川と水辺の技術開発 |
河川に関する伝統的な技術書 |
番号 | 文献吊称 | 編集・関係者 | 年 代 | 対象地域 | 概 要 |
1 | 平岡道敬 | 元禄2(1689)年 | 広域 | 本書は河川構造物の工法や工事について、また河川工事の役人の工事の手続き方法などが書かれている。 | |
2 | 著者上明 | 天和年間(1681〜1684)年 | 広域 | 本書は15巻からなり、内容は気象、土壌、農具、肥料、耕作法、水除(みずよけ)、水防(すいぼう)、普請(ふしん:土木工事)に関する技術が体系的に書かれている。第7巻には防水集として治水・水防に関する工法について書かれている。 | |
3 | 大畑才蔵 | 元禄元(1688)年 | 紀伊(和歌山) | 本書は、和歌山藩の藩命により、筆者が領内の溜池や用水路の築造のための検分、測量調査をおこない、それに基づいた普請計画の策定などについて、筆者の行動記録と土木技術の考え方をまとめた文献である。 | |
4 | 小林丹右衛門 | 享保5(1720)年 | 甲斐(山梨) | 本書の題吊でもある川除とは、河川の氾濫防止の手段を意味した治水工事のことである。 特に、本書では洪水を制御するより、いかにして被害を少なくする工夫が大事であるかを説き、その具体策について書かれている。 |
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5 | 奥貫友山 | 寛保3(1743)年 | 広域 | 本書は武蔵国川越の地主であった奥貫友山により、寛保2(1742)年に起こった荒川の大洪水の被害状況および救済方法・活動、教訓などを記録したもの。 享保12、13(1727、28)年の大水害の教訓とその後の洪水に対する心構えが書かれている。 |
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6 | 武陽泰路 | 宝暦13(1763)年 | 広域 | 本書の内容は地方竹馬集とよく似た内容である。約100年の違いがあるが、文章表現などが分かりやすく書かれているが技術的な部分の記述はあまり変化がない。 | |
7 | 大石猪十郎久敬 | 寛政6(1794)年 | 広域 | 本書は「続地方落穂集《などの様々な本をもとに、水利技術を体系的にまとめた本である。 江戸時代にみられた河川構造物を網羅して収録している。 |
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8 | 野呂文次 | 享和3(1803)年 | 弘前(青森) | 本書は、弘前藩岩木川奉行であった野呂によってまとめられた。内容は、大きく分けて、河川工事についての留意事項と洪水時の留意事項の2つについての二十八ヶ条が書かれている。 また、河川工法に関する図面は、わかりやすく色づけしてある。 |
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9 | 大蔵永常 | 文政5(1822)年 | 広域 | 本書は、上・中・下の3巻から構成され、農業で使用される道具が体系的にまとめられている。下巻には、揚水機や踏車(川や水路から水をくみ上げる道具)や河川浚渫に用いた浚渫船などが挿絵を含め、記載されている。 | |
10 | 南部長恒 | 天保5(1834)年 | 九州北部 | 本書は、鍋島藩藩士の成富兵庫茂安によって築造された河川構造物などについて、筆者が地元古老などから情報収集し、まとめた文献である。また、巻末には佐賀地方などの地域特性における河川技術の指針が書かれている。 | |
11 | 秋田十七郎義一 | 天保8(1837)年 | 広域 | 本書は土木事業を進める上での計算方法が書かれている。 第4巻「普請之部《では工法の目論見(もくろみ:見積り)の方法について記されており、当時の積算マニュアルとして利用されていたと言われている。 |
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佐藤信淵(信有) | 上詳 (安永9(1780)年頃) |
広域 | 本書は、江戸幕府が出した規則や「地方凡例録《を参考に書かれたものである。その一説に施工担当者は管理している河川を巡回し、諸国河川の普請(土木工事)の状況を観察することが必要であると書かれている。 |
13 | 平松勇之介 | 嘉永5(1852)年 | 備後(岡山) | 本書は、高梁川の上流、軽部村で破堤して、備前国児島郡の村が洪水の被害にあったことが書かれている。当時の被害と村人の活躍、藩の対応と村々からの援助、洪水時の心得などが書かれており、後世への洪水対策として書かれている。 | |
14 | 関谷兵内 | 安政6(1859)年 | 新発田(新潟) | 本書は、新発田藩藩士である関谷によって、新発田藩の地方役人(地方官)の河川工法のマニュアルとして書かれたもの。この地方で使用されている水制工について記載されている。主に杭水制、籠水制について書かれている。 | |
15 | 内務省 | 明治14(1881)年 | 広域 | 本書は江戸時代に各地で実施された治水工法を体系的にまとめた技術書である。施工段階が理解できるように図面が付いており、その図面は見やすいように工夫されている。 | |
16 | 真田秀吉 | 昭和7(1932)年 | 広域 | 本書は古来からの水制の発展改良について書かれ、事例を多く取り上げ分析し、護岸・水制のあり方について書かれている。 ※水制→水の流れを変えたり、勢いを弱めるために設置される河川構造物のこと |
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17 | 土木学会 | 昭和11(1936)年 | 広域 | 本書は土木学会が刊行したもので、明治以前の土木技術がまとめられている。内容については、河川に関する技術が多く、満濃池、信玄堤などについて書かれている。 | |
18 | 上詳 | 上詳 | 広域 | 本書は、江戸幕府によって編集され、河川改修技術がまとめられた資料集成で全8巻からなり、幕府の河川技術者のマニュアルといわれている。内容は幕府による川除普請の費用規定、河川改修の事例から見る河川改修方法、川除のための河川技術などに分割され編集されている。 |
※「岩木川心得《「農具便利論《「土木工要録《をクリックすると伝統的工法図面集が見ることができます。 | 本のフリガナについては参考として明記しました。場合によっては異なる読み方もあると思いますが、一つの目安としてご覧下さい。 |
◆参考文献 |
土木学会「明治以前日本土木史《1936 農山漁村文化協会「日本農書全集 65 開発と保全《1983.3 石崎正和:近世文書に見る水利技術の系譜.1984.第4回日本土木史研究発表会論文集 知野泰明:徳川幕府法令と近世治水史料における治水技術に関する研究. 1991.第11回日本土木史研究発表会論文集 大熊孝「叢書 近代日本の技術と社会 4 川を制した近代技術《平凡社、1994.11.16 樺n域開発研究所「河川伝統工法《1995.8.1 山本晃一「日本の水制《山海堂、1996.1.10 山本晃一「河道計画の技術史《山海堂、1999.2.20 富野章「日本の伝統的河川工法T、U《信山社サインテック、2002.1.30 |
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