近年の研究で、中等度〜重度注3のSASに罹患している場合でも、日中に強い眠気を感じない人が多くいることがわかっています。これは、SASによる慢性の睡眠不足状態により、自覚的な眠気を強く感じない状態になっていることや、コーヒー、紅茶、清涼飲料水等に含まれるカフェインや喫煙(ニコチン)による覚醒効果によると考えられています。このため、日中に強い眠気を感じない人であっても、(2)のスクリーニング検査を受けて、睡眠中の呼吸障害の程度を客観的に把握することが重要です。
注3睡眠時の無呼吸及び低呼吸の発生状況により以下の分類を設けています。
正常範囲:呼吸障害指数(RDI:記録1時間あたりの無呼吸と低呼吸の数の和)が5未満
軽度 :RDIが5以上19.9以下
中等度 :RDIが20以上39.9以下
重度 :RDIが40以上
スクリーニング検査注4とは、SASの早期発見を目的に、より多くの人を対象として(3)の確定診断のための精密検査が必要かどうかを判断するために行う簡易な検査で写真のようなフローセンサ法やパルスオキシメトリ法があります。
これらのスクリーニング検査で使用する機器は、いずれも小型で軽量であるため、自宅に持ち帰って普段どおりの生活の中で検査を行うことができます。
スクリーニング検査は、極端な体重の増減がない限り、3〜5年間に1回実施すれば良いので負担は少なく、運転者は、スクリーニング検査を受診してSASの有無を調べることが重要です。さらに、SASである場合は、その程度を知っておくことが安全運転と健康管理の両面から重要です。
注4スクリーニング検査の実施方法等については、社団法人全日本トラック協会指定のSASスクリーニング検査指定機関(同協会のホームページをご参照下さい)や専門医療機関にお問い合わせ下さい。
スクリーニング検査でSASの確定診断のための精密検査が必要と判断された場合には、専門医療機関によるSASの確定診断を受けることが重要です。専門医療機関では、1.(2)「SASに関連する症状」やスクリーニング検査の結果から、写真のような終夜睡眠ポリグラフ(polysomnography, PSG)検査又は簡易型PSG検査を用いて精密検査を実施し、睡眠障害の有無と、SASか否かの確定診断を行います。
PSG検査により、SASと診断された場合には、その重症度を判定し、3.「SASの治療法と効果」にある様々な治療法を適切に選択します。
また、簡易型PSG検査で重度のSASと診断された場合でも、次項のCPAP治療を受けることができます。