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企業のみどりの保全・創出に関する取組みサイトの表題の画像
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取組みの情報発信
近年多くの企業が、自社のみどりの保全・創出に関する取組みを、社会貢献活動等の一環として位置づけ、環境報告書やCSR報告書等に記載するようになっています。
一方、環境報告書やCSR報告書等は、金融市場等における企業評価の基礎情報として活用されており、自社のみどりの保全・創出に関する取組みによる社会貢献や事業戦略を情報発信していくうえで、今後さらに重要な媒体になっていくものと考えられます。
そこで、ここでは金融市場等に対し、より効果的に自社のみどりの保全・創出に関する取組みを情報発信するための環境報告書等の作成のポイントについて、環境報告ガイドライン(2007年版)に沿ってとりまとめました。 環境報告ガイドライン(2007年版)の概要については、こちらをご参照下さい。
※環境報告ガイドライン(2007年度版):環境報告等に関する実務的手引きとして環境省が作成。現在、大規模事業者等を中心に幅広く活用されています。

(1) 基本的な考え方
環境報告ガイドライン(2007年度版)では、報告対象となる情報・指標として大きく5分野が示されており(参考:環境報告ガイドライン(2007年度版)の全体構成概要)、そのうち、緑の保全・創出等に関連する分野・項目としては、主に以下のようなものが挙げられます。
 緑の保全・創出等に関連する主な分野・項目
【分野:『環境マネジメント等の環境経営に関する状況』を表す情報・指標(MPI)】
MP-1-1 事業活動における環境配慮の方針
MP-1-2 環境マネジメントシステムの状況
MP-9 生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用の状況
MP-11 環境に関する社会貢献活動の状況

【分野:『事業活動に伴う環境負荷及びその低減に向けた取組の状況』を表す情報・指標(OPI)】
OP-6 温室効果ガスの排出量及びその低減対策
OP-7 大気汚染、生活環境に係わる負荷量及びその低減対策

環境報告書等の中で、自社の緑の取組みを効果的に情報発信するには、上記の項目に関連付けて出来るだけ具体的に記載することが重要となります。記載にあたって強調するポイントは、企業のCSR格付けに用いられている評価項目(下表参照)のうち緑の保全・創出等に関連するものを参考にすると良いでしょう。

また自社の緑の取組みが、金融市場等からより正当に評価されるようにするためには、当該緑の取組みが、本業のリスクの回避・軽減や事業機会の向上にどのように結びつくのかを出来るだけ分かり易く示すことも重要です。


 企業のCSR格付けで用いられている評価項目のうち緑の保全・創出等に関連する主なもの
社会貢献への対応
基本方針の策定・公表
目標設定・評価・改善
組織体制
資金・物的・人的な支援
自主プログラム
NPO・NGO・市民・地域住民等との協働
従業員のボランティア活動の奨励
地域の学校教育等の支援
環境への対応
環境の方針等の策定・公表
環境目標の設定・計画の策定
環境マネジメントシステムの構築状況
組織体制
環境NPOや環境専門機関との連携
従業員への環境教育
環境対策分野での表彰歴
生物多様性への対応
ガイドライン・指針等の策定
生物多様性民間参画ガイドラインへの対応
枠組みへの参画
組織体制
事業活動による影響の把握
事業敷地内での影響の回避・最小化
外部組織への取組への参画
事業敷地外での自主的な活動
従業員への普及啓発・教育
温室効果ガス削減への対応 温室効果ガス削減のための取組み
注)本表は、日本国内の主要なCSR各付けの中で用いられている各種評価項目のうち、緑の保全・創出等に関連する主なもののみを抜粋したものです。


(2) 緑の保全・創出等に関わる取組みを記載する際のポイント
環境報告ガイドライン(2007年度版)は、報告対象項目ごとに、「基本的な考え方」、「記載する情報・指標」(全事業者に共通して重要性があると考えられるもの)「記載することが期待される情報・指標」(必要に応じて記載することが望ましいもの)、「解説」等が分かり易く整理されています。
ここでは、緑の保全・創出等に関連がある6つの項目について、ガイドラインで整理されている内容を紹介するとともに、併せて緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイントを示しました。


MP-1-1  事業活動における環境配慮の方針
■環境報告ガイドライン(2007年度版)の内容
 事業活動における環境配慮の取組を行うにあたって、事業活動における環境配慮の方針(事業活動における環境配慮の取組に関する基本的方針や考え方)を適切に定め、記載します。
 事業活動における環境配慮の方針は、自らの事業活動に対応した具体的な内容で、経営責任者の緒言との整合が図られていることが望まれます。
(1) 記載する情報・指標
ア.事業活動における環境配慮の方針

(2) 記載することが期待される情報・指標
(1)のほか、例えば次のような情報や指標を記載することが期待されます。

@環境配慮の方針の制定時期、制定方法、全体的な経営方針等との整合性及び位置付け、コーポレート・ガバナンスとの関連
A事業活動における環境配慮の方針が意図する具体的内容、将来ビジョン、制定した背景等に関するわかりやすい説明
B同意する(遵守する)環境に関する憲章、協定等の名称と内容

(3) 解説
事業活動における環境配慮の方針を記載するだけでなく、その説明資料として、事業特性等に応じて、どのような環境負荷があり、どのような事業活動における環境配慮の取組が必要か等、事業活動における環境配慮の方針を策定した背景や理由を記載していることも重要です。
また、事業活動における環境配慮の方針は、事業活動のライフサイクル全体を踏まえ、事業エリア内のものだけでなく、原材料・部材の購入、輸送、製品・サービスの使用・廃棄等の事業活動の上・下流までを対象とすることが必要です。
さらに、事業活動における環境配慮の方針は、我が国の環境基本計画及び循環型社会形成推進基本計画等を踏まえて作成することが期待されます。
なお、環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001 及びエコアクション21 においても、環境マネジメントシステムの構築に当たり、環境方針を策定することが求められていますが、環境報告書の対象組織と認証取得の対象組織が同一の場合は、これらの環境方針と本ガイドラインの事業活動における環境配慮の方針は同じものであると考えられます。
【情報記載にあたっての留意点】
環境配慮の方針については、事業内容や製品・サービスの特性や規模、また事業活動に伴う重要な環境負荷等に対応した適切なものであることが必要です。
■緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイント
◆この項目では、事業活動における環境配慮の取組に関する基本的方針や考え方について、記載することが求められています。
◆自社の事業活動における環境配慮の取組みの中で、緑の取組みの占めるウェイトが大きい場合には、当該方針の中で緑の取組みを積極的に情報発信していくことも考えられます。その際、事業活動によって生じる環境負荷と緑の取組みとの関係について、分かり易く記載しておくことが望まれます。
◆また、事業活動に係わる環境配慮だけでなく、緑の取組みを通じて積極的に環境の向上に努めている場合には、その内容を当該方針の中に記載することも考えられます。
◆また全社的なEMSが構築されていない場合でも、場当たり的な緑化ではなくPCDAサイクルに沿ったマネジメントに基づいて 緑に係わる取組みを実施している旨を記載することが望まれます。
◆このほか、行政機関やその他各種団体等が提唱する緑の保全・創出等に関する枠組みに参画している場合や、環境配慮の方針の策定に際して、緑の保全・創出等に関わるNPOや専門機関などの関与がある場合には、その具体的内容を併せて記載することが望まれます。


MP-1-2  環境マネジメントシステムの状況
■環境報告ガイドライン(2007年度版)の内容
 環境マネジメントシステム(EMS)の構築状況、環境マネジメントの組織体制、環境マネジメント手法の概要、ISO14001 やエコアクション21 等の認証取得状況、従業員教育、環境監査等の状況等を記載します。  また、今後のEMS の導入・構築の拡張計画や検討状況についても記載が望まれます。
(1) 記載する情報・指標
ア.環境マネジメントシステムの状況
例えば、次のような情報や指標を用いて記載することが考えられます。

@全社的な環境マネジメントシステムの構築、運用状況及びその評価とそれを踏まえた今後の方向性(システム及びPDCAサイクルの説明を含む)
A全社的な環境マネジメントの組織体制の状況(環境管理に対する内部統制システムの整備状況、それぞれの責任、権限、組織の説明を含む)及びその組織体制図
B環境に関するリスク管理体制の整備状況
C環境マネジメントシステム構築事業所の数、割合、並びに今後のEMSの導入・構築の拡張計画や検討状況
DISO14001やエコアクション21等の外部認証(自己適合宣言がある場合には、その旨を記載する)を取得している場合には、取得している事業所等の数、割合(全従業員数に対する認証取得事業所等の従業員の割合等)、認証取得時期
E環境保全に関する従業員教育、訓練の実施状況(研修実施回数、教育等を受けた従業員の数、割合、従業員1人当たりの年間平均教育時間数等)
F想定される環境に関する緊急事態の内容と緊急時対応の状況
G環境影響の監視、測定の実施状況
H環境マネジメントシステムの監査の基準、実施状況(内部監査・外部審査の回数)、監査結果及びその対応方法等
I環境マネジメントシステムの全体像を示すフロー図
J事業活動における環境配慮の取組成果の従業員等の業績評価への反映
K社内での表彰制度等
(2) 記載することが期待される情報・指標
(1)のほか、例えば次のような情報や指標を記載することが期待されます。

@SRIインデックスへの組み入れ状況や環境経営度ランキング等の各種表彰・評価の状況

(3) 解説
事業者が自らの環境パフォーマンスを向上させていくためには、その基盤とも言うべき環境マネジメントシステム(EMS)を適切に構築し運用しなければなりません。この環境マネジメントシステムがどのように構築され、どのように運用されているかは、環境報告として環境報告書に記載すべき重要な情報です。また、今後のEMS の導入・構築の拡張計画や検討状況は報告範囲や環境負荷データの収集範囲とも関係するため記載することが望まれます。
なお、環境マネジメントシステムの構築・運用状況は、それぞれの事業者の形態や規模等により異なると考えられますが、それぞれの特性に応じて具体的に記載することが望まれます。
■緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイント
◆この項目では、環境マネジメントシステム(EMS)の構築状況、環境マネジメントの組織体制、環境マネジメント手法の概要、ISO14001 やエコアクション21 等の認証取得状況、従業員教育、環境監査等の状況等について、記載することが求められています。
◆緑の取組みに関しても、EMSの中に位置づけて実施していることを分かりやすく記載することが望まれます。また全社的なEMSが構築されていない場合でも、緑の取組みをPCDAサイクルに基づいて計画的に実施している旨を記載することが望まれます。例えば、自社で保全・創出した緑地について、社会・環境貢献緑地評価システム(SEGES)等の第三者機関による評価・認定を受けている場合には、その旨を具体的に記載するのが良いでしょう。
◆このほか、緑の保全・創出等に関するNPOや専門機関との継続的な連携活動を実施している場合や、緑の保全・創出等活動を通じて従業員に対する実践的な環境教育を行っている場合には、その具体的内容を記載することも望まれます。


MP-9  生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用の状況
■環境報告ガイドライン(2007年度版)の内容
 生物多様性条約(日本は平成5年締結)と新・生物多様性国家戦略(平成14年決定)注)の精神に鑑み、生態系の保全、生物種の絶滅の防止と回復、生物資源の持続可能な利用を達成するための方針、目標、実績等を記載します。
注)生物多様性基本法(平成20年6月6日法律第58 号)に基づく、初の生物多様性国家戦略として平成22年3月16日に「生物多様性国家戦略2010」が閣議決定されています。
(1) 記載する情報・指標
ア.生物多様性の保全に関する方針、目標、計画、取組状況、実績等
例えば、次のような情報や指標を用いて記載することが考えられます。

@事業活動に伴う生態系や野生生物への主要な影響とその評価(海外の生物多様性の豊かな地域における開発を含む)
A原材料調達における生態系や野生生物への主要な影響とその評価(影響が大きい業種の場合には、そのプロセスにおける影響も含む)
B事業活動によって発生し得る生物多様性への影響を回避ないしは軽減するための取組
C所有、賃借、あるいは管理する土地及び隣接地域における生物多様性の保全に関する情報
D生物多様性が豊か、あるいは保護する価値が高い地域(※)に所有、賃借、管理している土地がある場合は、その面積と保全状況等
E生態系の保全・再生のために積極的に行うプログラム及び目標(生物多様性が豊か、あるいは保護する価値が高い土地の買い上げや寄付等による保全活動を含む)
(※) 生物多様性が豊か、あるいは保護する価値が高い地域 : 国立公園、国定公園、地方自治体の指定した保護区域、世界遺産条約やラムサール条約等国際条約による指定地域、希少な野生生物の生息・生育地等が相当します。

(2) 記載することが期待される情報・指標
(1)のほか、例えば次のような情報や指標を記載することが期待されます。

@生産あるいは原材料調達の過程において生物多様性へ与える影響を軽減し、生物資源の持続可能な利用のための配慮がなされた製品やサービスと、それが全製品及び全サービスに占める割合
A(社)日本農林規格協会による有機農産物や栽培期間中に化学合成農薬を使用していない、あるいは節減して栽培した農産物の利用方針や取組状況等
B所有、賃借、あるいは管理する土地及び隣接地域に生息・生育する生物種に関する情報(特に、絶滅が危惧される生物種及びその地域に固有な生物種についての情報)
C事業活動に起因する生息・生育地の改変内容、及び生息・生育地を保護または復元した割合
D山地、農地、市街地等における遊休地を生物多様性の保全のために再び自然を修復した面積
E計画中の事業や、開発の過程における生物多様性や生態系への影響の評価と対策(回避、軽減)の実績
F保護地域あるいは脆弱な生態系からなる地域とその周辺において計画中の事業、及び その事業が生物多様性と生態系に与える影響

(3) 解説
開発や原料調達をはじめ、事業活動は直接的、間接的に生物多様性に大きな影響を与えています。生物多様性及びその重要な構成要素の一つである生態系は、生物・遺伝資源の源泉としての利用価値や、物質循環、気象の調節、文化の源泉等の生態系サービスをもたらしており、私たち人類の生活と事業活動が大きく依存しているものです。過剰な利用や開発等による生態系の破壊は、私たち人類の生活や事業活動を持続不可能にする可能性があるため、十分な配慮を払うことが必要です。
その一方で、生物多様性への配慮を経営システムの中に統合することは、長期的な観点から、リスクの低減や持続可能な企業経営の安定化にも資するものであることを認識する必要があります。
具体的には、生物多様性に影響を与えている以下のような主要な原因について、組織の影響が及び得る事業エリア及び、その上流・下流のサプライチェーンを含めた、より広い範囲で配慮することが望まれます。
また、生物多様性や生態系の保全・持続可能な利用を確保するためには、専門的な知見が不可欠であることから、研究者や専門性の高いNGO・NPO 等、社外の専門家との連携や、IUCN(国際自然保護連合)の「ビジネスと生物多様性:共に活動するためのハンドブック」(日本語版は生物多様性JAPAN 発行)等の企業向けのガイダンスの活用等も有効と考えられます。
最近では、生物資源の持続可能な利用のために水産エコラベル等の認証制度に取り組む事例も増えてきています。
【情報記載にあたっての留意点】
 原材料調達において、生物多様性への影響を把握することが困難な場合もありますが、サプライチェーンマネジメントやグリーン購入・調達の観点からも、自らの購入・調達の方針を明確にしていくことが期待されます。(参照:MP-5、MP-6)注)
注)MP-5,MP-6は環境報告ガイドライン(2007年版)をご参照願います。
■緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイント
◆この項目では、生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用を達成するための方針、目標、計画、取組状況、実績等について、記載することが求められています。
◆生物多様性の保全を目的とした緑の取組みについて記載する場合、当該取組みの状況や実績等だけを記載するのではなく、当該取組みの基本方針や目標、計画、背景等についても併せて具体的に記載することが重要です。生物多様性に関する独自のガイドラインや指針等を策定している場合や、「生物多様性民間参画ガイドライン」(第1版)(平成21年8月20日 環境省自然環境局)(pdf,5.72MB)に基づき生物多様性の取組みを進めている場合、あるいは行政機関やその他各種団体が提唱している生物多様性に関する枠組みに参加している場合等については、その旨を記載することが望まれます。
◆また、生物多様性の保全を目的として、事業敷地内のみならず事業敷地外において自主的に緑の取組みを行っている場合には、その旨を記載することが望まれます。
◆このほか、生物多様性の確保等を推進するために、緑の取組みを行う市民団体等に対する資金・物的・人的な支援を行っている場合や、緑に関わる専門機関・NPO・NGOや市民・地域住民等との協働を行っている場合、従業員に対し緑の取組みを通じて実践的な環境教育等を行っている場合には、その旨を記載することも望まれます。


MP-11  環境に関する社会貢献活動の状況
■環境報告ガイドライン(2007年度版)の内容
 環境保全に関して、事業者が自ら実施する取組、従業員がボランタリーに実施する取組等の社会貢献活動の状況を記載します。
(1) 記載する情報・指標
ア.環境に関する社会貢献活動の方針、目標、計画、取組状況、実績等
例えば、次のような情報や指標を用いて記載することが考えられます。

@従業員の有給ボランティア活動の状況及び延べ参加人数
A加盟又は支援する環境保全に関する団体(NPO、業界団体等)
B環境保全を進めるNPO、業界団体への支援状況、支援額、物資援助額等
C地域社会に提供された環境教育プログラムの状況
D地域社会と協力して実施した環境・社会的活動の状況
Eステークホルダーと協力して実施した、上記以外の活動の状況
F環境保全活動に関する表彰の状況
G緑化、植林、自然修復等の状況
H自社で関与している財団等の助成実績等

(2) 解説
事業者が事業活動における環境配慮の取組を行うと同時に、他のさまざまなセクターと協働し、パートナーシップを築きながら、持続可能な循環型社会の構築に取り組んでいくことが望まれます。その具体的な活動の一つとして、事業者や従業員が自ら行う環境社会貢献活動、環境NPOへの支援、業界団体等での取組等があり、このような社会貢献活動を積極的、自主的に行っていくことが必要です。
この環境に関する社会貢献活動をどのように実施しているかは、環境報告書に記載することが望まれる重要な情報です。
【情報記載にあたっての留意点】
 環境に関する社会貢献活動の状況は、事業者の業種や規模、あるいはそれぞれの考え方等により異なると考えられますが、各事業者の特性に応じた社会貢献活動の状況を具体的に記載することが望まれます。
■緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイント
◆この項目では、環境保全に関して、事業者が自ら実施する取組、従業員がボランタリーに実施する取組等の社会貢献活動の状況について、記載することが求められています。
◆社会貢献活動の一環で行う企業の緑の取組みとしては、緑の取組みを行う市民団体等に対する資金・物的・人的な支援、事業敷地外における自主的な緑の保全・創出等に関わる取組み、従業員に対する緑の保全・創出等に関わるボランティア活動の奨励など、様々なものが想定されます。(1)のG「緑化、植林、自然修復等の状況」以外についても、社会貢献活動実績として緑の取組みに関連するものがあれば、各々の取組みについて、単に取組状況や実績等だけを記載するのではなく、当該取組みの基本方針や目標、計画、背景等についても具体的に記載することが重要です。


OP-6  温室効果ガスの排出量及びその低減対策
■環境報告ガイドライン(2007年度版)の内容
 地球温暖化が進行すると、海面上昇による水害、農産物生産量の減少、伝染病の伝染範囲の拡大、生息環境の変化による一部野生生物の絶滅等、深刻な影響が生じるおそれがあります。それゆえ、大気中の温室効果ガスの安定(地球温暖化防止)という気候変動枠組条約の究極目的を達成するために、その第3回締約国会議で京都議定書(2005 年2 月16 日発効)が採択されました。京都議定書の数値目標を達成するために、事業者として温室効果ガスの排出削減活動を主体的に行う必要があります。
 このため、温室効果ガス排出量(トン-CO2 換算)、すなわち京都議定書対象6物質のそれぞれの排出量及び排出活動源別の内訳と、その低減の基本方針と対策を記載します。
(1) 記載する情報・指標
ア.温室効果ガス等排出量の低減対策に関する方針、目標、計画、取組状況、実績等
イ.温室効果ガス(京都議定書6物質)の総排出量(国内・海外別の内訳)(トン-CO2換算)
ウ.温室効果ガス(京都議定書6物質)の種類別排出量の内訳(トン-CO2換算)

(2) 記載することが期待される情報・指標
(1)のほか、例えば次のような情報や指標を記載することが期待されます。

@温室効果ガス(京都議定書6物質)の排出活動源別排出量の内訳(事業所別、事業者別)(トン-CO2換算)
A京都メカニズムを活用している場合には、その内容、削減量(クレジット量)
B自主参加型国内排出量取引制度に参加している場合には、その内容と削減量
C温室効果ガス排出量の算定を担保する仕組み(第三者検証、ISO14064(温室効果ガス排出・削減量の算定・報告・検証に関する規格)等)を利用した場合には、その内容と削減量
D購入電力の排出係数の推移・見通し

(3) 解説
地球温暖化は、二酸化炭素(CO2)やメタン等の温室効果を有するガスが人間活動の拡大に伴って大気中に大量に排出され、その大気中濃度の上昇に伴い地球全体としての平均気温が上昇する現象です。
この大気中の温室効果ガスの濃度を安定化させることを目的として「気候変動枠組条約」が、1992年に署名開始(日本は1992年署名)、1994年に発効しています。この気候変動枠組条約の目的を達成するために、1997年に京都でCOP3(気候変動枠組条約第3回締約国会議)が開催され、そこで採択された取り決めが「京都議定書」(日本は2002年6月4日批准)です。これは、先進国等に対し温室効果ガスを第1約束期間(2008年〜2012年)に1990年を基準年として一定数値(日本は6%)削減することを義務づけています。ロシアの批准により発効要件が満たされ、2005年2月16日に発効し、我が国も京都議定書の目標を達成することが義務づけられました。この削減目標を達成するために、京都メカニズム等が導入されています。
温室効果ガス排出量は、事業活動に伴う温室効果ガスの排出量の合計、主な内訳を二酸化炭素量に換算しトン(以下「トン-CO2換算」という。)単位で記載します。ただし、CO2以外の温室効果ガスの排出量が僅少である場合には、CO2排出量のみを記載することができます。
温室効果ガス排出量の主な内訳には、温室効果ガスの種類別の内訳及び集計対象とした排出活動の内訳を可能な限り記載します。
【指標算定にあたっての留意点〜関連する事項のみ抜粋〜】
(B) 温室効果ガスの排出削減のための個別対策の導入による削減効果を評価する方法については、対策の種類によってさまざまな考え方がありますが、個々の対策の実態に即した合理的な方法により評価する必要があります。例えば、対策前の排出と対策後の排出量の差を求める方法の他、対策によって削減効果が見込まれる期間に影響を受ける電源が想定できる場合には当該電源の排出係数を電気の削減量に乗じて算定する方法等があります。
(C) 温室効果ガスの削減量について環境報告書に記載する際には、算定に用いた式と排出係数を併せて記載し、算定根拠を明らかにすることが必要です。
■緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイント
◆この項目では、温室効果ガス排出量として京都議定書対象6物質のそれぞれの排出量及び排出活動源別の内訳と、その低減の基本方針と対策について、記載することが求められています。
◆緑の取組みを通じた二酸化炭素の吸収・固定等は、温室効果ガス等排出量の低減対策の一つとして記載することが考えられます。
◆二酸化炭素の吸収・固定等を目的として緑の保全・創出等に関わる取組みを行う場合、単に取組状況や実績等だけを記載するのではなく、当該取組みの基本方針や目標、計画等についても併せて具体的に記載することが望まれます。
◆また、削減効果を評価する方法については、個々の対策の実態に即した合理的な方法によるものとされており、具体的な削減量について記載する際には、算定に用いた式と排出係数を併せて記載し、算定根拠を明らかにすることが必要です。樹木や森林による二酸化炭素の吸収・固定量を算出する方法については、国土交通省や林野庁などのホームページ(国土交通省国土技術政策総合研究所林野庁)で一般公開されていますので、それを参考にするのも良いでしょう。
◆このほか、事業敷地外において二酸化炭素の吸収・固定等を目的とした自主的な緑の取組みを行っている場合には、その旨を記載することが考えられます。また、二酸化炭素の吸収・固定等を目的とした緑の取組みを推進するために、市民団体等への資金・物的・人的な支援を行っている場合、緑に関わる専門機関・NPO・NGOや市民・地域住民等との協働を行っている場合等についても、その旨を記載することが考えられます。


OP-7  大気汚染、生活環境に係わる負荷量及びその低減対策
■環境報告ガイドライン(2007年度版)の内容
 排出規制項目の遵守状況を始めとして、大気汚染物質の排出の状況及びその防止の取組について記載します。さらに、騒音、振動、悪臭の発生の状況並びにその低減対策についても記載します。また、ヒートアイランド現象の緩和等による都市の熱環境改善の取組についても記載します。
(1) 記載する情報・指標
ア.硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)排出量の低減対策に関する方針、目標、計画、取組状況、実績等
イ.大気汚染防止法に基づく硫黄酸化物(SOx)排出量(トン)、窒素酸化物(NOx)排出量(トン)、揮発性有機化合物(VOC)排出量(トン)
ウ.騒音規制法に基づく騒音等の状況(デシベル)及びその低減対策
エ.振動規制法に基づく振動等の状況(デシベル)及びその低減対策
オ.悪臭防止法に基づく悪臭等の状況(特定悪臭物質濃度または臭気指数)及びその低減対策

(2) 記載することが期待される情報・指標
(1)のほか、例えば次のような情報や指標を記載することが期待されます。

@屋上、壁面及び敷地内の緑化や高反射性塗装、保水性舗装等、都市表面被覆の改善につながる建物、構造物への環境対策の状況
A地中熱や河川水等を活用した空調排熱等、大気中への人工排熱の排出削減につながる建物等への環境対策の状況

(3) 解説
一酸化窒素や二酸化窒素等の窒素酸化物(NOx)は、主に物の燃焼に伴って発生し、その主な発生源は工場等の固定発生源と自動車等の移動発生源があります。(移動発生源についてはMP-8 を参照してください)NOx 及び揮発性有機化合物(VOC)は光化学オキシダント、浮遊粒子状物質(SPM)、酸性雨の原因物質となります。
騒音・振動は、その発生源の周辺地域に限定的に存在する物理現象ですが、人の活動する範囲で広く存在するため、工場・事業場、建設作業や自動車、航空機、鉄道等の交通による騒音・振動が及ぼす影響から生活環境を保全することは大きな課題となっています。
騒音の苦情件数はここ数年増加していますが、発生源別にみると、工場・事業場に係る苦情の割合が3 割以上、建設作業に係る苦情の割合が3 割弱を占めています。近年では、低周波音も大きな問題となっています。また、振動の苦情件数を発生源別にみると、建設作業振動に対する件数が最も多く、工場・事業場振動に係る件数がそれに次いでおり、苦情原因として依然大きな割合を占めています。
悪臭の苦情件数は昭和47 年をピークに減少傾向にありましたが、ここ数年は増加傾向にあります。発生源別にみると、畜産農業や製造工場等、かつて問題となっていた業種に係る苦情は横ばいで推移していますが、近年、サービス業等に係る苦情が増加する傾向にあります。
【指標算定にあたっての留意点〜関連する事項のみ抜粋〜】
@ 騒音、振動、悪臭については都道府県知事により指定された地域の場合に該当します。
■緑の保全・創出等に関わる取組みを情報発信する際のポイント
◆この項目では、大気汚染、生活環境に係わる負荷量及びその低減対策とともに、ヒートアイランド現象の緩和等による都市の熱環境改善の取組についても記載することが求められています。
ヒートアイランド対策大綱(平成16年3月30日ヒートアイランド対策関係府省連絡会議決定)では、緑地・水面の減少、建築物や舗装などによって地表面が覆われることによる蒸発散作用の減少や地表面の高温化を防ぐために、緑化等により地表面被覆の改善を図ること等が位置づけられています。
◆ヒートアイランド対策として、屋上緑化や壁面緑化、その他の建築敷地内の緑化等の取組みについて記載する場合には、単に取組状況や実績等だけを記載するのではなく、当該取組みの基本方針や目標、計画等についても併せて具体的に記載することが望まれます。
◆また、事業敷地外においてヒートアイランド対策として自主的な緑の取組みを行っている場合には、その旨を記載することが考えられます。また、ヒートアイランド対策としての緑の取組みを推進するために、市民団体等への資金・物的・人的な支援を行っている場合、緑に関わる専門機関・NPO・NGOや市民・地域住民等との協働を行っている場合等についても、その旨を記載することが考えられます。