- 事業の必要性
球磨川流域は度重なる洪水被害を受けており、球磨川流域2市7町6村の約12万人の生命、財産を守るため、川辺川ダムは必要不可欠な事業です。
- 事業の経緯
川辺川ダム事業については、昭和38、39、40年の3年連続して球磨川流域を襲った大洪水を契機として計画され、流域市町村、熊本県の要望を受けて昭和42年度に事業に着手しました。その後、昭和57年に五木村議会がダム建設反対決議を取り下げるなど、地元五木村、相良村のご理解も得て事業を進めています。
移転される地元の549世帯は長い苦渋の選択を経て、現在、全ての方が生活再建について同意済みであり、平成13年度中に全世帯との移転契約が完了する予定です。
- 漁業補償
球磨川漁業協同組合との漁業補償交渉については、平成12年11月より誠意をもって交渉を行ってきたところですが、平成13年11月28日の球磨川漁業協同組合の臨時総会では、漁業補償について過半数の賛同は得たものの、2/3には達しませんでした。(賛成802、反対620)
なお、川辺川ダム反対決議は過半数の反対で否決されています。
- 流域自治体の意向
災害対策基本法において住民の生命・財産の安全確保の責務を有している球磨川流域の2市7町6村全ては、球磨川の治水上の緊急性、移転者の長年にわたる苦渋の選択によるダム事業への協力、漁協関係者の過半数の賛同を得たことなどから川辺川ダム事業の推進を強く要望しています。
- 県民集会への参加
11月28日の漁協の臨時総会で、漁業補償に関して2/3を確保できなかったことを受けて、12月5日、知事と面談した際、知事より、ダム事業の妥当性に関する説明責任を果たすために、県主催で「住民大集会」を開催する考えであり、その「住民大集会」へ参加してほしいと正式に要請されました。
私ども整備局は、学識経験者の協力を得て、その集会に参加し、治水代替案などについて誠意をもって説明の努力をしたところであります。
- 熊本県の意向
熊本県知事は、住民大集会の翌日の12月10日に開催された県議会で答弁する中で、
「川辺川ダム事業については、尊い流域住民の生命及び財産を守るための基盤として必要不可欠な目的を有していること、また、ダムの建設促進について球磨川流域の地元市町村も強く要望していることを認識しながら取り組んできたところ。
国土交通省があらゆる段階で説明責任を負うことは当然であり、今後とも国土交通省において、多様な意見を持つ方々との間で、公正かつ透明性高く論議することを求めていく。
球磨川、川辺川流域全体から八代海に至る水質等の環境を保全、改善するための総合的対策が必要であると考えており、関係省庁間で連携をとり、さらには流域の関係者の意見を十分に聞きながら対策を進めるための流域協議会の設置を国に求めて参りたい。
球磨川漁協の漁業権等に関する収用裁決申請については、事業主体である国土交通省自らが判断すべきものであると考えている。」(一部抜粋)
と表明されています。
- 今後の方針
治水上の必要性・緊急性や流域自治体の意向などを踏まえ、九州地方整備局は、ダム建設予定地点の漁業権及び相続人不明等の土地について、収用裁決申請のため準備に入ることと致します。
なお、ダム建設工事に伴う漁業への影響補償については、別途必要に応じて対応していきたいと考えています。
また、球磨川や八代海域の環境調査など環境保全対策については、省庁間の連携をとり、流域関係者と協力して対策を進めるため、「球磨川流域の自然環境を次世代に残す流域会議(仮称)」を設置するなど、国土交通省は先導的かつ積極的に取り組んでいくこととします。
さらに、今後とも、多様な意見を持つ方々も含め、流域住民に対する説明責任を果たしてまいります。