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河川局

審議会等の情報 社会資本整備審議会河川分科会について


第50回河川整備基本方針検討小委員会

平成18年10月19日


出席者(敬称略)
委員長  近 藤   徹
委   員   綾  日出教

岡 本 敬 三
楠 田 哲 也
小 松 利 光
中 川   一
福 岡 捷 二
潮 谷 義 子


1.開      会

(事務局)   そろそろ定刻となりましたので、小委員会を開催したいと思います。カメラの方はご退席いただきますようお願いいたします。
 ただいまより、第50回社会資本整備審議会河川分科会河川整備基本方針検討小委員会を開催いたします。
 私、本日の進行を務めさせていただきます事務局○○でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 まず、お手元に配付しております資料のご確認をお願いいたします。本日の議事次第、名簿、配席図がございます。それから、資料目次がございます。資料1といたしまして、これまでの審議の流れ。資料2といたしまして、川辺川の住民討論集会の論点、それから論点の説明資料でございます。資料3といたしまして、現在の治水対策河道流量について。資料4につきましては、ダム反対の要因の一つとなった事項について。それから、参考資料が1から3までございます。管内図、流域図、特徴と課題ということでございます。また、これまでの資料につきましては、机の上に置いておりますが、別添のファイルといたしまして補足説明資料等を置いております。ご確認いただきまして、不備等ございましたらお申しつけいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
  それでは、本日はBグループでございます。○○委員、○○委員、○○委員、○○委員、○○委員、○○委員、○○委員、○○委員、○○委員はご都合によりご欠席されております。
 また、10月16日付で人事異動がありまして、事務局に交代がありました。事務局○○でございます。
(事務局)  事務局○○でございます。よろしくお願いいたします。
(事務局)  傍聴の皆様におかれましては、傍聴のみとなっております。議事の進行にご協力願います。  それでは、○○委員長、よろしくお願いいたします。


2.議      事

(委員長)  ○○でございます。本日は、委員の皆様にはご多用中のところご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 まず、議事に入る前に、地元の方々から意見書や要望書が来ております。既に配付しているものも含め、各委員にはこの場に用意しております。各委員におかれましては、意見書の専門的な分野についてはごらんになっている方もおると思いますが、あるいはこの議事の中で見ていただきながら、本日の審議に際しましては、これらの意見書の内容も踏まえてご意見をいただきたいと思います。
 それでは、議事に入ります。今回からは、計画高水流量についてご審議をいただきたいと思います。
 まず、計画高水流量に関する住民討論集会での論点と現在の治水対策河道流量について説明をいただき、引き続き、ダム反対の要因の一つとなった事項について説明をいただきたいと思います。
 事務局より説明をお願いいたします。
(事務局)  事務局からの資料説明の前に、私、事務局○○でございますが、これまでいろいろご審議賜りまして、厚くお礼申し上げます。
 これまでの議論で、基本高水のピーク流量というのをお定めいただきました。今回からいよいよ計画高水流量という分野に議論が移るわけでございます。また、ダムにつきましてはいろいろな方々からご意見をいただいております。こういった中で、河川局として治水計画を策定する上でダムをどういうふうに考えているんだという基本的な考え方を議論の前にお披瀝したいと思います。
 我々は、もとより国民の生命・財産を洪水からきちっと効率よく守っていくというのが国民から課せられた重大な責務であるというふうに思っています。そういう視点から、各河川の計画、治水計画を策定するに当たっては、ダムそのものが先入観としてあるんだと、ダムありきの計画を立てるんだ、そういうことがあってはいけない。または、もともと先からダムを排除して計画を立てると、こういった先入観は全く持たずに、堤防あるいはダムあるいは遊水池、さまざまなツール・手段を総合的に組み合わせまして、河川、その地域で最適な組み合わせを、経済性とか治水の効率あるいは環境面等々総合的に勘案しまして最適な組み合わせをつくり、それを計画にしていくというのが河川局のダムに対する基本的な考え方でございます。これからその審議に当たりまして、ぜひ河川局のそういった基本的な考え方をお含みおきいただきましてご議論いただければと思います。
 以上でございます。
 それでは、資料の説明をさせます。
(事務局)  事務局を担当させていただいております○○でございます。
 まず、資料1、A4のペーパーがございます。従来からの審議の流れをご説明してきたペーパーでございます。本日のペーパーでは、○の5つ目、計画高水流量の検討というところに四角囲いがしてございます。現在の治水対策の考え方と実施状況、河道流量について、本日はこの2点を中心にご説明をさせていただきたいと思います。
 それでは、説明に先立ちまして、住民討論集会での議論についてご説明をさせていただきます。資料2−1、2−2、資料2−3という3つの資料を使いながらご紹介をさせていただきます。資料、複数にわたりますので、あっちへ行ったりこっちへ行ったりするかもしれませんが、その辺はお許しいただければというふうに思います。
 まず、資料2−1の「川辺川ダムを考える住民討論集会」の、本日は治水のところの4の現況河道流量、5、計画河道流量、この点についてご説明をさせていただきます。
 資料をおめくりいただきまして、2−1の2ページでございますけれども、こちらのほうに4として現況河道流量、その次のページの3ページに5として計画河道流量、これらについての説明がございます。ご承知のとおり、ダム反対側というものと、国土交通省、推進・容認側という対比の形で紹介がされてございます。この資料につきましてはご承知のとおり、熊本県さんのほうで全体的な取りまとめをされました第9回の討論集会での資料ということになってございます。
 まず、現況の河道流量でございますけれども、ダムの反対側というほうに記載されています人吉地点でございますけれども、4,300m3/sそれから、現状でも堤防天端まで許容した場合、概ね5,400m3/sというふうにされてございます。また、八代地点では9,000m3/sというようなことで、実際には現況の堤防高が計画堤防高より70cm高く破堤しないというようなことで説明がされてございます。一方、国土交通省、推進・容認側のほうは、人吉地点につきましては3,900m3/s、八代地点については6,900m3/sというようなことになってございます。
 これらの説明につきまして、資料2−2、もう少し詳しい説明をさせていただきたいというふうに思います。
 まず、現況河道流量のダム反対側の人吉地点ということでございますけれども、資料2−2の4ページでございます。一番上の図7というところに、人吉地区の現況河道の最大流下能力というグラフがございます。これは、1994年の河道で準二次元不等流計算を人吉地点4,300m3/sということで設定をいたしまして計算を行ったものでございまして、このデータを用いまして、先ほどご紹介しました人吉地点で現況河道流量4,300m3/sというようなことで提示されてございます。それから、余裕高1.5m分ですね、すなわち堤防天端まで流れることを許容した場合には、ここに余裕高分がございますので、5,400m3/s程度の流下が可能だというふうにしてございます。その辺につきましては、1ページめくっていただきまして2−2の3ページのところにもそういう記載がございます。
 引き続きまして、八代地点でございますけれども、同じ資料2−2の9ページでございます。9ページの図14でございますけれども、八代地区の洪水の痕跡水位というのを示してございます。萩原地点の最大流量、1982年の6,950m3/s、それから1995年の6,600m3/s、これらの洪水の痕跡水位を示されてございますけれども、7,000m3/s程度がかなり余裕を持って流せるというようなことでございまして、計画高水では9,000m3/s流れるのではないかというようなことでございます。
 1ページ戻っていただきまして、8ページのところにその辺の記載もございます。真ん中あたりに現況堤防高と計画堤防高というところがございますけれども、先ほどちょっとご説明しました、この付近は現況堤防高が計画堤防高より0.7m以上高いから、8,600m3/s流下時の実際の余裕高は1.8m以上もあることになると。現況堤防の高さを確保した上で堤防の強化工事が行われる予定だというから、破堤の心配はないというようなことが書かれておるわけでございます。
 それに対しまして、国土交通省、推進・容認側の人吉地点3,900m3/s、それから八代6,900m3/sについての説明をさせていただきます。今申しました資料2−2の41ページでございます。
 こちらのほうに、まず上のほうに人吉地点の流下能力についてお示ししてあります。ここでは、河道水位シミュレーションモデル、いわゆる準二次元不等流計算法を用いた河道水位シミュレーションモデル、これによりまして計算をしておりまして、法令どおりに余裕高をとると、流下能力は3,900m3/sというような計算になっています。その計算の水位がここの表のところに載ってございます。ここで前提条件として、右のところに現況河道(河床整正後)と書いてございますが、これは平水位以上の、ふだん流れている水以上のところの堆積土砂等の掘削を行った場合の評価ということにされておりますので、補足させていただきたいと思います。
 それから、八代地点ということでございますが、6,900m3/sのご説明でございますが、同じく41ページの右の下にございます。この地区の堤防につきましては、現況堤防が完全な形ではないので、現況の能力を判断するときに、十分な安全性が確保されるところまでいわゆるスライドダウンというのを行っております。スライドダウンの概念は41ページの右のところに書いてございますけれども、計画の所要の断面が確保されている部分、これを本来の堤防とみなすということでございますので、やせた細い堤防の部分は下に下げるような形になりまして、本来の所要の幅だとかそういったものが確保できる、その高さのところを現況の流下能力の対象とするというような考え方でございまして、これから先ほど言いました河道水位シミュレーションモデルをあわせて計算いたしますと、この地点の流下能力が約6,900m3/sというような計算がなされてございます。
 現況河道流量の説明につきましては以上でございます。
 再び資料2−1の3ページのほうに戻っていただければというふうに思います。今度は計画河道流量についての説明でございます。
 計画河道流量につきましては、ダム反対側のほうからは、人吉地点では5,400m3/sというようなことで、八代地点につきましては8,600m3/s以上というふうにされてございます。一方、国土交通省、推進・容認側のほうでは、人吉地点で4,000m3/s、八代地点で7,000m3/sというふうにされてございます。
 この説明でございますけれども、先ほどの資料2−2を使いまして再びご説明をさせていただきますけれども、まず、資料2−2の15ページをお開きください。ここの真ん中に図11というのがございますけれども、これは現況河道を1980年洪水が流れたときの水位ということでございまして、先ほどと同じ準二次元不等流計算で行っているものなんですけれども、これでいきますと、5,400m3/s流すことが計画高水位の範囲内で可能であるというようなことでございまして、計画河道によりますと5,400m3/s流れるというような計算になってございます。
 それから、3ページ戻っていただきまして12ページでございますけれども、川辺川ダムの体系的代替案という中で12ページのちょっと下のほうの(2)人吉地区というところでございますが、現状でも堤防の天端まで許容すれば、概ね5,400m3/sの流下が可能であるが、安全性を十分に考慮して、1.5mの余裕高を持って流下できる河道断面を確保すると。そのために、計画河床高までの河床掘削を行い、未整備の堤防を整備すると。その場合の流下能力が5,400m3/sと、先ほど説明したとおりでございます。さらに、そこに市房の調節量200m3/sを加えて5,600m3/sというようなことが書かれてございます。
 一方、八代地点でございますけれども、次は同じ資料の21ページのほうに説明を進めさせていただきます。21ページの一番下の図15でございますけれども、川辺川ダムがない場合の八代地区の最高水位ということで、不等流計算を行ったデータでございます。これは萩原地点の最大流量8,600m3/s、これを不等流計算でやったものなんですけれども、これによりますと8,600m3/sを流しても計画高水位までは至らないということで、流れるというような考えでございます。
 同じ資料の2ページ戻りまして19ページでございますけれども、やはり川辺川ダムの体系的代替案の中で、(4)八代地区として、現行どおり、現況堤防の強化工事を行う。現況河道の流下能力8,600m3/s以上と。それに市房ダムの調節量200m3/sを加えて8,800m3/s以上というふうにされてございます。
 次に、国土交通省、それから推進・容認側の説明でございますけれども、ただいま説明しました資料2−2の46ページでございます。ここにございますように、人吉地区では河川沿いに温泉旅館やホテル、家屋が密集していると。特殊堤方式を用い、河床の地質特性等を考慮して可能な範囲まで掘削を行っても、河道で4,000m3/sを流下させることが限界というふうなことで、4,000m3/sとされております。
 八代地点につきましては、その下のところにございますけれども、前川の活用等により河道で7,000m3/sを流下させることが可能というようなことでされておりまして、今ご説明したようなところで住民討論集会のときに対比されているというようなことでございます。
 次に、資料2−3に移っていただきまして、今ご説明したところを改めてつづらさせていただいたペーパーでございますけれども、もう一度整理してお示しいたしますと、計画高水流量に関する論点としましては、ダム反対側としましては、現況河道流量、人吉地点で4,300m3/s、堤防天端まで許容した場合、5,400m3/s、国土交通省、推進側のほうは3,900m3/sということになっています。八代地点につきましては、ダム反対側が9,000m3/s、それに対しまして国土交通省、推進側は6,900m3/sということになってございます。
 一方、計画河道流量につきましては、人吉地点、ダム反対側は5,400m3/s、それに対しまして国土交通省、推進側は4,000m3/sということになっています。ここにちょっと注釈をつけてございますが、後ほどご説明しますけれども、40年代の計画は、環境調査等があまり実施されていないころに設定した断面であって、これから環境だとかそういったものに配慮すると4,000m3/sが限界ということが書かれてございます。それから、八代地点でございますけれども、ダム反対側は8,600m3/s以上ということで、それに対しまして、国土交通省、推進側は7,000m3/sというような対比になってございます。
 1枚めくっていただきます。今申しました住民の討論集会における計画高水流量に関する主要な意見についてということで、今後の議論のために、争点になっているというか、論点になっているところについて、あらかじめ2点ご説明をさせていただきたいというふうに思います。まず堤防の余裕高の話と、それからもう1点はこれまでの計画河床の考え方、この2点でございます。
 1点目の余裕高につきましては、堤防の余裕高まで許容した場合には、人吉地点で5,400m3/sを流下させることができるのではないかという反対側のほうからの主張を先ほどご紹介させていただきましたけれども、余裕高というものの考え方をそこに紹介させていただいております。堤防の高さというのは、堤防自体が法令で計画高水位以下の水位の流水の通常の作用に対して安全な構造ということが求められてございまして、そもそも余裕高の目的というのは、そこに4点書いてございますけれども、自然現象である洪水時の風浪、うねり、跳水等による一時的な水位上昇への対応。ちょっと下の写真を見ていただければ、洪水時のうねりというのが紹介されてございますけれども、こんなように、出水時にテレビで川の状況をごらんになられたことがあると思いますが、非常に風浪やうねりがあるということで、こういったものに対する一時的な対応みたいなものが1つの目的でございます。それから、洪水時の巡視や水防活動を実施する場合の安全の確保。それから、流木等流下物への対応。また下の写真の右側にありますが、今年の洪水のときの川内川での洪水の、橋に流木がひっかかって流下阻害が起こったときの状況でございますけれども、こういったものもありますので対応が必要だということで、余裕高の目的の1つとされております。そのほか、橋梁の桁下を洪水が安全に流下できるためのクリアランスの確保だとか、そういうものも含めまして余裕高を考えておるということをご承知おきいただければというふうに思います。
 もう1点、これまでの計画河床の考え方で、これまで計画河道まで掘ると言っていたのに、なぜそこまで掘らないという説明になっているのかということでございますけれども、旧計画の河道掘削につきましては、掘ることにはしておりましたけれども、地下水だとか温泉源だとか漁業だとか舟下りへの影響が懸念されておりまして、検討課題とはなっておりました。実際に大幅な引堤をしたりやっている中で、環境への影響だとか舟下りへの影響だとか、そういったものが懸念されてきておりまして、平水位以上の掘削については対応が可能なんですけれども、実際にもっと大きく掘削することについてはいかがかというような、深刻な影響が出るのではないかというようなことで掘れなくなったという説明でございます。
 以上、住民討論集会における議論を整理させていただき、それの補足の説明をさせていただきました。
 引き続きまして、現在の治水対策、それから河道流量についてということで、資料3のほうでご説明をさせていただきたいと思います。
 まず、現在の治水対策の考え方と実施状況ということでございますけれども、第1回の小委員会の場でも流域の概要としてかなりご紹介させていただきましたので、この辺は少しはしょりながら説明をさせていただきたいと思います。
 ご承知のとおり、上流部は、下流に狭窄部がある盆地部ということで、そこに川辺川などの支川が流入している、浸水しやすい盆地になっているということでございます。中流部は、河川沿いに極めて限られた生活空間の平場があって、そこに家屋が散在していて、これらをつなぐように国道やJRが存在しているという狭隘部でございます。下流部が、その狭隘部から出た扇状地、それからその先にあります干拓地ということで、その広大な土地を利用した市街地が存在しているというようなことでございます。
 治水に関する課題と方針ということで下にまとめさせていただいておりますけれども、1点目でございますが、上流部では、洪水を処理するため、狭窄部である中流部の流下断面の拡大か、さらに上流で洪水を貯留する必要があり、上流部の河道改修のみでは安全に洪水を流すことは困難というのが1点目でございます。2点目が、中流部の狭窄部では、先ほど申しましたように限られた平場が生活空間となって連続して存在していると。こういう平場がなくなってしまうような河道改修は避けなくてはなりませんし、その中を走っているJRや国道にも影響がないようにしなくちゃいけない。そういう影響のない水位以下で洪水を流す必要があるというようなことでございます。3点目でございますけれども、下流部の扇状地でございますが、扇状地という地形からしますと、一たび氾濫すると氾濫流が広がっていってしまうという地形特性でございますので、できる限り水位を下げるというのが基本でございます。また、堤防が切れてはいけませんので、堤防強化も重要だというようなことでございます。それから4点目でございますが、中上流部を中心とした流下能力不足、下流部をできるだけ水位低下させることが重要であることから、これらの上流において洪水調節を実施するというのが現在の治水対策の考え方でございます。以上を踏まえた上で、各区間の改修についてもそれぞれの地形や土地利用の特性に応じた治水対策を行う。それから、実施の途中段階においても、上下流の安全度のバランスを十分考慮して行うことが必要というような考え方で進めてございます。
 1枚めくっていただきますと、工事実施基本計画の計画高水位と基本高水のピーク流量。基本高水の流量図を上のほうに示させていただいております。下の水位の関係の図でございますけれども、平成17年の3月に測量しました直近の河床、これを用いました現況河道での計算水位というふうになっておりまして、ここに計画高水流量対応あるいは基本高水ピーク流量対応、こういったものが入っておりまして、ご紹介させていただきます。
 もう少し細かい各論になりますけれども、上流、中流、下流の現在の治水対策の実施状況についてポイントだけご説明をさせていただきたいと思います。
 上流部でございますけれども、人吉地区では、大幅な引堤を昭和40年、50年代に左岸側ですね、南に向かって実施しております。その際に特殊堤というのをあわせて採用しておりまして、非常に市街地が川に迫ってきておりますので、堤防用地の確保が困難であったことから、真ん中のところにございますけれども、計画高水位をほぼ背後地の地盤高に設定して、そこから余裕高分のところはコンクリート構造の特殊堤というのを設置しているというのが実情でございます。それから、実際にこれから掘削をするというようなところは、先ほども申しましたような環境だとか社会的な影響も考えまして、平水位以上の掘削というのを実施するというような考え方でございます。
 それから次のページでございますが、中流部でございますけれども、中流部は先ほど申しましたような舟下りだとかそういったものが行われている狭隘な谷間の空間でございますけれども、そんな中に平場に家屋があり、国道があり、JRがあるというような地形条件でございまして、いわゆる宅地嵩上げ方式で、その家屋を守ろうとして堤防を設置すると、守るところがなくなってしまうというような地形条件でもありますので、こういう宅地嵩上げ方式を用いた治水対策というのを実施してきております。また、未対策のところもございまして、頻繁に浸水被害に見舞われている箇所もございますので、これは県や地元と協力しまして、どんな手が打てるのか、そういったところについて今検討を進めているところでございます。
 次に下流部でございますけれども、下流部につきましては、昭和40年代に萩原堤防が洗掘されました。もともと萩原堤防というところは、ここからもう少し北に本流が流れていたところを、閉め切って川の流れを変えたところでございまして、我々の言葉で言いますといわゆる水衝部という水当たり部に当たりまして、深掘れだとか河岸の洗掘が起こりやすい、そういう部分になっております。実際に現地では深掘れというのが起こっておりまして、右の真ん中のところにありますように、深掘れ対策だとか、堤防をもっとしっかりしたものにするというような対策を実施してきております。それから、高潮対策という観点では、左のほうにございますけれども、昭和11年9月の台風18号の際に高潮被害がございます。それを踏まえまして高潮対策工事もやってきてございます。
  以上の対策をやってきてございますけれども、現在やってきている対策、少し時間がかかり過ぎるんじゃないかというご指摘がいろんな場でございます。それについて少し補足説明をさせていただきます。
 資料は6ページでございますけれども、まず、下流部の深掘れ対策に時間がかかっているのはなぜなんだということでございますが、これについての説明でございます。この深掘れ対策の区間、この施行期間は、出水期をやっぱり避けなくちゃいけないということ、それから、貴重なアユだとか多様な生物の生息等にも配慮しまして、11月から2月の4カ月に工期を限定してございます。それから、深掘れの著しい箇所では地上からの施工が困難で、台船を使うことがあるんですけれども、やはり台船がお互いに衝突するだとかいろんなことがあってはならないということで、台数が限られてくるというようなこともございまして、そういう施工上の制約から、やはり徐々にしか工事が進まないというような状況であるというご説明でございます。
 それから、中流部の改修でございますけれども、これにつきましても随分時間的にかかっているじゃないかというご指摘がございますが、中流部は、上流部、下流部と違いまして直轄編入されたのが後になっておりまして、昭和48年に直轄編入がされていると。それから、先ほどご紹介しました宅地嵩上げだとかそういう治水手法が比較的新しい手法でございまして、輪中堤あるいは宅地嵩上げ方式、こういったものができるようになったのが60年代以降ということになっております。さらに、この地域では、先ほどお話ししたように出水期での施工が難しい、あるいはアユの生息等にも考慮すると、施工期間が下流の場合と同じで4カ月間に限定される。こういうことがございまして、工期的に厳しいのと、実際に着手したのが日が浅いということが要件としてあります。またさらに、宅地嵩上げという方式を採用しますと、先ほども言いましたように狭い谷間の中での施工になりますので、仮移転地の場所を選ぶのにも時間がかかりますし、場所も限定されると。それから、嵩上げをするには地区住民の皆さんの合意を得ないといけないとか、用地協議だとか、それから契約をして、仮移転をして、工事をして、それが終わってまた再び本移転というような流れを考えると、やはり準備から実際の施工までに相当時間がかかるということもありまして、大体事業開始から3年から7年かかってしまっていると。そのために時間がかかっているというようなご説明でございます。
 それからもう1点でございますけれども、次の7ページでございます。一部のご指摘で、先ほどご説明しました萩原堤防のところで、ここが重要だということでフロンティア堤防というのをやると言っていたのに、それをやめたというのはなぜなのかというご指摘があります。それについてのご説明をさせていただきたいと思いますけれども、フロンティア堤防というのは、計画規模を超える洪水が生じた場合でも被害を最小限に食いとめるために、計画の水位を上回って堤防を越水しても、短時間であれば破堤しないで耐えられる機能の確保を目指して設計し、施工がされたものでございます。ただ、いろいろやってみたんですけれども、堤防が越水に耐えるという機能につきましては、全国的に見ましても、堤防の土質というのも千差万別でございますし、越流水深などに大きな影響を受ける。背後地の状況にもよるというようなこともございますし、こうした条件が一様でない一連の区間で、こういう越水に耐える機能を確保するための技術が完全には確立していなかったというようなこともございまして、全国で本格的に実施するというようなところまでは至らなかったというのが実情でございます。現在、越水に対して短時間で破堤しない堤防についての技術的な検討を進めているところではございますけれども、本格的な実施というところまでは至ってございません。
 この萩原堤防につきましても、平成10年度からフロンティア堤防という形で整備をしてはどうかということで堤防強化策として検討はしましたけれども、やはり先ほど言ったような諸条件が整わなかったこともありまして、その整備を見送ったというようなことでございます。ただし、だからといって、この堤防の強化が必要ではないということではありませんので、平成13年から14年度にまず深掘れ対策を先行させ、引き続き堤防の断面拡幅等の堤防強化を図ることとしているというようなことでございます。いずれにいたしましても、この地区、先ほどからお話をしているように非常に重要な守るべきところということでございまして、より強い堤防の整備に向けて技術的な検討を行っていくというような考えでございます。
 以上、現在の治水対策についてご説明をさせていただきました。
 これからは、河道流量についてということでご説明をさせていただきます。少し長くなりますが、お許しください。
 上流部における河道流量についてということで、まず、河床掘削による流量の増大の可能性はどうかということをご紹介してございます。先ほども少しご紹介しましたが、この上流の人吉等の区間におきましては、大規模な掘削を行うと軟岩層が出てきてしまうと。軟岩層が出てきてしまうということは、そこに河原だとか河床砂礫だとか、そういったものがなくなったり、その結果、瀬や淵がなくなって、非常に単調な河川環境になってしまうというようなことが懸念されます。それから、そういう環境になりますと、舟下りだとか観光だとかそういったことに関する魅力も低減して、地域の観光産業に影響を与えてしまうのではないかという懸念があるということでございます。下のほうの写真でありますが、尺アユというのは常々言われておりますけれども、こういったものの生息環境にも影響が出ますし、実際に一部、過去、砂利採取を行って軟岩が露出したところがございます。本川上流の明廿橋周辺ということでございますが、左下にありますけど、こんなような環境にずっとなってしまうというようなことであると、やはり環境上も問題が出てくるというようなことかというふうに思います。
 1枚めくっていただきまして、今の河床掘削の話を引き続きさせていただきますけれども、通常、川の中はワンドや淵や瀬や河原があって、その中で河川らしい多様な環境を内在しているというようなことでございますけれども、先ほど言いましたような掘削を行うと岩の露出する割合は非常に大きくなるというようなことで、こういった河原らしい環境にも影響が出てまいりますし、そのほかにも、河床掘削を行うためには河川の上下流方向に延々と行うというようなことにもなりますので、右下に技術的な図がかいてありますけれども、何回も分けて丁寧に掘削していかないといけない。それも、右岸、左岸分けて順番にやっていかなくちゃいけないという計画になりますので、やはり非常に長い工期がかかってしまう。それから、工事中にはやはり観光だとかそういったものにも影響が出てまいりますし、いろんな支障が出てくるというようなことがここで述べられてございます。また、河原の環境なんていうふうに考えますと、最近ではアダブティブなマネジメントといいまして、徐々に徐々に改変していくというのが望まれておりますけれども、そういったようなことを考えても、やはり工期は延びていくというようなことになろうかと思っております。
 次のページになりますけれども、10ページでございます。先ほどご説明した岩の露出の状況についてご説明いたしますが、現況河道、それから4,000m3/s対応河道、6,800m3/s対応河道ということでお示ししていますが、一番下のようなときには、先ほど私が申しましたように全面的に岩が露出していくような状況になってしまうということで、河川環境としてふさわしくない状態になるというようなことかというふうに思っております。
 次、11ページに参りますけれども、引堤による流量の増大の可能性について今度はご紹介をさせていただきます。川の底が掘れなければ川幅を広げるということでございますけれども、11ページの左上の図を見ていただきますと人吉市の中を流れている球磨川の状況がわかりますが、大体、左岸側は山付き区間というのがありまして、山が迫ってきているところがあります。ここで川幅を広げようとすると、山の側に広げるのは困難でございますので、右岸側ですね、北側に向かって広げざるを得ないというようなことになるのがわかるかと思います。そうしますと、市街地のほうに引くというようなことになりまして、大変多数の人家や重要な建物に影響が出てしまう。
 1枚めくっていただきますとそれがもう少し詳細にわかりますけれども、これがちょうど人吉市の中心街に近いところでございますが、引堤を右岸側のほうにやります。そうしますと、国道445号の両方にまたがりますいろいろな主要な地域の機関だとか人吉の観光の中心であります温泉旅館だとか、そういったところが軒並み移転の対象になってしまうということで、こういう重要なものもあわせまして1,300戸の移転が必要になってくるという大変な社会的な影響が出てしまいます。実際にこれが移転していくということを考えましても、どこに移転をさせればいいのかとか、そういう次の課題も実はございまして、大変難しい手法というようなことが言えると思います。
 次に13ページに参りまして、それじゃ、川幅を広げるのが難しければ、堤防を嵩上げして川の流れる断面を広げたらどうかというようなことでございますけれども、堤防嵩上げによる流量の増大ということを考えますと、やはり堤防が壁のようにでき上がりますので、特に先ほど言いました引堤のときにも出てまいりましたエリアが、堤防のちょうど川から見て裏側になりまして、堤防高から見ると大分低いところになります。
 ちょっと1枚めくっていただきますと14ページに図がございますけれども、堤防をずっと高くすると、堤防が高くなるだけならいいんですが、堤防を越えて川を渡って対岸に行くために橋が必要です。その橋も高くしなくちゃいけないということになりまして、橋だけ高くしても取りつけができませんので、そこに上がっていくアクセス道路もすりつけて上がっていくというふうになると、ここに見ていただきますようなオレンジ色でかいてあるところは全部道路が上がっていくと。高くしなくちゃいけない。それから、それに伴いまして、このグリーンの家も家屋を少し引いたり上げたりしなくちゃいけないというようなことになります。それからもう1つの問題は、道路だとか堤防に囲まれたエリアがまた窪地になりまして、一たび浸水被害だとかそういったものが生じたときに、なかなか水の抜けない、湛水の深い、そういう危険のあるエリアも発生してしまうというようなことになるわけでございまして、こういったことにつきましても大きな問題かなと思っています。
 ちょっと戻っていただきまして13ページでございますけれども、今申しました湛水深が深くなるという話でございますが、左の下に氾濫時の被害の拡大ということでご紹介してございますが、堤防を高くすることによりまして、万一、破堤した場合の湛水深は当然深くなるわけでございまして、それをシミュレーションしたのがこの図でございますけれども、このように危険度が上がってしまうというようなことでございます。以上のようなことから、後ほどお話を申し上げますけれども、この人吉地点では4,000m3/s以上の流量を流すことは困難というふうに考えてございます。
 次に、15ページでございますけれども、中流部でございます。中流部につきましては、約40kmにわたる山間狭窄部ということでございまして、その一方で、谷合いが観光地にもなっておる、奇岩・巨岩の舟下りが行われているというようなことでございまして、この地域をどういうふうに考えたらいいかということでございますけれども、現在あります国道だとかJR肥薩線、国道は1日8,000台の交通量があると聞いておりますし、JR肥薩線も1日32本の運行があると聞いておりますけれども、そういう地域の生活のかかった道路、こういったものが存在しておるものですから、計画高水を上げるとこれらをもっと高いところに移さなければいけないというようなことになります。したがいまして、延々とそういうことをするのはなかなか困難でございますので、そういうことの生じない水位で水を流す必要があると。それから、先ほど家屋の嵩上げ対策をやってきたという話もしてまいりましたけれども、それを例えば再嵩上げするとか、もっともっとたくさん嵩上げをしなくちゃいけないとかいうようなことになってもさまざまな支障が出てまいります。そういうことからいたしますと、後ほどお話しいたしますけれども、人吉地点で4,000m3/s、渡地点で5,500m3/s、こういうような流量以上を流すことはやはり谷合いでは困難だというようなことを考えております。細かく申し上げますと右のほうの図でございますけれども、ちょっと時間の関係がございますので、説明を割愛させていただきます。
 下流部におけます河道流量でございますけれども、16ページに参ります。先ほども申しましたけれども、下流は扇状地でございます。さらなる堤防の嵩上げは、先ほど言いましたような条件から避けるべきであります。また、この写真を見ていただければわかりますとおり、川沿いまで市街地が形成されておりまして、引堤をするというのも非常に困難な状況でございます。この萩原堤付近は以前、掘削をしてございますけれども、右側のこの図でございますが、一度掘削しましたけれども、再堆積していると。現在は安定しているというようなことですので、低水路を広げるとそれが安定的ではないということもありますので、そういう方法で河積の増大をするのは好ましいことではないだろうというようなことでございます。そういうもろもろのことからすると、現況の断面では8,100m3/s流れると。深掘れというのがあるので、その対策をしないといけないというお話をしましたが、そこを埋めてしまうと7,200m3/sという能力になります。それから、その埋め戻しを行った分は、左岸側の高水敷の一部を掘ることが逆に可能になるということを考えれば、約8,000m3/sは現在の計画高水位以下で流せるのかなというふうに考えておりまして、この地区では河道流量は8,000m3/sというようなことを考えてございます。
 以上ご説明してきたところをまとめさせていただきますと17ページでございまして、説明が重複しますので割愛させていただきますが、上流部につきましては、人吉地点4,000m3/s程度が妥当だというふうに考えております。中流部につきましては、渡地点で5,500m3/s程度が妥当。下流部につきましては、横石地点で8,000m3/s程度が目安だというふうに考えてございます。
 今の説明を行う際に、計画高水位からどういうふうに流量を出しているのかというところの補足説明をさせていただきますが、それが18ページ、19ページになります。
 河道の流量を出すには、河道の粗度というのを定める必要がありまして、どのぐらい摩擦があるのかと。それによって、たくさん流れたり、流れる量が少なかったりするわけでございまして、それを決める必要がございまして、それがあればそこの河道の流量が決まります。粗度係数の設定に当たりましては、計画高水流量相当の洪水の痕跡水位を、それが発生した当時の河道断面を用いた準二次元不等流計算で再現すると。それによって粗度係数を設定するということで、横石地点につきましては、昭和57年7月の洪水で痕跡水位等を検証してございます。それが真ん中の図でございます。それから、人吉地点につきましては、平成7年7月の洪水、それから平成16年7月の洪水、この2つの洪水で痕跡水位等を検証してございまして、こういったことから粗度係数を設定して、先ほど言いましたような値を求めてございます。
 もう1枚めくっていただきまして、計画高水位と計算水位との関係ということで示してございますが、今言いました粗度を使いまして計画高水位ですね、ここまでしか上げられないだろうというような水位、そういったもので考えまして、さらに、上流部につきましては平水位以上の掘削等を実施すると。中流部については、荒瀬・瀬戸石ダム上流の堆積土砂を除去する、あるいは河岸樹木を伐採する、それから国道・JR・家屋に影響のない範囲で計画高水位の見直しを行うと、こういうようなことをします。下流部につきましては、深掘れ箇所の埋め戻し、高水敷掘削を行う。こういう条件を与えまして計算しますと、ここに出てきますような計算水位になりまして、先ほど申しましたように、人吉4,000m3/s、渡5,500m3/s、萩原で8,000m3/sの流量を流すことが可能だということがこれでわかるかというふうに思います。
 少し説明が長くなっておりますが、もう1つ資料がございますので、簡単にご説明をさせていただきたいと思います。資料4でございまして、「ダム反対の要因の一つとなった事項について」というようなことで振ってありますが、前回の小委員会の際に委員長から、水害の被害者の体験から出た意見、それに十分な説明がなされていなかったのではないかというご指摘がありました。主なポイントといたしまして、市房ダムの放水が水害を招いたのではないかということに対する説明、それから、矢黒地区について解消すれば、今後、被害はなくなると聞いていたんだけれどもという、2つの点、お話がありました。その点の資料を準備させていただきました。
 何回かご説明したところでございますのではしょらせていただきますが、市房ダムができてから水害がひどくなった、特に昭和40年7月の洪水の際には増水の速度が異常に速くて、ダムの放水が原因ではなかったかというようなご指摘がございます。それから、洪水の最中に広報宣伝車が回ってきて、放水するんだというようなこともあったというようなこともございまして、それについてのご説明をさせていただきます。
 昭和40年7月2日、3日の市房ダムの操作状況でございますけれども、右側の一番上のグラフがそのときの操作状況でございまして、流入量がふえてきて洪水調節を開始し、流入ピークが862m3/sですけれども、そのときにダムには300m3/s以上ためまして、放流量521m3/sというのを流したということでございます。実際には、その後も普通ですとその流量をそのまま流し続けるんですけれども、下流で少し水位が高かったということもありまして、絞りながら放流したという、そういう操作をやられております。
 1枚めくっていただきまして、貯水位のグラフがございますけれども、昭和40年7月2日から3日の市房ダムの貯水位でございます。これを見ていただきますと、今の洪水調節を行った際の市房ダムの貯水池の水位の状況がわかります。洪水調節を行った段階からやはり水をためますので水位がどんどんどんどん上がっておりましたけれども、ピークを超えまして水位は下がり始めています。このときには、サーチャージ水位というのがもっと高いところにあるというのがわかるかと思います。283の辺にサーチャージ水位がありますけれども、貯水位は281まで行っておりません。ですから、貯水池を全部使い切らないうちに洪水調節を終えておりますけれども、したがいまして、一部に、市房ダムが2時から3時の雨で満杯になって、放流をして下流にどーんと水を出したんだじゃないかというご指摘がありましたけれども、そういったことはなかったというのはこれからもわかっていただけるんじゃないかというふうに思います。
 それから、1枚戻っていただきまして、右側に3つ図がありまして、一番下の図でございますけれども、このときの流出状況でございますけれども、青いのが川辺川からの流量でございまして、これを見ていただきますと、初期の間からずっと川辺川筋からの流出が非常に多かったというのがわかるかと思います。市房ダムで洪水調節を行いましたけれども、全体的な効果量としては、やはり流出が川辺川のほうが大きかったこともあって、あまり大きな効果を発揮していません。その上の人吉地点の水位の状況の図を見ていただければそれがわかるんですが、市房ダムで洪水調節をして、20cmから二十数cmなんでしょうか、洪水調節効果で人吉地点の水位は下がっていますけど、先ほど言いましたように、川辺川からの流出が非常に大きかったものですから、その分の効果が総体的に見ますとあまり大きくなかったというようなことでございます。逆に言いますと、市房ダムの影響がどうのこうのというようなことじゃなくて、川辺川からの流出がものすごく大きくて速かったというのが、このときの水害を受けていらっしゃる皆さんの印象を生み出していたんじゃないかというようなことでおわかりいただけるのではないかというふうに思います。
 それからもう1点でございますけれども、3ページでございますが、「矢黒地区の改修状況について」というペーパーでございます。先ほども申しましたが、ダムと堤防をあわせて本来の計画であったはずなんですけど、その説明が十分になされていなかったのではないかというご指摘であります。住民の皆さんの中では、矢黒地区の改修が行われれば今後の被害がなくなると聞いていたという方がいらっしゃいまして、実際にはそうではないというご指摘でございます。計画の経緯をご説明いたしますと、人吉地点の計画高水流量は4,000m3/s、矢黒地点は4,400m3/sということでございますので、これはやはりダムを前提とした計画になっております。したがいまして、ダムとこの地区の河川改修のあわせわざで洪水対策を行っているというようなことになっているものでございまして、ここのところ、しっかりとした説明ができていなかったとすると、やはりそこのところは反省して、説明責任というのを今後しっかり対応していく必要があるというふうに思いますけれども、当時の説明につきましてはいろいろご指摘がありますが、事実関係は以上でございます。
 それから、4ページでございますけれども、「昭和40年7月3日の洪水における人吉地区の状況について」というペーパーでございますが、もう1つご指摘がございまして、昭和40年7月3日の洪水において、人吉観測所の洪水水位を国土交通省は6.7m、それと5.05mの2通り示しており、数値を改ざんしているのではないかというようなご指摘がありました。これにつきましては、観測所が、下の図にありますように人吉自記水位観測所というのと麓町水位観測所というのと2つございます。これらの場所が、先ほど言っているのは指している場所が違っていたということで誤解があったということで、一番下にありますが、2つの水位は異なる水位観測所で観測された最高水位を示したもので、ここの説明責任の話があるのかもしれませんが、2つの観測所があることによって誤解が生じたものというようなことで、実情はこうだったというご説明をさせていただきたいと思います。
 少し長くなりましたが、説明を以上で終わらせていただきます。
(委員長)  はい、ありがとうございました。
 ○○委員にはまた最後にお話を承りたいと思いますが、この市房ダムについては、現在、管理しているお立場でもありますので、もしコメントがありましたらお願いいたします。
(委員)  市房ダムのことにつきましては、今、国交省のほうから説明がありました。それと、私ども、県管理者としての責任も果たすために、いろいろな場面の中でその当時のことをお話ししてきたところです。しかし、ご承知のとおり、地元の方々には、この市房ダムにかかわる操作上の懸念というのは払拭されていないというのが現実でございます。私たちはむしろ、現況の住民の皆様たちのご指摘の中から実は大変学ぶところがございました。
 その1点は、やはり専門的な領域の中で操作がなされるということ、これはマニュアルに基づいてされておりますけれども、恣意的あるいは主観的、そういう形で操作がなされたわけでは決してなかったわけなんですが、それが果たして住民の皆さんたちにしっかりと説明責任ということでわかりやすく果たされていったかどうか、そのことがあります。私たちはやはり、わかりやすい言葉の中で事実をきちっと伝えていかなければならないという学びが1つございました。
 それから、サイレン・警報、そういったものが実は非常に増水していくところの中でなされたということによりまして、それもまた誤解を生じさせていくという、水害の原因は市房ダムという疑念を与えてしまったという、そういったものを今回改めて感じさせられまして、管理者として県は、今後とも、ほんとうにわかりやすく、誤解を招かない内容、そういったものを検討していかなければならないんじゃないかというふうに大変実感したところです。
 それから、これは今回のことを通してなんですけれども、実は市房ダムというのがその周辺の皆様たちの生活から非常に遠いところにあったのではないか。むしろ、このダムの貯水量、放流量あるいは下流の水位、流量、こういったものの関係を正しく理解していただくために、やはり常日ごろから広報活動、それから消防団との協力体制の推進、それから市房ダムの現地見学会、こういったものを開催していくということも大変大事じゃないか。情報公開というようなことを進めていくということが大事ではないかというふうに思います。40年の7月洪水の市房ダムにおける結果というのを私たちは払拭していくことがなかなか困難な立場の中にありますけれども、しかし、ごく最近も市房ダムを操作して水量の調節等をやったわけですので、そういったときにもすぐ事務的な説明を重ねていくことによって40年7月洪水ということに対してもご理解をいただけるような、そういうプロセスをとっていく必要があるんじゃないか。逆に非常に地元の皆様たちから私たちも学ばせていただいたと。ほんとうに払拭できていない現実の中のもどかしさがありますけれども、今後ともしっかりと情報公開と説明責任を果たしていきたいと思います。
(委員長)  ありがとうございました。
 例えば、洪水調節という言葉だけでも一般の人にはわかりにくい。洪水を増やしているのかもしれないと思われる人もいるでしょうし、当局は減らしているつもりでも、住民の皆さんに伝わっていないかもしれませんね。ですから、大変貴重なご意見だったと思いますが。
(委員)  実は私も今回のこの委員会を通しながら、洪水という言葉の使い方が、私たち一般県民の中では、洪水というのは水があふれるという感覚の中でとらえていきます。しかし、国土交通省の資料の中での洪水という言い方は、必ずしもそういった感覚の中で洪水ということが言われていないということがすごくわかりました。私は実は、洪水という私のとらえ方が間違っているんじゃないかと思って、辞書を引きましたら、やっぱり辞書の説明も県民の感覚なんですね。ですけど、ここで洪水という言い方がされている中には違っているということに気づきました。
(委員長)  ご意見ありますか。
(委員)  住民の方々に、例えばどういう操作を行ったのかとか、そういった説明をちゃんとしていくという、非常に大事なことだと思います。ただ、この委員会で何度か市房ダムの操作、これによって発生した洪水――これによってというよりも、昭和40年の洪水についての情報、我々、こういう資料を何回かいただいているわけですけれども、こういった資料を拝見してみますと、私は、決してダムの操作が洪水の規模を助長したとかそういったことはないのではないかというふうに感じているわけでございますけれども、県のダムを管理するトップにいらっしゃる○○委員におきまして、市房ダムが昭和40年の洪水に悪さをしたのかどうかというふうなご見解をはっきりとしていただければ、我々としても、この議論、これ、毎回出てきますので、その辺のところをはっきりしていただくとありがたいなと思いますけれども、いかがでしょうか。
(委員長)  それはまた後ほどお話しいただくことにいたしまして、悪さをしたという言い方じゃなくて、事務当局から説明がありましたが、委員がおっしゃったのは、洪水という言葉が一般住民と河川工学者でも違っていますよ。この実例でも、「洪水調節を始めました。さらに、川の水が増えて、大変危険ですから」というのがモデルに書いてありますよね。そうすると、洪水調節というのは洪水を増やしているんだなと一般住民は思っていますよ。ダムの専門家は一生懸命減らしているんですけど、そういう説明責任なり、一般の皆さんの頭にわかるような説明をされてはどうですかというのが委員のご意見だったと思いますので。
(委員)  それも一部だと思います。
(委員長)  ええ。そういうご意見だったと私は承りましたので。
 それでは、今、新任の事務局○○さんで、大変明快にすばらしい説明をお聞きしたんですが、私、お伺いしておきたいのは、引堤のところで、資料3の11ページですね。これは「人吉市の中心市街地を含む約1,650戸の移転が必要」と書いてあるんですが、次の12ページのときに、事務局○○さん、1,300戸と言ったと思いますので、事務当局と打ち合わせて、後で正確な数字を教えてください。
 それでは、各委員のご意見を承りたいと思いますが、まず、○○委員のほうからご意見ありましたらお願いいたします。
(委員)  意見ではないんですが、ちょっとお教えいただきたいんです。堤防の余裕高のところは、工学的な設計では必ず安全率を見込むという、予想外の事象が起こることを想定して、あるいはそのほかの事故も想定しながら安全率を設定するということで、ここでは1.5mという想定になっていると思うんですが、その数値の根拠をちょっとお教えいただけたらというふうに思います。そういう意味では、例えばスーパー堤防なんかの場合に、水の浸潤線が出にくいケースの場合は低くなっているのかというのもあわせてお教えいただきたいと思います。
(委員長)  これは事務局からお願いいたします。
(事務局)  お答えさせていただきます。ただいま○○委員からご指摘のありました余裕高でございますけれども、河川管理施設等構造令という、河川の堤防だとかさまざまな施設の構造について定める政令がございますけれども、その中で、堤防の高さについて計画高水に加える値として余裕高というのが定められております。それにつきましては、計画高水流量に対して余裕高というのが定められておりまして、例えばここの場合のように5,000m3/s以上1万m3/s未満というようなところの場合ですと、その数値は1.5m以上というようなことで決められてございまして、厳密に言いますと、先ほど先生からご指摘のありましたいろんな計算をして出すということかもしれませんけれども、先ほど申しましたように、土質条件だとかさまざま不明なものがある中で、スタンダードとしてこういうところ以上の数値をとっておく必要があるということで定められたものでございます。
 それから、先ほど委員長からご指摘のありました数については、ちょっと私の読み間違いでございまして、1,650のほうが正しいものでございました。失礼をいたしました。
(委員長)  それでは、○○委員、お願いします。
(委員)  まず、今、○○委員からお話があった堤防の余裕高なんですが、この余裕高の目的の1つに、流木等流下物への対応というのがあるわけですね。実はこれからはこの点が非常に大事だというふうに考えています。というのは、最近の降雨強度の増大によって非常に多くの流木が発生している。特に川辺川流域でも、去年の台風14号のときに上流部で非常に多くのがけ崩れ、斜面崩壊等が起こっていて、この次に大きな出水があると非常に大きな流木が流れてくるんじゃないかということが考えられます。この余裕高のところに、今年の7月の川内川の橋のところに流木がとまっている、この写真が載っているんですが、実は今年の7月の川内川は比較的流木が少ないほうだったんですね。鶴田ダムにたまっている流木を見ても、最近のいろんな洪水災害のときに比べてまだこれは少ないほうで、実は昨年の台風14号のときの耳川流域とか、それから平成15年の北海道沙流川とか、最近、非常に多くの流木が流れてきています。これが橋梁等にひっかかるとせき上げが起こって、本来だったら流せる計画高水以下の水をも流せなくなると。で、越水等が起こる可能性が出てくるということで、この余裕高というのは、今後ますます余裕高の重みというのは増えてくるというふうに考えています。ですから、この余裕高まで含めて洪水を流すというのはとんでもない話であって、余裕高というのはあくまでも余裕高として確保しておかなきゃいけないというふうに考えています。
 それからもう1つ、ちょっとこれは質問なんですが、市房ダムのこの資料の左側の下の図です。1ページ目の左側の下の図です。昭和46年と昭和57年の洪水の場合なんですが、最大流入量が計画より低いんですね。ところが、最大放流量が計画より大きくなっているんですけど、これは一体どうしてだろうかと。もしわかりましたら、後で結構ですから教えていただきたいと思います。
(委員長)  じゃ、これは後で資料でですか。今、答えられますか。
(事務局)  46年8月と57年7月の件ですけれども、このときは非常に出水量が多くて、市房ダムにおきまして、いわゆるただし書き操作というのに移行しております。要は、貯水容量を超えてオーバートッピングをしそうな可能性があるときには、ある段階から放流量を増やしていくという、いわゆるただし書き操作というのに移行するわけでございますけれども、その関係がございまして、最大放流量の650m3/sから放流量を増やしていった措置がとられておる関係上、この2つのところでは本来の操作規則上の650m3/sを上回る放流をしておるということでございます。
(委員)  これ、最大流入量が計画の最大流入量より小さいんですけど、この場合もただし書きになったということですね。
(事務局)  実際には貯水量でただし書き操作に移行いたしますので、計画のパターンとは違うパターンで流入量が入ってくることがありまして、そんなにピークは立たなくても貯水容量を食ってしまうようなケースもありますので、一概にそこまで行かなくてもただし書き操作に移行することがございますので、この場合はそういうケースでございます。
(委員長)  ただし書き操作って業界用語なので、次回、丁寧に説明してください。資料を提出して。その場合の大原則はどうなっているのかも含めて資料をつくっていただきたいと思います。
 では、○○委員、お願いします。
(委員)  まず、萩原堤防の整備でございますけれども、これは洪水というのは待ったなしでありますので、緊急に対策はやはり講じる必要があるということで、ここの整備に書かれていますような対策を緊急にも実施していただきたいなというふうに思いました。そのときに、この地点にはベーン工がたしか設置されていると思うんですけれども、若干、例えば水制なんかも併用することによって、また整備した後の局所洗掘防止等が図れるのではないかというふうに思いますので、この辺のところ、何か水理模型実験ではないですけれども、そういった検証をしていただければどうかというふうに思います。埋めたわ、また洗掘されるわという繰り返しというのもなかなかばからしい、手戻りがあるといいましょうか、もったいのうございますので、その辺のところを工夫していただければというふうに思いました。
 それから、人吉地点でございますけれども、ここでやはり重要になるのは河床の掘削の問題かと思います。現在、瀬と淵の非常に良好な河床形態があるというふうなことでございますので、なるべくこういった良好な河床の形態は残せるような整備を行っていただきたいというふうに思っております。一度こういったものを破壊してしまいますと、そういった多様性のある河床をつくるのもなかなか時間がかかりますし、ましてや生態の再生につきましてはさらに時間がかかるというふうなことでございますので、この辺の掘削の問題については、極力そういった環境の影響のないようにしていただければというふうに思います。例えば6,800m3/s対応ですと全面的に軟岩が出るというふうなことでございますので、これは見た目にも人吉という良好な観光地においてはまずいでしょうし、ましてや環境等々にも悪いというふうに思います。また、こういった軟岩が全面的に出ますと、将来どういうふうに河床変動が起こるのかというのも予測がなかなか困難でございますので、なるべくそういった岩が全面的に出るというふうなことは避けていただきたいというふうに感じました。
 それから中流部でございますけれども、渡地点の5,500m3/sという計画高水、これ以上上げるということになりますと、今までの整備との整合性の問題、また、手戻りが非常に大きくなるというふうなことを考えますと、ここで計画高水を上げるというのはやはり妥当ではないというふうに感じました。
 以上です。
(委員長)  では、○○委員、お願いします。
(委員)  幾つか申し上げたいことがあります。
 まず、冒頭に事務局○○さんから治水の基本方針につき考え方を伺いました。ダムがあるとかなしとかという先入観にとらわれずに、河道に、あるいは流域に、一番ふさわしい組み合わせで治水を考えるのが基本であるとのお考えでしたが、私も同様に感じています。
 また、先ほど○○委員から洪水の定義について問題提起がありました。すなわち、住民、河川管理者、私ども河川を勉強している者の間で、洪水をどのように定義するべきかについて混乱があるというお話がありました。この基本方針の小委員会でも、洪水と洪水氾濫を区別しないで使ってきた経緯があります。今から数ヶ月前の委員会であったと思いますが、その委員会から河川整備基本方針の記述の中では、洪水と洪水氾濫を分けて使っております。○○委員が事前に調べられたという例えば広辞苑とか、国語辞典を私も調べました。「洪水」という言葉は、人や車が洪水のようにあふれると表現されるように、広辞苑等でも、洪水は、水があふれることと説明されています。これは、ヨーロッパ、大陸の河川には堤防がほとんどなく、人々が住んでいるところは河川の水面よりも十分高いところなんです。したがって、洪水の水位が徐々に上がってきて人里にあふれるわけです。ですから、洪水というのは水があふれることをいう、おそらくヨーロッパの辞書の翻訳による、ヨーロッパの解釈から来ているんじゃないかと私は思っています。日本の場合は、一級河川には堤防がありますので、洪水というのは、雨が降ることによって平常時よりも河川の水位が上昇する現象であると定義できます。もう1つ大事なことは、洪水は悪い作用を引き起こすものではないということです。すなわち、洪水は自然現象で、それ自身のダイナミズムとして大変大事な現象です。それが洪水氾濫と混同して使われるものですから、洪水が悪者のように言われています。洪水があるということは自然現象として受け入れて生活し、このことが川の生態系にとっても重要となっているわけです。洪水流が河川からあふれないようにするというのが、治水の基本です。このような背景から洪水の意味をしっかり考え、河川整備基本方針の記述でも洪水氾濫と洪水を分けて使っております。委員が先におっしゃられたことは、世間では確かにそのように受け取られているようです。今後、洪水と洪水氾濫の違いをしっかりと区別していくことが必要であると強く感じました。
 次に、きょう配布された資料について幾つか付加説明お願いも含めまして意見を述べたいと思います。
 まずは、人吉区間の河道をどうつくるか、特に河床の掘削の考え方について、反対側の意見と事務局の意見に明らかな違いがあります。また、特殊堤の余裕高をどう見るかということでも違いがあります。余裕高は、堤防の計画上の余裕ではなく、構造上の余裕ということで考えていかなければなりません。地盤高とハイウォーターがほぼ同じだから余裕高部分を使って洪水を流せるという反対側の意見は、堤防前面の河床が洗掘を受けていなければ、堤防はかなりの安全性を持っているといえるでしょうが、しかし、この人吉地区に関しましては、必ずしもそれは該当しないケースになっているということを最初に申し上げたい。
 それは堤防前面の川底の高さと川底を構成する軟岩の強度の問題に関係があります。きょう提示された図は、非常に小さくわかりづらいので、人吉区間の現況の河床高がどうなっていて、現在の河床の下にある軟岩がどの位置にあるのかを次回の委員会で示していただきたい。河床の平面図を示す、資料3の10ページの図は、現況河道と4,000m3/s対応河道、6,800m3/s対応河道の河床を示します。この図によれば、現況河道でも既に軟岩が一部出ています。しかも、この区間は特殊堤区間です。日本の川では、この軟岩が河床表面に露出したことによって、その後の河道の維持、堤防の安全性確保に大変な労力と維持費を要しています。
 具体の例で言えば、多摩川水系の多摩川と浅川です。多摩川では、昭和30年代、40年代に河床の砂利を採取し、川から外に持ち出しました。本来あるべき河床の砂利を持ち出してしまったために、あちこちで軟岩――多摩川では土丹と呼んでいるんですが――が出ています。これが出たために、土丹部分が洗掘され、そこに流れが集中します。とりわけ堤防際とか河岸際では、これらを守るために護岸をしますが、そこに水が集中してますます掘れていくことになり、堤防や河岸が崩落しないよう安全性を確保するために苦労しています。
 この図によれば、6,800m3/sの場合は全部軟岩河床となり、4,000m3/s河道でも、この人吉地区に関しましては一部露出します。多摩川と浅川に軟岩が出てしまったために、堤防と河川を横断する構造物の維持に大変お金をかけて、それでもなお危険を排除できないという問題を抱えていることを訴えたい。利根川水系でも同様であります。鬼怒川では、河床に軟岩が出て、滝ができるメカニズムと同じに、軟岩の浸食が上流にさかのぼっていったわけです。かたい岩が河床にあればそこでとまったはずなんですが、軟岩であるためにとまらないわけです。結局どうしたかというと、大がかりに床どめという横断構造物を川の中に作り、それ以上の上流への浸食を抑えたわけです。
 私がここで申し上げたいのは、4,000m3/s河道であっても軟岩が出ています。この黄色く描かれている軟岩の河床が少しずつ掘れていきます。人吉地区の堤防は、この軟岩の上に多分乗っているのではないかと想像されます。乗っているだけでは、堤防の基礎が洗掘を受けると安定が崩れます。長期的に見ると、洗掘が進行していくと、維持のできない場所も出てくる可能性があり、そこでは堤防が崩れることになります。人吉地区の特殊堤は、単に土の堤防をコンクリート護岸し、その上にパラペットが乗っているだけです。このため、下が洗掘され崩れると、パラペットも一緒に崩れてしまう。そういう被災は、球磨川の人吉地区で既に起こっています。ですから、河道の洗掘を簡単に考えないでいただきたい。自分の専門の立場から見て、この軟岩が出てきたときには、どうやって軟岩の洗掘を抑えるかというのは大変な問題だと思います。ですから、事務局は、この軟岩がどの場所に、どういう状態で存在しているのかを示す資料を、次回の会議で出していただきたいというのが1点目のお願いです。
 2点目は、8ページに明廿橋周辺の河床が示されています。軟岩が出ており、この上を水だけじゃなく砂礫が輸送されるために岩が磨耗し、溝が大きくなります。一たび溝ができると、そこに水が集中し、溝が大きくなります。よく岩の出ている川で、荒川など有名なんですが、凹穴といって、川底の岩に穴ができそこに石が入ると、流れから石を回転させるエネルギーを得て、さらに大きな穴を掘っていきます。これに比較的似ている現象です。明廿橋で既にこういう経験を持っている中で、人吉地区の河道が、イメージ図にもあるような、河川になっては、観光のため、漁業のために望ましくないのはもちろんですが、川の安全性、特に、堤防の安全を維持できなくなる可能性があります。この問題は、軟岩がどういう組成で強度はどの程度なのかをしっかり調べることが大切です。多摩川や浅川では、具体的にスレーキングテストや土丹を石と一緒に回して磨耗量を評価し、対応しています。これは、砂利をとったという以前の行為のために行った現象なんですが、ここはまだ河床に砂利があるわけです。やっぱり自然の状態で砂利が上流から来ていて、河床に砂利があるということ、それが健全な本来の川ですから、それをとってしまって軟岩を出しちゃうということは、上流から送られてくる砂礫によって磨耗しながらますます河床の深掘れを起こしていく危険な川になります。この河道がどれだけ流下能力があるのかという、ただ単にボリューム論じゃなくて、ほんとうに将来にわたって河道の維持管理ができるのか。河川管理者は検討が必要です。そこに住んでいる方々に「地盤高が高いから、比較的安全ですよ」と言うんじゃなくて、軟岩が出ますと「堤防が壊れる可能性があります」ということを示す必要があります。そこのところをよく調べて、資料を出していただきたいというのが私の2点目のお願いです。
 3点目は、先ほど議論があった余裕高についてです。確かに地盤高と高さの関係は重要です。河川管理施設等構造令等ではそう書いてあります。川の中の堤防の基礎に対して、前面の深掘れが安全性にどんな影響を与えるのかが、堤防と余裕高を考えるときに大事になるので、この点についてよく考えていかなきゃいけないなと思います。余裕高の検討の必要性については、この委員会でも幾度も申し上げているところです。
 4点目は、12ページを開いていただきたいんですが、私はこの写真を見まして、中川原公園は、洪水時の水位と流速にどんな影響を与えているのか大変気になります。この写真では、中川原公園の上流に土砂がたまり、下流にも土砂がたまっています。両側にもたまっています。ふだんはこういう状態です。この土砂の堆積は、洪水位の上昇を招くために、維持掘削しています。これは、中川原公園が流れに対して相当な影響を与えていると考えられます。資料として出していただきたいのは、中川原公園をはさむ上下流の洪水の痕跡というか、水面形がどうなっていて、中川原公園の存在によってどういうことが起こっているか、これのもたらしている影響を評価することが重要です。もっと言えば、この区域の堤防が特殊堤であるということで、地盤高が高いから水位が計画高水位を超えてもいいという議論がありますが、そうではないということです。この区域の堤防の根の深さが非常に心配です。堤防の根の弱さを助長するのは、中川原公園の右岸側に集中する土砂と水の流れによって、堤防の根元に相当の洗掘を引き起こしている可能性が高いということです。一洪水ではたいしたことは起こらなくても、何回か洪水が続くとそういうことになるでしょう。前回の会議に出た資料では、中川原公園の上流側では公園の存在が抵抗になりますから、水面が高まります。それが下流に行くと流れやすくなるものですから、水位が下がり、大きな水面勾配がつくんです。水面勾配がつくことによって流速が上がり、河床の洗掘力が増大します。中川原公園の影響を明らかにするために、洪水の痕跡から見た水面形がどういうふうになっているのか、今一度資料を出していただきたい。
 実は、18ページに水面形が小さく出ているんです。この図をよく見ますと、60kmから61km付近では、水面形が平らになっているんです。それから下流に大きな勾配がついているんです。私はこのことを指摘しているんです。ここのところをもっと大きな図面にして異なる規模の洪水の痕跡を出していただきたい。それが4,000m3/sを流れた実績のときにどうなっていたのかということを見せていただきたい。
 最後になりますが、萩原堤の改修についてです。計画としては、まず深掘れ部分を埋める。埋めるのは、その上に高水敷を造成をするための基礎にする。さらに堤防を厚くし強化する。そこでは断面が縮まるけれど、内岸側の土砂をとれば8,000m3/sは確保できるという説明でした。私は萩原堤の強化方法は、これでよいと思っています。この急激な曲がりの水衝部になっているところを強化した、堤体構造物によって内岸側に水を寄せ、流下能力を確保するという意味があります。これまで、幾つかの河川で同様な方法をとってきております。すなわち、それは堤防前面に水制を連続してたくさん置いた状態に相当する堤体の厚いものをつくるということで、水流を内岸側に向け、内岸に堆積している土砂を下流に流すという役割を持たせています。私はこのような前腹付けは堤体の強化とあわせて、萩原堤の強化に適していると思っています。
 これと関連して、その下流の、球磨川と前川の分流量をどうやって決めたのということと、どうやって分流を確保するつもりなのということで質問します。球磨川と前川はそれぞれ四千数百m3/sと3,500m3/s相当の流量が分かれて流れていくわけです。全国の川で、このような大流量を無操作でうまく流すところはあまりなくて、通常は何らかの操作をするわけです。しかし、球磨川では、今までの大きな洪水でも、両河川に4対3ぐらいの割合で流れている資料があれば、次回出していただきたい。前川のほうが河川の線形からしたら流れやすい平面形となっています。しかも、距離も短いということから、そちらのほうに水が流れやすい。それを4対3に確保するというためには、これまでの実績流量がどうであったのか、実績を出していただきたい。
 次回は資料によって、人吉地区の4,000m3/s河道は、しっかりした根拠があるんだということを示してほしい。人吉地区の河床の状態、堤防の構造を今後どう考えるのかとあわせて、十分に考察すべき重要な課題だと私は思っております。
 以上です。
(委員長)  それで、本日ご欠席の○○委員からはペーパーをいただいておりますので、議事録に載せる都合もありますので、事務局のほうで読み上げていただけますか。
(事務局)  それでは、事務局のほうで読み上げさせていただきたいと思います。全文読むことでよろしいでしょうか。
 河川整備基本方針検討小委員会
 委員長 ○○○○様
 日々ご健勝のことお慶び申し上げます。
 また、球磨川水系の河川整備基本方針の策定に向け、これまで半年以上にわたりご熱心にご審議をいただいておりますことに、地域を代表する者の一人として、まずは心よりお礼を申し上げます。
 10月19日開催予定の第50回小委員会につきましては、誠に残念ながら諸般の事情のため出席することができません。事務局から予め送付された資料に予め目を通させていただいたところ、いくつか気になる点がございましたので、大変失礼とは存じますが、書面にて当方の考えを述べさせていただきます。
 球磨川流域におきましては、これまでの小委員会資料にもありましたとおり、昭和40年や57年の大洪水をはじめとして、今年までの3年連続で計画高水位相当の洪水に見舞われておりますので、球磨川の治水安全度の向上は急務であると考えます。
 その一方、球磨川は古からの農業用水の供給等により地域経済を根底から支えるとともに、「尺アユ」に代表される豊かな生態系を育む場、年間6万人もの方々が訪れる船下りのコース、温泉街に来られた多くの方の川べりの散策路など、この地域の基幹産業である観光の一大要素となっているのもまた事実です。
 4月の第1回小委員会でも申し上げましたとおり、私どもの地域にとりまして球磨川はまさに「暴れ川」であると同時に地域住民が愛して止まない「母なる川」でもあるのです。
 従いまして、球磨川の川づくりにあたりましては、当地域と球磨川のこれまでの非常に深いかかわりに十分ご配慮をいただき、できるだけ川の中を改変しないような形での一刻も早い治水安全度の向上を願いつつ、下記のとおり気づいた点をお伝えいたします。
 19日の小委員会の席上、ご審議の一端に加えていただければありがたく存じます。
 平成18年10月18日

 
○○市長 ○○○○

  記とございまして、3点ございます。
 1、河床掘削により上流部の河道流量を増大させる案につきましては、結果として岩盤が相当に露出することにより、地域のシンボルであり、また観光産業の中心である船下りやアユが大きな影響を受けると思われます。
2、堤防を引くことにより上流部の河道流量を増大させる案につきましては、結果として地域の観光の中心である古くからの温泉街など中心市街地の移転が不可欠となるなど地域経済に与える影響が甚大になると思われます。
 3、堤防嵩上げにより上流部の河道流量を増大させる案につきましては、万一、氾濫した場合の被害が拡大するとともに、橋梁への取り付け道路の嵩上げ等が必要になり、長期間に及ぶ道路工事により観光にも影響があると思われます。
 以上でございます。
(委員長)  それでは、○○委員のほうからご意見ありましたらお願いします。
(委員)  これは素人ですので、ちょっと教えていただきたいんですが、資料3の13ページなんですけど、堤防の嵩上げのところですが、1行目に「万一氾濫した場合には被害が大きく拡大することから堤防の嵩上げは治水対策としては基本的には採用しない」と、こういう表現になっているんですが、私どもはごく素人として、河川の整備は堤防を嵩上げするものだというふうに思っていたんです。これ、大分昔ですけど、石狩川が氾濫したときに堤防を嵩上げするという話がありました。これは、この「基本的」という意味をもうちょっと追加的に説明をしていただきたいんですが。ちょっと意外だったものですから。
  それからもう1つは、これは意見なんですが、ダムの操作については次回説明があるということでありましたけれども、資料4の2ページの真ん中の図ですね、そのところの緑の線を引いてあるところに、「次の洪水に備へ、貯水位を下げる操作 流入<放流」というふうになっているんですね。下に書いてあるこれは時間ですから、次の洪水へというのは、ダムの能力を100%発揮するために必要だと思うんですけれども、まだ洪水がおさまってないようなときにこういう表現をすることは、何か誤解を生むことではなかろうかというふうに私は感じたんですけれども、それ、次回説明があるということですからあれですが、これは例えば、1ページで先ほど説明があったように川辺川の流量がきいているんだと、こういうことですから、それだと関連をしたダム操作ということも必要な気がするんですが、そういうことからいくと、ここの放流量が流入量より多いという――いろいろあるんでしょうけれども、こういう表現を簡単に使うことがどうも誤解を生んでいる要因かなというような感じがします。これは私の意見です。
 以上です。
(委員長)  これは基本的なところですから、ただいまこの場でも答えられますかね。また正式に資料をつくっていただいてもいいですけど、基本的なところは答えてください。
(事務局)  はい。ただいま2点ございまして、1点目の堤防の嵩上げについてでございますけれども、ちょっと説明が十分ではなかったかもしれませんが、この人吉地区において基本的に採用しないということでございます。それがどういう意味かと申しますと、13ページの資料を見ていただきますと、これ以上堤防を上げますと、先ほど言いましたように、万が一、破堤したり氾濫した場合の、我々、災害ポテンシャルと言っておりますけれども、被害の度合いがものすごく大きくなりまして、湛水深も多くなる。そういうこともございますので、人吉の市街地のここの改修の方法として嵩上げというのはとらないんだという趣旨でございまして、ちょっと言葉足らずで、その点はおわびを申し上げたいと思います。
 もう1点でございますけれども、市房ダムの放流の件でございますが、確かに次の洪水に備え貯水位を下げる操作ということでございますけれども、先ほどちょっとご説明しましたが、もう1枚前のページを見ていただきますと、洪水調節用のダムの場合には、次の雨に備えて洪水調節容量という空き容量というか、専門的になりますけれども、水をためられる能力を回復させないといけないので、たまっている水の量を放流するということになります。本来のルールですと、資料4の1ページの一番上の図の点線がございますけれども、ピーク流量に相当した流量で放流をしていくというやり方をするんですが、市房ダムの場合には、このときには下流の水位が高かったものですから、少し絞りながら、下流の放流量を絞りながらという表現はわかりにくいかもしれませんけれども、多く流さないで、少な目に流して徐々に徐々に流していったというやり方をしてございます。いずれにしましても、次の雨がどうなっているかということで、それが間近に迫っている場合ですと、次の雨がまさにやってくるまでに洪水調節容量のところにたまっている水を何とか下流に放流しないと、次の雨が降ったときに効果が発揮できないので、そのための準備をするということでございますけれども、確かにおっしゃっておられるとおり、例えば下流のほうで氾濫が起こっているとか大きな被害が出ているときに放流を行うというのは適切ではなくて、その辺の状況を見ながら徐々に下げていくというのが好ましいことだと思いますので、今後はその辺の表現も少し改めるように考えていきたいというふうに思います。
(委員長)  ちょっと1点目は、これもまた不十分な説明ですけど、「堤防の嵩上げ(計画高水位を上げること)」と同じに書いているんですけど、今おっしゃった石狩川の場合は、計画高水位は決めているけど、堤防がないような、あるいはまだ暫定的に低い堤防があった場合に、嵩上げというのは当然やっているわけですが、計画高水位を上げるということは原則的にやらないほうがいいというのは、全国一律というか、河川工学の基本ですね。
(委員)  わかりました。
(委員長)  委員もご承知だと思いますが。その地域で今まで経験したことのないような水位に上がると、地盤の中にいろんな流れとか圧力とかがかかって、今まで経験したことのないような現象が起きる。破堤現象とか何かいろんなことが起こり得るので、地域で経験した水位以内に計画高水位を決めるというのが大原則で、そういう意味では、これは決して球磨川だけでなくて石狩川にも共通していることだと思います。解説させていただきました。
 それでは、○○委員のほうからご意見を賜りたいと思います。
(委員)  今回の審議内容のところで、1つは、上流部の未整備箇所、中流部の宅地嵩上げ、萩原堤防についてということで、資料3の3ページの7ページにかけて質問をさせていただきたいというふうに思います。
 1つは中流部のところなんですけれど、宅地嵩上げ等の取り組みについて時間がかかるというご説明がございます。まとまったところから順次実施をして、戸数で7割が実施済みという説明がされております。しかしながら、現実に169戸が未実施というのも、これも事実でありますので、中流域は、ご承知のとおり、ここ数年、立て続けに洪水の被害に見舞われております。住民の方々は一日も早く治水対策がなされるということをほんとうに望んでいらっしゃいます。にもかかわらず、事務局からは、宅地嵩上げ事業について標準的な工程で6年もの歳月が必要と、このように説明をされております。もちろん、下部のところの中で、短いもので3年で完了したという実績報告もされているところではありますけれども、ぜひこの点について宅地嵩上げ等の対策が一日も早く完了するということが必要ではないかというふうに考えております。特に、直轄編入が昭和48年という、この表現の使い方が、なかなか嵩上げ対策等々できなかったという理由づけの中に言われたようなニュアンスでしたんですが、私からいたしますと、むしろ直轄編入が昭和48年にされているにもかかわらず、まだ中流域の皆様たちは洪水に見舞われているという、その現実をぜひ重くとらえていっていただきたいと思います。
 それから、6ページのところに関連して、下流部の萩原堤防、ここにつきましては堤防強化に先立って、現在、深掘れ対策に取り組んでいるというようなこと、それから、アユの生息等に配慮してその工期が限られることなど、深掘れ対策に時間がかかるという説明がございました。6ページのところで見ますと、年間施工期間が4カ月というふうに限定をされております。これでいきますと、深掘れ対策が終了するというのを国はどれぐらいのところでいつごろ終了するというふうに見込んでいらっしゃるのでしょうか。深掘れ対策が平成12年度から始められて、そこで見られますように、今までで5.5万m3、そして年間の施工量の実績が1.2万m3ですね。そうすると、ここから推測いたしますと、これ全部終わるのに30年近くかかっていってしまうということになりはしないかと思います。先ほどからも、この八代地域の大事さ、萩原堤防の問題、この地域に人口・資産、こういったものが集中して、八代地域を守るという治水上の要点という認識は私たちも共有したところでありますけれども、そこのところに技術的な工法も含めて今後検討するというようなことではありますけれども、安全性の高い観点からの工法の工夫、これは非常に待たれるところではないかと。むしろ、こういったことが出されてくると、地元の皆様方というのは不安感をかき立てられていくということになりはしないかと思います。先ほどの○○委員の萩原堤防の状況におけるさまざまなご意見を伺って、同時に、この次のところの中では詳細な資料も出されるかと思いますけれども、その一方の中で深掘れ対策そのものについてどんな形の中でということもあわせて、次回、しっかり触れていただければというふうに思います。
 それから、現況河道の流下能力について、きょうの資料2−3の1ページのところで、住民討論集会において計画高水に関する論点の概要というところがございますけれど、この住民討論集会におきましては、計画高水流量の論議の前提として、現況の流下能力という論点について議論がされてまいりました。その際も、上流、下流、この現況の流下能力の流量について意見の一致は見られていないという、こういう現実があります。計画高水の検討に当たりまして、事務局は、今現在の河道の流下能力についてどのようにとらえていらっしゃるのか、きょうの説明の中でもなかなかそのあたりのことが見えづらかったという感じがいたします。もしかしたら、その論点整理の資料の中で示されている、その数字を計画高水流量というふうにされるということなのかもしれませんけれども、計画高水流量の議論の前提として、上流、中流、下流、それぞれの根拠を含めて具体的な数字であらわしていただきたいというふうに思います。今回、限界流量というのがいきなり出てきておりまして、おそらく限界流量というのは、深掘り対策をやった後の限界流量というようなことだろうというふうに思いますけれど、なかなかここあたりの説明がわかりづらい。何を前提にされているのかわかりづらいという感じがいたしますので、次回、この点についてはもっと明確に、河道の流下能力についてどのようにとらえているかという点をしっかりと示していただきたいというふうに思います。
 それから、資料3の8ページから10ページに関してですが、上流部における河道流量についてですけれども、水中の河床掘削、これがアユだとか球磨川下りに影響があるという理由で、4,000m3/sが限界と、こういう説明がございました。この点については、先ほど○○委員のほうからいろんな角度の中からのご質問や、あるいは状況についての委員の理論的な観点も伺うことができて、とっても学ぶところが大きかったという感じがいたします。しかし、その一方で、4,000m3/sが限界、そういうふうに説明がありましたけれども、4,500m3/sや5,000m3/s、こういった流下能力を増大させるための掘削を行った場合に、岩盤露出の割合の程度が河川環境にどのような影響の差があるのか、そこあたりのことも具体的な根拠があればお伺いしたいというふうに思います。委員は先ほど、まさに河床、ここのところの状況ということを踏まえて、次回、詳細な視点からのご説明を求められました。私はむしろ、4,000m3/sということを上回ったときに、それは一体環境に与えていく影響はどういうふうになっていくのか。もしかしたら○○委員のご意見からすると、それはまさに○○委員の意見をきちっと押さえてかかるべきであって、4,000m3/sが4,500、5,000と上がったときのことというのは、それは大変なことなんだよと言われる可能性もありますけれど、しかし、環境というようなこととの兼ね合いの中で考えていったときにそれが具体的な数字としては根拠性としてどういうふうになっていくのか、お聞かせ願えればというふうに思います。
 それから、八代の流下能力は7,000m3/sより大きくすることは技術的に困難というふうに、これまで住民討論集会の中なんかでずっと国土交通省の方々は説明をされていらっしゃいました。今回、下流部の河道流域について7,800m3/s程度を計画高水流量とすべきというふうにされております。そうすると、ここに800m3/s程度増えたことになりますけれども、ここあたりのことは従来から説明されていたこととの整合性をどのように理解すればよいのか、ぜひ説明をしていただきたいというふうに思います。
 それから、ほんとうにここは、人吉地点の計画高水流量が4,000m3/s程度というふうに今回あらわされておりますけれど、現況の流下能力、これは3,900m3/sでございます。わずか100m3/sの流下能力の増加ということなんですけれども、私どもが今かかわっている基本方針というのは、長期的な計画を定めるものであります。そういったことからしますと、既に定められたほかの一級水系、こういった中の基本方針で現況の流下能力と計画高水流量、この関係の中でこんなに小さい関係、流下能力の増加というのはほかにもあるのかどうか。あるいは、人吉というところの何か特別な理由、そうした中で長期的な計画を定めるのであるにもかかわらず、100m3/sの流下能力というごくわずかの増加でしかないのか。私はそのあたりのことも次回ぜひお聞かせ願いたいというふうに思います。
 それから、資料3の2ページから17ページのところなんですけれども、工実の計画高水流量と河道の限界流量、この関係なんですが、単純に比較するものではないというふうに事務方のほうからたしなめられております。ですから、それは単純に比較するものではないという前提の中で、それでもなお、資料4の2ページの工実の計画高水流量図によりますと、計画高水流量は人吉地点で4,000m3/s、中流部の渡地点で4,900m3/s、八代の萩原地点で7,000m3/sでありました。今回、限界流量はそれぞれ4,000m3/s、そして渡地点で5,500m3/s、萩原で8,000m3/s程度というふうにされておりまして、工実の計画と数字の違いが出てきているという状況の中にあります。それから、これまでの河川整備というのは、工実の計画高水流量を目標として定められてきたというふうに理解されているんですけれども、渡地点での限界流量5,500m3/sと今回出されておりますが、下流のほうは既に宅地嵩上げ対策が終わったというふうに位置づけられております。しかし、今回、限界流量5,500m3/sということになりますならば、既に宅地嵩上げ対策が終わったところに新たに影響が与えられるというふうに考えるのが普通ではないかなというふうに思います。それから、八代、萩原地点の限界流量8,000m3/s、これは下流部で再び改修が必要となるということにはなりはしないか、そういう疑念を抱いてしまうところであります。こういった観点からも、工実の計画高水流量と限界流量との関係、これについてわかりやすく説明をしていただかなければ、河川整備そのものに対しても与えていく影響というのが生じてくるのではないかと思います。
 それから、きょう、事務局○○のほうから、ピーク流量というようなことで前回お定めいただいたというふうにご発言が冒頭の中でございました。しかし、私自身は、前回の委員会で審議をされました基本高水流量について、人吉地点の7,000m3/sについて、基本高水流量を導き出す過程、その算定に用いられた手法、データ等が示され論議される中で、理解しづらいというようなことを申し上げてきておりますし、それから、横石地点におきましてはなおさらのこと、9,900m3/sというこれまでの流量を上回る流量が示されたにもかかわらず、算出過程やデータなどについては示されておりません。ですから、前回定めていただいたという事務局○○のご発言に対して、私自身は納得はしておりません。
 それから、○○委員長も、検討小委員会で審議され、取りまとめられた事項については、十分説明責任を果たしてほしいというふうに言われておりますけれども、基本高水に関する県民への説明、これに当たりましては、八代の横石地点を9,900m3/sとした根拠、それから工実の従来ずっと説明された中身からこのたび変更になった点、こういったことにつきましては、ぜひ明確な資料をもとにわかりやすく説明していただかなければ、相変わらず住民討論集会にかかわりを持たれたいろいろな方々のご意見というのが次々に出てきているという状況の中にあります。ぜひ説明責任という点、それから、私自身が納得できていない中で、反対派の皆様方に対して説明するというような能力は持ち合わせませんので、この点に関しましては国土交通省がきちっと住民の皆様たちに対して説明責任を果たしていただかなければならないというふうに申し上げておきたいと思います。
 以上でございます。
(委員長)  はい、ありがとうございました。
 前回の基本高水につきましては、私が最後、総括いたしまして、○○委員と二、三回やりとりもありましたので、ちょっと今、うろ覚えに覚えていることを復唱しますと、工事実施基本計画で7,000m3/s、2日雨量で440mmでした。今回、12時間降雨継続時間で1/80で262mmでした。ただ、前回は昭和40年災害を対象にしていたんですが、その後の資料を入れると10,000m3/sクラスになってしまうこと。手順からいえば10,000m3/sにしなさいよと言えば委員会の務めも終わるんですけれども、あまり非現実的な計画を押しつけるのもいかがかと。したがって、○○委員も大変ご不満でしたけど、47年洪水が2番手でした。2番手でたまたまこれがまた7,000m3/sになったというのが不思議なんですけれども、それを対象にしました。40年間も「住民の生命・財産を7,000m3/sで守りますよ」と言ってきたのを下げるわけにもいかんということもあって、皆さんの意見をお伺いしながら7,000m3/sに集約したということでございますので、いずれ私も、その考えたのを――議事録に残るとは思いますが、書き残して、住民説明会には使っていただきたいと思います。
 今、横石についてお話があって、確かに横石が何mmかというのはこの前の資料になかったかなと。260……ありますか。何ページですか。
(事務局)  前回資料の最後の表のところに、横石地点261mm/12時間というのを入れております。
(委員長)  あんまり記憶になかったですね。
(事務局)  非常に小さく書いてあったので、ちょっと……。
(委員長)  たしか横石を1/100にするか1/80にするかというので何回か委員と議論をさせていただいた。結論とすると、横石を1/100にしようではないかと。私の考え方の理由としては、横石と人吉が安全に流れて氾濫しなかった場合、これはハッピーですが、人吉も八代も氾濫した場合というのは、住民の皆さんも、これだけ技術の限り、資力の限りを尽くしても氾濫したとすれば納得していただけないか。ただし、人吉が氾濫して八代が氾濫しない場合は、人吉の人には不可抗力だったと我慢していただきますが、八代の方は納得していただけるのではないか。逆の場合ですね、人吉が氾濫せず八代が氾濫した場合は、人吉に手をかけて改修をしたために、人吉が氾濫しなかった水まで八代に注ぎ込んでいるのではないかという批判があるのではないかということから1/100といたしました。たしか261mmというのはあんまり聞いた記憶がなくて、今、ちょっと思い出せなかったんですが、それらも含めて説明責任は国土交通省でしっかり持っていただいて、現地の説明については、これ、反対の皆さんが科学的にとおっしゃるので、科学的にというのは大変現実的でなくてもいけませんし、そのために全く現地で受け入れない計画を押しつけるのもいかがかという総合判断のもとに決定いたしましたので、この点については説明の段階でしっかりやっていただきたいと思います。
 それから、各委員から出た質問については、今後、丁寧に次回に資料を出していただきたいと同時に、私からも流下能力の計算手法が、おそらく反対側の方も専門家・技術をお持ちの方なんでしょうけど、こんなに数字がなぜ分かれて出てくるのというのが不思議なので、これは専門家以外にわかるように皆さん方が意を尽くして、流下能力の計算書を出して下さい。いきなり4,000m3/sですよ、3,900m3/sですよと言っているその根拠は何だというご質問ですから、丁寧に次回追加資料をお願いしたいと思います。
 それから、フロンティア堤防を出して、また引っ込めたというのは、おそらく大変不信感を買っているんだろうと思いますね。いや、技術に自信がなくなったというんですけど、この担当した歴代課長から、そのときそのとき、どういう思いでやってきて現在に至っているのかというのを丁寧に先輩の意見を聞いて、次回、報告していただきたい。――絶対壊れない堤防をつくれというのが河川工学者の使命ですから、歴代の担当者もそう思ってきたんだと思いますが、その中でフロンティア堤防も提案し、待てよという考えにもなった、その心のひだを次回まとめて報告していただきたいと思います。
 それから、今回いただいた反対の意見書の中に四十何番でしたか、私は水害経験者の意見はできるだけ読むようにしていますが、46番ですか、この中で、この前もちょっとご説明しましたけど、人吉市の鳥飼助役さんがお話ししていて、「7.3大水害のときはあれだけダム管理規則の利水偏重が追求されたのだから、臨機応変の非常体制をとれるようにすべきだ。ダムの放水がどれだけ市民の不安感を助長したかを考えると、この問題は徹底的に究明する必要があると話している」というのが、マスコミのインタビューにも答えているというんですから、おそらく新聞記事に載ったんだと思います。当時、そういう意見があったことは間違いないんでしょうし、これに対応して何らかの対応策が、当時は別として現時点では考えられないのかな。例えば、洪水前には農業用水用にためておった水をみんな出しちゃうとか、あるいは発電用水の水も全部放流しちゃって、からからで待つというようなことが考えられないのか。関係者も多くて、○○委員のほうにも影響が出るので、一つの頭の体操でやっていただきたい。
 それから、きょうは○○委員はおりませんけど、中川原を全部切り飛ばしたらどうだなんていうのが、地域に愛情のない人は言いそうなんですから、そういうことを考えた場合、どうなるのというのも、一応頭の体操で検討していただきたい。
 それらを宿題としたいと思います。それで本日は閉めたいと思いますが、ほかにご意見のある方ございますでしょうか。○○委員も、次の宿題ということでよろしゅうございますか。
(委員)  はい。
(委員長)  じゃ、皆さん、よろしゅうございますか。
  それでは、計画高水流量については、本日の審議内容も含めて次回にもしっかりとご議論いただきたいと思います。次回までに準備すべき事項等、ご意見をお願いいたします。それを踏まえて事務局で資料の作成をお願いします。
 (「委員長、きょうの小委員会は出席者が足りなくて成立してないんじゃないですか」の声あり)
(委員長)  委員長はその判断はいたしません。これで最終結論までには十分各委員の意見を聞きますから。しかし、ご発言についてはご注意をいただきたいと思います。
 各委員には、本議題につきまして貴重なご意見をいただきまして、ありがとうございました。
 最後に、本日の議事録につきましては、内容について、発言者の氏名を除いたものとし、各委員のご確認を得た後、国土交通省大臣官房広報課及びインターネットにおいて一般に公開することといたします。
 本日の議題は以上でございます。

 

3.閉      会

(事務局) 

  ありがとうございました。
次回の本委員会は、Bグループにつきまして、常呂川等3水域への審議を10月31日(火曜日)13時から15時の間、場所は国土交通省3号館11階特別会議室で開催いたします。よろしくお願いいたします。
   お手元の資料につきましては、お持ち帰りいただいても結構でございますが、郵送ご希望の方には、後日郵送させていただきますので、そのまま席にお残しいただきたいと思います。
それでは、閉会いたします。






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