建設産業・不動産業

不動産特定共同事業の許可の要件

不動産特定共同事業の許可を受けるためには、不動産特定共同事業法第6条の「欠格事由」に該当しないこと及び同法第7条の「許可の基準」を充足していることが必要です。

欠格事由

許可を受けようとする者が、不動産特定共同事業法第6条各号に定める欠格事由のいずれかに該当するときは、許可を受けることができません。
例えば、宅地建物取引業法第3条第1項の免許を受けていない法人は許可を受けられません(法第6条第2号)。また、第四号事業を行おうとする場合にあっては、金融商品取引法第29条の登録(同法第28条第2項に規定する第二種金融商品取引業の種別に係るもの)を受けていない法人は許可を受けられません(法第6条第12号)。
欠格事由の詳細は以下でご確認ください。

許可の基準

許可を受けようとする者は、不動産特定共同事業法第7条各号に定める許可の基準を充足している必要があります。許可の基準は以下のとおりです。
 
1.資本金要件
不動産特定共同事業は投資家の財産を長期間預かる業であり、その十分な財産的基礎が求められることから、許可を受けようとする者の資本金又は出資の額が不動産特定共同事業の種別ごとに次に定める金額を満たすものであることが必要です(法第7条第1号)。
 
第一号事業者…1億円
第二号事業者…1,000万円
第三号事業者…5,000万円
第四号事業者…1,000万円
 
なお、不動産特定共同事業の許可を受けた後においても、資本金に変更があった場合には、30日以内に変更の届出を提出する必要があります(法第10条)。また、不動産特定共同事業の許可を受けた後、減資等により資本金要件を充足しなくなった場合には、許可取消しの対象になります(法第36条第2号)。
 
2.純資産要件
不動産特定共同事業は投資家の財産を長期間預かる業であり、その財務の健全性が求められることから、許可を受けようとする者の資産の合計額から負債の合計額を控除した額が資本金又は出資の額の100分の90に相当する額を満たすものであることが必要です(法第7条第2号)。
 
要件充足性の判断は、原則として許可の申請の日を含む事業年度の前事業年度末における貸借対照表で行います。なお、不動産特定共同事業の許可を受けた後においても、純資産要件を充足しなくなった場合には、許可取消しの対象になります(法第36条第2号)。
 
3.役員等の過去の不正
不動産特定共同事業に関して不正又は不誠実な行為をするおそれのある事業者の参入を制限するため、許可を受けようとする者又はその役員若しくは政令で定める使用人が、許可の申請前5年以内に、不動産特定共同事業に関し、不正又は著しく不当な行為をしていないことが要件とされています(法第7条第3号)。
 
4.業務管理者の設置
不動産特定共同事業契約の複雑さ等に鑑み、投資家に対する勧誘、契約内容の説明等の業務の適切な遂行を担保するため、不動産特定共同事業を行う事務所ごとに、最低1名、不動産特定共同事業の各種業務の実施に関し必要な助言、指導その他の監督管理を行う業務管理者を設置する必要があります(法第7条第4号)。
 
「業務管理者」は次の(1)~(3)のすべての要件を満たす者である必要があります。
(1)許可を受けようとする者の従業者であること。
(2)宅地建物取引士であること。
(3)次のア~ウのいずれかに該当する者であること。
 ア.不動産特定共同事業の業務に関し、3年以上の実務の経験を有する者
 イ.主務大臣が指定する不動産特定共同事業に関する実務についての講習を修了した者
 ウ.登録証明事業から上記アと同等の能力を有するとの証明を受けている者
 
イ.について、令和5年12月末時点で指定された講習はありません。なお、小規模不動産特定共同事業については、指定講習として小規模不動産特定共同事業「業務管理者講習」があります。
※ ウ.について、令和5年12月末時点で登録された登録証明事業には、ビル経営管理士登録証明事業、不動産コンサルティング技能試験・登録事業、不動産証券化協会認定マスターがあります。
 
退職等の理由により、業務管理者が不在となった場合には、2週間以内に要件を満たす業務管理者を設置する必要があります。なお、業務管理者に変更があった場合には、30日以内に変更の届出を提出する必要があります(法第10条)。
 
5.約款の適合性
投資家保護を図るに当たって、不動産特定共同事業契約が一定の基準に適合した適正な内容で行われることを確保するため、第一号事業又は第三号事業の許可を受けようとする者で、一般投資家を対象に事業を行うことを予定している者は、不動産特定共同事業契約約款の内容が法定の基準に適合するものであることが要件とされています(法第7条第5号)。
 
約款の適合性の審査では、許可を受けようとする者が申請する約款の内容について、法定の基準を充足したモデル約款との相違点を中心に審査します。
モデル約款については、こちらをご覧ください。
 
6.財産的基礎
不動産特定共同事業は投資家の財産を長期間預かる業であり、その経営基盤の安定が求められることから、許可を受けようとする者が、不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる財産的基礎を有するものであることが要件とされています(法第7条第6号、施行規則第12条第1号)。
具体的には、次の(1)及び(2)の基準に該当することを要します。
(1)許可の申請の日を含む事業年度の前事業年度における財産及び損益の状況が良好であること。
(2)財産及び損益の状況が許可の申請の日を含む事業年度以降良好に推移することが見込まれること。
 
財産的基礎の審査では、直近の三事業年度分の貸借対照表及び損益計算書、許可の申請の日を含む事業年度の収支見込み、その後の概ね三事業年度分の収支見込みを確認します。
財務状況が良好であることの一つの指標として、許可の申請の日を含む事業年度の前事業年度末において当期利益を有し、かつ、金融支援(経営再建等を目的とする金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄等)を受けていないことが挙げられます。「不動産特定共同事業の監督に当たっての留意事項について」第3-2(2)をご覧ください。
 
7.人的構成
不動産特定共同事業は投資家の財産を長期間預かる業であり、法令を遵守した適正な業務運営が求められることから、許可を受けようとする者が、不動産特定共同事業を適確に遂行するに足りる人的構成を有するものであることが要件とされています(法第7条第6号、施行規則第12条2号)。
具体的には、次の(1)及び(2)の基準に該当することを要します。
(1)不動産特定共同事業を公正かつ適確に遂行できる組織構成を有すること。
(2)許可の申請をした法人の役員が当該法人以外の法人の常務に従事し、又は事業を営んでいる場合にあっては、当該役員が当該法人以外の法人の常務に従事し、又は事業を営むことにより不動産特定共同事業の公正かつ適確な遂行に支障を及ぼすおそれがないこと。
 
人的構成の審査では、許可を取得しようとする事業の種別、想定する事業や電子取引業務の有無などを総合的に勘案して、適正な業務運営ができる人材の確保、人員配置、そして法令遵守体制が整っているか等を審査します。
 
8.電子取引業務の体制整備
電子取引業務(いわゆるクラウドファンディング事業)を取り扱う場合には、インターネット上で契約成立前の説明や契約の締結を行うにあたって、投資家が事業に係る重要な事項についての情報を十分に得ないまま投資の意思決定を行うことのないよう、許可を受けようとする者が、電子取引業務を適確に遂行するために必要な体制が整備されているものであることが要件とされています(法第7条第7号)。
 
電子取引業務の体制整備の審査では、法第31条の2第1項に規定する事項をホームページ上の見やすい箇所に表示するか、施行規則第54条に定める業務管理体制が整備されているか否か等を審査します。また、「不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン」を遵守できる体制が整っているか審査を行います。

ページの先頭に戻る