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河川局


議事概要

第2回きれいな海辺アクトフォーラム

〜地域住民等と連携した海岸漂着ごみのモニタリングのあり方を探る〜


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議事概要


(敬称略)

  • 開催経緯について

○これまで、様々なところで、様々な団体が主催してのごみ拾い、ごみ調査というものがなされてきています。いろいろな人が関心を持って取組んでいるにも関わらず、日本では、海のごみ問題についてきちんとした対策の仕組みというものがまだ整っていません。

○関係省庁による連絡会というものが発足してはいるが、市民側との有機的な結び付きには至っていません。市民側においても、どこで誰がどんなことをやっているかという情報が、きちんと把握できるような組織も未だ構築されていない。

○「島ゴミサミット・つしま会議」(2004年10月、長崎県対馬市にて開催)において、海のごみ問題の解決に向けて、情報が共有できるいわゆるプラットホームが必要ではないか、との意見が多く出された。

○第2回きれいな海辺アクトフォーラムの開催に際し、内容を具体的なテーマに絞った討議の場にしてほしい、という提案を受けていただいた。今回は、海岸ごみのモニタリングを主要なテーマとした。

  • <第1部>

    (1)海のごみに関するモニタリングの展開と実施管理について

     敷田麻実 (金沢工業大学情報フロンティア学部教授)

    ○この会議の参加者は、全員当事者というように考えたい。これまで、所管する官庁に対して文句を言う、対策を問うというスタイルをすることがありますが、それでは解決できない問題であるということが、海のごみ問題については共有されてきた。

    ○この問題に関わってきた方たちは、一つのものを共有してきたわけではない。簡単に言うといろいろな流派があり、やり方が微妙に違って、いざ何かを一緒にやろうとすると、どうも合わないというところが出てきてしまう、という現実もある。

    ○このテーブルに来られてない方にとっては、それが日常的に重要な問題と認識されていないという現実があります。ここから先のステップというのは、「危機だ。危機だ。」と叫ぶことではなしに、上手に説得する、仲間を増やす、支援を取り付けるといったプロセスになるだろうと思います。もっとわかりやすいアプローチの仕方、説明のわかりやすさ、というものを意識して創っていかなければいけない。

    ○プラットホームに立っている皆さんの横にいる人は、ぜんぜん知らない人です。プラットホームというのはいろいろ関係のない人が立っているけれども、列車に乗り込むという目的は共有しているというような仕組みと考えたとき、ルールや決め事が必要になる。海岸ごみの対策についても、たぶん必要な時期にきている。流派があって、それぞれが実績を上げながら、共有されていないがために大きな流れを創り出せないでいる。

    ○プラットホームを創るというのは、具体的な仕組みを創っていくことであって、仲良くやろうという合意ではない。

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(2)海岸漂着ごみモニタリングの整理と進め方

 藤枝 繁 (鹿児島大学水産学部助教授)

○海岸ごみのモニタリングについては、大きく分けて総量推定型、それから構成割合を調べるという方法、それから特定のアイテム、単品を広域で調査したり、特定の地域で調査したりして進められている。

○構成割合調査型では、処分方法の検討、処理技術の開発などにデータが有効に使われる。

○今後の展開について専門性の軸で分けると、原因の追求は専門性の高い方、市民の参加する方は現象の把握、というように目的を分担する。対策については、原因追求の方は発生抑制に、現象把握の方は漂着後の処理の検討資料として利用できる。

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表1)国内における主な海洋ゴミモニタリング手法の分類整理

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図1)海岸漂着ごみモニタリング手法の実施者による位置付け

○いろいろな団体が個別に行いながら個別のデータを持ち、その個別のデータを対策に利用しているところもあれば、どういう対策をとればいいか分からなくて止まっているところもある。

○モニタリングの実施団体を対策のプラットホームに乗せて、それからさらにモニタリングのプラットホームの上に乗せ、データを共有しながら対策を展開していくこと。対策のプラットホームを最初に創らないといけない。

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図2)海岸漂着ごみモニタリングの目的と展開方向

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図3)海岸漂着ごみに対する今後の取り組み

○越境ごみの監視には、東シナ海と日本海の境目にある対馬、日本海の中央部と北端の青森県辺りにしっかりとしたモニタリングサイトを設置すること。また、日本からの流出の視点で、小笠原にも設置すべきではないか。

○モニタリングの目的には、総量、構成割合、増減、排出起源の解明・把握があり、そこから対策を検討していかないといけない。排出の抑制策、回収処分の方法、技術開発も必要。さらに漂着ごみの監視(危険物など)、漂着ごみ対策の効果の検証などを検討項目に入れてモニタリングを実施していかなければならない。

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(3)漂流・漂着ごみに関する関係省庁連絡会における取組み

 田中紀彦 (環境省地球環境局環境保全対策課課長補佐)

○平成12年に各省の間の情報交換などを行う場として設置した。国土交通省(河川及び港湾)、海上保安庁、水産庁、気象庁、経済産業省、環境省(連絡会事務局)で構成されている。

○中断していた時期もあるが、平成16年度は3回開催した。

○環境省では、海洋でのプラスチックの浮遊状況についての調査、海洋環境モニタリング調査をしていて、その中で把握しているものがある。また、所管の財団法人環日本海環境協力センターの方で、漂着ごみの調査を行っている。

○連絡会ではモニタリングの他、対策についても現状の整理を進めており、今年の島ゴミサミットの場までにまとまれば提示したい。

○環境省で新しく予算措置をした。国際的な環境問題の視点から、近隣諸国やUNEP・国連環境計画と協調した取組みを行っていくため、まず漂着ごみの実態調査を予測手法の検討ともリンクさせて調査したい。また、国際機関との協力の下に国際的なワークショップを開いて、現状についての共通認識を専門家レベルでつくりたい。

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  • <第2部>

《各省庁から》

○水産庁では、所管する社団法人海と渚環境美化推進機構において全国の自治体へのアンケート調査を実施してきた。現在予算が付けられていないが、引き続き自主的に行っていただいている。これは、回収ごみの総量や参加人員数を把握するもので10年以上行っている。また、平成15年までに北太平洋を中心に海のごみのモニタリングをしているが、その結果、ハワイ北西沖に多いというデータが採取されている。
 トロ箱として使われているものは7割以上リサイクルが進んでいるが、養殖の筏を浮かすためのフロートとして使われている発泡スチロールについては、委託費でリサイクルシステムの開発を進めている。
 海と渚環境美化推進機構の調査結果については、過去のデータの量の把握は経年的にみればある程度傾向はつかめるので、通年での整理をして公表したい。

○国土交通省の海岸室では、平成12年に一度海岸ごみについての調査を行っている。全国で380海岸、海岸延長520キロメートルを対象としたもの。

○気象庁では5つの観測船を持っていて、年4回季節ごとに観測をしている。船のブリッジから漂流しているごみを監視して、カウントだけしている。約30年のデータの積み重ねがあり、ここ数年、以前はあまりなかった赤道の近くで、ごみが少し増えているようだ。

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話題提供(1)

 兼廣春之 (東京海洋大学海洋学部教授、日本財団/JEAN・モニタリング手法開発運営委員会委員長)

○大学では、世界一周航海を行う中で、海面に浮遊している漂流ごみの調査を3,4年継続して行っている。これからデータの共有化を含めて、活かしていくことが必要になってくる。

○海と渚環境美化推進機構による40都道府県ほどの年間の清掃活動調査から、50万立方メートル、重量で約10万トン前後が生活の中から排出されていると推定。生活廃棄物のうち、0.1%〜0.2%の量が海岸に流れ出ていっている。

○昨年、日本財団とJEANが中心になって、新しいモニタリング手法の検討委員会を立ち上げた。現在検討中であるが、最終案をまとめるのが難しいところにきている。指標アイテムをどういったようなものにするのか、全国的な調査海域をどうやって選定するのか、海岸のモニタリングの範囲をどう決めるのか、未だ決まっていない。活動費用の確保など重要な問題もある他、実施体制の問題、モニタリング結果の共有の問題についても検討が必要。

○一般の方に理解しやすいモニタリングの手法として考えた場合、そのベースとなるのはICC(国際海岸クリーンアップ)の基本データ。ある程度認知されている。

○一方で、飲料缶など特定のアイテムについての調査は、ごみの流入や滞留ということも解析できるメリットもある。

○国の行政の関わり、その責任というものはやはり重要になってくる。やはり予算の問題が欠かせないし、恒常的に対策ができるような予算化をしてもらいたい。

○海上保安庁では、海洋環境保全思想の普及・啓発活動の一環として、各地方の海上保安部署が、市民の方々の協力を得て、全国の海岸で漂着ごみ調査を行っている。

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話題提供(2)

 藤谷亮一 (財団法人環日本海環境協力センター調査研究部)

○環日本海環境協力センターは、環日本海の環境保全を図ることを目的に設立された。

○96年から海辺の漂着物調査(埋没物も含む)を開始した。当初、この調査は、この調査活動を通して、日本海を取り囲む日中韓露の自治体間の連携協力関係を構築することが主たる目的であった。現在、日本海側の16自治体が参加している。

○調査を継続していく中で、海辺の漂着物を含む海洋ごみ問題は、身近で重大な海洋環境問題ではないか、ということがわかってきた。

○「島ゴミサミット・つしま会議」に参加したことにより、対馬の漂着物の被害状況を体感でき、この問題に関して、もっと連携協力していかなければならないことを再認識させられた。

○調査手法としては、ICC/JEANの手法に種類別に重量を測るものを少し加えたもの。2003年度の調査結果では、10メートル×10メートルの区画に、平均で、重量ではペットボトルに換算して約70本、個数では427個ということが分かった。

○この調査で得られた結果をもとに、日本の海岸線の漂着物の重量を概算すると、約10万トン余りの漂着物があり、このごみを仮に処理するとなると、一般廃棄物の処理料金から約50億円余りの費用がかかることがわかった。

○今後、センターの調査は、ネットワークの形成から、共同実施体制に移行し、情報の共有化、公表、というところに力を入れていきたいと考えている。

○今後のプラットホームという枠組みの中で、センターが連携協力体制ができるところがあれば、可能な限り対応していきたい。

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話題提供(3)

 西上浩己 (総合科学株式会社海域環境部)

○海岸を一斉にきれいにリセットして、その後どう汚れていくのかを調べる3つのモデル地域のうちの一つとして、淡路島が取上げられた。その関係団体の一つである瀬戸内海環境保全協会に会社より出向(主担当の中西の代理として今回の報告)。

○海岸のリセットは島内外の約150名が参加、この中でモニタリング参加者を公募し新たな組織を立ち上げた。モニタリングは概ね2ヶ月に1回実施。

○海岸をきれいにしようと来た参加者には、モニタリングの目的や内容の事前説明が重要になる。

○新たな組織を立ち上げた場合、海草教室などお楽しみを加えるにも、これにも費用が必要。通信連絡費、軍手、印刷物の配布などにも活動資金が必要になる。

○モニタリングを実施した中で、再認識された課題として5つ。「人材」「地域の組織づくり」では、地域での活動は、地元の人が中心になってもらわないと継続していく上で課題となる。「活動資金」をどのようにするのか、「持続性の確保」も重要な課題。 「満足感」をどう充足させるのか、捨てる人、拾う人の関係だけでは満足できなくなり、それぞれがどのようにつながるか、というようなことがわかる仕組みが必要になる。

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話題提供(4)

 孫 明修 (日韓市民スクエア代表)

○韓国では、海洋に関する政府機関として日本の省にあたる「海洋水産部」がある。また、国策のシンクタンクの一つに「海洋水産開発院」(KMI)があり、この問題に対してのリーダーシップを担ってきた。

○97年に海洋水産部がKMIに海のごみについての管理問題の研究を委託したことをきっかけに、モニタリングシステムを民間団体、市民団体とで共同開発し、展開している。民間団体の調査結果をKMIが分析し、それを基に海洋水産部に政策提言するしくみ。

○中国、ロシアや日本を含めた物流が大きく進展しようとしている、中国が発展する中で海洋環境をいかに管理していくか、韓国では非常に重視している。

○2000年初頭、民間団体のネットワークができてくると、単に調査のためのモニタリングではなく、地域の人々に対しモニタリングを通して環境問題に関心を持ってもらうなど、地域に根を張っていく。このネットワークの中で、環境教育の教材なども生まれてきた。

○現在、民間のモニタリングを吸い上げて政策化する動きは、停滞状態にある。それは、政策の基本骨格がかなり実現されてきたからである。

○この1年、海洋水産部が海洋生態系の保全及び管理に関する法律の制定を準備している。この中で、環境負荷を与える事業者等からの負担金で基金をつくり、クリーンアップを含めた活動費を捻出する仕組みも議論されている。モニタリングの環境教育的な効果が高く、その継続費用の捻出など、沿岸域の自治体のまちづくりを含めたシステムづくりの段階に入っている。

○また、強化プラスチック製の漁船が放置されている問題に対しては、アルミニウム合金系の漁船の建造費用への支援を行っている。漁師が回収したごみの買取制度への予算も、今年度は拡大の方向。

○モニタリングの積み上げがどのように政策のバージョンアップにつながるのか、という視点での意見を出していく必要がある。

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