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受賞団体インタビュー

受賞団体インタビュー

熊本大学新聞社が地域づくりの取組を取材!

令和5年度手づくり郷土賞・大賞部門を受賞した「米米惣門ツアー~永遠に続くストーリー~」(熊本県山鹿市)の地域づくりの現場を、学生団体である熊本大学新聞社の皆様が取材しました。

下町惣門を歩く 地域振興と世代継承の可能性を見る ̶熊本大学新聞社 ツアー参加記

木屋本店・井口圭祐さんをはじめ地域の
方がリレー方式でツアーを案内

「歴史ある街並みだが、地方都市としてはよくあるものではないか?」。記者が山鹿を訪れた際の失礼極まりない第一印象だ。しかし、脳内に抱いていたこうした感情は、ツアー中にどこかへ消え失せてしまっていた。
最初に訪れた「木屋本店」で甘酒を啜りながら軽妙な語り口を聞き、早速引き込まれる。「千代の園酒造」では地域に根付き、技術を高めてきた酒蔵の歴史を聞く。私に同行した弊社記者は幸せそうな顔で試し酒をして、お土産に買って帰る清酒の品定めをしている。その記者に対し「記者の本分を忘れちゃいないか」と内心苦々しく見ていたはずが、「光専寺」楼門の由来を聞き、「せんべい工房」で出来立てのせんべいをかじる頃には、私も無邪気に楽しんでしまっていた。

井口圭祐さんの息子・裕二さんなど
次の世代へと取組が継承されている

なぜこのように惹き込まれるのだろうか。下町惣門会(木屋本店)の井口圭祐さんは「単純に物売りをするツアーではなく、来た人の思い出に残る、子どもも大人も楽しめるような工夫を大切にしている」と語る。商品を売りつけることを全面に押し出さずとも、実際に製造者から歴史やこだわりの解説を受け、参加者は良い商品であると感じ、ツアーが終わる頃には自然とお土産に手が伸びる。井口さんは「山鹿で作られる商品の良さを知ってもらい、新規顧客の開拓もできる。ツアーを通じて様々な効果を派生させている」と取組の意義を強調する。
一貫したテーマも特徴だ。単に古い街並みと地域の人々の営みがそのまま並んでいるのではなく、「米」という共通項で、有機的に結ばれている。通りを歩くと、菊池川水運と共に発展してきた街並みは社会資本として地域住民が整備し、守ってきたことがわかる。通りの景観は丁寧に整えられ、修復箇所も伝統的な景観を壊さないような素材や技術が採られるなど、細部にわたって工夫がなされている。地域社会の複数の店舗や施設を統一したテーマで、技術と誇りを持った地元のプロがリレー方式で説明するという手法は、社会資本たる下町と併せて魅力を伝える強みとなっていた。

せんべい焼きなど米にまつわる
地域産業を体験

別のガイドの男性は「最初は何も分からなくて、参考事例もないので試行錯誤していた」と話す。しかし、良い街並みと良い生産物を知ってほしい、楽しんで欲しいと工夫する中で、活動に参加する人々の間に地域社会を盛り立てていこうという気運が高まっていき、「今では多くの人が訪れ、リピーターも獲得できた」と手応えを口にした。
ツアーが始まってから四半世紀が経とうとする今、地域固有の歴史と技術に根ざした方法で経済的な持続可能性を確保し、地域社会の担い手の世代交代を図っている。初春の風が吹く古い街並みの中に、昔ながらの産業を守りつつ、そこに新たな価値を創造し、地域を振興し次世代に継いでいこうという前向きな感情が満ちていた。

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