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第4回(平成11年7月5日)


 
  4−3.ショートスピーチ (澤田秀雄委員)
   僕は経営者だから「次世紀の暮らし」の会議にどうして出れるのか、自分でも半分わからないところがある。4年半、全世界を旅行してきて、現在、旅行会社と飛行機会社と、あと金融のビジネスをやっている。経営の観点から少し話したい。
 一応最初経営するとき、必ず考えの一番大切なものとして「理念」というか、ポリシーというか、そういうことをまず一番に考える。どういうことかというと、国もそうだと思うが、5年後、10年後、もしくは50年後、どういうポリシーの国づくり、街づくりにしたいのか、会社だったらどういう会社にしたいか、どういう会社をやりたいかということを自分で考えて経営をやっている。どういう国家を、どういう国を目指すのか、本当に自然を大切にするような国家を目指すのか、それとも超近代的な国家を目指すのか、もしくは自然と調和しながら、うまく今の時代に合ったハイテク技術を取り入れた国家を目指すのか。
 会社でもよく言うのだが、「最初に『理念』ありき」だと思う。どういう暮らしをするか、将来どういう国にしたいのかということが僕は一番大切だと思っている。だから、経営をやるときは10年後、50年後をきちんと、こういう会社にしたい、もしくはこういう街にしたい、こういう国にしたいということを考えてやっている。これからの日本もどういう日本になるのか、どういう国になるのか、それは一体何を中心に考えて進めていくかということが非常に大切だと思う。それがなければ、一体どういう「姿」になるかということがみんな見えなくて、非常にわかりづらくなると思う。
 どんなことでもいいと思う。一番やりたいこと、こういう街づくりにしたい、こういう国づくりにしたい、ということを多分皆さん考えていると思うけれども、まずそれを非常にわかりやすく作るのがいいのではないか。
 経営で非常に大切なのは、その次に「目標」である。「目標」というのは、いつまでにやるのか、どのような形でやるかということである。経営では必ず「目標」を立てる。経営の「目標」というのは、例えば飛行機を飛ばすのだったら、2年後に飛行機を飛ばそうとか、また10年後にこういう形の会社にしようとかいうことである。この「目標」がなければ非常にあいまいな形になる。だから、10年後にこういう街にしたい、もしくは50年後にこういう姿にしたいという〈期限〉が非常に大切ではないかと思う。
 街づくりも同じなのだが、戦後、多分日本は何もないところから建設が始まった。だから、とりあえず豊かになろう、暮らしをよくしよう、もしくは足らないものを物質的に豊かにしようということでここまできたと思う。しかし、これからはまたちょっと違うと思う。物質的には十分豊かなので、50年後にどういう「目標」でやろうという、この「目標」をきちんと立ててやっていかなければいい国づくり、いい街づくりができないと思う。
 この「目標」というのは非常に難しくて、例えば20年後にこういう会社にしようという「目標」を立てた時に、実現に取り組むに際して、莫大な設備投資がかかるという場合、目先の計画と20年後の計画は随分変わってこざるを得ない。例えばすごい設備投資をしたために、今年経営がやっていけない、2年後に経営がやっていけないということになりかねないのである。だからといって、目先利益だけ考えて設備投資をしない、もしくはお金をつぎ込まなければ、20年後に自分が考えている会社にならないということで、答え(結果)が随分変わってくる。20年後の目標のために今を無視する、犠牲にするということと、今だけを考えてこれを優先してやると20年後の答え、「目標」が狂ってくるという具合に、バランスを取るのが難しい。つまり、全部20年後に合わせてしまうと経営がおかしくなるし、目先だけで物事を進めても、20年後に本当にいい経営ができないということになる。
 国家の財政も同じだと思うが、目先の財政を使い過ぎるために、5年後、10年後におかしくなる。だからといって、20年後のことだけ考えてやると、なかなかうまくいかない。だから、計画というのは、20年後もしくは50年後にこういう「目標」でやる、こういうポリシーでやると、だから今年はこういう計画でやるということで、短期だけで考えるものと長期で考えるものとを案配してやることが大事である。そうすると随分と経営の答えは変わってくるものである。
 街づくり、国づくりにおいても、50年後にこういう街にしよう、こういう国家にしようということができれば、今年やることと、来年やることとが随分変わってくると思う。大きな国づくりとか街づくりというのは、やはり30年、50年、もしくは 100年ぐらいの計画で考えなければ、本当に自然にマッチした世界一美しい国ができないと思う。本当に豊かな暮らしの街ができるかというと、今日明日には多分できないと思う。しかし、50年後にこういう街にしたい、もしくは国にしたいという計画がきちんとあれば、毎年それを徐々にやることによってその計画目標に到達することができる。
 経営も同じである。「目標」をきちんと定める。僕はよく会社のスタッフに言うのだが、「ゴールのない走りは走れない」と。オリンピックもそうだが、目指すものがなかったらやっぱり走れない。ゴールがあれば、そのために今年こういう訓練しよう、これをこういうふうに頑張ってオリンピックに出よう、オリンピックで入賞しよう、というように走ることができる。いつもきちんとした「目標」を立ててやっていくことが大切である。国家や街づくりも暮らしも、20年後の「目標」を立ててやっていくべきだと思っている。
 その次に大切なのは「戦略」である。まず「理念」ができる、こういう会社にしたい、もしくはこういうあれにしたい、その次に「目標」がきちんと立つ。そして、その次に「戦略」というのを立てる。飛行機で言えば、その「戦略」なのだが、キーとなる構成要素は人・物・金である。まずどういう人をそろえようかと。飛行機飛ばすのだとしたら、まずパイロットが要る。技術者が要る。運行管理者が要る、オペレーターが要る、営業マンが要る、マネジメントのスタッフが要るということになる。それをどのように戦略的に立ち上げていくかという観点から、まず人をどういうふうに配置するか、その道のプロをうまく配置しながら計画を立てて行くわけである。それとともに予算、お金がある。この事業を完成させるため、この計画を完成するためにはどれぐらいの予算が要るのかということ。どんなにすばらしい計画でも、やはり予算がなかったらできない。だから、例えば飛行機を1機飛ばすことでも、それには幾らの予算がかかるかということをまず考える。
国もどんなにすばらしい国をつくろうと思っても、街をつくろうと思っても、まず予算がなければ、僕はできないと思う。だから、計画に合った予算が獲得できるか、資金が調達できるかという明確な戦略に基づいてつくっていく必要がある。それがきちんと、ぴたっと合ったときに初めて、3年後、5年後、もしくは2年後の計画はほぼ実現していくということになる。会社だったら会社として役目を行えるわけである。飛行機だったら無事飛ぶことができ、一般の方に喜んで貰える待遇ができるということで、非常に「戦略」が大切だと思う。
 将来50年後、10年後でもいいのだが、この「次世紀を暮らす」、本当にすばらしい日本の暮らしになるためには、きちんとした「戦略」が必要である。明確な「戦略」がなければ、途中で予算切れ、人切れ、いろいろなことで、どんな話し合いをしても結果的にはその現場レベルの戦術レベルで終わっってしまう。結果的に20年後にそういう国になっていないという「戦略」をきちんと立ててやっていくのが我々の経営である。
 「戦略」がきちんと立った。お金の準備ができた、プロの人の準備ができた、こういうものをやろうという大きな計画、戦略ができたときに、初めて「戦術」レベルに落としていく。
「戦術」レベルというのは、例えばどういうふうに宣伝しようかとか、どういうふうに広報しようかとか、国だったら、20年後にこういう街づくりをしたいので、皆さんご協力よろしくお願いしますとかいうものである。こういう国家をつくりたい、街をつくりたい、こういうポリシーに則ってやっていきたいということで、今度は「戦術」レベルでそれを宣伝するわけである。我々が言う経営というのは、宣伝しなければお客さんに来ていただけないわけである。みんなにわかっていただく、こういういいのがあります、もしくはこういうふうにするために今こういうふうにやっているという「宣伝」、つまり、みんなに知っていただくということはものすごく大切だと思う。いろいろな方に理解していただく、理解していただかなかったら協力もいただけないし、うまくやっていけないわけである。だから、宣伝もそうだし、今話されたデザイン、こういうデザインで事務所をつくろう、サービスをしようというデザイン、こういうデザインで街をつくっていこう、国家をつくっていこうというデザインとか宣伝とか企画、つまり、我々はこういうものをこのようにきちんとつくり上げていくというものが重要である。それが明確に提示できなければ、一つの形の経営がなかなかできないのである。
 僕は、国家のこととか建設のことは余り知らないのだが、国家も街づくりもよく似ているのではないかと思う。まず先ほども言ったように、ポリシー、「理念」ありきだと。自然を大切にするという国家の将来像、本当に人と自然を大切にする街づくりをしよう、というような「理念」があって、それを一体どれぐらいの時間をかけてつくっていくのかという「目標」、そして人・物・金の「戦略」、そして初めて現場レベルの、それぞれの専門家の方の意見を聞いて、「戦術」レベルの体制ができ上がってくる。そこで初めて30年後、50年後の本当にすばらしい経営、街づくり、もしくは国づくりができるのだと思う。
 もちろん建設とか国家経営と我々がやっている一企業の経営は違うのかもしれない。僕は経営しかわからないので、自分なりの意見として、そういう形で初めて、大きく開かれたグラウンドデザインがきちんとした形でやれると思う。
 是非お願いしたいことがある。今までは欧米から学ぶことが非常にあったと思う。これからもアメリカとかヨーロッパのいいところはたくさん学んでいく必要がある。ただ、できれば、アメリカのいいところもヨーロッパのいいところも取り入れるのだが、差別化、独自性、つまり、その国のよさ、文化のよさを発揮できるような計画づくりをしていった方がいいと思う。真似するのもいいのだが、やはりその国独自の個性ある街づくり、本当に豊かな暮らしやすい街づくりに向けて、個性を出して将来やっていけるような計画にして貰いたいと思う。
 僕は全世界をずっと旅行していて感じたのだが、国によって、都市を除いて街が全然違うのである。ドイツはドイツのよさがある。スペインはスペインのよさ、アフリカはアフリカのよさ、そしてその国々によって全然個性が違う。だから、日本は日本の個性を大切にした、世界で認められるというより、本当に日本に来てよかったと思えるような、自然を大切にした美しい国家経営というか、建設というか、そういう暮らしのできるような街づくりを是非やっていただきたいと思う。そのためにも、最初にポリシーありき、「理念」ありきだと思う。
 「理念」だけではそういう国家はできないし、街づくりもできないと思うので、どれぐらいの期間をかけて、どんな人をどういう予算を使ってどういうふうにデザインを描いていくのかという形でやっていけば、来世紀はすばらしい日本になるのではないかとは思っている。ただ、それをやるには、本当にいろいろな困難な問題があると思う。
 うまくグランドデザインをして、人間らしさのある、そして自然とマッチした、本当に美しい街づくり、国家づくり、そして本当に自然と調和した暮らし、生活ができるような国を是非目指していただきたい。
 経営しかわからないので、経営の観点から話した。以上である。(拍手)
澤田秀雄委員
 
澤田秀雄委員
澤田秀雄委員
澤田秀雄委員
 

 

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