国土交通白書 2025
第1節 地球温暖化対策の推進
(1)まちづくりのグリーン化の推進
2050年ネット・ゼロの実現に向けて、脱炭素に資する都市・地域づくりを推進していくため、「まちづくりのグリーン化」に取り組んでいる。具体的には、都市のコンパクト・プラス・ネットワークや「居心地が良く歩きたくなる」空間づくりを進め公共交通の利用の促進等を図ることでCO2排出量の削減につなげる「都市構造の変革」、エネルギーの面的利用や環境に配慮した民間都市開発等を推進することでエネルギー利用の効率化につなげる「街区単位での取組」、グリーンインフラの社会実装の推進等により都市部のCO2吸収源拡大につなげる「都市における緑とオープンスペースの展開」の3つの柱で取組を進めている。
さらに、まちづくりGXとして、都市緑地の多様な機能の発揮及び都市開発における再生可能エネルギーの導入促進やエネルギーの面的利用の推進を図る取組等を進めるとともに、各取組を評価する優良緑地確保計画認定制度(TSUNAG)や脱炭素都市再生整備事業に係る計画認定制度により、民間主体によるこれらの取組を推進する。
(2)環境にやさしい自動車の開発・普及、最適な利活用の推進
環境性能に優れた自動車の普及を促進するため、燃費基準による自動車の燃費・電費の向上促進やエコカー減税等による税制優遇措置を実施している。また、地球温暖化対策等を推進する観点から、関係省庁とも連携し、トラック・バス・タクシー事業者等に、燃料電池自動車、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車等の導入に対する補助を行っている。また、車載用蓄電池のリユースや車両からの給電設備の整備を促進し、再生可能エネルギーの有効活用に貢献する。
(3)道路におけるネット・ゼロ実現に向けた取組
ネット・ゼロの実現に貢献し、道路の脱炭素化の取組を推進するため、「道路分野の脱炭素化政策集Ver.1.0」を策定した。充電・水素充てんインフラの整備促進、安全・安心な歩行空間や自転車等通行空間の整備等による自動車交通量の減少等を通じたCO2排出の削減、ダブル連結トラックの利用環境の整備や自動物流道路の実現に向けた検討等による低炭素な物流への転換、渋滞対策等の推進、LEDの道路照明への導入や低炭素な材料の導入促進による道路のライフサイクル全体の低炭素化等により、道路分野の脱炭素化を推進している。
(4)公共交通機関の利用促進
自家用乗用車からCO2排出の少ない公共交通機関へのシフトは、地球温暖化対策の面から推進が求められている。自家用車だけに頼ることなく移動しやすい環境整備を図る観点から、MaaSやコンパクト・プラス・ネットワークの推進、まちづくりと連携した公共交通ネットワークの再編、バリアフリー化の促進等による公共交通サービスの更なる利便性向上を図るとともに、エコ通勤優良事業所認証制度を活用した自治体・事業者によるエコ通勤の普及促進に取り組んだ。
今後、全国各地の「交通空白」の一つ一つの解消等に向けて、令和7年度から9年度までを「交通空白解消・集中対策期間」と定め、地方運輸局・運輸支局による自治体や交通事業者に対する伴走支援や、パイロットプロジェクトの推進、民間の技術やサービスの導入、十分な財政支援など、あらゆるツールを総動員し、地域交通のリ・デザインを全面展開していくこととしている。
また、「リ・デザイン」の全面展開を進めるため、地域交通分野におけるDXを推進する。具体的には、MaaSや配車アプリ等のデジタル技術を活用した交通サービスの高度化など、地域交通におけるデジタル技術の活用を一体的に進めるため、ベストプラクティス創出や標準化の推進等を行う。
(5)高度化・総合化・効率化した物流サービス実現に向けた更なる取組
国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)はトラックが最大であり、5割を超えている。トラックのCO2排出原単位は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、物流部門におけるCO2排出割合は、トラックが太宗を占めている。
国内物流を支えつつ、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。更なる環境負荷の小さい効率的な物流体系の構築に向け、大型CNGトラック等の環境対応車両の普及促進、港湾の低炭素化の取組への支援や冷凍冷蔵倉庫において使用する省エネ型自然冷媒機器の普及促進等を行っている。また、共同輸配送やモーダルシフトの促進、省エネ船の建造促進等内航海運・フェリーの活性化に取り組んでいる。加えて、「エコレールマーク」(令和7年4月現在、商品180品目(155件)、取組企業100社を認定)や「エコシップマーク」(7年3月末現在、荷主235者、物流事業者263者を認定)の普及に取り組んでいる。貨物鉄道においては、4年7月の「今後の鉄道物流の在り方に関する検討会」における提言を踏まえ、貨物鉄道が物流における諸課題の解決を図る重要な輸送モードとして、その特性を十分に活かした役割を発揮できるよう、指摘された課題の解決に向けて関係者と連携して取り組んでいる。
また、港湾においては、我が国の港湾や産業の競争力強化と脱炭素社会の実現に貢献するため、脱炭素化に配慮した港湾機能の高度化や水素・アンモニア等の受入環境の整備等を図るカーボンニュートラルポート(CNP)の形成を推進しており、水素を燃料とする荷役機械の導入促進の検討、低炭素型荷役機械の導入支援等を行った。さらに、国際海上コンテナターミナルの整備、国際物流ターミナルの整備、複合一貫輸送に対応した国内物流拠点の整備等を推進することにより、貨物の陸上輸送距離削減を図っている。
このほか、関係省庁、関係団体等と協力して、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、荷主と物流事業者の連携による優良事業者への表彰や普及啓発を行っている。総合物流施策大綱(2021~2025年度)策定後は、「物流DXや標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」、「労働力不足対策の推進と物流構造改革の推進」、「強靱で持続可能な物流ネットワークの構築」の3つの柱に即した取組も表彰対象とし、物流分野全般の課題解決に資する取組を幅広く周知している。
(6)鉄道・船舶・航空・港湾における脱炭素化の促進
①鉄道分野における脱炭素化の取組
鉄道分野については、令和5年5月に出された「鉄道分野におけるカーボンニュートラル加速化検討会」の最終とりまとめにおいて、鉄道分野のカーボンニュートラルが目指すべき姿と、それに向けて取り組むべき施策の方向性を整理したところであり、同とりまとめを踏まえ、関係省庁とも連携しながら、エネルギー効率の高い鉄道車両の導入、水素燃料電池鉄道車両の開発やバイオディーゼル燃料の導入等を推進するほか、鉄道アセットを活用した再生可能エネルギーの導入拡大、環境優位性のある鉄道の利用促進等の取組を進める。
具体的には、鉄道事業の低炭素化に係る補助制度等鉄道事業者の積極的な取組を後押しするとともに、鉄道の脱炭素に関心を持つ幅広い主体が参加する「鉄道脱炭素官民連携プラットフォーム」における情報共有、協力体制の構築を通じて、鉄道分野における脱炭素化の取組を推進していく。
②海運における省エネ・低脱炭素化の取組
国際海運分野においては、国際海事機関(IMO)において令和5年に合意された「2050年頃までにGHG排出ゼロ」等の目標を達成するための新たなルールの策定に向けた検討が進められているところ、日本はこれまで各国と協力し、具体的な条約改正案を提案するなど、燃料GHG強度の段階的な規制やゼロエミッション燃料へのインセンティブ制度等のルール策定の議論の着実な進展に貢献している。加えて、3年度より、グリーンイノベーション基金を活用して水素・アンモニア等を燃料とするゼロエミッション船の技術開発を行っており、6年8月には世界初の商用アンモニア燃料船(タグボート)が竣工した。内航海運分野においては、荷主等と連携した離着桟・荷役等の運航全体で省エネとなる連携型省エネ船の開発・導入や、省エネルギー性能の見える化(内航船省エネルギー格付制度(6年3月末時点で172隻認定))を推進している。また、LNG等のガス燃料船、メタノール燃料船、水素燃料電池船、バッテリー船等の導入・実証を推進している。さらに、既存船舶にも利用可能なバイオ燃料をはじめとする代替燃料の利用に向けた環境整備を図る等、関係省庁と連携して、一層の船舶の低・脱炭素化を推進している。
造船・舶用工業分野については、令和6年度から、ゼロエミッション船等の建造に必要となるエンジン、燃料タンク、燃料供給システム等の生産設備及びそれらの機器等を船舶に搭載するための設備等の整備への支援を実施している。
③航空分野のCO2排出削減の取組
航空の脱炭素化に向けて、航空会社や空港会社による主体的・計画的な脱炭素化の取組を後押しすることが重要であり、航空法等に基づく「航空運送事業脱炭素化推進計画」及び「空港脱炭素化推進計画」の認定等を進めている。
具体的な取組として、航空機運航分野においては、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、官民協議会の場等を活用して関係省庁や民間事業者と連携しながら、SAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の導入促進、管制の高度化等による運航の改善、機材・装備品等への環境新技術の導入等に取り組んでいる。特にCO2削減効果の高いSAFについては、2030年時点の本邦航空会社による燃料使用量の10%をSAFに置き換えるという目標を設定しており、経済産業省等と連携し、国際競争力のある価格で安定的に国産SAFを供給できる体制の構築や、国産SAFの国際認証取得に向けた支援等に取り組んでいる。
空港分野においては、2025年3月末時点で48空港の空港脱炭素化推進計画が策定され、空港施設・車両等からのCO2の排出削減、空港の再エネの導入等に取り組む。また、「空港の脱炭素化に向けた官民連携プラットフォーム」を活用し、空港関係者等と情報共有や協力体制を構築するとともに、空港関係者の意識醸成や空港利用者への理解促進を図る。
④港湾におけるカーボンニュートラルポート(CNP)形成の推進
港湾においてはCNPの形成を推進しており、港湾管理者が作成する港湾脱炭素化推進計画について作成費補助等の支援を行うと共に、横浜港・神戸港における水素を燃料とする荷役機械の実証事業について手続や機材調達等を進めたほか、メタノールバンカリング拠点の形成に向けた検討会開催による知見取りまとめ、九州・瀬戸内地域及び大阪湾・瀬戸内地域のLNGバンカリング船等、LNGバンカリング拠点の整備、低炭素型荷役機械の導入、船舶に陸上電力を供給する設備の導入を推進した。また、これらの取組を見える化し港湾のターミナル全体の脱炭素化を促進するため、CNP認証を創設した。更に、CNPの形成に資する水素等の受入環境整備に向けた取組については、水素等サプライチェーンの構築の促進のため、水素・アンモニア等の受入環境整備に関するガイドライン作成等に取り組んだ。加えて、ブルーカーボンの活用、洋上風力発電の導入等を推進した。
(7)住宅・建築物の省エネ性能の向上
2022年6月の建築物省エネ法の改正により、2025年までに原則すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合が義務化されることとなった。当該改正法の円滑な施行のため、2024年10月から12月にかけて住宅・建築物の設計・施工等に携わる方を対象に、全国講習会等を開催した。また、省エネ性能が市場において適切に評価されるよう、住宅・建築物の販売・賃貸事業者に対して、告示に規定する省エネラベルを用いて表示する制度が2024年4月に施行された。また、省エネ性能の詳細な評価が困難な既存住宅については省エネ性能の向上に資する改修等を行った部位を表示する省エネ部位ラベルを新たに設定し、同年11月より開始した。加えて、再エネ設備導入促進のための措置として、市町村が定めた促進区域内では、建築士から建築主に対する再エネ設備についての説明義務や建築基準法の形態規制が緩和される制度を同年4月より開始した。定めた促進区域内では、建築士から建築主に対する再エネ設備についての説明義務や建築基準法の形態規制が緩和される制度を同年4月より開始した。
さらに、省エネ基準より高い省エネ性能を有する住宅等への支援は、国土交通省・環境省・経済産業省が連携し行う、住宅省エネキャンペーンにおけるZEH水準住宅の新築や省エネリフォーム等への補助制度、住宅ローン控除等の税制措置、独立行政法人住宅金融支援機構の【フラット35】SにおけるZEH等への融資金利引下げ等を実施している。
また、建築物への支援は、ZEB等の省エネ性能の高い建築物に対する支援や、省エネ・省CO2等に係る先導的なプロジェクトを実施している。
(8)上下水道における脱炭素化の推進
水道事業においては、省エネルギー・高効率機器の導入、ポンプのインバータ制御化等の省エネルギー設備の導入及び施設の広域化・統廃合・施設配置の最適化(上流からの取水等)による省エネルギー化の推進や、小水力発電、太陽光発電等の再生可能エネルギー発電設備の導入を実施している。
下水道事業においては、高効率機器の導入等による省エネ対策、下水汚泥のバイオガス化等の創エネ対策、下水汚泥の高温焼却等による一酸化二窒素の削減を推進している。
(9)建設機械の環境対策の推進
燃費基準値を達成した油圧ショベル、ブルドーザ等の主要建設機械を燃費基準達成建設機械として認定する制度を運営しており、令和7年3月現在で196型式を認定している。一方、これらの建設機械の購入に対し低利融資制度等の支援を行っている。
また、2050年目標である建設施工におけるネット・ゼロの実現に向けて、動力源の抜本的な見直しが必要であり、GX建設機械(電動等)の導入拡大を図るため、令和5年10月にGX建設機械認定制度を創設した。令和7年3月現在で19型式を認定している。
(10)都市緑化等によるCO2の吸収源対策の推進
都市緑化等は、パリ協定に基づく我が国の温室効果ガス削減目標の吸収源対策に位置付けられており、令和6年12月に策定した「緑の基本方針」等に基づき、都市公園の整備や公共施設の緑化、民有地における緑地の確保を推進している。また、地表面被覆の改善等、熱環境改善を通じた都市の低炭素化や緑化によるCO2吸収源対策の意義や効果に関する普及啓発にも取り組んでいる。
(11)ブルーカーボンを活用した吸収源対策の推進
CO2吸収源の新しい選択肢として、海洋生態系により吸収・固定される炭素(ブルーカーボン)が注目されている。国土交通省では藻場・干潟等及び生物共生型港湾構造物を「ブルーインフラ」と位置付け、ブルーカーボンを活用したCO2吸収源の拡大によるネット・ゼロの実現への貢献や生物多様性による豊かな海の実現を目指し、「命を育むみなとのブルーインフラ拡大プロジェクト」の取組を推進するとともに、ブルーカーボン由来のカーボン・クレジット制度の活用促進等に取り組んでいる。


