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河川局

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記者発表

2.水災危機管理、被害軽減

(1)防災拠点施設の耐水機能の確保
(緊急に点検、実施すべき事項)
・市町村役場等防災拠点施設について、氾濫、浸水時の機能確保に関する現状点検。
・点検を踏まえた施設、機器の嵩上げ、防水壁設置等必要な対策の実施。

 東海豪雨では、役場、避難所、防災倉庫等の防災拠点施設が浸水し、水災対策がより困難となる事例があった。

(2)避難者支援のための資機材、物資の確保
(緊急に点検、実施すべき事項)
・避難活動、避難者支援のため、資機材、物資の備蓄状況の点検。
・点検を踏まえた、不足する資機材、物資の手当て。
・耐水性を考慮した保管場所の現状点検、見直し。
・避難者への生活物資の提供に関する防災計画、体制の点検、見直し。

 東海豪雨では、避難したものの、避難所には食料、毛布等避難者支援用資機材の備蓄がなく、また、物資の浸水、輸送の困難等により初期段階での十分な対応がとれない事例があった。
 さらに、浸水により住居での生活が困難となり、帰宅可能となるまでの復旧に時間を要した例もあることから、発災時から復旧段階までの各段階毎の支援計画をあらかじめ検討しておくことが効果的である。

(3)ライフライン等の耐水機能の確保
(緊急に点検、実施すべき事項)
・電気、ガス、水道等のライフライン基幹施設の耐水性について、氾濫、浸水時の機能確保に関する現状点検。
・点検を踏まえた、施設、機器の嵩上げ、防水壁等必要な対策の推進。
・集中豪雨時の鉄道の運行基準、道路交通規制基準の点検。
・自家発電施設等、非常用設備の燃料備蓄状況及び補給方法の点検。

 東海豪雨では、変電所の浸水による停電、無線局の浸水による携帯電話の通信不調等、住民の生活に係わる基幹施設の浸水が都市機能の麻痺を招いた。
 また、鉄道、道路等の不通、規制により人流、物流機能が低下し、企業の操業停止、全国的人流、物流への影響など広範な地域に影響をもたらした。特に、道路は水災時の避難支援、水防活動、復旧活動等に必要な資機材、人員等の輸送に欠かせないものであることから、水災対策に必要な交通機能の確保に努めることが重要である。

(4)地下空間の水災対策
(緊急に点検、実施すべき事項)
・地下鉄、地下街、ビルの地階等の地下空間について、地下への浸水経路、浸水形態の把握等、氾濫、浸水時の安全確保に関する現状点検。
・点検を踏まえた、防水板の嵩上げ、管理運用手順の明確化等、必要な耐水化対策の推進。
・地下施設の管理者、所有者へ、降雨、河川水位等浸水状況等の情報を伝達する情報システム整備の推進。
・地下空間からの避難、誘導等、安全確保体制の点検。

(今後さらに検討を加え、推進すべき事項)
・地下空間の水災対策を促進するための有効な方策の検討。

 東海豪雨では、地下鉄は3駅が浸水し、3路線が不通となった。浸水の状況を見ると、設置された防水板を越えたもの、駅と併設された地下駐輪場の出入口から浸水したもの、工事個所から浸水したもの等があった。
 浸水した場合の速やかな排水体制について、あらかじめ検討しておくことが効果的である。
 福岡市における地下街、地下室の浸水、東京都における地下室、地下鉄の浸水等地下利用の進展に伴う被害例が目立っている。このような状況を踏まえて、東京都では地下街管理者等へ、FAXによる河川情報等の提供を開始している。
 また、現行の災害関係法等には、地下街等の水災対策について明確な規定はないことから、制度面の検討、整備が望まれる。

(5)自動車被害の軽減
(緊急に点検、実施すべき事項)
・浸水時の通行困難個所の点検。
・浸水時の自動車交通利用の危険性周知。
・違法駐車、放置車両等による避難活動、水防活動への支障の現状点検。
・道路管理者等との連携による適切な情報提供、交通規制、誘導。

 東海豪雨では、帰宅、避難、知人の状況確認等に自動車を使用し、浸水状況の情報がないため浸水深の深い個所で使用不能となる例が多く発生した。また、通行可能な道路に交通が集中し、防災車両の災害現場への到着に時間を要したり、放置車両のために排水ポンプ車の設置が困難になるなど水防活動に支障をきたした例があった。

(6)高齢者等の避難等の支援
(緊急に点検、実施すべき事項)
・高齢者等の安全な場所への避難、誘導計画の現状点検。
・点検を踏まえた、個々の対象者毎の具体的避難誘導手順の設定等必要な対策の推進。
・養護施設、病院等の氾濫、浸水時の安全確保に関する現状点検。

 東海豪雨では、高齢者等は浸水状態になると自力での避難は極めて困難となる。このため、自宅の2階に孤立して取り残された例が多くあった。また、特別養護老人ホームの1階が浸水し、施設の2階以上へ避難した事例があった。

(7)水災予測シミュレーションに基づく地域防災計画等の充実
(今後さらに検討を加え、推進すべき事項)
・水災シナリオ別予測シミュレーションに基づく、避難場所、避難経路、避難方法、ボート等の機材確保、防災倉庫位置、物資輸送方法の設定、ライフライン施設管理方法、地下空間からの避難、誘導、輸送ルート確保、水災廃棄物処理等の地域防災計画、関係水災対策基準等の充実。

 市町村が行う防災拠点の耐水化、避難、誘導、避難者支援、高齢者支援等、水災対策や、施設管理者が行うライフラインの耐水機能確保施設、自動車被害軽減、地下空間水災対策等の実施体制を充実するためには、水災シナリオ別予測シミュレーション結果に基づき、地域防災計画、水災対策基準等を関係機関が連携、協力して検討する等の支援が有効である。この場合、地域の特性によっては、流域市町村が協力して広域的な計画、体制を検討することが効果的である。
 また、水災時の避難支援にはボート確保が、水防活動、復旧活動、避難者支援活動等には輸送ルート確保が重要であり、あらかじめ確保計画を十分に検討しておく必要がある。
 さらに、水に弱いために浸水により使用不能となった家電製品、畳、家具等は、特に廃棄物問題の厳しい都市地域においては、街頭にこれらがあふれかえる状況となった。これらの水災廃棄物についても、あらかじめ処理計画を検討しておくことが重要である。

(8)水災に対する危機管理訓練
(今後さらに検討を加え、推進すべき事項)
・水災に的確に対処する意識の向上、経験の蓄積を図るための、市町村の防災担当責任者を対象とした、出水期前の都市型水害対策危機管理訓練の実施。
・水災を想定した、地下空間からの避難、誘導訓練の実施。

 東海豪雨では、防災関係機関の水災時の対応には、過去の大水害の経験が参考になったとの意見があった。
 水災に対する訓練としては、水防演習等が行われているが、水防団の水防活動に主眼を置いた訓練となっている。また、総合防災訓練は主に地震を想定した訓練となっており、浸水した状態での防災行動は想定されていない。
 水災時の危機管理、避難軽減対策における的確な意思決定等には、類似の対応体験として、ロールプレイング方式等を取り入れた実践的都市型水害対策危機管理訓練等が有効である。
 また、地下空間の浸水は、人命に係わる事態に直結することから、停電、水圧によるドア閉鎖等、起こりうる事態を想定した上であらかじめ避難、誘導等の安全確保体制を整備し、定期的に訓練を実施する等により習熟しておくことが重要である。



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