河川堤防は治水施設の根幹をなすものですが、一般的に繰り返し拡築が行われてきたため築堤履歴が複雑で、ほとんどの場合内部構造が明らかになっていません。このため、堤防点検により堤防構造を把握するとともに、安定性を評価し必要な対策を実施することが重要となっています。
直轄管理河川の堤防においては、平成8年度から堤防の安全性に関する点検を実施しており、その結果から所要の安全性を確保していないと判断された箇所については、堤防強化等必要な対策を進めているところです。
一方、都道府県等管理河川(以下、「中小河川」という。)の堤防においては、その延長が長大なことや既存調査が必ずしも十分でない等、堤防点検・対策を推進していく上で多くの課題を抱えています。
以上のことから、国土交通省は、各都道府県等が中小河川の堤防点検・対策を推進する際に参考として活用してもらうため、「中小河川における堤防点検・対策ガイドライン(案)」を策定し、各都道府県等に本日通知しました。
また本通知では、今後、中小河川における堤防強化対策を効果的に推進していくため、本ガイドライン(案)に基づき、土質条件や被災履歴、破堤時の影響に関する調査等に早急に着手するとともに、堤防管理の充実強化を図るため、調査により得られた情報を日常の堤防管理に積極的に活用するよう併せて依頼しております。
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中小河川における堤防点検・対策ガイドライン(案)の策定について
1.ガイドラインの概要
本ガイドライン(案)は、都道府県等管理の一級河川指定区間および二級河川の堤防に適用し、耐浸透機能*に関する堤防点検・対策について示す。
*洪水時の降雨および河川水の浸透により堤防(堤体および基礎地盤)が不安定化することを防止する機能
(1)堤防点検
- 堤防点検の手順を図1に示す。土質条件や被災履歴、破堤時の影響等の調査等にもとづき、堤防の安全性の検討を行う区間を細分して選定し、安全性検討を行う
- 堤防の安全性検討は、高さ、天端幅、のり勾配等堤防の基本的な断面形状を満たしている堤防を対象に実施する
1) | 安全性検討箇所の選定 |
@一連区間の設定
安全性検討箇所の選定にあたっては、まず堤防点検区間を対象として河道特性や洪水氾濫区域が同一、または、類似する区間(以下「一連区間」という。)を設定 |
A安全性検討箇所の選定ための調査
耐浸透機能について所要の安全性が確保されておらず、破堤時の影響が大きい箇所を抽出するために、土質条件や被災履歴、破堤時の影響等について調査を実施 |
B安全性検討を行う細分区間の選定
一連区間のうち安全性検討箇所の選定のための調査等にもとづき、堤防の安全性の検討を行う区間を細分して選定。細分区間は、堤防構造を同一とする区間として設定 |
C代表断面の設定
細分区間の中から設計上厳しい条件にある箇所において代表断面を設定 |
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2) | 安全性検討
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@照査のための調査
安全性の照査を行うために、代表断面を対象として、堤防の土質強度や浸透特性について把握するための調査を実施 |
A堤防構造の仮設定
照査のための調査結果にもとづき、過去の築堤記録や周辺の堤防構造等を参考にして、代表断面の堤防構造を仮設定 |
B設計外力の設定
計画高水位に達する洪水状態を想定した外水位や計画規模の洪水時の降雨を設計外力として設定 |
C安全性の照査
代表断面において仮設定した堤防構造を対象として、適切な手法を用いた安全性の照査を行い、照査の結果が照査基準を満足しない場合には、堤防強化を検討 |
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図1 堤防点検の手順 |
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(2)堤防強化
堤防強化の手順を図2に示す。堤防強化区間を設定したうえで、所要の安全性が確保でき、さらに維持管理等の観点から適用性を評価し、適切な堤防強化対策を選定する。さらに、構造的連続性等を勘案のうえ、総合的に検討を行い、堤防強化対策を決定。その後、堤防強化対策の効果を検証するためのモニタリングを実施する。
1) | 堤防強化対策の選定 |
@堤防強化区間の設定
安全性の照査結果および背後地の状況等を勘案し、所要の安全性が確保されていないと判断される区間を堤防強化区間として設定 |
A堤防強化対策の一次選定
所要の安全性を確保できる構造となるような堤防強化対策を一次選定 |
B堤防強化対策の二次選定
一次選定した堤防強化対策について、「維持管理」、「経済性」、「施工性」、「事業執行」、「堤体材料・地盤とのなじみ、構造物との関係」および「環 境・利用」の観点から適用性を評価し、適切な対策を二次選定 |
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2) | 堤防強化対策の決定 |
堤防強化対策は、一次選定および二次選定結果を踏まえるとともに、一連区間における構造的連続性、樋門等の構造物の設置状況等を勘案し、総合的に検討を行い決定 |
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3) | モニタリングの実施 |
堤防強化を実施した場合は、堤防強化対策の効果を検証するためのモニタリングを実施 |
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図2 堤防強化の手順 |
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2.ガイドライン(案)の特徴
中小河川の堤防においては、堤防点検・対策を推進していく上で多くの課題があるので、ガイドライン(案)ではこれらの課題に対応できるよう以下の内容を示している
- 堤防点検にあたっては、河川堤防の重要性を鑑み、全区間にわたり安全性の確認を行うことが基本であるが、中小河川は延長が長大なことを考慮し、優先的に安全性検討を実施する箇所の選定方法を提案
- 安全性の照査にあたっては、照査外力として外水位と降雨の設定が必要であるが、中小河川では必要なデータが不足している場合、都道府県等が定める降雨強度式等を利用した簡易方式を提案
3.当面の取り組み
中小河川における堤防強化対策の推進にむけ、各都道府県等に対して以下の取り組みを依頼
- 今後、中小河川における堤防強化対策を効果的に推進していくため、本ガイドライン(案)に基づき、土質条件や被災履歴、破堤時の影響に関する調査等に早急に着手
- 堤防管理の充実強化を図るため、本ガイドライン(案)に基づく調査により得られた情報(堤防現況縦断図等)を日常の堤防管理に積極的に活用
・堤防現況縦断図 (PDFファイル25.0KB)
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問い合わせ先 |
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国土交通省 河川局治水課 |
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| 企画専門官 | 渥美 雅裕 | (内線:35514) |
| 課長補佐 | 山田 哲也 | (内線:35612) |
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| 代表電話 | 03-5253-8111 |
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| 夜間直通 | 03-5253-8450 |
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