建設産業・不動産業

スコット・マルダヴィン氏/Mr. Scott Muldavin

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Q1: 今のお立場で環境不動産に関わりを持つようになったきっかけを教えてください。

A1: 3年半ほど前、米国のグリーンビルディングムーブメントのトップの方から連絡を受けました。当時の私は財務や投資を専門に手掛けており、彼から連絡を受けた時には「サステナビリティとはなんぞや」という感じで、サステナブルな不動産については全く知識がありませんでした。しかし、彼からの連絡を契機に「サステナビリティとは何か」について自分なりに調べました。そこで気付いたことは、当時、サステナビリティに対する財務的な支援という視点が欠けていることでした。そこで私は、コンソーシアムを立ち上げ、サステナブルな側面からの財務的な支援の方法を確立し、自らの会社や顧客に対して実践していこうと決めたのです。

Q2: 環境不動産の市場形成を促進していくための一番大きな課題は何だとお考えですか。また、その解決策・方向性について考えをお聞かせください。

A2: 現在、不動産のサステナビリティを確保するために非常に多くの投資が行われています。一方で、投資家は「既存建物をサステナブルに改善することによって価値を向上させることができる」という確信を持っていないように思います。この「価値に関する問題」を解決するためには、分析のフレームワークと情報を提供することが最大の課題であると思っています。現状では、サステナビリティへの投資というと、あくまでもコスト削減をベースに投資の意思決定が行われており、サステナブルにすることによって向上する不動産価値の全体を見ていないことが問題だと考えています。既存ストックを改修しサステナブルなものにすることによって、コスト削減だけではなく、環境不動産に対する様々な優遇策や補助金にも繋がるとともに、サステナブル不動産を志向するテナントや投資家のニーズにも応えていくことが出来るようになります。サステナビリティへの投資を行うことは、そのような様々なニーズに応えていくことが出来るということを理解する必要があります。

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Q3: 第17回国際土地政策フォーラムの講演では、財務的な見地から環境不動産の持続可能性を評価するための様々な環境要因が示されていますが、現時点で最も企業側が関心を持つ要因は何でしょうか。また、企業側がさらに環境不動産に対して関心を持つにはどのような方法が必要でしょうか。

A3:エネルギーコストは企業が最も関心を持つ要素です。しかし、昔と今ではエネルギーコストに対する見方が変化しつつあります。現在では、コスト削減の観点のみならず、環境にどの程度配慮した建物であるかという観点が意識されはじめています。多くのテナントにとって、エネルギーコスト削減による二酸化炭素排出量の減少は特に重要なものとなっています。それゆえに、オーナーは保有ビルのグリーンレーティングを改善させることでテナント誘致力が高まることが期待でき、さらに企業の社会的責任を果たすことも出来ます。また、他の要因としては、サステナブルな不動産を利用すると健康面でもメリットがあり、そして生産性も上がるという側面についても企業の関心が高まっていると思います。
企業側の関心を高めるためには、企業が理解しやすいシンプルな言葉でコミュニケーションをとるのが最善のアプローチです。構造工学のエンジニアが使うような言葉ではなく、最高財務責任者と同じ土俵の言葉で話をする必要があります。最も重要なことは、投資のリスク特性について十分に伝えうる用語で環境不動産の便益を示していくことであると思います。

 

(2010年10月28日)

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