)  川辺川の出たところです。
(委員)  人吉のちょっと上流になるんですか。
(委員)  そうです。
(委員)  貯留関数法の利点というのは、ほとんどモデルは同じだということを○○委員がおっしゃいましたけれども、ちゃんと各河道・流域でパラメーターが同定されていますと、各評価地点でハイドログラフが求まるということがあるわけです。ですから、もし柳瀬のところで評価が可能であるならば、タンクモデルの計算と直接的に比較できるのではないかなという気がしたわけでございます。
 一方、タンクモデルは流域全体、あるいはここの流域というふうに流域面積をぶっかけてやるものですから、パラメーターを同定して、すべてのサブ流域でもハイドロがその地点で求まるかというと、なかなかそれは難しゅうございます。したがいまして、タンクモデルでどうかというよりも、貯留関数法で一度柳瀬のところで比較してもらってはどうかなという気がします。
 しかし、きょう見せていただきました資料から判断しますと、幾つかの洪水に対して貯留関数法による洪水計算、再現がうまくできていると思いますので、将来といいますか、近々、基本高水等々も議論になりますけれども、そういったものは貯留関数等々で評価していくということが大事なんじゃないかなと思っています。
 以上です。
(委員)  ちょっとよろしいですか。今、○○委員からお話のあったこと、それから先ほど○○委員からお話のあったこと、ちょっと合わせて考えを述べたいと思います。
 今、○○委員から、そういう森林の水循環機能を組み込んだモデルがないのかということでございますが、これは森林が根っこから水を引っ張って、そして葉っぱで蒸散するというプロセスまで含めた、あるいは熱エネルギーの交換まで含めた、さらにはCO2の交換まで含めたモデルというのは出てはおります。
 こういう要素モデルと河川の流出をつなぐ分布型流出モデルといいますか、これをつなぐ研究が今盛んに行われているところでございまして、研究のレベルというのはそういう段階だと思います。
 先ほど○○委員のほうから庄内川の事例があって、○○先生のお話のように、要するに森林が水を使うわけです。蒸散によって使う。そのために土の中の水分量が減る。要するに乾燥する。そのために豪雨が降ったときの初期損失量が増えるというメカニズムも、今後ある年数たったときにそういう研究成果を使って算定することが可能であろうと思います。
 ただし、庄内川の事例で○○先生がされたのは、そういうことがあったのではないかという1つの科学的仮説でございまして、そういうことも考えられるという、今は科学的レベルはその段階であろうと思います。
 要するに、先ほど私は自分の発言のときに2点目で申し上げましたが、科学的理解が完全にならないと、こういう問題には我々は対応できないのかという地球温暖化の問題と照らし合わせながら申し上げましたが、私どもはある段階、レベルのところで、生命・財産の安全を保つための河川計画というものを決断する必要がある。その中に、今ある科学的知見でもって合理的な方法を見出すというのが、我々の責務だろうと思っております。モデルの状況、可能性ということはそういうことでございます。
 あわせて、○○委員から土壌の流出、なくなるほうのお話がございましたが、森林を伐採するとこれはなくなる可能性はものすごく高いわけです。これは前回にも申し上げまして、きょうも申しましたが、そのスピードは非常に速い。ですが、それが復帰するのにかかる時間、要するに土壌が再形成されていく時間というのは膨大な時間がかかります。その違いをよくご理解くださいということでございます。
 ですから、森林を保全するということは非常に大事です。間違いなく大事です。ですから、○○委員がおっしゃったように、そういう森林を保全するという価値観を我々は全国民の中で共有して、それを進めていくことは間違いない事実でございますが、過去、森林が伐採されて、土壌が仮にある部分流出したとして、じゃ現在、それがこの40年ぐらいの間に復帰して安全なレベルになっているという判断は、これは土壌が生成されていく時間スケールを考えると、とても考えられないということをご理解いただきたいと思います。
 その上で最後の点ですが、森林水文学の中でまだ論議がなされている最中、その中で私どもは判断していいのかというご見解が示されましたが、森林水文学の分野の方々は、森林あるいは林業というのと水文学を合わせて研究されております。ここにいる河川工学、河川水文学の研究者、専門家は、河川計画、要するに先ほど○○委員がおっしゃったように、最終的に安全な国土をつくるための学問の基本として水文学を、私もそうですが、勉強しております。
 そういう依拠する立場が違う中で、一緒のところは水文学という部分でございます。ですから、その見方、そこから出てくるアウトプットのとらえ方はおのずから違ってくると思います。私は今まで河川水文学の先生方、私以外の方の意見を聞いていても、森林の効果に関する共通した認識を河川工学、河川水文学の立場は持っているんじゃないかと思います。
(委員)  ありがとうございました。私が申し上げたかったのは、そういった物理モデルがどの辺まで進んでいるかということじゃなくて、将来、そういったものが洪水流出解析に用いられるであろうということを期待しているわけでございますが、そういった森林保全とかいう保水能力というものが、今、タンクモデルと貯留関数というモデルの中にダイレクトには反映されていないということを言いたいわけでございます。
(委員長)  一応反映しているんじゃないですか。
(委員)  パラメーターとしてはね。
(委員)  いや、○○委員がおっしゃるダイレクトという意味と、それをちゃんと反映しているという意味合いをとらえた場合には、反映していると思います。例えば、さっき流域の渇きぐあいとか、その前の森林が蒸散したりという形で、流域状態がどういう状態にあって、そこに雨が降ってきて、それで渇きぐあいの状態によって、さらにまたため込んだやつが飽和するまでの、その部分は森林土壌なり保水という、そういう概念を持った形で入っているということでございますので。
(委員)  流出率という形とか、いろいろなパラメーターがありますね。観測でパラメーターを幾らにすればいいのか。今の森林土壌の保水能力が観測等によって、それじゃ流出率のパラメーターを幾らにすればいいという、ダイレクトにそこにまだ結びついていないという話なんです。
(委員長)  委員長もその辺は見解がありますけれども、反映はしているんじゃないですか。反映の仕方のメカニズムがどこの係数に入っているのかといえば、それはまた少なくともタンクモデルで横から出たり下から出たり、あるいは貯留関数で一定にたまってくれば出てくる。何時何分に山の上で降った雨が幾らおくれて出てくる、あるいはこの洪水で出てこなかったというところに・・・・・・。
(委員)  ですから、そのパラメーターが切れるときに、観測した値、現場ではかった保水能力があるかどうかとはかったデータが、それじゃ、こういうデータだからモデル定数としてはこれを使う、モデル定数としてはこういうものがメカニズムとしては決定される、そういうものではないんじゃないでしょうか。
(委員長)  ちょっと誤解があるのは、水文学は、山が全部コンクリートで張ってあって、雨が降って出てきましたよ、木を植えたら出てきませんね、その差は求めていないんでしょう。だけど、あなたの言う点だと、そういうふうにやって、これだけあるよと見せないと世の中の人はわからないんじゃないのと言っている。
(委員)  そういうことを言っているんじゃないんです。結局はタンクモデルのパラメーターの同定の値です。それと貯留関数法のそれぞれのパラメーターの値が、今は実際の流出ハイドログラフでいろいろ同定しているというわけです。それが観測によって、保水力が今幾ら、浸透能は幾らという、そういう物理パラメーターを直接持ってきてパラメーターを同定しているわけではない、そういう話なんです。
(委員長)  要はメカニズムの中に入っていると理解していただければいいんじゃないかと思いますけどね。それを砂漠と比べるか、コンクリートの流域と比べて幾らだと、おそらく理学的な方はそういうことを言いたいのかな。おそらく○○委員には工学的と理学的とわかりにくい話でありましょう。何か水の通り道を細かいところへ入って調べてみようか、現実にはかった雨と現実に降った洪水でやってみようよというところの手法の違いじゃないかと思うんですね。ですから、保水力は入っているんじゃないでしょうか。
(委員)  もちろん入っています。
(委員長)  あまり神学論争にならないように。
 じゃあ、ちょっと一般の方。○○委員。
(委員)  先ほど○○委員のほうから、治水・安全に対して、工学的な判断をすべきだということに対して少し疑問を感じるというようなご発言があったかと思います。研究者の間で議論されていて、まだ統一的な見解が得られていないことを工学的な判断で無視していいのかということだったと思うんですが、工学的な判断ということに対してちょっと誤解があるのではないかなという気がします。
 というのは、要素技術として科学的に、例えば森林が生長しているとか、豪雨以前に乾いている場合には確かに効果があると言える。そういうあるきちんとした前提があれば、それに対してきちんとした結果というのが出てきます。ところが、実際は私先ほど言いましたように森林自体も変化するし、社会状況も変化する、熊本県が行政として森林にこれからすごく力を入れていくということですけど、それもおそらく将来にわたって一定じゃないだろう。そういうことをすべて考えたときに、治水・安全という面から実行できるように総合的に判断するのが、これが工学的な判断ということです。決して個々の科学的な知見を無視するということが工学的な判断という意味ではありません。
 そういう意味からいくと、国交省が出している200ミリまでは効果が期待できるというのは、これは実際のデータに基づいて出てきたものですから、工学的判断にはこれは十分使える材料だと考えています。
(委員長)  それでは、○○委員からお願いいたします。
(委員)  とても難しい議論が続いたんですが、要素的に考えるのか、どう考えるかは別として、2つ申し上げたいことがあるんです。
 1つは、資料3の6ページの総雨量と総流出量は非常にわかりやすいグラフだと思うんです。これと1ページは全く同じものです。このグラフが球磨川の柳瀬で観測されたということは、球磨川はあるいは特異例なのか、きょうの話を聞いていますと、森林の保水力というのはもう少し一般的な話、あるいは日本全土とは言いませんけれども、南九州あるいは四国ぐらいでも同じようなパターンになるかどうかを教えていただきたいというのが私の希望です。
 資料として整理するのは難しいから、すぐに用意できないかもしれませんが、ほかのよく似た流域面積の河川や流域であって、同じパターンが観測されれば、200ミリという蓋然性はすごく高まると思います。それが第1点です。それはお願いです。
 それからもう1点は、○○委員がおっしゃったように、森林水文学と河川水文学の違いというのは、治水の安全工学としてのときに森林をどれぐらい頼れるかというのがポイントだと私は思います。一番危険な状態の森林状態を前提にするのが、私は工学者ではないんですが、安全工学者の立場だという理解ができます。
(委員長)  ○○委員、ご意見がございましたら。
(委員)  よろしくお願いいたします。いわゆる森林の保水力ということに関して私は門外漢でありますので、それと途中で来たもので申しわけありませんでしたが、1点だけ、私の立場のほうから申し上げさせていただきたいことがあります。
 1つは、流域環境あるいは河川生態系の観点からということであります。先ほど○○委員がおっしゃられたので少し言いやすくなったんですけれども、いわゆる森林というのは保水という観点だけで保全云々ということが議論されるべきものではないということが当然あろうかと思います。すなわち、森林の役割あるいは機能という部分があろうかと思います。
 つまり、水量の問題だけではなくて、それに伴う土壌の流出といったことにおいて、河川のさまざまな生態系が影響を受けるということはあります。あるいは栄養塩類なんかの流出によって水質等にも影響を受けるという観点、こうした点からも河川環境に非常に大きな影響を受けるということがありますので、今後そうした議論を加えていっていただければということで、これは1つお願いということであります。
 以上です。
(委員長)  ○○委員、ご意見がありましたら。
(委員)  森林保水能力に対しての専門的な意見はないんですけれども、1つの考え方として、これは河川整備基本方針の検討委員会ですが、河川行政の一環として必要なということですが、特に委員会では河川工事なり河川の維持についての基本となるべき方針を定めるということで、高水流量なり高水位、あるいは正常流量という基本的なものを検討される委員会だろうと思いますが、河川行政ですから、現実論としては科学的な調査研究とは違って時間的な制約があるということだろうと思っております。
 その中で総合的な検証、過去の自然条件の検証から将来のいろいろなことを考えて決めていかれるわけでありますけれども、現実論的には、我々が簡単に考えますのは、100分の1の計画確率の中での数値と既往最大、そういったものを考えながら総合的に決定していかれるというのが、私が今まで考えていましたのはそういうことだろうと思っております。
 今回、科学的な調査研究のいろんな個別論が出てきておるわけですけれども、森林の保水能力の検証もそうであると思いますけれども、私は個別的な問題をいろいろやっていきますと、森林だけではなくて、先ほどコンクリートの表層が、ライニングされているかとかどうなっているかという問題とか農地の状況とか、りゅうしゅつに関してもいろいろなものがあると思うんですけれども、これを100%検証した上で、この河川の整備基本方針とセットでやっていこうとすると、先ほど○○委員も言われましたけれども、非常に時間的なタイムラグが出てくるだろうと。
 その中の判断であるということですから、いろいろなことを検討の一環として取り上げて検証してもらうのはいいわけでありますけれども、河川行政の一環としての河川整備基本方針であるわけですから、ある一定の判断がある時期にされなきゃいけないということですので、科学的調査研究を100%積み上げた中で反映するというのは、多少無理があるのかなという感じを持っております。
 したがいまして、行政は長い中にありますけれども、20年、30年の間での行政上の判断ですから、そういう面からいきますと、長い歴史的な経過の中では、ある一区切りした段階でありますので、100%の科学的検証との整合性をきちっとやるということではなくて、そういったことを参考にしながら現実的な対応をされる。そういうことでの議論がされていると感じますけれども、ちょっとそんな感じがしています。
 以上であります。
(委員長)  あらかたご意見が固まってきたように私は感じましたけれども、○○委員、現時点で取り上げることがございましたら、お願いしたいと思います。
(委員)  いや、本当にいろいろな議論が出ました。私は先ほどは河川水文学、治水計画の立場から言ってきたんですが、森林水文学の立場とは大きな違いがあります。1つ大きな視点の相違は、我々は、治水計画というのは数十年というか100年に1回というような異常な豪雨、それに対する洪水を対象にして流域全体で議論しているということです。
 それに対して、こう言ってはまた語弊がありますが、森林水文の方々は、主に中小洪水を対象に、森林区域で起こる現象を対象に議論しておられて、今回は大きな立場の違いを感じました。
 私もこれまで両者の調整というか、森林の効果のような委員会にもたびたび出てきましたけれども、○○さんも言っているんですが、観測をして本当に異常現象が把握できるかというと、これは今までもできたことはないんです。100年に一度のような洪水のときには流量観測施設が流木や土石流で飛ばされて観測できないんです、実に。
 ですから、実際には観測できて実績が得られるのが一番いいんですけれども、それはほとんど不可能です。洪水の現象というのは非線形というか、比例関係にはないんです。雨が大きいときと小さいときの流域の反応が違うんです。やはりそこには現地で起こっていることを観察して異常現象に対する認識をするしかない。
 だから、そこはある種のモデル志向といいますか、異常時の様々な傍証からメカニズムを想定しなければなりません。そうした傍証として指摘したかったのは、先ほどちょっと忘れたんですが、参考資料の1−1の6ページに、前回お示しいただいたんですが、昨年の山地崩壊の状況です。これを見ると、これは人工林、自然林、そんなに差がなく両方で崩壊が起こっているということで、少なくとも地表を覆っている自然林か、あるいは人工林かということによって、崩壊が同程度だということは、いくら森林をよくしても、それより深い現象、地層が飽和して崩れるという現象、これが異常現象なわけですが、球磨川上流域ではそれに対しては見るべき差異がない。地表を、森林をどうしようかということよりももっと激しい現象というか、土地を飽和させるような現象だという理解をするというのが我々治水の立場です。森林の方々もやっぱりその辺をちゃんと目を向けてやっていただきたいというのが、僕は長年その分野の人たちとつき合ってきての率直な感想です。
(委員長)  それでは、最後の段階で○○委員からもご意見を。
(委員)  きょう、いろいろとお話を伺ってまいりました。○○委員、○○委員がおっしゃいましたけれども、河川整備基本方針というのは長期的な観点の中で整備されていく性格のものであります。研究成果というのが、現状の段階では知見がいろいろと集まっている段階にある。しかし、安全性、命と財産を守るというための計画の中で、どれぐらい研究成果を現時点の中で反映させていくのかというのはなかなか難しさもあるのではないか。そういった点の共通があったと思うところです。
 最近の森林水文学の分野、これは○○先生だとか○○先生だとか、あるいは○○先生、こういった方々のホームページの中等を見てまいりますと、最近の森林水文学の分野では森林の保水力と洪水流出への影響について、私はよく専門的に理解する力はないんですけれども、新しい研究が次々と行われているという感じがいたしますし、定量的にも多くの成果が得られていると思います。
 そういった前提に立って、今後この河川整備基本方針ということに、保水力の河川流出の影響、これが明確に数量化できないという先生方のお話というふうに私は理解したところでありました。そこで長期的な河川整備の基本的方向性を定めるという中で、今あった論議と、それから森林にかかわる水文学の方々の意見と、反対派の皆さんたちが出されている意見、こういったものを、さりとて全く無視したという形で今後の基本高水流量が考えられていっていいのかどうか。そこあたりは私としては今の状況の中では釈然としないものがあります。これは私の感想であります。
 それで、もし皆様方の総体としての意見の中で、今出されたように、森林の保水力が基本高水流量、ここの中で明確に数量化できないということの中で結論づけられていくという方向であるとしますならば、私からの要望といたしましては、○○先生のほうが出されていらっしゃいますように、双方とも決定的な論拠性、それが今時点では見出せないのではないかというご指摘もございますので、今後の知見等々が重ねられていく中で、これは見直しということもあり得るという認識の中でとらえていかざるを得ない。
 そしてまた国土交通省には、そういった点で今後、この点について見直しすることもあり得るのかどうか、その点のことも私は伺わせていただきたいと思いますし、委員長にもぜひその点の将来展望の中でどのように現状を位置づけていくのか、その辺のこともぜひ伺いたいと思います。
(委員長)  委員長はあまり発言しませんでしたので。要するに結論は、必要とあらばどんどん見直すということだと思います。今、議論になりました、前回理学的手法と工学的手法と言いました、この手法の視点が真っ向から衝突して、おそらく○○委員には非常にわかりにくい論争になったと思います。
 これは視点が全く違って、理学の視点というのは真実の探求なんです。降った雨がどういうふうに地中にしみ込んでいくのか、メカニズムを細かく明らかにしたい。それが目的で、したがって浸透はやりたいし、そこで樹種がどうのこうの、土壌が、A層がどうの、B層、C層でどうの、こういうことに発展しておりまして、まだ解明段階のお話だと私は承りました。ダムの反対とかは別として、これが解明されないと、やっぱり結論は出ないんじゃないのという思いが非常に強いのではないかと思います。
 工学のほうは、そのメカニズムは正直言って、さっき○○委員は、どこに係数がどう潜っているのというんですけれども、過去に降った雨をここでちゃんと観測した、出てきたことは間違いなく観測した。その間の関係を、経験則かもしれませんけれども、貯留関数法なり、タンクモデルなり、どっちが正しいかは別としてメカニズムとしてとらえる。そのときにも森林は保水していたはずだぞというのが資料3の1ページのグラフで、一定量200mm、球磨川ではせいぜい200mmですね。多分白川ではもっと大きいかもしれませんし、阿蘇のああいう穴のあいたような土壌だともっとしみ込んでいるのかもしれません。そこは具体的な資料は、それぞれの川を見ればわかると思います。そういうことで、要は降った雨が原因であることは間違いなくて洪水が出てくる、その間のメカニズムは多少ブラックボックスであっても、洪水が出てきたという現象でその量を観測して計画をつくろうというのが工学的手法です。
 工学というのは応用ですから、治水対策に応用できる技術であって、降った雨がどう出てくるかというメカニズムはあまり本質的じゃない。そこが、学問の論点が違うので、それを真っ向で9回も住民集会ですか、おやりになっても、言葉が違うし、議論が違うし、視点が違うので、大変○○委員にはわかりにくくて、さらには県民に説明責任を果たしていないという結論になったんじゃないかと思います。
 先ほど申しましたけれども、どちらの視点が正しいかというのは、それは僕は学会でやっていただきたいと思います。森林水文学会でも土木学会の水理水文学会でも大いにやっていただいて、主張されている方は堂々とそこへ出て、自説が正しいということを観測結果を踏まえて、学説を定説にする努力をしていただきたい。
 定説にならなきゃこの委員会は受けつけないのかといえば、それは違うと思うんです。要はどういう視点でと言いましたのは、住民の生命・財産に安全なほうの学説だったら多少まだ学説段階でも取り上げると思うんです。どうもこの学説は、聞いていると、要は森林には保水力があるから計画は小さめでいいよというふうにどうしても聞こえちゃうんです。おそらく学説の主張者の視点が違うんだと思います。現段階では、もし小さいほうの学説をとって、やっぱり災害が出てしまえば、当委員会で学説をとった責任も出てくるので、現時点では安全サイドを考えざるを得ない。
 しかし、今おっしゃったように、堂々と学会で学説がはっきり定説になった段階では、どしどしと取り上げていくということは、○○委員のお考えどおりだと、私は思います。それは遠い将来でも近い将来でも、はっきりした段階でやっていけばいいと思いますし、事務当局にもそういうふうに要請していきたいと思います。
 そういうことで、いろいろな意見のある県民がございましょう。また住民の生命・財産に関係のあることでもございます。本時点ではこの委員会では、保水力がないとは全く言っていません。保水力はあるんですが、もっともっとあるぞというのにちょっとはてなと。中には、このまま放っておいたら保水力はなくなるぞということに近いご意見もありました。したがって、森林整備はしっかりやっていただくということは当然で、おそらくだれも争いがないところだと思います。
 私も、前に林政審議会の委員もやりましたけれども、河川と森林は喧嘩相手かなと思われていますが、私は森林の整備に国民の税金を使うことは当然だと。それは国民の宝であり、それを前提に我々は生きているんだからということで意見を申し上げたこともあります。ただ、それは現況以上に期待できるのかというところは、慎重に学問の分野で研究していただきたいし、立証活動もしていただきたいというのが委員長の見解でございます。そういうことで、本日は事務局の提案の保水力の問題について、現時点で、担保できるのはこの程度ではないかということで取りまとめたいと思うんですが、皆さんよろしゅうございますか。
 それでは、時間が過ぎてしまって、事務局が何回も洪水ピーク流量の資料を出しては議論が及んでいません。事務局も説明をもうちょっと短くしていただきたいんですが、申しわけないけど、目次だけちょっと読み上げて、皆さんに持ち帰っていただいて、次回に説明を聞くことにしたい。なお、そのときに質問をたくさん出していただいて、要は説明責任が果たせるだけの資料、ここで出された議論が住民に伝わる努力をしようと思います。目次だけ言っていただいて、次回はまた説明からスタートしたいと思います。
(事務局)  では、手短に。左上に資料4と書きました基本高水のピーク流量の検討についてです。
 1枚目は、基本高水のピーク流量の考え方で、一般的な基本高水のピーク流量の決定はこんなふうにやっていると。見直しの場合はこういうふうにやっている。それから3つ目、球磨川ではどうだろうかというのをまとめさせていただいています。
 2枚目は、雨の降り方によるピーク流量の違いというのは、これは前々回に委員のほうからご質問がございましたので、前に降っている雨が少ないとか、降り方で違うというものを用意しております。
 3枚目、基本高水のこの球磨川での検討をずっと順番にプロセスを踏んでおります。2にあります計画基準地点というのを、これは今まで2点としておりますが、1点で考えたらどうだろうか。3は、雨量確率手法による基本高水のピーク流量の検討の手順を示しております。通常、最近使っております一般的な方法そのままを単純に使ってみますと、こうなりますというプロセスを入れてございます。またSLSCなどを検証の値です。
 次のページ、4ページは、基本高水のピーク流量の検討につきまして、先ほどの前のページの続きで、雨が決まりましたら引き伸ばし、それから計算の結果の検証が右のような検証でございますというのが、一応全部次のページも含めまして用意しております。
 6ページは、そういう結果を踏まえて実際出てきます流量につきまして、実際左上にございますように、実績の降雨の地域分布、時間分布、それから引き伸ばし、流量結果というのを下の流れになります。その結果を右のようなことで、仮に80年に1回の洪水、100年に1回の洪水としてみますと、一番下にございます80年に1回だと、人吉地点1点の場合ですが、最大7,000m3/sぐらいになるのではないでしょうかというものです。
 7ページは、これを流量確率手法でも検証してみた結果でございます。これもSLSCなどの適合度も合わせての設定でございます。それから、流域がすごく湿潤で飽和していたときで検討したのが右側でございます。
 最後のページでございますが、これらを踏まえて、この中ではどうしたらいいかというので、とりあえず事務局の案としましては、一番上のほうの一番下でありますが、80年に1回の洪水の7,000m3/sというのでどうでしょうかと、そう考えるのが妥当かなという整理を書かせていただいております。
 以上です。
(委員長)  委員長から、いただいた意見書の中に球磨川大水害体験者の会からの意見書がございます。市房ダムができてから水害が増えたという趣旨だったかなと思いますが、これらは大変重要な意見でございますので、次回説明資料、あるいは補足の中でこの問題は1つ取り上げたいと思います。またほかの委員の方も次回に、あるいは次回で終わらなければ次々回になるかもしれませんが、できれば次回に質問事項等がございましたら、事前にご提出を願いたいと思います。
 時間も超過してしまいましたので、本日につきましては以上をもちまして議事を閉じたいと思います。
 各委員には、本議題につきまして貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。本日配付された資料も含め、お気づきの点がありましたら、次回以降の議論にも反映できるよう、あらかじめ事務局までご連絡くださいますよう、お願いいたします。
 最後に、本日の議事録につきましては、発言者の氏名を除いたものとし、内容について各委員のご確認を得た後、国土交通省大臣官房広報課及びインターネットにおいて一般に公開することといたします。
 本日の議題は以上でございます。


3.閉      会

(事務局)  ご審議どうもありがとうございました。
 次回の委員会は7月19日(水)10時〜12時、同じここの会議室で開催いたします。
 またお手元の資料につきましてはお持ち帰りいただいても結構でございますが、郵送をご希望の方には後日郵送させていただきますので、そのままお席のほうに置いていただきたいと思います。
 それでは閉会いたします。








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