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異常作動の概要 |
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駒場堰堤は、中部電力(株)が最大出力5,600Kwの発電を目的に天竜川水系阿智川に建設した取水堰であり、昭和12年10月から運転を開始している。放流設備は洪水吐ゲート2門、流量調整ゲート1門を有している。
今回のトラブルは、ダム水位一定制御という計画放流システムを使用中に異常作動が発生したものである。ダム水位一定制御は、目標水位の入力設定とその時刻が設定されることによってゲートの開度制御が実行されるもので、1回の設定により4時間後まで制御できるものであり、4時間経過後に新たな目標水位が設定されない場合は、目標値が継続することとなっていた。
駒場堰堤の遠隔操作は約36km下流にある平岡ダム管理所で行なっており、事故当日の平岡ダム管理所における操作状況は等は次のとおりである。
平成14年4月9日午後2時5分、水位一定制御を設定した。同10分、設定した水位を確認するため、水位変更作業により画面上で水位を確認後、設定変更作業を取り消し、システムの起動が行なわれた。
午後6時5分洪水吐ゲートが作動、同6分2号ゲートが開度49cmで停止(これは1回の作動時間を制限するタイマーで停止)。同6分に次に1号ゲートを停止させるため「割込操作」スイッチにより停止操作を試みたが、システムでは停止可能にならずゲート停止ができなかったため、同7分「緊急停止」により作動停止した。本来、ゲートの停止は、「スケジュールキャンセル」スイッチにより行なうものとなっているが、「緊急停止」したことにより、現地の電源が止められたため、この時点で平岡ダム管理所からの遠隔操作は不可能となった。 |
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2. |
異常作動の原因 |
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中部地方整備局においては異常作動発生後、「駒場堰堤ゲート自動操作システム調査委員会」を設置し、原因の究明を行なった結果、原因は、コンピュータに組み入れたプログラムの一部の欠陥と操作員の操作の対応が適切でなかったためであることが判明した。 |
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プログラムの問題箇所 |
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「ダム水位一定制御」の起動中において、何も設定せずに起動操作をした場合、ならびに目標水位の水位変更操作を開始し、その後、その変更作業を取り消して起動した場合に異常作動の発生することが明らかになった。 |
(2) |
異常作動の原因 |
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プログラムの問題 |
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最初の設定から4時間経過した時点(午後6時5分)まではデータは正常であったが、午後2時10分の変更作業の取り消し操作により、午後6時5分以降は設定水位が継続処理されず、異常な目標ゲート開度が設定され、ゲートが異常作動した。 |
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また、ゲート作動時に放流量が堰堤下流の放流制限を超える場合にゲートを自動的に停止する等の仕組みはなかった。 |
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不適切なゲート停止操作方法の対応 |
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「スケジュールキャンセル」スイッチによりゲートを停止させるものとなっていたが、これによらず「割込操作」スイッチにより操作しようとしたため、ゲートが停止しなかった。 |
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3. |
対 策 |
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中部電力(株)では、ゲート異常作動の再発防止をするため、次の対策を講ずることとした。 |
(1) |
システム対策 |
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制御プログラムの改良 |
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ゲート「停止」ソフトスイッチの設置 |
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異常放流時におけるサイレン吹鳴機構の設置 |
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運転操作マニュアルの見直し |
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システム仕様検証条件の見直し |
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操作スイッチの名称変更及び操作支援機能の追加・変更 |
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ゲート「緊急停止」時に遠隔でも復帰できるスイッチ機能の追加 |
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1回のゲート作動量の適正値の検討 |
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ゲート作動量に対する「承認機能」の追加 |
(2) |
操作教育の強化 |
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捜査員に対し、ゲート自動運転中における停止方法の再周知、異常時の対応訓練、関係機関等報告箇所の確認実施 |
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教育カリキュラムに異常時の対応訓練及び迅速な関係機関への通知を追加実施。 |
(3) |
異常時における関係機関への通知先の見直し |