歴史・風土に根ざした郷土の川懇談会 -日本文学に見る河川-
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歴史・風土に根ざした郷土の川懇談会 -日本文学に見る河川- 第三回議事録
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平 成13年7月6日(金)
14:00〜17:00 場所:中央合同庁舎三号館二階特別会議室 |
6.その他 |
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○委員長 | |
事務局の方から御報告がありまして、1つは「歴史的風土保存に関する海外事例」についてというのを集めてくださったわけです。 それを情報対策室長から。 |
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○事務局 | |
それでは、まず海外に行く前に日本の状況はどうかということで、それを御説明したいと思います。 歴史的風土の保全に関連するような制度として大きく3つございまして、歴史的風土保存区域、それから伝統的建造物群保全地区、建築協定、それから参考としまして都市計画法の地区計画というものがあります。この3つの中では先に挙げましたものほど規制が強いというような状況になっております。 以上が日本での制度でございますけれども、ではヨーロッパでどうなのかということでございます。 まずイギリスでございますけれども、イギリスでは保全区域という、Conservation Areaという制度が1967年から定められておるようでございます。根拠法令としては都市農村計画法ということで、この法律自身は1990年に制定されたものでございます。目的としましては建築または歴史の面で特別な性質または外観を有する地区の保存と発展ということを目的として指定するということになっております。この指定は地方計画庁、これは日本で言いますと市町村に当たる組織のようでございますけれども、そこが指定をするということになっております。行為規制につきましては、規制の内容としてここにあるように建築物の修繕、除去、樹木の伐採等掲げてございますけれども、こういった内容については地方計画庁の許可を受けなければいけないということになっておるようでございます。こういったものを定めている地区としましては、イギリス全体で約9,000あるようでございます。このうちイングランドで約8,000というような状況でございます。 主な事例として、チェスターとロンドンの中の状況を御紹介したいと思います。まずチェスターというところでございますけれども、これはイギリス最初の保全地区ということで、リバプールという町の南の方にございます。人口約6万の町のようでございまして、もともとの歴史はローマ時代に遡るようでございますけれども、ちょうど町が城郭で囲まれております。その中にある町ということで、この町の特徴としましては、街並みの2階部分に公共歩廊があるということでございます。ロウズ(ROES)と呼ばれる建物で、この2階に公共歩廊がある。こういったイギリスの伝統的な建物と言いますか、そういったものを保存するような形になっておるということでございます。 次にロンドンの例がございまして、ロンドンで3箇所ございます。まずケンジントン地区ということで、これはハイドパーク、ケンジントンガーデンズというあたりでございます。このあたりは高級住宅街になっておるのだそうですが、街路に面した街並みの部分、こういったところの保全をしておるということでございます。ここでは、商店につきまして、デザインのガイドラインが市の方で定められているようでございまして、よいデザイン、悪いデザインということで、こういった形になっていると許可は下りないとか、そういうような規定がされているようでございます。 それから、ロンドンのシティというところでございます。セントポール大聖堂とかイングランド銀行とか、証券取引所とかそういったものがある地域でございまして、ここも先ほどのケンジントンと同じようでございまして、サークル、広場があって、それを取り囲む建物、そういったものが保全地区に指定されておるということでございます。 それからもう一つ、ウェストミンスター市ということで、テムズ川が蛇行しているところでございますけれども、国会議事堂とかそういったものがある地域でございます。この地域につきましても非常に伝統的な建物がございまして、ここもデザインのガイドラインが定められております。オリジナルのレンガのアーチを変えないことであるとか、木製のものを使わなければいけないとか、そういったものの規定がなされておるということでございます。 それから、次にイタリアに移りまして、イタリアでは、Aゾーンという歴史的都心部という制度がございます。これは都市計画ブリッジ法というものに基づいて定められておるようでございます。町の中の歴史的都心部を保存しようということで定められております。これにつきましては幾つかケースがあるようでございまして、芸術的価値を持つ建造物の周辺地区のほか、建造物がない場合で、イタリアの国家が統一された1860年以前の建造物が過半数を占める地区であるとか、それから町を囲む城壁内の地区、それから統一された1860年以降に形成されたところであっても、特に特徴のすぐれた街区は対象としていこうというところでございます。これの指定等の権限は市町村がやるような形になっております。行為の規制については市町村の許可が要るという内容になっております。 規制の内容としましては、建築物の修繕とかそういったものについては許可が要る。それから、敷地に対する50%を超える床面積の新築、これは建ぺい率50%超えるものについてのことなのですけれども、50%以上超えませんと経済的にペイしないということで、実質、新築の建物ができないというような規定になっておるようでございます。それから、建築物の色彩の変更であるとか、屋外広告物であるとか、そういったものについて規制がかかっておるということでございます。 ローマはイタリア最大のAゾーンということで、約3,700haの部分がAゾーンに指定されているようでございます。バチカン市国に接しているところでございます。そういった地域がAゾーンとして指定されているということでございまして、先ほど屋外広告物についても規制があると申し上げましたけれども、ちょうどテレベ川が蛇行している部分でございますけれども、その中に第1級であるとか第2級、第3級、第4級というふうにそれぞれ街路が4つに分けて指定してございまして、それぞれについて規制が段階的に行われているということでございます。例えばフォロ・ロマーノという第1級の地域がございますけれども、看板が全く出ていないということで、どういった店が営業しているかわからない。と、当然飲食店も入ってこないので、飲食しようと思ったら別の場所に行かなければいけないというようなことが書いてあるところでございます。 先ほど申し上げましたイギリス、それからイタリアの規制の内容というのは日本で申し上げますと伝統的建造物群保存地区であるとか、あるいは建築協定のような内容に相当するのではないかというふうに思われます。 次にドイツでございますけれども、ドイツではBプランというのがございます。これは日本で申し上げますと先ほど参考で申し上げた地区計画に相当するものだということでございます。そういうことで、特に歴史的風土の保存ということは目的としていないということでございます。これは連邦の建設法典に基づいてつくる形になっております。つくる主体は各自治体でございます。それから、ここに幾つか掲げてございます行為規制があるわけでございますけれども、これについては各自治体の許可を受けるということになっております。 ドイツの場合、都市の景観コントロールに関する計画の体系ということで、大きく2つの計画をつくるようになっています。上位計画としてマスタープランとしての土地利用計画、これはFプランというふうに呼んでおります。その下に具体的に規制、誘導する地区詳細計画(Bプラン)をつくるということになっております。土地利用計画でございます。Fプランでございますけれども、これについては将来の土地の使われ方を示し、約10年から15年の単位で見直すというような形になっております。それからFプランに示された内容については、一般市民への影響はほとんどないというようなことでございます。 実際にどういったものかと言いますと、要は、その地域はどういった土地利用を進めていくのですかというようなことが区分けされてあるということでございます。 それから、Bプランでございますけれども、この計画については法的拘束力を持ってやるということでございます。それから、規制の内容は非常に細かくてデザイン的にも街区道路、それから屋根の傾斜、建物の方向、それから屋根材、窓の形、そういったものを詳細に定めてあるということでございます。これによって非常に整った街並みができてくるということでございます。 個々の規制につきましてはこのBプランに基づいていろいろな条例をおつくりになっているようでございまして、それで規制をしているということでございます。 以上、非常に簡単でございますが、前回宿題となっておりました外国における歴史的風土保存に関する規制の内容でございます。 |
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○委員長 | |
どうもありがとうございました。また大変要領のいい御報告を聞かせていただきました。 それでは、何か今の海外の歴史的風土保存に関する事例ということで御質問はございますか……。 日本は決してそうおくれているわけではないのですね。 |
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○事務局 | |
先ほど御報告申し上げた中身で言いますと、どちらかと言いますと街路に面したところのいろいろな街並みの保存をおやりになっているというのがイギリスとかイタリアとか、そういったところの状況のようでございまして、日本は例えば前回見ていただきました明日香村ですと、全域もう網をかけてしまってその中でいろいろな規制をかけているというような状況でございますで、若干やり方が違うのかなというようには思いますけれども。 |
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○委員 | |
規制は多分町の構造が違うから難しいのでしょうね。ヨーロッパだとすべて街路というか、宛名にしても、街路さえ指定すればあとは奇数と偶数で建物まで必ずたどりつけますけれども、日本の場合は面的にばらっとして、あとは路地でつながっているというのがもともとの構造だったでしょうから、そういうところでこういう景観の面からの規制をかけていくというのは非常に難しいのだと思いますね。 |
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○委員 | |
いよいよ国土交通省は今までの建設省時代以上にこういうことに深く、強くかかわるようになるわけですね。 |
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○事務局 | |
イギリスなどはこれで行くと、街並みを保存すると、住居として非常に質のいいところであるからということで価値が上がるみたいですね。だから、みずからが保存することに賛成するのだ。日本の場合はそういうイメージが余りないのですね。街並みを保存して一緒にいい街並みをつくることがその住居とかそういう建物の価値を上げることになるのだという感じを持っておられるようですね、イギリスの場合は。日本は余りそんな感じは持っていないですね。 |
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○事務局 | |
むしろ、日本の場合は指定しますと家の改築がなかなかできにくくなるとかそういったことで嫌われる方が多いのですけれども、イギリスの場合はみずから指定を望む傾向が高いというふうなことを言われているようです。 |
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○委員長 | |
それでいかがでしょうか、そろそろ時間になってきました。 |
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○事務局 | |
それでは、「議事録の公開について」ということで、この懇談会でございますけれども、議事録につきましても公開をさせていただきたいというふうに考えております。 公開につきましては、私ども国土交通省河川局のホームページで公開をしたいと考えております。 公開いたします内容としましては、3点考えておりまして、1つは懇談会の趣旨ということでございますけれども、「歴史・風土に根ざした郷土の川懇談会−日本文学に見る河川−」ということで、懇談会の趣旨と、それから委員の名簿ということで公開をさせていただきたいと考えております。 それから議事録でございますけれども、議事録につきましては第1回と第2回のものをおつけしておりますけれども、議事録の一般公開時には発言者の名前は削除したいと考えております。ただし、懇談会の中で座長の進行役としての発言、それから話題提供者の説明及び回答は懇談会の流れが理解しやすいように、一般公開時にもそのまま発言者名を残していきたいというふうに考えております。ですから、それ以外の方の発言につきましては、一応どなたが発言されているかということについては、発言者名は載せないということで考えておるということでございます。 私どもの方で事務的に整理させていただきまして、作成いたしまして、それを各)委員の先生の方にお送りをさせていただいて内容をチェックしていただく。チェックされたものでホームページ上に載せたいというふうに考えております。できますれば7月中に第1回、第2回につきましてホームページに載せたいというふうに考えております。 きょう、第1回と第2回の議事録につきましてここに提出させていただいておりますので、これにつきましては、できますれば7月の20日までに御意見をちょうだいして、修正させていただいて載せたいというふうに考えております。 本日御欠席されています)委員につきましてはこれをお送りさせていただいて、御確認させていただいて、それを受けて修正の上、アップロードしたいということでございます。 |
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○委員長 | |
どうもありがとうございました。 今のことで、議事録公開という点で何か御意見はございますか……。 異議がなければ、事務局側にお任せして進めていただくということにしたいと思います。 |
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7.閉会 |
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○委員長 | |
きょうは大変充実した研究会でございまして、どうもありがとうございました。 川本さんも五味さんもどうもありがとうございました。 |
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