SASは、睡眠中に舌が喉の奥に沈下することにより気道(空気の通り道)が塞がれ、そのため、大きないびきをかき、睡眠中に呼吸が止まったり、止まりかけたりする状態が断続的に繰り返される病気です注1。このため睡眠が浅くなると同時に、脳への酸素の供給も悪くなるため、質の良い睡眠がとれず、日中強い眠気を感じたり居眠りがちになったりして、集中力に欠けるなどの状況が生じます。この結果、漫然運転や居眠り運転による事故等が発生しやすくなります。
注1医学的には、呼吸が10秒以上停止する無呼吸の状態が一晩の睡眠中に30回以上生じるか、睡眠1時間あたり無呼吸が5回以上生じ、かつ自覚症状を伴うものをいいます。
SASの患者には、主に次のような症状が見られます
SASになると、睡眠中の呼吸停止と再開が繰り返されるために血圧が上昇し、血液も固まりやすくなることから、高血圧、糖尿病、狭心症、心筋梗塞、脳卒中など重大な合併症を引き起こすリスクが高まります。したがって、安全運転上のみならず、健康管理面からもSASの早期発見・早期治療が重要です。
これまでの多くの研究によれば、SASは運転能力を低下させることが明らかにされています。SASによる居眠り運転で発生する事故は、特に
に多いといわれています。また、重度のSAS患者は、短期間に複数回の事故を引き起こすことが多いと言われています。
欧米でのいくつかの報告をまとめた調査結果によれば、SAS患者の事故率は、健康な人の事故率に比べ、平均で約3倍という高い値が示されています。注2
注2Sassani A, Findley LJ, Kryger M 他:「Reducing motor-vehicle collisions, costs, and fatalities by treating obstructive sleep apnea syndrome」SLEEP, Vol.27, No.3, 2004