ホーム >> 政策・仕事  >> 河川トップ  >> 審議会等  >> 過去情報

河川局

美しく、安全で、いきいきした海岸を目指して




はじめに


 海岸は、陸域と海域とが相接する特色のある空間であり、多様な生物が生息・繁殖する貴重な場であるとともに、人間の様々な活動に利用される重要な空間でもある。

 この海岸は、古くから漁業の場や湊として利用されており、干拓による農地の開発等も行われていたが、近世以降はその周辺部も含めて道路、鉄道、港湾、空港等の産業・交通の要衝となり、人々の営みの場・生活の場として社会経済の発展を支えてきたところでもある。また、海岸は美しい砂浜や荒々しい岩礁等、海に面することから生じる独特の自然景観を持ち、古くから磯辺、荒磯、渚、汀、白浜など優雅な言葉で文学や詩歌に表現されてきたところである。日本の海岸は、厳しい自然と対峙しながら営まれる生活や磯遊び・海水浴・散策などを通じて、我が国の文化・歴史・風土を形成してきたところであり、まさに国民共有の財産であると言わなければならない。

 しかし、毎年来襲する台風や時として起こる大地震のため、高潮や津波等により海岸の背後地に多大な被害が発生し、国民の生命・財産が失われたり、産業、社会活動に著しい支障が生じたりしており、海岸保全事業は行われているものの、その整備の状況は未だ十分ではない。また、全国的に進行している海岸侵食は、単に海岸のみではなく海域や陸域も含めた様々な要因により発生しているが、背後地の安全性を低下させているだけでなく、優れた自然景観や自然環境が失われ良好な海岸空間を喪失させるとともに、領土・領海の基線を脅かすことにもなっている。さらに、最近では心ない一部利用者の行為により海岸での多くの国民の利用に著しい支障が生じたり、貴重な動植物の生息環境が損なわれるといった状況も見受けられる。

 我が国は近代化の過程において、経済発展を支えるための国土開発や国土保全の事業に緊急に対処せざるを得なかった。このため、各種の開発・保全事業等は経済性・効率性を重視して個別に実施されてきたため、国民共有の財産である海岸にも様々な問題が生じている。

 現在、我が国においては21世紀を目前に控え、社会経済が成熟化するにしたがって、精神的なゆとりや自由時間の有効な利用、自然環境との共生を目指した空間がより一層望まれてきている。このような考え方の変化の中で、海岸に期待される役割は今後益々多様化し、その重要性が高まってくるとともに、単に人類のためだけではなく、地球上の様々な動植物との共生も念頭に、次世代へ豊かで良好な海岸空間を引き継いでいかなければならない。そのためには、総合的な視点に立った海岸管理が必要と考えられる。

 このため、「海岸管理検討委員会」は、海岸の変遷・現状と課題を踏まえ、海岸のあるべき姿を「次世代に継承する美しく、安全で、いきいきした海岸」ととらえ、それを具現化するための施策等を、ここに提言としてまとめた。

 今後この提言が、行政に携わる者はもとより広く国民の理解を得て、美しく、安全で、いきいきした望ましい海岸づくりが進められていくことを期待するものである。



Copyright© 2007 MLIT Japan. All Rights Reserved.

国土交通省 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3

アクセス・地図(代表電話)03-5253-8111