国土計画

エコロジカル・ネットワークに関する調査

エコロジカル・ネットワークとは

 明確な定義はありませんが、おおむね野生生物が生息・生育する様々な空間(森林、農地、都市内緑地・水辺、河川、海、湿地・湿原・干潟・藻場・サンゴ礁等)がつながる生態系のネットワークのこととして使われる言葉です。生態系ネットワークと呼ばれることもありますが、使われ方に違いはないようです。

 平成10年に策定された 『21世紀の国土のグランドデザイン』 において、国土の自然環境の保全・回復には、野生生物との共存のため安定した生態系を成立させることが必要であり、地球規模・全国規模・地域規模等様々なレベルの生態系のまとまりを考慮して、野生生物の生息・生育に適した空間の連続性・一体性を確保すること、すなわち国土規模での生態系ネットワークの形成を目指す、と国土計画の中で初めてエコロジカル・ネットワークの概念が示されました。

 平成20年に策定された 『国土形成計画(全国計画)』 においても、人と自然の共生を確保していくためには、健全な生態系の維持・形成が不可欠であり、エコロジカル・ネットワークを形成することを通じて自然の保全・再生を図ることが必要としています。このため、特に、生活様式の変化や産業構造の転換等によって管理水準が低下している里地里山の適正な保全・管理や、河川・沿岸域や都市内の低未利用地等、かつての自然が失われた環境の再生を推進していくことが重要としています。

『生物多様性国家戦略2012-2020』 では、エコロジカル・ネットワーク(生態系ネットワーク)の形成により、野生生物の生息・生育空間の確保、良好な景観や人と自然とのふれあいの場の提供、気候変動による環境変化への適応、都市環境・水環境の改善、国土の保全など多面的な機能の発揮が期待できるとしており、生物多様性に関する世界目標である愛知目標の達成に向けた国別目標でもエコロジカル・ネットワークの形成を推進することを掲げています。

 
エコロジカル・ネットワークの形成にあたっては、核となる地域(コアエリア)、外部との相互影響を軽減するための緩衝地域(バッファーゾーン)、生物が分散や移動して個体群が交流し、種や遺伝的な多様性を増すため、これらの生息地をつなげる回廊(コリドー)を、適切に配置し保全することが大切と考えられています。「エコロジカル・ネットワーク」や「生態系ネットワーク」という言葉を用いずに、このような概念を示している計画や事業もあります。

 例えば、『緑の回廊』は、野生動植物の移動経路を確保し生息・生育地の拡大と相互交流を促すために、国有林の保護林(野生動植物の保護、遺伝資源の保存等を目的として設定されている)を中心にネットワークを形成する取組です。分断された個体群の保全と個体群の遺伝的多様性の確保、生物多様性を保全するはたらきを発揮させるため、適切に森林の維持を図り、森林整備の必要がある場合には、下層植生の発達や裸地化の抑制を図り、緑の回廊全体として、樹種構成、林齢、樹冠層等の多様化を図るための森林施業を実施することとされています。

これまでの調査の概要

国土政策局では、エコロジカル・ネットワークの形成を推進するため、以下のような調査を行ってきました。

平成22年度 『持続的なエコロジカル・ネットワーク形成に関する調査』
 〈目次・概要 本編 参考資料

エコロジカル・ネットワーク形成に資する取組の中で、効果や活動が継続性・発展性を保っていると考えられる事例の管理手法等を分析。

平成21年度業務において検討したエコロジカル・ネットワーク形成における評価手法を用いて、モデル ケースの評価を試行。


平成21年度 『エコロジカル・ネットワーク形成の推進に関する調査』
 〈目次・概要 本編(1/32/33/3) 参考資料(1/32/33/3)〉

エコロジカル・ネットワーク形成による多面的効果や人間が受ける恩恵について整理。

エコロジカル・ネットワーク形成に関する評価体系(施策の実行度合い、生態系の健全性、人間が受ける恩恵)を試作。


平成20年度 『効率的・効果的なエコロジカル・ネットワーク形成手法に関する調査』
   〈目次・概要 本編 事例集 参考資料〉

全国で実施されている生態系の保全・再生・創出に関わる公共事業等の事例を整理し、エコロジカル・ネットワーク形成に資する効果を検証。

検証を踏まえ、効率的・効果的なエコロジカル・ネットワーク形成手法を提示。


平成20年度 『中部圏・四国圏における広域レベルのエコロジカル・ネットワーク構想の策定に関する調査』
 〈目次・概要 本編 事例集(中部1/22/2 四国1/22/2) 参考資料

中部圏と四国圏をモデルケースとして、国土交通省所管のエコロジカル・ネットワーク形成に資する計画や事業等の事例を整理。


平成19年度 『エコロジカル・ネットワーク形成の具体的展開に関する調査』
 〈目次・概要 本編 参考資料

地方公共団体等が作成するエコロジカル・ネットワーク構想の事例や、国の省庁等が進める制度・事業事例などを収集・整理。

広域レベルのエコロジカル・ネットワーク構想を策定する際の考え方や進め方を示したガイドライン(素案)を策定。


平成18年度 『エコロジカル・ネットワーク形成のための推進方策検討調査』
 〈目次・概要 本編(1/22/2) 参考資料

全国レベルのエコロジカル・ネットワークの構想及び構想図を作成。

地域ブロックレベルのエコロジカル・ネットワークの構想及び構想図の作成手順を策定。

近畿圏をモデルとしたエコロジカル・ネットワーク構想の作成と推進方策について検討。


平成17年度 『既存ストック等の効率的管理による環境の保全・再生・創出方策検討調査』 

国土レベルで重要となる自然環境及びその配置状況を明らかにし、全国レベルのエコロジカル・ネットワーク図(試案)を作成。

エコロジカル・ネットワーク構築の基盤となる既存ストック等の効率的管理に向けた各省庁の事業連携方策を検討。(ケーススタディ:兵庫県)

オランダのエコロジカル・ネットワークに係る事業について、資料収集及びヒアリングを実施し、事業進捗の背景について、法制度・予算・社会状況等の面から分析。


平成16年度 『エコロジカル・ネットワークの構築に向けた公共事業連携方策検討調査』

エコロジカル・ネットワーク構築のための公共事業連携方策として、「連携計画」及び「連携事業」の基本的考え方を提示。

関係省庁や地方公共団体等による関連分野共通のエコロジカル・ネットワーク構想策定の具体的方法論を提示。

~ テーマ別 ~

事例集

エコロジカル・ネットワークの形成に貢献すると考えられる公共事業(H20)

国土交通省が所管するエコロジカル・ネットワーク構想の策定に資する中部圏と四国圏における「計画」「事業」(H20)

国の機関のエコロジカル・ネットワーク構想に資すると考えられる制度・事業の現状(H19)

全国における地方公共団体のエコロジカル・ネットワーク構想(H19)

オランダにおけるエコロジカル・ネットワークに係る事業の進捗状況(H17)


形成手法

効果的・効率的なエコロジカル・ネットワーク形成手法(H20)

広域レベルにおけるエコロジカル・ネットワーク構想を策定する際の考え方、進め方等を示したガイドライン(H19)

地域ブロックレベルにおけるエコロジカル・ネットワーク構想及び構想図の標準的な作成手順(H18)

各省庁によるエコロジカル・ネットワークの形成に資する既存ストックの管理方法(H17)

関係省庁や地方公共団体等による関連分野共通のエコロジカル・ネットワーク構想策定の具体的方法論(H16)

エコロジカル・ネットワーク構築のための公共事業連携方策・「連携計画」「連携事業」の基本的な考え方(H16)


構想・構想図

全国レベルのエコロジカル・ネットワーク構想図(H18)

重要な自然環境の配置と構想図素案(H17)


評価手法

モデルケースによる評価体系の検証(H22)

エコロジカル・ネットワーク形成による多面的機能の整理、形成に関する評価体系の試作(H21)



~ リンク ~

● 国土交通省国土政策局環境政策課 自然共生と生物多様性の保全

● 環境省自然環境局自然環境計画課 全国エコロジカル・ネットワーク構想(H20)

お問い合わせ先

国土交通省国土政策局総合計画課国土管理企画室
電話 :03-5253-8111(内線29344)
直通 :03-5253-8359 (平成26年3月14日)

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