会議記録

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第4回(平成11年7月5日)


     
 

4.ショートスピーチ

  【上山委員】
   まずショートスピーチをして貰ってから討論に入りたい。
 今日は坂井委員と竹中委員と澤田委員にお願いしている。まず坂井委員の方から。
上山委員
     
 
  4−1.ショートスピーチ (坂井直樹委員)
   スライドを用意しているので、これで説明する。

  (スライド 渋谷南平台オフィス風景)

 これが当社で、私がどんな仕事をしているかわからないかもしれないが、結構真面目にここでデザインの仕事をしている。渋谷の南平台というところである。
 今から自動車を中心に次世紀の暮らしということを語るのだが、自分がやってきたことを振り返ってみたりして、一体自分はデザインという立場でどんなことができるのかということを考えたりしている。自動車などは大体5年ぐらい先を見て仕事をしている。次世紀というか、2003年から2005年ぐらいの世の中に出すための仕事なので、自分としてはそれらについて語るしかないだろうと思って用意した。
 一番古い85年に発表した車から一番新しい今年つくったものまで、今から順番に紹介したい。特にドイツの雑誌などで面白いことを書くのがあって、私の会社が実は女性とゲイしか採らないということを言っている。すると、やたらそこだけが誇張されて、「どうして女性とゲイなんだ」ということを真面目に受け取られて困った。実は現実もそれに近い状況なのだが、感覚的な部分の面と、割合女の人は本音の話をして、ボスが何か言っても余り言うことを聞かない。それを大変気に入って、そういう者を採用してやっている。

  (スライド 「Be-1」外観)

 これは皆さんの年齢だとわかると思う。発表が85年で、商品になって87年に世の中に登場しているので、専門学校などに行くと彼らが小さいときだから余り記憶がないようだ。
 言ってみれば、常に進化しなければいけないという自動車業界の中で、デザインを退化させるということをやった走りだと思う。フューチャーレトロという少し懐古的なもの、ただし中身は非常に新しい、当時斬新な方法だった。また、クラスレスということで、敢えてどんなものをつくれるかと考えた。例えば日本は排気量が大きくて値段の高いものが高級車だという考え方になっている。僕は、もっと小さい車でもそんなに恥ずかしくないものがあるのではないかと思っていて、常に割と小さい車を好んでやっている。これはリッターカー 1,000tで、プラットフォームがマーチで、当時80万で売った商品をBe−1というパッケージを与えることによって、 140万円という値段がついた。そういうことは初めてだったと思う。

  (スライド 「Pao」 外観)

 これも同じようなことで、デザインでいかに買う人、乗る人を違う世界に連れていけるかということである。言ってみれば冒険気分を考え方の軸に置いて、実際に冒険に行くと、これは二輪駆動だから、激しい山中からもう二度と帰ってこれない状況になる。(笑)
 見かけは非常にしっかりした考え方でデザインされたもので、非常にタフそうに見える。テレビゲーム的な冒険というのも実はそういうところにあって、本気で植村直己さんみたいになりたいという冒険家はそうは沢山いなくて、 5,000円から1万円のゲームソフトを使って、すごい冒険の世界に行けるということが多分テレビゲームを支えているのだと思う。

  (スライド 「Pao」 インターフェイス)

 中身も冒険気分ということを表現しようと精一杯やった商品である。こういうものも、日産は非常にまじめな会社だから、「技術の日産」と自負しているところがこんな強そうに見えて弱い車つくってどうするんだという議論が随分出た。ともかく通過して、商品化されたものである。

  スライド 「Pao」オーディオ)

 これは我々が「コンセプトワーク」と言っているのだが、日本語で言うと「概念」ということになる。要するに車はこういうふうに考えて作ったというデザインの考え方を松下に行ってやると、彼らはこういうのを作ってくる。同業者特有の言葉を超えた共通言語があるのかもしれない。僕としてはかなり車にふさわしいものに仕上がったつもりでいる。

  (スライド 「Pao」スイッチ)

 これは見たとおりスイッチ。今電子的なスイッチが大変多く、触ればタッチセンサーで開いたり閉まったりするものが多い。中身は相当電子化した商品だが、人間に関わるところは意外とこういう機械式のインターフェースの方がわかりやすい。例えば、このスイッチを見て左右に入れて折るなどという人は余りいない。そういうことで、僕は適当に機械式のインターフェースは残した方がいいと考えている。だから、この写真はわざわざ大きく扱った。

  (スライド 「ラシーン」 外観)
 これは最近というか、それでも93年発表になるが、まだ現在も生産しているラシーンという車。「ラシーン」というのは羅針盤をもじったもので、別にフランス語でも英語でもない。RVブームがもうここ10年続いていて、今ようやく少々減速している状況にある。日本の自動車業界はカテゴリーをつくるのが欧米に比べて大変うまい。SUV、スポーツ・ユーティ・ビークルなどという言い方をしながら、割合普通の車をパッケージしていく。これも実はサニーがベースだから、ごく普通のフルタイム四駆の車の上に何かアウトドアっぽいパッケージを載せている車である。
 これが比較的じりじりと売れている。RVは普通大きくて、なかなか細い道に入れないし、回転車庫には入れにくい。だが、これはベース車両がサニーという割と普通の車なので、ちゃんと回転式車庫に入る。このことが多分評価の対象だと思う。

  (スライド 「ラシーン」 キーワード)

 これはちょっと理屈をつけているもの。ランドクルーザーなどの非常に動力性能の強いRVに比べて、これはたまたま小排気量のフルタイム四駆のサニーという非常に非力な車だった。それで、アウトドアーズでもバードウォッチャーのように自然を破壊しないで自然の中に入っていくタイプも必要という観点から提案したものである。割合に自動車会社は理屈が好きだから、そういうことを言いながら「これがいい」といってつくったプロセスである。もちろん「静」がラシーン。

  (スライド 「ラシーン」 正面外観)

 これは前から見たところ。

  (スライド 「ラシーン」 後面外観)

 これは後ろ。大変フラットになっている。

  (スライド 「O-product」)

 これはオー・プロダクトといって88年に発売して、約1週間で完売したというもの。それは2万台しかつくっていないという理由もあるのだが、割合早く売れてしまった。これは、機能美ではなく、一種の誇張した、デフォルメした機械美、機械としての美しさというものに、まだやれることがあるのではないかというものである。
 説明が遅くなったが、これはカメラである。ごく普通のフィルムのカメラ。10年たっているのだが、まだ中古カメラ店で非常にリセールバリューは高くて、当時の5万円という売価をはるかに上回った値段が付いている。そういうように価値が継続できるようなデザインは何か、これはまた一つの僕のテーマでもあるのだが。作ったときから古いから、古くならないということも言えるかもしれない。(笑)

  (スライド 「O-product」デザイン案1)

 大体、企業、メーカーと話すときに、2〜3案出すのだが、大体向こうが落としてくることを見込んで、少しだけわざわざ落とされるような方向に書いたりする。最後で自分が通したいものがあるから。我々は「踏み絵」と言っているのだが。
 この4面図のものが、落ちたもの。あれは1つなのである。画面は正面から見たモノ、上から見たモノ、横から見たモノということであって、1つのモノである。

  (スライド 「O-product」デザイン案2)

 こちらが採用されたもの。フィルムになっているもの。わかりにくかったら途中で聞いて欲しい。

  (スライド 「O-product」発表シーン)

 これは、このカメラの誕生のプロセスをストーリーにしたもの。実はファッションショーの形式なのだが、ファッション業界とは関係ないバイヤーをオブザーバーでガッと並ばせて、頑張って売ってくださいということである。

  (スライド 「O-product」広告)

 これはラッキーなことに非常に早く売れた。というのはカメラ店のおやじが2つずつぐらい買ったものだから、すぐになくなった。実にくだらない理由なのだが、それで完売御礼広告に切りかわってしまったものである。

  (スライド 自転車 外観1)

 電車から降りて乗れる自転車をつくれないかという依頼を受けた。テーマとしては 400円のコインロッカーに畳んで入る、網棚に乗せられるということで、 5.8キログラムぐらいを目標に作ったもの。どちらかと言えば、電車屋は自動車がいつもライバルで、できるだけ自動車に乗せたくないということもあるかと思うのだが。
 チェーンがないように見えるが、中にチェーンが入っていて、ギアで切りかえている。チェーンがないといえばそう見える。余り自分は考えなかったのだが、確かに変。

  (スライド 自転車 外観2)

 同じものを部分的に、また違う角度でレンダリングしたもの。軽量で、安全ということがテーマだから、これがボキッと折れたり、事故になると困るわけである。だから非常に難しい。要求しているレベルが高いから。
 ワンタッチで畳める。畳めば車輪が2つ並んで、コントラバス(楽器)みたいな状態になる。つまり真ん中で折らないという形。これはX軸のところでちょうど交差し合うというか、そういう構造を考えてみたもので、その畳み方もまだない実験段階のものである。
幾らぐらいを想定するかと言えば、まだコストは出ていない。ただ、安い自転車は世の中にたくさんあるので、なかなか難しい。

  (スライド 「ジアス」)

 これは余りよくないケースとして出した面もある。「サントリーは地球を考えています」というような企業のスローガンそのものを商品名にしようということで「ジアス」というブランドをつくって、完全なリサイクルを目指したもの。一部にこういう地球環境をテーマにする商品があって、もう一方でそういうことに関与しないのはやはり企業としてはおかしいことになる。
 これももう少し大げさに「サントリーは地球を救う」など、いろいろ大げさなタイトルを考えたのだが、穏やかなセンテンスにしようということで、こういう言葉を選んだ背景がある。

  (スライド MIND GEAR 外観1)

 これは何かおわかりだろうか。今日紹介した中で一番変なものかもしれない。日本にしかないと言われているものらしい。(仏壇?観音開きだからという竹中委員の答え)その通り仏壇である。やはり女性は直観的である。
 「開けていく」という儀式が「先祖に出会う窓」としてあるとも言えるのだが、「MIND GEAR」と名づけている。ここにポータブルのCDプレーヤーとスピーカーが入っていて、いろいろなお経ソフトが買える。日本の宗教人口は2億数千万人だと聞いている。いろいろな宗教に、サークル的に入っている人が多くて、無宗教という者が意外とポーピュレーションだけ多いというのも不思議な気がする。多様なお経が聞ける、お経と言っていいのか、宗教系の音とも言えるが。外側はかなり今のマンションライフにもフィットしている、つまり長男の家などというのは、結構大げさな黒と金色でガッとくるから置き場所がない。そういうところをどう考えようかという背景もあった。
 大きさは50センチぐらいだから、小さい。このぐらいのサイズでいいだろうと僕は思った。中身の写真がなくて申しわけない。

  (スライド MIND GEAR 外観2)

 メイプルが比較的評判がよくて、黒が余り評判よくなかった。もう既にあるからいいということだろうか。

  (スライド KITE 外観1)

 この車輪は多分安部さんなどは気づいているかもしれないが、昔ガソリンスタンドとか自動車の修理工場で、板があってガッと中に入っていけるという非常に不思議な車輪である。つまり高さは余り取らないけれども、割合大きな車輪がつけれるというので、自動車のメンテナンスが車の下に入り込む板につけたもの。あるいは大きなオイルのドラムとか、そういうものを動かしたもの。実はこれは現実の車輪じゃなくて、そういうものを引用して新しくまたつくったもの。お年寄りなどでも非常に自由に簡単に動くという構造をつくっている。「KITE」というニックネームになっている。荷重としては安部さん2人ぐらい平気で耐えられると思う。(笑)小錦になるとわからないが、大体大丈夫。

  (スライド KITE 外観2)

 これはその2人版である。これは実はレカロのシートの曲線をそのまま持ってきている。ああいうものに著作権があるのかどうかわからないが。

  (スライド KITE 外観3)

 これは「一反もめん」というニックネームがついたものである。(笑)やはりガッとレバーを押すと動きやすい。ただおかしいもので、なにかこうすると割合に人格を持ったロボットのような感じがしてくる。人格があるはずはないのだけれども。

  (スライド 椅子 外観1)

 スペースに関しては、非常に小さなスペースで豊かな生活というものはできないのだろうかと僕はいつも考えているが、なかなか難しい。空間倍増ということを主張する人もいるが、現実はなかなか厳しい。
 やはり空間が倍だと何だかんだと言って高層化しても、コストがたくさんかかる。それで、むしろアウトドアーズみたいにいろいろなものを畳むという発想が面白いと思う。襖を全部外したら 100畳敷きとかになるという、昔の日本家屋がそうだった。あるいは、畳は畳んで押入れに入れるなどということを考えると、普段は結構空っぽのスペースがいつもつくれるという設計だったと思う。今の建築はそうなっていない。これはウエスタンスタイルだけれども、極力要らないときは畳めるという設計思想である。

  (スライド 椅子 外観2)

 こういう工夫を少し考えている。「ミニマムスペース・マキシムライフ」みたいなことをテーマにしたいと思って、家具に関しては考えている。これはスツール。酒場で飲むような少し高いスツールの状態になるわけである。

  (スライド 椅子 外観3)

 こんなふうになるということである。ゼリーのような官能的な素材を使ってみたいと思っている。

  (スライド 「SOHOファニチャー」 外観1)

 これは、SOHOワーカー、スモールオフィス・ホームオフィスというもの。若干トレンドになってきている。要は自宅で仕事ができる、あるいは自宅のようなスペースで仕事ができるための家具とは何だろうかということを考えている。折り畳みができて、これも使わないときにはパタッと仕舞えるという構造にしてある。意外と家具やデスク周りで困るのは書類を含めた収納なのである。だから、収納面にかなり配慮されたSOHOファニチャーである。

  (スライド 「SOHOファニチャー」 外観2)

 このようにスペースが中にたっぷりあるというような状況をセッティングしている。ワークスタイルが大きく変わってきて、ハンディキャッパーでも老人でも奥様でも、1日の中でビジネスのオンとオフが何度も来るようなスタイルもこれから来るということを見通して提案したもの。
 僕などもそれに近いライフスタイルで仕事している。余り人を拘束したり、我慢代をもらうという感じの給料の取り方とか払い方が変わってくると思っている。そうなると、ある種の人たちは自宅でもワークが可能だろうと思う。

  (スライド 「SOHOファニチャー」 外観3)

 こういう収納がいくつも考えられて、使わないときにはパタパタとパネルが立てられるという格好になる。

  (スライド LCDモニター 外観1)

 これもやはり畳むということでは同じなのだが、実は足になっているものは液晶ディスプレイである。液晶ディスプレイ、17インチぐらいを設定しているが、畳んで液晶画面を保護するようになっている。しかも裏面も見えるので、ブラウン管と違ってもう少し裏面をきれいにデザインとして整理しようということで、ごちゃごちゃしたものを余り使わないということを考えている。構造関係などもわざとく意識したものにしたいと思う。

  (スライド LCDモニター 外観2,3)

 こういう状態になるということ。持って運んでいけるわけである。

  (スライド ウォークマン 外観1)

 これで最後になる。割合最近あったウォークマンをあの黄色いわっかの中にバンと放り込むと自動的に充電してくれて、しかも黄色の大きなスピーカーで聞ける。いろいろな自分のオーディオなども少し減らしていくためにはこういう考え方もいいのではないかと考えた。右の下に転がっているのがそのリモコンである。

  (スライド ウォークマン 外観2)

 入るとこういう状態になる。

  (スライド ウォークマン 外観3)

 このように掛け時計みたいにもなるということを考えている。やはりコード類がどうしても邪魔なので、そう簡単にはいかないという問題もある。以上である。
 何か暮らしに対して多少ともいいこと、あるいは何かを解決できるのかということを、デザインという立場で、自分がつくってきたものをさかのぼって選んできたつもりである。(拍手)
坂井直樹委員
 
坂井直樹委員
 
坂井直樹委員
     
  【嶌委員】
   何となく今まで日本人というのは、機能とか品質とか安さとかそういうものだけを求めてきた。しかし、そういうものだけでは満足しない時代になって、それをデザインというものが補完しているということなのだろう。 嶌委員
     
 
  【坂井委員】
   クオリティライフということである。 坂井委員
     
 
  【嶌委員】
   居心地のよさ、狭さを広く使う、などによってまた新しいステージをつくっている。ただ、建設省との絡みを考えると、細い道などというのがあるために、逆にデザインの方が細い道に合わせるようにしてしまう。そういうことは果たしていいのかどうかという問題も逆にあるだろうと思う。むしろ広い方がやはり人間にはいいと、にもかかわらずデザインでそういうことをやるということが果たして人間の生活にいいのかどうか、そういうことも何となく聞いていて思った。
 それでは、次に竹中さん。
嶌委員
 

 

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