2.1 概要

本章では、各都市における3D都市モデルの「拡張製品仕様書」を作成する手順を示す。拡張製品仕様書は、標準製品仕様書に基づき作成する。

標準製品仕様書では、以下の三つのユースケースを設定し、これらの実現に必要となる情報を、地物型及びその地物属性・地物関連(以下、「地物型等」と呼ぶ)として、国際標準(CityGML)に準拠し、その製品仕様を定義している。

  1. 都市に関わる様々な地理空間データを格納する基盤(オープンデータ化を含む)

  2. 3次元空間における都市計画決定情報の可視化

  3. 災害リスク情報の3次元可視化

一方で、3D都市モデルのユースケースは上記に限定されるものではなく、様々な分野での利用・応用が期待される。ユースケースが異なれば、必要となる情報は異なる。また、都市の規模や環境によって、同じユースケースであっても、必要となる情報は異なる可能性がある。

そこで、標準製品仕様書には、各都市におけるユースケースに必要な情報を追加するための「拡張規則」を定めている。この規則は、標準製品仕様書に定義された地物型等では必要な情報が不足する場合に適用する。また、標準製品仕様書に定義された地物型等が不要な場合には、これをデータ作成の対象としない「制限規則」を定めている。さらに、標準製品仕様書は、コードリストの区分や品質要求を必要に応じて変更することを許容している。

本章では、これらの標準製品仕様書に示された規則に従い、3D都市モデルの製品仕様(拡張製品仕様書)を定める手順を示す。

2-1に手順の概要を示す。標準製品仕様書に不足がある場合(地物型等や品質がユースケースを満たさない場合)や、標準製品仕様書では過剰となる場合(地物型等がユースケースには不要となる場合)には、拡張製品仕様書を作成しなければならない。拡張製品仕様書の作成には附属書Aに示す各様式を使用すること。

2-1 — 3D都市モデルの製品仕様(拡張製品仕様書)を定める手順(図中の番号は、本章の箇条を示す)

標準製品仕様書が想定している三つのユースケースは、3D都市モデルの利用場面としては基本的なユースケースである。そのため、これらの実現に必要となる全ての地物型を、拡張製品仕様書においても含めることが望ましい。各都市のユースケースに応じて作成される拡張製品仕様書に共通の地物型として含めることにより、都市ごとの利用だけではなく、都市圏で統合した利用、あるいは、近隣都市や同規模の他都市との比較というように、3D都市モデルのユースケースを広げることができる。

拡張製品仕様書に含めることが望ましい地物型及びそのLODの組み合わせを、2-1に示す。

2-1 — 拡張製品仕様書に含めることが望ましい地物型とLODの組み合わせ

基本セット

応用セット1

応用セット2

応用セット3

説明

基本となる3D都市モデル

都市計画の更なる高度化を目指す3D都市モデル

様々な分野での利用を想定した3D都市モデル

高度なユースケースに特化した3D都市モデル

建築物

〇(LOD0, LOD1,LOD2)

〇(LOD0, LOD1, LOD2)

〇(LOD0, LOD1, LOD2)

〇(LOD0, LOD1, LOD2, LOD3, LOD4)

交通(道路)

〇(LOD1)

〇(LOD2)

〇(LOD3)

〇(LOD3)

交通(鉄道)

〇(LOD2)

〇(LOD3)

〇(LOD3)

交通(徒歩道)

〇(LOD2)

〇(LOD3)

〇(LOD3)

交通(広場)

〇(LOD2)

〇(LOD3)

〇(LOD3)

交通(航路)

〇(LOD2)

土地利用

〇(LOD1)

〇(LOD1)

〇(LOD1)

〇(LOD1)

災害リスク

〇(LOD1)

〇(LOD1)

〇(LOD1)

〇(LOD1)

都市計画決定情報

〇(LOD1)

〇(LOD1)

〇(LOD1)

〇(LOD1)

橋梁

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD4)

トンネル

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD4)

その他の構造物

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD3)

都市設備

〇(LOD2)

〇(LOD3)

地下埋設物

〇(LOD2)

〇(LOD4)

地下街

〇(LOD1, LOD2)

〇(LOD4)

植生

〇(LOD2)

〇(LOD3)

地形

〇(LOD1)

〇(LOD2)

〇(LOD3)

〇(LOD3)

水部

〇(LOD2)

〇(LOD3)

区域

〇(LOD1)

拡張製品仕様書作成時の要件は下表のとおりである(各規定の詳細は各規定の表を参照のこと)。

2-2 — 要件分類1: 拡張製品仕様書作成時の留意事項

ID

/req/decision

対象の種類

標準作業手順

説明

拡張製品仕様書作成時の留意事項

規定

留意事項1: 拡張製品仕様書に含めることが望ましい地物型等について
留意事項2: 品質要求の変更手順
留意事項3: コードリストの拡張
留意事項4: 地物型の省略手順
留意事項5: 必須属性の明確化
留意事項6: LODの適用決定
留意事項7: 品質基準の柔軟性
留意事項8: 位置精度の選定
留意事項9: オープンデータ仕様書